No.11 変身ドリンク


 このドリンクを飲んで好きな動物のイメージを頭に描くと、その動物に変身できる。しかもこの変身が本格的で、全身の細胞を作り替えるというもの。まさしく仮面ライダーのような変身ヒーローの変身そのものではないか。これさえあれば、バッタや蝶をイメージするだけで「変身!!」「チョーリキショーライ!!」という具合にさっそうと変身できる。もっとも仮面ライダーのように一瞬で変身できるわけではなく、いったんサナギマンになってから変身するイナズマンのようにある程度の時間がかかる。しかし、その時間はものの数分。オタマジャクシがカエルになるのが2週間、青虫からチョウになるサナギの期間が1週間であることを考えれば短いと言える。しかしのび太はこれが遅いと感じ、変身のスピードを早めるために5本セットのドリンクを全て飲んだ。しかし、これには危険な副作用があった。変身のスピードは早くなるが、そのかわり変身しやすくなるのだ。どういうことかというと、何か動物を見るたびに変身してしまうのである。そのためのび太は空き地から自分の家に戻る途中でネズミ→ネコ→イヌ→オウム→しずかちゃん→カエルとめまぐるしく変身し、あげく最後にはゴキブリに変身してしまい、ママにほうきでさんざん叩かれるというひどい目にあった。劇中では描かれていないが、危ないことは他にもある。あまりに急激な細胞変異は人体に危険なのだ。このような変身では大量のホルモン流入による体への大きな負担や、食細胞によって手足が極端に短くなる危険とともに、脳細胞まで作り替えられ記憶喪失になる危険性すらある。やっぱり、健康が一番だ。

No.12 いいとこ選択肢ボード


 かまぼこ板くらいの大きさのボードで、「P」、「L」、「IQ」という三つのスライド式のボタンがついている。「P」はPower、「L」はLooks、「IQ」はIQなのだろう。このボタンを上げることで体力、かっこよさ、知能指数を上げることができる。しかし、これを使ってハンサムで頭がよくて力持ちの人間になろうとしてもそううまくいくはずがない。どれか一つをあげると、他の二つが下がるのだ。頭をよくすると、力とかっこよさが下がる、という具合に。うまい話はないものだ。のび太はこれを使ったが、なにをやっても失敗続き。あげくのはてに襲いかかってきたジャイアンとスネ夫を倒すために、パワー全開にしてしまった。結果、ジャイアンとスネ夫をボコボコに返り討ちにすることはできたが、のび太の顔は猿そのもの、頭は自分が誰なのかもわからないというレベルまで低下してしまった。この状態では家に帰ってくることもできないので、帰ってこないことを心配したドラえもんが探しに出たが、あまりにも顔がひどいものになっていたため、すぐそばを通ったのにそれがのび太だと気づかなかった。ひどい話である。思うにこの状態、すなわち顔も頭も最低だが、パワーだけはバケモノ並というのび太は、もっとも手のつけようがない、どうしようもない存在ではなかろうか。やっぱり力は鍛えて、頭は勉強してレベルを上げるしかない。ルックスぐらいなら使ってもいいかもしれないが、ほどほどに。

No.13 レポーターロボット


 マイクに手足が生えたようなロボット。ニコニコ顔で姿形こそかわいいが、とんでもないロボットである。その名の通り、レポーターとしてニュースを集めるのが仕事だが、そのやり方が半端ではない。どんなに強引な芸能レポーターも一歩ひくくらいの強引さなのだ。ネタを探すためにはプライバシーなどおかまいなしに噂の当事者をどこまでも追いかけ回し、ズケズケと質問したり、「一言、一言」とコメントを要求したりする。スイッチを切ろうとすると、「いけません。僕はみんなの知る権利のために・・・」と自らのプライバシー侵害行為を棚に上げ、都合のいい権利を持ち出して反抗する。それでも邪魔をする者には電撃を浴びせて黒こげにしてしまう。笑顔で迫ってくるだけに、よけいその取材攻勢の残酷さが際だつのだ。結果的にこのロボットが引き起こした騒動はある男女を婚約に導くという思いもよらぬ出来事を引き起こしたが、本質的にこの道具は間違いなく悪だ。未来の世界の芸能人や政治家はこんなものに追いかけ回されているのだろうか。だとしたらおそらく、未来の世界にアイドルや人気俳優は存在しないだろう。テレビで歌い、踊るのはロボットばかり。味気ないだろうな。

No.14 人間貯金箱製造器


 またしても「人間」のつく道具の登場である。これだけでとんでもない道具であることは明らかだ。この道具はその名の通り、人間を貯金箱にしてしまう道具である。なぜ人間を貯金箱にしてしまうのかというと、それはのび太のように意志が弱くて何か欲しい物があるとすぐに貯金を下ろしてしまう人のためである。その人にとって一番怖い人を貯金箱にするのだ。この道具で4ケタの暗証番号をセットし、貯金箱にするひとに光線を浴びせる。するとその人は、口を開いたまま、あたかも貯金箱のようにカチーンと固まってしまう。固まっている時間は5分。その間に口からお金を入れるのだ。のび太はママを貯金箱にしたが、のび太いわく、「えーっ、この中にお金入れるの!?」 「この中」って・・・なんのことわりもなしに貯金箱にされる人、しかも母親に向かってなんてことを・・・。まぁ安全なのは確かだ。暗証番号を言わないとお金はでてこないし。人を何かにしてしまうということ自体失礼なことだが、「人間製造器」や「人体とりかえ機」に比べればまだマシといえる。のび太とドラえもんはタイムマシンでまだお年玉が残っている頃に戻り、ママの中にお年玉を入れた。そしてもとの時間にもどり、早速ゲームソフトを買うために貯金をおろそうとした。ママの目の前で暗証番号を言う。しかし、ママは貯金箱になってカチーンと固まるが、その口からはお金が出てこない。話が違うと怒るのび太。ドラえもんはタイムテレビで何があったか調べ、その結果貯金してから10日後、予想外のことが起きて貯金がおろされていたことがわかった。実はドラえもんは、暗証番号を覚えやすくするために「4444」という番号をセットしていた。しかしその後、台所に泥棒ネコが入り、追っ払おうと偶然「しっしっしっし」と言ったとき、貯金箱になって口からお金が飛び出した。そう、ママは図らずも暗証番号を言ってしまったのだ。5分後、貯金箱から元の状態に戻ったママの目の前には、のび太のお年玉が・・・。さらに、自分が貯金箱にされていたなど全く知らないママは、それを自分がいつのまにか貯めていたへそくりと勘違いし、あろうことか自分の物にしてしまった。目の前に突然現れたお金をあやしいとおもわないのだろうか? 「よけいな貯金をさせるからだ!!」「どうせ、むだづかいで消えちゃうお金だよ!!」一部始終を見て、泣きながら大げんかをするのび太とドラえもん。この人達はいったいなにをしているのだろうか・・・。
 結論。やはり人を道具に使うのはよくない。どうしてもこれを使いたい人は、貯金箱にされた人がなにかのはずみで言ってしまうような暗証番号はつけないように。

No.15 お好み建国用品いろいろ


 自分の国をつくれるというとんでもない道具。ポシェットのようなものの中にいろいろ入っている。

・国旗
 無地の旗に好きなデザインを描き、自分の国の国旗を作って建国を宣言する。

・国境ゲート
 ふみきりのバーのようなもの。その名の通り、自分の国と他国との国境ゲートとなる。

・国境マーカー
 このマジックで一続きの線を書くと、その中が自分の国の領土となる。

・国境警備隊
 兵隊の姿の小さなロボット。国境ゲートに配備される。国境に近づくものがいると出動し、パスポート
 の提示をもとめる。パスポートを見せない者には容赦なく発砲する。

・パスポート 出入国の際に必要。

・外交官信任状
 この書類を持っていれば、他国との交渉ができる。支払いは自分の国の通貨でできる。

・亡命許可証
 この許可証を持っている外国人は、亡命することができる。

 ざっとこんなものだ。この道具最大の利点は、自分の国を作って(極端な話、自分の部屋を自分の国にしても)その中に住んでしまえば、もう日本人ではなくなり、日本の法律に従う必要もなくなる、ということだ。納税の義務も、学校へ行く義務も、働く義務もない。なにか必要なものがあれば、ほとんど何の価値もない、勝手に作った通貨で外国からものを輸入すればいいのだ。まことにすばらしい。

 しかしいうまでもないことだが、こんなものがあると税金対策のために我も我もとみんな使いたがる。それこそ一世帯ずつがそれぞれ独立国家になり、日本は弥生時代や戦国時代などとは比べものにならない小国乱立状態になる。ちょっとお隣に回覧板を回しに行くだけでパスポートが必要になる。少なくとも、携帯電話に登録してある番号と同じ数だけのパスポートが必要になるだろう。おちおち家を空けることもできない。留守のすきをついて、誰かが「国境マーカー」で家を囲って、自分の領土にしようとするかもしれないからだ。そうなると、お隣同士で領土争い、ということが起こり、気がつけば自分の家が征服され、お隣の領土に・・・なんてことになりかねない。日本中で極小規模の内乱がおこりまくるのだ。もはや税金対策どころではない。下克上の時代に逆戻りだ。社会システムは機能を停止し、政治も経済も交通も完全にストップする。結局全員が大ダメージを受け、自分の国の主権を放棄。大騒ぎしたあげくに元に戻るという結末になるだろう。実にバカらしい。やっぱり、国なんてものがたくさんあるとろくなことがない。そんなことはヨーロッパやアフリカ諸国の歴史をみれば簡単にわかることだ。大勢の人がうまくやっていくのは難しいが、だからといってそれを我慢しなければ生きていくことはできない。これがこの道具の教訓だ。

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