ドラえもん対6人のドラえもん


第9話


決着! 7人のドラえもん


 動かなくなったはる夫と安雄を抱いていたドラえもんとのび太。やがて、ドラえもんは言った。

「行こう、のび太君」

「うん・・・」

 ドラえもんははる夫と安雄の亡骸をポケットにしまうと、のび太と一緒に歩き出そうとした。その時

「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 後ろから大きな声がした。振り返るとそこには、ドクトル・Dと6人のシャドウドラえもんが立って
いた。

「なんだお前達か。まだいたの

「まだいたのじゃねぇぇぇぇぇ! てめえら勝手に最終回みたいな盛り上がりを見せやがってぇ! 
すっかり俺達が忘れ去られてたじゃねえかぁぁぁぁぁ!!」

「あれ? 最終回じゃなかったの?」

「当たり前だぁぁぁぁ!! まだ俺達との決着がついてねえじゃねえかぁぁぁぁ!!」

「そうかそうか。あんまり盛り上がっちゃったんで、最終回と間違えてたよ。アハハ」

 のんきに笑うのび太とドラえもん。だが、無視されていたドクトル・Dとシャドウドラえもん達は、
当然怒り最高潮。

「もう勘弁ならん! シャドウドラえもん達よ、この不届き者共を皆殺しにしろ!」

「オオーッ!!」

 シャドウドラえもん達がドラえもんとのび太を取り囲んだ。

「ねえ、もういいんじゃないの? あれだけ盛り上がったあとで、下手に話を続けて中途半端な話に
なったらよくないでしょ?」

 ドラえもんとのび太はそれでもやる気がなかった。

「うるさい! どこまで俺達をコケにするつもりだ! よし、No.4! お前はのび太をねらえ!
 残りのメンバーはドラえもんを集中攻撃だ!!」

「オオーッ!!」

 シャドウドラえもんは闘志みなぎっている。

「しょうがない人達だなぁ。しかたない、やるか。でもちょっとその前に・・・」

 ドラえもんはポケットから何やら取り出すと、ゴソゴソとやってから顔をあげた。

「はいどうぞ。どっからでもかかってらっしゃい」

「なめやがって! 行くぞ青ダヌキ! くらえ!」

 シャドウドラえもんNo.1のペタリハンドがカパッと開き、ロケット弾が発射された。だが、
ドラえもんはそれをヒラリとかわす。

「おのれ! それならこれはどうだ! 石灰150%増量爆雷攻撃!!

 シャドウドラえもんNo.3が次々とダイナマイトを取りだし、ドラえもんに投げつけた。煙が
高所まで立ち上る粉塵爆発がいくつも起こったが、ドラえもんはなんなくそれをかわした。

「すばしこい奴め! アリスもびっくり、俺の瞳は100万ボルト放電攻撃!!

 シャドウドラえもんNo.5が目から放電を行った。だが、これもドラえもんにかわされる。

「どうなってるんだ!? くそっ! お堅い女のハートも溶かす、メロメロメルト溶解液!!

 「ジゴロのNo.6」ことシャドウドラえもんNo.6が、口から溶解液を吐き出した。だが、それも
先ほどから見違えるような動きを見せるドラえもんにかわされた。

「ええい! これはかわせまい! 受けてみろ! 100万人のオヤジから採取した匂いのエッセンス
を凝縮、気化したナイスミドルガス!!


 聞いただけで失神しそうな強力なガスを、シャドウドラえもんNo.2が体中の関節から放出した。
黄色いガスがドラえもんの方へ向かって流れる。だが・・・

「フ」

 ドラえもんはにやりと笑うと、ポケットから「バショー扇」を取り出し、一気に振り下ろした。その
強風により、ガスは一気にシャドウドラえもん達へと流れていった。

「ギャアアアアアアアア!!」

「ウゲエエエエエエエエ!!」

 強力なガスを自分達で吸い込んでしまい、シャドウドラえもん達が悶絶している。ドラえもんはそれを
見ながら笑っていた。5人のシャドウドラえもんを相手に互角以上に戦うドラえもんを見て、のび太は
驚いていた。

「ど、どうしたんだドラえもんは? 今までとは全然動きが違う・・・」

「おっとメガネ小僧! よそみしてると命を落とすぜ!」

 その声に振り返ると、シャドウドラえもんNo.4が拳を振り上げていた。

「必殺! フォッサマグナ突きぃぃぃぃぃぃ!!」

 シャドウドラえもんNo.4はそう叫びながら、拳を地面にたたきつけた。大地震が起こり、地割れが
走り、のび太はその地割れに落ちてしまった。

「うわあああああああああああ!!」

 奈落の底に落ちるのび太。だが

 ガシッ!!

 何かがのび太の手をつかみ、落下をとめた。のび太が見ると、右腕の手首をロープのついた手が
にぎっていた。その手がどんどんのび太を引き上げていく。

「何者だ!?」

 そう叫んだシャドウドラえもんNo.4を、爆発が襲った。

「ウギャアアアアア!!」

 シャドウドラえもんNo.4は悲鳴をあげて吹き飛んだ。そのころには、のび太は地面の上まで引き
上げられていた。のび太に丸い手がさしのべられる。

「大丈夫かい? のび太君」

 それはつかみどりバズーカをもったドラえもんだった。

「ド、ドラえもん・・・一体どうなってるんだ? 今までと全然動きが違うぞ?」

 だがドラえもんは笑いながら首を振った。

「ハッハッハ、のび太君。僕はもう、今までのドラえもんじゃないのさ。今の僕は「銅鑼文字隼人
(どらもんじはやと)」
だ。気軽に隼人と呼んでくれ」

「銅鑼文字隼人!? さてはドラえもん、何か道具を使ったね?」

「その通り。これさ」

 ドラえもんが取りだしたのは、たくさんのマイクロカセットの入った箱だった。

「これは、能力カセット!」

「そう。君がたまには考えたときに使ったものだ」

「でも、この中のどんなカセットを使ったの?」

「これだよ」

 ドラえもんが出したカセットのラベルには、「改造人間」と書かれていた。

「ええっ!? そんなカセットあったの!?」

「もちろんあったさ。さあのび太君、君もこのカセットを使うんだ!」

「うん!」

 のび太は改造人間のカセットを体にセットした。みるみるうちに顔がりりしくなり、なぜか眉毛が太く
なっていく。


「おお! なんだか体に力が! それになんだか、IQが600にまで上がったような気がする!

「試してあげよう。1+1は?」

「11!」

「・・・」

「とにかく、これなら百人力だ! 僕の名は今から、「本郷のび太」だ!

 のび太が高らかに叫ぶ。と、その時、うめき声が聞こえてきた。

「お、おのれ・・・やっと毒ガスを中和できた・・・」

「オヤジの匂い、恐るべし・・・」

 シャドウドラえもん達が、再び立ち上がり始めた。

「こいつらめ! 今度こそ叩きのめしてやる!」

 そう叫ぶとシャドウドラえもん達は二手に分かれ、のび太とドラえもんと対峙した。ドラえもんには
シャドウドラえもんNo.2、4,5が、のび太にはシャドウドラえもんNo.1、3、6が、それぞれ
向かった。

「No.4、No.5! 奴にジェットストリームアタックをかけるぞ!」

 シャドウドラえもんNo.2が残りの二人に呼びかけた。

「オウッ!」

「オウッ!」

 3人のシャドウドラえもん達がNo.5、4、2の順に一列に並び、高速でドラえもんめがけて
突っ込んできた。

「何!? お前ら、ホバー移動できるのか!」

「フハハハハハ! お前とはできが違うのだぁ!」

 まず先頭のシャドウドラえもんNo.5が、放電攻撃を仕掛けてきた。

「アリスもびっくり! 俺の瞳は100万ボルト攻撃!!」

 だが

「フ! トオオオオオオ!!」

 ドラえもんはにやりと笑うと、ジャンプをした。そしてその足は、シャドウドラえもんの頭を踏み
つけた。シャドウドラえもんNo.5のあとに攻撃をしかけようとしていたシャドウドラえもんNo.
4はその行動に驚いた。

「なにぃぃぃぃぃぃ!?」

「俺を踏み台にしたぁ!?」

 そしてドラえもんは、右腕をふりかぶった。

「ドラえもんパァァァァァァンチ!!」

 ドラえもんの強烈なパンチが、シャドウドラえもんの腹をぶち抜いた。その大穴から、内部の機械
部品が飛び散る。

「グオオオオオオオオオ!!」

 シャドウドラえもんNo.5のあとに攻撃をしかけようとしていたシャドウドラえもんNo.2は
それに巻き込まれて地面に倒れた。ドラえもんは、何事もなかったかのように着地した。

「No.4!!」

 No.2とNo.5は倒れたままのシャドウドラえもんNo.4に声をかけたが、すでに機能を
停止していた。

「ジェットストリームアタックをすり抜けるとは・・・」

「何故だ!? 俺達オリジナルの技が、なぜこうも簡単に!!」

 その言葉に、思わずドラえもんはずっこけた。

「どこがオリジナルだ! 思いっきりパクってるじゃないか!!」

 一方同じ頃、本郷のび太となったのび太も、シャドウドラえもんNo.1、3、6と対峙していた。
シャドウドラえもんNo.1が、のび太に言う。

「野比のび太。聞くところによると、貴様は銃の名手だそうだな。ロケット弾射撃を得意とする俺と、
一対一の勝負をしろ!」

 この言葉を聞いて、シャドウドラえもんNo.3とNo.6が驚いた。

「おい、No.1!」

「お前らは黙って見てろ。ニセドラえもん作戦失敗の責任、ここで挽回してやる。さあどうだ! 野比
のび太!」

 のび太はその提案に驚くことなく、笑って言った。

「ほう・・・プロの殺し屋にも勝利し、開拓時代の西部の街を強盗団から守った伝説のガンマン、この
本郷のび太にガンファイトを挑むとは、見上げた心意気だな。いいだろう。うけてたってやる」

 のび太はジャンボ・ガンを取り出すと、手元でクルクルと回して見せた。

「さあ、いつでも撃ってこい!」

 のび太はジャンボ・ガンを下ろしたままNo.1に言った。緊迫した時間が、少しの間、のび太と
No.1の間で流れた。だが・・・

「死ねぇ!」

 シャドウドラえもんNo.1が両手をのび太に向けると、ペタリハンドを開いてロケット弾を
連射した。だが、のび太は信じられない行動をとった。

「オリャアアアアアアア!!」

 なんと、のび太が上半身をすさまじい早さで上下左右、縦横無尽に動かしたのだ。あまりの早さに、
のび太の上半身が分身して見えたほどである。そして、ロケット弾は全てその動きによってかわされ、
彼の体をすり抜けていった。まるで、某大ヒットSFアクション映画のワンシーンのようである。当然
シャドウドラえもん達は、これに仰天した。

「なにぃぃぃぃ!?」

「今度はこっちの番だな。いくぞ!」

 のび太は瞬間的にジャンボ・ガンをあげると、その引き金を何度も引いた。ジャンボ・ガンの弾丸が、
何発もシャドウドラえもんNo.1に襲いかかる。

「負けてたまるか! オリャアアアアア!!」

 No.1はそう叫んで、上半身を思いっきりのけぞらせようとした。もちろん、キ○ヌ・リーブスの
マネである。
だが・・・

「うおっ!?」

 シャドウドラえもんNo.1はバランスを崩し、後ろ向きに転倒してしまった。そして無様な
No.1に、ジャンボ・ガンの弾丸が襲いかかる。

「グワアアアアアアアアアア!!」

 シャドウドラえもんNo.1は、大爆発と共に体を四散させた。その爆発跡を見つめながら、のび太は
言う。

マ○リックスごっこは、強い腹筋と腰のある奴じゃなきゃできないんだ。素人ができもしないことを
やろうとするからだよ」

 のび太はジャンボ・ガンをポケットにしまうと、残りのシャドウドラえもん達に言った。

「さあ、まだやるかい?」

「これ以上やってもムダだと思うけど」

 ドラえもんとのび太が並んで言う。だが

「おのれ・・・! シャドウドラえもんの意地を見せてやる!」

 シャドウドラえもん4人は、ドラえもん達のまわりを取り囲んだ。

「さて、そろそろこっちの反撃にでるぞ! 本郷、友情車輪だ!」

「オウッ!」

「!?」

 ドラえもんとのび太がなにやら打ち合わせをしたので、シャドウドラえもん達はうろたえた。

「いくぞ! 友情車輪!!」

 次の瞬間、彼らは円を描くように走り始めた。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「なっ、何をする気だ!?」

 だが、それはすぐに止んだ。二人はピタリと止まると

「トオッ!!」

 空中にジャンプした。

「くそっ! 何かするつもりだ! 阻止するぞ!」

「オウッ!!」

 シャドウドラえもん達も、それを追ってジャンプした。だが、ドラえもんとのび太は空中で交差して
通り過ぎると、地面に着地した。しかし、それを追ってジャンプしたシャドウドラえもん達は・・・

「ウワアアアアア!!」

 ドガァァァァァァァン!!

 空中で激突し、大爆発を起こした。黒コゲになって落ちてきたシャドウドラえもん達に、ドラえもんと
のび太は容赦なく空気砲とショックガンで攻撃を行った。

「やったね!」

「ああ!」

 ここまで生き残ってきたシャドウドラえもん達の、実にあっけない最期だった。ドラえもんとのび太は、
互いに手を叩いた。だが・・・

「ま、待て・・・」

 振り返ると、機能停止寸前のシャドウドラえもんNo.2がいた。

「お前達に聞きたい・・・。俺達はあらゆる面で、お前達より優れていたはずだ・・・。なのに、なぜ
・・・」

「それはちがうな。お前達の体と僕の体は、性能はほぼ同じだった。だが、それを使っている頭脳は、
僕の方が優れているようだったね。しかし、最大の敗因は、お前のそのお腹についているものを
使わなかったことだ」

「四次元ポケット・・・?」

「そうだ。お前たちは僕と同じそのポケットを持っていたにも関わらず、ロケット弾やら毒ガスやら、
自分達の特殊能力だけを使って戦っていた。そのポケットの中には、そんなものよりもずっと便利な
ものがたくさん入ってるっていうのに・・・。はっきり言えば、阿呆だね」

「そ、そうか・・・」

 ドラえもんの毒舌によってトドメを刺されたかのように、シャドウドラえもんNo.2も機能を
停止した。

「これで、ニセドラえもん達も全滅した・・・」

「うん。残る敵は、ただ一人・・・」


次回予告


 精鋭、シャドウドラえもん達をもドラえもんとのび太によって葬られ、壊滅寸前のDBS団。だが、
勢いに乗るドラえもんとのび太の前に、ついに大幹部、ドクトル・Dが立ちはだかる。そしてドクトル・
Dが明らかにする、自らの恐るべき正体とは? 次回「ドラえもん対6人のドラえもん」第10話
「ドクトル・D 悪魔の正体は?」ご期待下さい。

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