「私にも手伝わせて!」
「無茶だよ・・・。死ぬかもしれないんだよ」
「それに、女の子をこんな危険な目に遭わせるのは・・・」
「よしてよ、こんなときに男だ女だなんて。どのみちこのままじゃ、鉄人兵団はあたしたちの世界に攻めてくるわ。留守番をしているぐらいなら、みんなと一緒に戦った方がいいわ。お願い!」
4人は困惑した表情で顔を見合わせたが、やがてドラえもんが言った。
「・・・わかったよ。だけど、みんなを死なせるわけにはいかない。ここでくい止められなくても、道を見つけるために、必ず生き残ろう。わかったね」
「・・・ええ」
ドラえもんは次に、鳥籠の中のリルルを見つめた。
「リルル、君は僕のポケットの中に入っていた方がいい。君は鉄人兵団とは戦いたくないだろう?」
「・・・ごめんなさい」
リルルはうつむいた。ドラえもんは鳥籠を手に取ると、ポケットの中へとしまい込んだ。
「ミクロス、お前は?」
スネ夫がミクロスに尋ねた。
「みくろす、男ノ子! 女ノ子ガ戦ウノニ、僕ガ逃ゲルナンテ、ソンナコト! みくろすモ戦ウ!」
そう言って意気込むミクロスだったが、足は小刻みに震えていた。ドラえもん達はそれを見て苦笑した。
「わかったよ、ミクロス。お前もポケットの中で待ってて」
ドラえもんはそう言って、ミクロスをポケットにしまった。
「さて・・・いよいよ、決着の時だね。みんな、いいね?」
それぞれに違った表情を浮かべながらも、ドラえもんの言葉に4人はうなずいた。その時である。
「うわーっ!!」
静かな公園に、突如絶叫が響き渡る。それとともに、空から何か青い物体が降ってきて、盛大な水しぶきをあげて噴水の中に落下した。
「うう・・・ハーックション!!」
水をしたたらせて噴水から這い出ながら、青い物体はくしゃみをした。それは腹についていたポケットからタオルを取り出すと、自分の体を拭き始めた。
「まったく・・・あんなものに吸い込まれたと思ったら、噴水なんかに落ちるなんて・・・ハーックション!!」
青い物体、ドラえもんは、もう一度大きなくしゃみをすると体を拭き終えたタオルをポケットへとしまった。
「だけど、ここはどこなんだろう・・・?」
ドラえもんはあたりを見回した。公園の敷地内にはジャングルジムやシーソーなど、おなじみの遊具が並んでいる。公園の外に見える家や建物も、普段自分達が見ているものと変わったところは何もない。
「とりあえず、日本であることは間違いないみたいだね・・・。でも、他のみんなはどこにいるんだろう?」
その時、ドラえもんの耳に何かが聞こえてきた。男の子の声のようである。
「もしかして・・・」
ドラえもんは声の聞こえる方向へと歩き出した。公園のほぼ中央に、木の生えている小高い丘があった。そしてそこにある木の一本の上で、一人の少年が泣き叫んでいた。
「だれか〜! 助けてぇ〜!」
「のび太君!」
やっぱりというか、その情けない泣き声はのび太のものだった。木の下にやってきたドラえもんを見て、のび太の表情が輝く。
「ドラえもん!」
「ほら、タケコプター!」
ドラえもんは木の上ののび太にタケコプターを投げ渡した。のび太はそれを受け取ると、頭につけて降りてきた。
「ドラえもん、無事だったんだね!」
「うん。のび太君も無事でよかったよ。でも、まだ他のみんながいないんだ。これから探しに行こう」
「もちろんそうしよう。でも、その前にポケットの中にいるリルルとミクロスを出してあげたら?」
「そうだね」
ドラえもんはポケットからリルルの入った鳥籠と、ミクロスを出してあげた。リルルは鳥籠の中から出して、元の大きさに戻した。
「一体何があったの?」
ポケットの中にいたため事情を知らないリルルが尋ねてきた。
「僕達にもわからない。突然ブラックホールみたいなのがあらわれて、僕達と鉄人兵団を飲み込んだんだ。結局ここへ飛ばされたけど、まだ他のみんなは見つかってないんだ。君たちも探すのを手伝ってくれ」
「わかったわ」
「了解! 了解!」
「だけどドラえもん、どうやって探すの?」
ドラえもんはポケットから一本のステッキを出した。
「さしあたり、このたずねびとステッキで探すしかないね」
「でもそれ、的中率70%なんでしょ? 大丈夫?」
「場合が場合だからね。もちろん、なんとかするよ」
ドラえもんはそう言うと「グレードアップ液」を取り出し、ステッキに吹きかけた。
「これで性能が上がった。90%ぐらいの的中率は出せると思う」
ドラえもんはそう言って、ステッキを地面に立てて倒した。
ドラえもん達はステッキの倒れる方向に向かい、次々としずか、ジャイアン、スネ夫を見つけだすことに成功した。少しずつ離れていたとはいえ、5人は同じ一帯に落ちてきたらしい。5人は再会を喜んだ後、最初の公園で話し合いを始めた。
「なんとか、みんなそろったみたいだね」
「だけど、わからないことだらけだね。まず、ここはどこなんだろう? 日本であることは間違いないみたいだけど、標識とかには聞き慣れない地名が書いてあるし」
「富士山の近くみたいね。あんなに大きく見えるもの」
静香が指さした先には、日本を象徴する山、富士山が大きくそびえ立っていた。
「それにしても、あのブラックホールみたいなものは何だったんだろう? あれに飲み込まれて、僕達、とんでもない世界に飛ばされちゃったんじゃないかな?」
「でも、まわりはどう見たって普通だぜ。とんでもない大昔や未来に飛ばされたってわけでもないみたいだし」
「それに、僕達と一緒にあれに吸い込まれた鉄人兵団も気になる。あれに吸い込まれたってことは、きっと僕達みたいにこの世界に現れるはずだ。そんなことになったら・・・」
「それに、ジュドもいないみたいね・・・。一体どこへ・・・」
リルルがあたりを見回して言った。
「とにかく、ここでこうしていても仕方がない。ここがどこなのか、調べてまわろう。みんな、出発だ」
ドラえもん達は立ち上がった。その時、静香が言った。
「ねえ、さっきから気になってたんだけど・・・人を一人も見かけないのよね」
「うん・・・。一体みんな、どこへいっちゃったんだろう?」
「マサカマサカ・・・幽霊ノ街ジャ・・・」
ミクロスが震える。
「ロボットが幽霊の心配する必要はないだろう? とにかく、あたりを見て回ろう」
ドラえもんが足を踏み出しかけたその時