No.51 時限バカ弾


 

「アジャラカモクレン!!」


 いきなりなにかと思うだろう。実はこの謎の言葉、「ドラえもん」の中でも一、二を争うほど私がすきな言葉なのだが、まぁそれについては後ほど・・・。

 いつものごとく、ママにしかられるのび太。ドラえもんは見かねてこの「時限バカ弾」を取り出し、タイマーを5分後に設定してママの背中にとりつけた。そして5分後。時限バカ弾が爆発、ママは「ベロベロバー」などと言いながら奇行を取り始めた。そして最後には両手を思いっきり広げ、「アジャラカモクレン!!」と意味不明なことを口走る。ああ、このコマのおもしろさは、実際に41巻を見てもらわないとわからないだろうなあ・・・。このママの壊れっぷりは最高! ぜひ見て下さい!

 このようにこの道具は、時間をセットして相手に取り付けておくと爆発し、相手が「バカやってしまう」というなんともショーもない道具なのだ。正確に言えば、「バカやってしまう」というより、「DZWeb」でも言っているように、「壊れる」といったほうが正しい。なにしろ、「アジャラカモクレン!!」 だからなあ。さてのび太はこの道具を使ってしずかちゃんの前で出木杉君にバカやらせて嫌われるようにする、という姑息な作戦を立てた。まあ何一つ出木杉君にはかなわないのだから、こんな手を使うのもしかたがないか・・・。だが、作者は非情である。結局のび太は「ナンジャラモンジャラホニャラカピー」と、しずかちゃんと出木杉君の前でバカをやる羽目になってしまった。自業自得というには、すこしかわいそうかな・・・。

追記(2000年8月4日)

判明!! 「アジャラカモクレン!!」の謎


 先日、河井質店さんの主催する「藤子・F・不二雄ファンクラブ」を見ていたときのこと。このサイト内の「ドラえもんファンクラブ」の中に、作中のネタの元ネタを公開している「もどりライト2」というコンテンツがある。そしてその中の「落語」の中で、謎の言葉「アジャラカモクレン」の謎が明らかにされていたのだ。藤子先生は落語が大好きだったらしく、「ドラえもん」のネタの中にも落語のネタを多用していた。「アジャラカモクレン」も、このネタの一つらしい。「アジャラカモクレン」は「死神」という落語で、死神に一緒に医者の商売を始めないかともちかけられた男が使っていた呪文らしい。病人の所に行って、死神が枕元にいたら病人は寿命で、足元にいたら呪文を唱えることで死神が消えて病が治るというものだが、このときの呪文が、「アジャラカモクレン キューライソ テケレッツノパ」というものだったそうだ。なるほど、落語が出所だったのか。思いも寄らなかった。しかしやっぱり、この言葉はインパクトがある。こんな言葉を作り出すとは、昔の人はやっぱり偉大だったのだなぁ。彼らの功績をたたえていくためにも、「アジャラカモクレン」という言葉は、故・由里徹さんの裁縫芸とともに21世紀に伝えていくべきである。

No.52 なぐさめ型お年玉袋


 お年玉をやたらほしがるのび太。けっこうこいつもどん欲である。そんなのび太に半ばあきれながらもドラえもんが出してあげたのが、三種類のお年玉袋だった。ただ、当然訳もなくお金が出てくるはずがない。それぞれの袋ごとになにかしなければ、袋からお金は出てこないのだ。

 袋には松、竹、梅の三種類の絵柄が描かれている。「梅」の袋は、「ごほうび型」。人のためにいいことをして「ありがとう」と言われるたびに10円ずつ出てくる。もっとも割にあわないだろうな。「竹」の袋は「節約型」。無駄を省けば省くほどお金が出てくる。ケチケチ生活を送っている家にとっては、節約による出費の抑制以外に、けっこうな収入源となるだろう。そして、問題なのが「松」の袋。これは「なぐさめ型」で、しかられたり痛い目にあったりするとお金がもらえる。一種の損害保険だろう。ところがこの袋、おそろしく採算があわないのだ。おもいっきり頭をたたいても、やっと一円がでてくるだけ。「痛みが強いほどたくさんお金がでてくるんだよ」といいながら、ドラえもんはどこからか両手持ちのハンマーを取り出す。そしてジャンプすると129.3kgの自らの重みを加え、力一杯のび太の頭を「ボギャ!!」と叩いた!! 普通ならこれで死ぬだろうが、マンガの中の人間は頑丈なもの。頭がジーンとし、涙を浮かべるぐらいですんだ。さて、気になる金額の方はといえば、「見ろ! 39円もでてきた!!」 ・・・あまりの割の悪さに、返す言葉もない。しかしそんな我々をしりめに、この子守ロボットは笑顔でこんな発言をする。「いままでの最高記録が1284円なんだ。その記録を出した人は半年入院したけどね。やってみる?」 あまりの恐ろしさに、さしもののび太も震え上がった。しかし、本当に気になるのはその記録を出した人。わざとそんな痛い目にあったのだろうか? まさか1284円ほしさにそんなまねをしたわけではあるまい。それだけのケガだったら、普通の傷害保険の方がはるかに割がいい。考えられるとしたら、その人はたぶんビルの上からパラシュートで飛び降りたり、高層ビルを命綱なしで登ってしまうような命知らずの目立ちたがりなのだろう。こういう人間は現代にもいくらでもいるのであまり未来人を悪く言えないが、100年以上たっても同じ様なことをするやつらがいるかと思うと、なんだか情けなくなってくる。

No.53 けむりロボット


 かつてアイザック・アシモフが提唱した、「ロボット三原則」。それは次のようなものである。

(1)ロボットは人間に危害を加えてはならない。
(2)ロボットは人間に服従しなければならない。
(3)ロボットは1と2に反しない限り自分の身を守らねばならない。

 アシモフは小説家であったが、彼の提唱したこの原則はその後の産業ロボット開発でも基本理念となっている。ところが、22世紀のロボット達はみなこの原則に反しまくりである。第一に主役のドラえもんだってそうだ。連載初期のころのドラえもんはジャイアンやスネ夫にやたら危害を加えていたし、のび太が道具を出してくれと言っても最初は断るのが常である。まあ人間社会というのはこの三原則だけで渡っていけるものでもなく、やはりドラえもんのように柔軟に対応できるロボットこそ理想なのかもしれない。

 さて、ここで紹介する「けむりロボット」もこんなロボットの一つである。「アラビンのランプ」というランプから現れるこのロボットは、本当にランプの精ジニーのように、ランプをこすった者の言うことを聞くけむりのようなロボットである。のび太はこれを使って楽をしようとし、宿題を命じたり、トランプやお菓子を持ってこさせたりしていた。しかし、実はそのやりくちに問題があった。調子に乗ったのび太は百万円持ってくるようロボットに命じるが、なんとロボットはパパを襲って現金を強奪しようとするのだ。その後もけむりロボットは外へと飛び出し、通行人を襲う。力だけはすさまじいので、手のつけようがない。結局ドラえもんに命令取り消しボタンを押してもらうことで解決した。このロボットはロボット三原則の第二条を極端に優先し、第一条をおろそかにする傾向があるようだ。こちらのいうことを聞くジャイアンのようなものである。宿題やトランプも同じ事で、宿題は先生を脅してやらせ、トランプとお菓子はジャイアンとスネ夫から強奪したものだった。よくもまあこんなひどいロボットが出回っているものだ。頭は悪いが乱暴者。こんなに始末の悪いやつはない。ドラえもんのように柔軟な対応のできるロボットがいるというのに、なんでこんなのがいるのかねえ。

 最後にどうでもいいこと。「アラビン」って、誰?

No.54 アンキパン


 けっこう有名な道具。一見普通の食パンなのだが、ノートなど何か文章が書いてあるものにポンと押しつけると、その文面がパンに移る。そのパンを食べれば、その文章が完璧に覚えられるという優れモノ。英単語や漢字の暗記には絶大な威力を発揮するだろう。

 だが、ちょっと考えればたちまち欠点が見つかるのもこの道具の特徴。まず、食べなければならないということ。食べれば当然腹が膨れる。B5版のノート1ページ分のことを覚えるためには、当然同じ大きさのアンキパン1枚を食べなければならない。作者が朝食に食べるトーストは必ず2枚。がんばれば3,4枚はいけるだろうが、パンの両面を使ったとしても覚えられるのは8ページ分だけ。覚えることが多かったら、とても食べきれるものではない。さらに、そこを無理して食べ続けると、今度は腹をこわす。そしてその結果トイレに駆け込むと、今まで食べたぶんの成果も全て流れていってしまうのだ。苦労が水の泡となる。さらに、覚えるべきもののサイズはB5版だけとは限らない。A4版やら、下手をすれば設計図なんかを覚えなければならない状況もあるかもしれない。紙のサイズにあわせた大きさのアンキパンが用意されているのだろうか? 本来の目的をちゃんとはたせるかどうかについては大きな疑問が残るが、少なくとも面白い道具であることは明らかだろう。

No.55 うそつきかがみ


 「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに写ります」 だいぶ以前に写真フィルムのCMとして話題を呼んだセリフである。ちなみに現在でも、昔のCM出演者(岸本加世子、樹々希林)に加えて田中麗奈も加わてリメイクされ、いまでも十分に面白いと思う。さて、なんでこんなCMの話をしたかというと、ここで紹介する「うそつきかがみ」、美しい人をより美しく写すのどころか、そうでないかたも美しく写してしまうのである。

 この道具が登場する話は、いきなり鏡に映った劇画チックな顔ののび太から始まる。それはもうすさまじい変貌ぶりで、顔はなんとなく石坂浩二似になっているし、さりげなくメガネのフレームやシャツまでちょっと高級になっている。これを見たのび太、「今まで僕の顔はまんがみたいだと思っていたけど・・・こ、これが本当に僕の顔なのだろうか!」と驚嘆する。が、さらにのび太を驚かすことが。「そうです。あなたさまは世界一なのです。」そう、理由は不明だがこの鏡は、人間の顔をより美しいかたちで映しだし、その人間をひたすらおだてる、というものなのだ。しかも、それほどよいしょがうまいとも思えないのだが、なぜかこの鏡におだてられた人間は洗脳されたと言っていいほどその口車にのってしまう。さらにこの鏡は、さらに美しくなる方法と称して、人間にアドバイスをするのだ。このアドバイスにのってしまったママはちょんまげを結うために美容室に行き、容貌には自信のありそうなしずかちゃんまでが豚面をすることになってしまった。ドラえもんはそれが偽りの姿を映す鏡であることをのび太に伝えるが、のび太はそれを認めようとせず、鏡をもって裏山に逃げる。そして、ついには町中の子供達がこの鏡の虜となり、裏山にいったっきり帰ってこなくなるという事態まで引き起こした。結局鏡はドラえもんによって奪還され、おしおきをうけた鏡は反省したのか、「あなたはほんとうはこんな顔です」とキュービズムのようなのび太の顔を彼に見せるのだった。

 鏡にうつる自分の美しい(?)姿が偽りのものであることを認めたがらない。現実逃避の極みである。以前にも述べたが、この街の人間は単純すぎるのだ。たいしておせじがうまいとも思えない鏡にだまされるようでは、やはりこの世知辛い世の中を渡っていけないだろう。のび太の街にやたら泥棒や詐欺師が現れるのも、この街の人間の異常なほどの単純さをしっているからだろう。

 それにしてもこのうそつきかがみ、一体なんの目的でつくられたのだろう? 金持ちだが顔が醜い男が、自分のコンプレックスを満たすために金にあかせてつくらせたのだろうか? それにしては「ちょんまげを結え」だの、「目は互い違いに」だのと変なアドバイスをして喜んでいるように見える。自分をほめさせるだけならば、そんな機能はつけないはずだ。考えられるとしたら、世界征服を企むどこかの悪の秘密結社が作戦のために開発した、という説だ。すなわち、この鏡を使って多くの人間を洗脳し、変な顔やスタイルをさせて社会を混乱させようというおそろしい作戦なのだ。え? なぜそれが世界征服につながるのかって? さあ、そんなことは知らんよ。悪の作戦なんてものは、秘密道具と同じでどんな効果を狙ったものなのかわからないのがほとんどなんだから。

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