ドラえもん対6人のドラえもん
第8話
大決戦! はる夫と安雄、暁に死す
作者の言葉:
G○ンダム知らない人には、わけがわからないおそれがあります。ご注意を。
「行くぞのび太!! ハイパーモードとなった僕達の技をたっぷりと味わえぇぇぇぇぇ!!」
そう叫ぶとハイパーモード・はる夫はのび太に向かって突進した。
「僕のこの手が光ってうなる! のび太を倒せと輝き叫ぶ! 砕け! ひぃぃぃぃっさつ! シャァァァァイニング・フィンガァァァァァァァ!!」
はる夫の右手が緑色の光を放った。そしてその光り輝く右手で、はる夫はのび太の頭をアイアンクローの要領でわしづかみにした。
「ギャアアアアアアアアアア!!」
のび太が絶叫する。3体の怪人との激しい戦いでも傷つくことがなかったのび太のメガネが粉々に砕け散り、のび太は頭から煙をあげながら、その場に倒れた。
「のび太君!!」
「よそ見をしているひまはないぞ!! ここらで引導を渡してくれるわ! シュツルムゥ・ウントォ・ドランクゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
ハイパーモード・安雄が高速回転をしながら、ドラえもんへと突進した。
「グギャアアアアアアア!!」
ドラえもんが悲鳴をあげて吹き飛ばされ、ハイパーモード・安雄はそのまま走り去った。
「う、うう・・・のび太君、大丈夫か?」
ドラえもんはきしむ体でのび太へと近づいていった。のび太は地面を手探りしている。
「メガネメガネ・・・」
「のび太君、こんな時にやっさんのマネなんかしてる場合じゃないよ! さあ、スペアのメガネだ」
ドラえもんが取りだしたメガネを、のび太はかけた。
「ど、どうしようドラえもん! あいつら何故か、流派東方不敗やゲルマン忍法の技も使えるようになってる!」
「安雄とはる夫がこんなに強いなんて! 怪人だったときよりも数段強いぞ!」
うろたえる二人。だがはる夫と安雄は、攻撃の手をゆるめなかった。
「安雄よ。ひさしぶりに、あれをやるか」
「ああ!」
「超級!」
「覇王!」
「電・影・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
二人が目配せをすると、はる夫が空中で高速回転を始めた。いつしかはる夫の首から下が虹色に輝く渦となり、はる夫はそこから顔を出し、のび太とドラえもんを見据えていた。
「撃てぇ、安雄ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
安雄が回転しているはる夫に体当たりを食らわせた。その勢いで、はる夫が弾丸のように飛んでいった。
「う、うわあああああああああああ!!」
そのすさまじい技を見て、ドラえもんとのび太は動くことができなかった。はる夫はそのまま突進し、ドラえもんとのび太をはね飛ばした。
「ギャアアアアアアア!!」
吹き飛ぶ二人をしりめに、はる夫は空中へと飛び上がった。そしてはる夫の体を覆っていた虹色の渦が弾けとぶと、はる夫は空中でポーズをとって叫んだ。
「ぶぁくはぁぁつ!!」
ドガァァァァァァァァァァン!!
地上で大爆発が巻き起こり、ドラえもんとのび太はそれに巻き込まれた。
「やったな」
着地したはる夫に、安雄が言った。
「いや、まだだ。あれを見ろ」
はる夫が指さした先には、ボロボロになりながらも立ち上がろうとしているドラえもんとのび太がいた。
「しぶといな。さすがに宇宙人やらロボット軍団やらをうち破ってきただけはある。こうなれば、僕達の最終奥義で奴らを倒すしかないな」
「ああ。だが、それにはもっと力が必要だ。世界中の脇役達に呼びかけ、もっと力を集めよう」
そう言うとはる夫と安雄は、再び天に両手を掲げた。それを見たドラえもんとのび太は、ますます焦った。
「まずい、あいつらもっとスゴイ技で僕らを倒すつもりだ!」
「一体どうすれば!?」
その時、ドラえもんが少し考えて言った。
「・・・あの二人が脇役の力を借りているのなら、僕らも力を借りよう」
「えっ? でも、一体誰から・・・」
ドラえもんはのび太に向き直った。
「いいか、のび太君。この世界にいる主役は、僕達だけじゃない。「なんでも空港」のときにオバQや怪物君、ウメ星デンカやエスパー魔美が出てきたように、この世界には僕らと同じような主役達がたくさんいる。彼らから力を借りるんだ!」
「で、でも、僕らに力を貸してくれるかな?」
「大丈夫だ。いいかい、これは藤子マンガ界全体の危機なんだ。自分で言うのもなんだけど、僕らは藤子マンガの中でも最もメジャーな主役キャラだ。その僕達が脇役であるはる夫と安雄に敗れたら、それを知った他のマンガの脇役キャラも一斉に蜂起して、とんでもなく大規模な革命が起こるかもしれない! そんなことにならないよう、きっと彼らも力を貸してくれるはずさ! さあのび太君、行くよ!」
ドラえもんは両手を空に掲げた。
「うん! こうなったらもう、この手しかない!」
のび太もそれに習った。
「Qちゃん、パーマン、キテレツ君、怪物くん、デンカ、魔美ちゃん、チンプイ・・・」
「ハットリ君、バケル君、21エモン、ポコニャン、海の王子、天使の玉ちゃん・・・藤子マンガ界に住む全ての主役達よ、頼む、ほんの少しでいいからみんなの力を僕達に分けてくれ・・・藤子マンガ界の危機なんだ・・・」
するとどうだろうか、すぐに小さな金色の光がいくつも彼らに向かって飛んできて、彼らの体に吸収されていった。そしてそれが進むに連れ、安雄とはる夫と同じように彼らの傷が癒え、体が金色に光り始めた。
「答えてくれた! すごい! 向こうよりもパワーが集まる勢いが早いよ!」
「うん! 体中に力がみなぎってくるみたいだ! さすが、主役達の力だ! さあ、のび太君、僕らもハイパーモードに!」
「ああ! ハァァァァァァァァ、ハァッ!!」
彼らが気合いを入れると、二人もハイパーモードを発動させた。全身が金色に光り輝いている。もちろんはる夫と安雄もこれを見ていた。
「な、なんだと!? あいつらもハイパーモードに!?」
「まずいぞ! 奴ら、主役達の力を借りているんだ! 悔しいが、あいつらの方が一人一人の送ってくるパワーは大きい!」
「くそっ! だが、ここで負けてたまるか! 消えていった脇役達のためにも、今も不遇の扱いを受けている脇役達のためにも、ここで負けるわけにはいかないんだ!」
「そうだ! 脇役達よ、がんばってくれ! もっと僕達に力を・・・!」
その求めに応じたのか、はる夫と安雄に集まってくる光がますます多くなってきた。主役と脇役、双方がエネルギーをためる、緊迫した時間が続いた。そしてその時は、唐突に訪れた。
「よしっ、エネルギーがたまった! 安雄、行くぞ!」
「オウッ!!」
安雄とはる夫が必殺技の体勢にはいる。それとほぼ同時に
「こっちもエネルギーがたまった! のび太君!」
「うんっ!」
ドラえもんとのび太も必殺技の体勢に入る。
「流派、東方不敗がぁ!」
「最終ぅぅぅぅ!」
「奥義ぃぃぃぃぃ!」
「石!」
「破!」
そして、4人は同時に叫んで、必殺技を放った。
「天驚けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
はる夫と安雄は赤い強力なエネルギーの波動を、のび太とドラえもんは青い強力なエネルギーを、同時に放った。そのすさまじい閃光に、あたりのすべてのものが照らし出される。そして二つの波動は、双方のほぼ中央でぶつかりあった。その時に発した衝撃波によって、校庭に面した校舎の窓という窓のガラスが、すべて砕け散った。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二つの波動はぶつかり合いながら、相手を押しやろうとしていた。今のところ、それは互角。
だが・・・
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
はる夫と安雄が一層激しく叫ぶと、二人の発するエネルギーがじりじりとのび太とドラえもんの波動を押しやっていった。
「うぐぅぅぅぅ!!」
「フハハハハハハハ!! どうした、ドラえもん、のび太! 主役の力とはその程度か?」
「ハハハハハハハハハ!! やはり脇役の力は偉大だ! さあ、フィニッシュだ!!」
安雄とはる夫はエネルギーを放つ手にさらに力を込めた。ますますエネルギーの勢いが強まる。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!! くっ! だが、僕達はここで負けるわけにはいかない!」
「藤子ワールドに生きる全ての主役達のためにも、僕達はお前を倒す! 倒さなければならない! いくぞ、のび太君!」
「ああ!」
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
のび太とドラえもんが、一気に気合いを解放した。それと同時に一気に二人から放たれるエネルギー波動の勢いが強まり、安雄とはる夫の放つエネルギーを圧倒していった。
「な、なんだと!?」
「バカな!? 脇役の力を借りたこの僕達が、敗れるというのかぁ!?」
「オリャアアアアアアアアアアアア!! 石破天驚! 主役フィンガァァァァァァ!!」
のび太とドラえもんの放つ波動は、さらに勢いを増し、ついにははる夫と安雄の波動を飲み込んだ。それと同時に、二人の放つ波動が巨大な手のかたちになってはる夫と安雄を襲った。
「うわあああああああああ!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
青白く輝くエネルギーの巨大な手につかまれ、安雄とはる夫が絶叫する。
「ヒィィィィィィィィト・エェェェェェェェ・・・」
ドラえもんとのび太が、フィニッシュの言葉を叫ぼうとしたその時
「今こそ、お前達は本物の・・・主役の中の主役・・・!」
「!!」
安雄とはる夫のか細い声が聞こえたその直後、エネルギーは大爆発を起こした。
ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!
「や、安雄ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はる夫ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
のび太とドラえもんの目には、爆発によって吹き飛ばされ、木の葉のように宙を舞う安雄とはる夫の姿が映っていた。
爆発がおさまると、二人はその場所へとかけよった。
「安雄!」
「はる夫!」
二人はその場に倒れていた。のび太は安雄に、ドラえもんははる夫にかけより、その体を抱き起こした。
「安雄! はる夫! しっかりしろ!」
「うう・・・どうやらもう、最期の時が近いようだ・・・」
「しっかりするんだ!」
「もういいのだ・・・僕達は脇役の力を借りてまで戦い、そして君たちに敗れた・・・。僕達に力を貸してくれた脇役達の期待に、僕らは答えられなかった。もう彼らには、顔向けができない・・・」
「そんなことはない! この戦いで、僕達だけじゃなく他のマンガの主役達も、脇役に対する考えを改めてくれるはずだ! 僕達はきっと今まで以上にうまくやっていける! 君たちともこうして理解し合えたんだ。人はいつか、時間さえも支配できるようになるさ!」
「ド、ドラえもん、のび太・・・」
「僕達は友達じゃないか! これからも僕達と一緒に生きていこう!」
「君たちは、僕達をまた友達と呼んでくれるのか・・・?」
「当たり前じゃないか!」
「ありがとう・・・。だが、所詮僕達は大罪人だ。君たちが主役でなければ、僕達が主役だったなら、こんなことにはならなんだのに・・・」
「気をしっかりもつんだ!」
「ああ、ドラえもん、のび太・・・見事な朝焼けだな・・・」
現実にはまだ真夜中で、空には満月がかかっていた。だが、それはすぐに消え、空がうっすら明るくなり、東の方が赤く染まった。ドラえもんの手には、ドラマチックガスが握られていた。
「美しいな・・・」
「はい、とても美しゅうございます・・・」
ドラえもんとのび太は、涙を流していた。それは、はる夫と安雄も同じだった。そして、はる夫と安雄は言った。
「ドラえもん、のび太、あれをやるか・・・?」
「はい・・・」
はる夫と安雄は一度目をつぶり、突然声を張り上げた。
「流派! 東方不敗は!」
「王者の風よ!」
「全新!」
「系列!」
「天破!」
「侠乱!」
そして4人は、一斉に叫んだ。
「見よぉ!! 東方は、赤く燃えているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
安雄とはる夫はそれに満足したかのように微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
「ああ・・・のび太・・・ドラえもん・・・」
「刻が見える・・・」
そしてその直後、二人の首がガクンと下がった。その拍子に、安雄の帽子が脱げて地面に落ちた。帽子の下に隠されていた髪型は、おさげだった。
「や、安雄・・・? 安雄ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はる夫ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドラえもんとのび太は二人を抱きかかえたまま、いつまでも号泣していた。
次回予告
最強の脇役、はる夫と安雄は名誉ある死を遂げた。怪人軍団が全滅し、襲いかかるシャドウドラえもん
達に、のび太とドラえもんの怒りが爆発する! ついに訪れる、シャドウドラえもん達との最終決戦。
次回「ドラえもん対6人のドラえもん」第9話「決着! 7人のドラえもん」 ご期待下さい。
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