ポケットの中の喧噪・外伝3 The Villain


 外伝2の冒頭で述べたとおり、ドラえもん達は劇場版で華々しい活躍をしてきた。はたして24年、24作に及ぶ劇場版ドラえもんの歴史の中で、ドラえもん達はどんなやつらと戦ったり、あるいは和解して世界を救ってきたのか。外伝3では、ドラえもん達を讃える意味でも、彼らの戦ってきた悪役(中にはそうでもない人達もいるが)達を紹介していく。

第1の刺客 恐竜ハンター

 「のび太の恐竜」に登場。のび太がタイムフロシキで復活させた卵の化石から生まれた首長竜、ピー助をつけねらった。22世紀の未来人で、恐竜の剥製収集を趣味とする(趣味悪いの)大富豪ドルマンスタインの依頼で恐竜を捕まえたり殺したりして金儲けをしている。結局、「桃太郎印のきびだんご」でのび太達が仲間にした恐竜達に反撃され、最後はタイムパトロールに逮捕された。

第2の刺客 ガルタイト鉱業

 「のび太の宇宙開拓史」に登場。トカイトカイ星という星の大企業で、その名の通り鉱業会社である。開拓中の惑星、コーヤコーヤ星を爆破して粉々にし、この星に大量に含まれる反重力鉱石ガルタイトを手に入れようとする暴挙にでた。社員は会社のためには手段を選ばない連中らしく、ギラーミンという殺し屋まで雇っていた。こんな連中がのさばっているなど、きっとトカイトカイ星というのは守銭奴の寄り集まりのような星なんだろう。当然こんな奴等には天罰が下った。ギラーミンはのび太と仲良しになったコーヤコーヤ星の開拓者の少年、ロップルに射殺され(!)、ガルタイト鉱業の一味はジャイアンとスネ夫によって宇宙船ごと葬られた(!!)。長い劇場版の歴史の中でも、命まで取られた悪役は人間ではこいつらぐらいだ。ドラえもん達を怒らせるとこわいんだなぁ。

第3の刺客 鬼

 「ぼく、桃太郎のなんなのさ」に登場。タイムカメラで桃太郎の姿を撮影したのび太達は、桃太郎実在の謎を追って600年以上昔の日本へ。そこで鬼と出会ったが、その正体は難破したオランダ船の船長だった。村人達が彼の姿を見て勝手に鬼だと騒いでいたのである。ドラえもん達は彼をどこでもドアで祖国に返してあげ、お礼に宝物をもらった。そこをタイムカメラに撮られたというのがオチで、桃太郎の伝説はのび太達がもとになってつくられたというわけ。結局、鬼は悪役でもなんでもなく、むしろ被害者だった。この作品自体マイナーであるため知名度が低く、その意味でもやっぱり被害者かも・・・。

第4の刺客 ダブランダー

 「のび太の大魔境」に登場。のび太がひろった犬、ペコは、実はアフリカの奥地にある犬が進化して作り上げた王国の王子、クンタックだった。彼を権力の座から追放し、犬の王国を支配していた悪人(犬?)。それがダブランダーである。もとはペコの父であるバウワンコ108世の部下の大臣だったが、クーデターを起こして王を暗殺し、ペコを流刑にした。そして科学者コス博士にかつてバウワンコ1世が封印した古代科学を研究させて兵器をつくり人間の世界へ攻め込もうと企んでいた。結局、彼の軍はのび太達5人+未来から応援に来たもう一組ののび太たち5人+ペコ+バウワンコ1世の建造した守り神、巨神像(実は巨大ロボ)の活躍で粉砕され、ペコは再び王座につき、犬の王国に平和が戻った。ドラえもん達の敵の中では初めて世界征服を企んだヤツだったのだ。しかし、あまりにも世間知らずだった。彼が世界征服用につくらせていた兵器、火を吐く戦車や空飛ぶ船は、どちらも木製だった。こんな強度の無い兵器、人類は簡単に撃破できる。特に空飛ぶ船は速度が遅く、爆弾も投下できたがそれは船の上にいる兵士が手で落とすのである。第一次大戦のころの戦闘機レベルだ。そもそもこの兵器は5千年前につくられていたもの。確かに5千年前だったらすごい兵器だが、今となっては役立たず。まぬけなやつらだ。所詮犬である。

第5の刺客 ポセイドン

 「のび太の海底鬼岩城」に登場。のび太達の世界の海底には実は海底人がいて、何千年も前から進んだ文明をもっていた。ところがあるとき海底国家群は太平洋の「ムー連邦」と大西洋の「アトランティス連邦」に分裂し、戦争を開始した。その結果、アトランティスは新兵器、鬼角弾の実験失敗で滅んでしまった。しかし、バミューダ海域にある海底要塞鬼岩城の中には、いまだに攻撃を受けた場合に備えてつくられた自動報復システムが機能していた。それがポセイドンであり、バトルフィッシュや鉄騎隊といった無人戦闘ロボットをあやつることができる。海底火山の噴火を攻撃と誤認し、鬼角弾の発射準備にはいった。ムー連邦に協力するドラえもん達はこれに挑んだが、ポセイドンのロボット軍団は数が多い上に強く、歯がたたなかった。無敵のドラえもん達をかなり追いつめたが、ドラえもん達が乗り物として使用していた水中バギー(自分の感情をもっている)の特攻をうけて破壊された。かなり壮絶な戦いだったわけである。

第6の刺客 大魔王デマオン

 「のび太の魔界大冒険」に登場。のび太がもしもボックスで実現した魔法の世界に現れた大魔王で、その正体は実は地球征服を狙う魔界星人だった。しかし、さすが魔王を自称するだけあり、その性質は宇宙人というよりは魔界の住人だった。心臓に銀のダーツを打ち込まれると死ぬため、その心臓を自分の体から離し、宇宙に浮かぶ赤い星に偽装している。しかし、心臓を体から離れた宇宙なんて場所においといて不安じゃないんだろうか?宇宙には有害宇宙線や隕石、彗星、それに宇宙人といったぶっそうなものが満ちている。デマオンの心臓は宇宙線にさらされガンになり(心臓ガンてのはないか)、隕石や彗星がボコボコぶつかり、宇宙人が自分たちの植民地にしようとして勝手にその上に建物を建て始めたりして、けっこうやばかったかもしれない。しかしそうなる前に赤い星の正体を見破られ、銀のダーツを打ちこまれて絶命した。そのほうが幸せな死にかただったかもしれない。余談だが、デマオンの存在した世界はもしもボックスでつくられた世界であり、もとの世界に戻せばきれいさっぱり消滅するはず。一度はそうしたのび太達だったが、けじめをつけるために再び魔法世界に戻り、デマオンを倒したのだ。見上げた連中である。

第7の刺客 ギルモア将軍とPCIA

 「のび太の宇宙小戦争」に登場。ギルモア将軍はピリカ星という星の将軍だったがクーデターを起こして政権を手に入れ、PCIAという秘密情報機関をつくって反対する者を粛正する独裁者である。地球に亡命した大統領パピをとらえるために腹心のドラコルルPCIA長官を宇宙戦艦で地球に派遣した。こいつらは状況によってのび太たちには強敵になったり、反対に楽勝の相手になったりした。理由はピリカ星人が小人だったことにある。パピと出会ったのび太達は自分たちもスモールライトで小人になってピリカ星に乗り込み、反乱軍と協力してギルモア軍を相手に活躍する。しかし彼らは捕らえられ、処刑されそうになった。絶体絶命のピンチである。しかし、ここでスモールライトの効果が切れ、のび太たちはもとの大きさにもどった。そしてそれはこの小人の星では、ウルトラマン並の巨人になることを意味していた。巨人となったのび太達はまさに無敵で、ギルモア軍をあっと言う間にけちらして、ピリカ星に平和をもたらしたのである。こんなことなら最初からもとの大きさでやってくればよかったのに。まぁ、こいつらに関しては地球に攻めてきても危機感はない。しょせん小人の軍隊がいばっていられるのは、小人の星の中だけなのだから。

第8の刺客 メカトピア星の鉄人兵団

 「のび太の鉄人兵団」に登場。ロボットだけの星、メカトピア星から地球侵略にやってきた侵略ロボット軍団である。地球に人間の少女そっくりのロボット、リルルを送り込み、鏡の中の世界に前線基地をつくり、着々と侵略の準備を整えていた。だが、土木作業用のの巨大ロボット、ジュド(その割にはデザインがかっこよく、レーザー砲とかすごい武器が装備されていた。のび太はザンダクロスと名付けている)はドラえもん達の手に渡り、リルルもまたのび太たちとの交流で人間の暖かさを知り、地球侵略を間違いと感じるようになる。そしてついに、鏡の中の東京を廃墟にしながら、鉄人兵団とドラえもん達&ザンダクロスの戦いが始まる。しかし、さすがロボット軍。何万ものロボットを送り込むという物量作戦でドラえもん達を圧倒した。このピンチを救うため、しずかちゃんとリルルはタイムマシンで大昔、メカトピア星のロボットの祖先を作った科学者のもとにむかい、ロボットを作り替えてもらうように説得した。これによって歴史が変わり、鉄人兵団は消滅したが、しずかちゃんに協力したリルルもまた消えてしまった。地球は守られたが、悲しいラストである。それにしても鉄人兵団はドラえもんの敵の中でも実力、戦略ともしっかりしていたかなりの強敵だった。リルルやザンダクロスの助けは借りたものの、この戦いは基本的にドラえもん達が自分たちの力だけで敵を倒した唯一の戦いだった。

第9の刺客 地底国

 「のび太と竜の騎士」に登場。6500万年前の大絶滅を生き残った恐竜のうち、ステノニコサウルスという恐竜が進化して恐竜人となり、地底世界につくった国家である。今でも恐竜達が元気に走り回る国で、文明は一見中世ヨーロッパレベルに思えるが、タイムマシンを持っていたりする。それを使って6500万年前にタイムスリップし、恐竜を滅ぼした「何か」と戦い、恐竜の絶滅を防ごうという「大遠征」という計画を実行した。実は悪者でもなんでもなくそれどころかご先祖様を助けようという見上げた連中なのだ。まぁこの計画がうまくいっちゃうと恐竜はずっと地上に居座り続け、人類は誕生しないのだが。この計画をめぐって一時的にドラえもん達と敵対するが、そのさなかご先祖様を滅ぼした「何か」の正体を知ることになった。それは、巨大な彗星だったのである。さすがに相手が彗星では恐竜人達も成すすべがなく、彗星はそのまま落下した。このままでは恐竜達は完全に絶滅してしまう。このピンチにドラえもん達は恐竜人と和解し、巨大な地下空間をつくってそこに生き残った恐竜達を住まわせたのである。もうおわかりだろう。そこで進化した恐竜達が、恐竜人となったのである。すごい歴史のループ。やっぱり、ドラえもん達はすごい。地球人や宇宙人だけでなく、恐竜まで絶滅から救っちゃったんだから。余談だが、恐竜国にいた恐竜達は、6500万年もたっているのに、当時と全く姿が変わっていなかった。進化してないのか?まぁそれはともかく恐竜人達は初めてドラえもん達が話し合いで争いを回避した人達である。その後も相手が彼らのように話の分かりそうな相手ならば、ドラえもん達は話し合いで解決することになる。

第10の刺客 中国妖怪軍団

 「のび太のパラレル西遊記」に登場。「西遊記」に登場した妖怪の軍団で、牛魔王が首領。三蔵法師を狙っている。実は本物の妖怪ではなく、「ヒーローマシン」という一種の体感ゲームマシンをあけっぱなしにしていたためにゲームの中から逃げ出したキャラである。とはいえ力は本物と同じらしく、一時はこの世を妖怪の支配下に置いた。これを防ぐためにのび太達は西暦630年の中国に「西遊記」のキャラの格好をしてタイムスリップし、妖怪軍団を捕まえる旅に出る。が、途中でしずかちゃんや三蔵法師がさらわれ、とりもどすべく本拠地・火炎山に向かう。しかし反対に捕まり、牛魔王に食べられそうになる。が、そのピンチにドラミちゃんが駆けつけ彼らを救出。牛魔王達妖怪も孫悟空となったのび太の大活躍で倒された。そしてこのときの彼らの活躍がのちに「西遊記」となるのである・・・って、桃太郎の時といっしょだな。まぁこれだけ活躍しているのだから、伝説になるのも当然かも。

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