ドラえもん対マジンガーZ


〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜


第10話


驚異の合体機械獣


 2体のスーパーロボットの活躍で、機械獣軍団は全滅した。

「だから言っただろ! 俺達には質より量なんて理屈は通用しないんだよ!」

 甲児がグールを見上げて叫ぶ。機械獣軍団全滅の様子を見てますます怒り狂うDr.ヘル。

「おのれぇ! こうなったら切り札を出してやる! あしゅら男爵! アレを出すのだ!」

「ハッ、ハハ!」
 あしゅら男爵が杖を掲げる。すると、地面に強烈な振動が起こり始めた。

「なっ、なんだ!?」

「何か出てくるのか!?」

 すると、眼下のビルを下から突き崩し、何かが勢いよく地下から出現した。

「機械獣!?」

「お、大きい・・・」

 それは、全長50mはあろうかという巨大な機械獣だった。全身のフォルムは、サソリに酷似している。その全身からは、赤い液体がにじみ出していた。

「ギシャアアア!!」

 機械獣が叫び、尻尾の先から怪光線を発射する。マジンガーとザンダクロスはすんででそれをかわす。

「危ねえ危ねえ。おーし、あいつは俺が叩く! お前達はDr.ヘルをぶちのめしてやれ!」

 甲児はそう言ってマジンガーを急降下させた。

「あっ、甲児さん! しょうがないなあ。みんな、ここは言うとおりにしよう。行くよ!」

「了解!」

 グランドザンダクロスが急上昇に転じる。その目指す先は、飛行要塞グール。だが・・・

「フン! バカめ! ゴモラD8よ!」

 Dr.ヘルが叫ぶと、はるか彼方から何かが飛んできた。

「うわっ!!」

 猛スピードで飛んできた物体にはねとばされるグランドザンダクロス。

「なっ、何だ!?」

 ドラえもん達がそこに見たもの。それは人の顔と四枚の翼をもった鳥の体をもつ機械獣だった。

「新手の機械獣!」

「フハハハ! やってしまえ! ゴモラD8よ!」

 機械獣ゴモラD8が口から怪光線を放つ。それをなんとかかわし、ザンダクロスはロケットパンチの発射態勢をとった。

「ロケットパーンチ!!」

 火を噴く拳が発射される。だが、機械獣はよけるそぶりも見せず、四枚の翼を高速ではばたかせ、突風を起こした。その強力な風にあおられ、なんとロケットパンチは別の方向へと飛んでいってしまった。

「ウソ!? ロケットパンチが、風なんかで!」

 とまどうドラえもん達。その隙をついて、機械獣は突撃をしてきた。すれ違いざま、カッターになっている翼で斬りつける。

「うわあっ!」

 ザンダクロスが腕にダメージを負う。

「切り札ってことみたいだね。戻れ、ロケットパンチ!」

 その言葉に応じて、ロケットパンチが再装着される。

「僕達は必ずお前を倒す! いくぞ!」



「ルストハリケーン!!」


 マジンガーが巨大なサソリ型機械獣、ソドムD7に対してルストハリケーンを放つ。しかし、鋼鉄も溶かす腐食性の高い風も、この機械獣のもつ強固な装甲の前には全く効果がない。さきほど放った光子力ビームも同様であった。

「ちぇっ! なんて堅い奴だ!」

 さすがの甲児もその防御力の高さに苦戦を強いられる。と、ソドムD7が何本もの足を動かして動き始めた。巨体の割には、その動きはなかなか素早い。機械獣はマジンガーに接近すると、両腕の巨大なハサミを振り下ろした。

ドガンッ!! ガチャンッ!!

 ハサミが地面に突き立てられるが、マジンガーはなんとかその攻撃をかわす。

「ふーっ、危ねえ危ねえ。あんなの食らったら、いくらなんでもお陀仏だぜ」

 甲児は冷や汗を拭いながらも、反撃に転じた。

「これならどうだ! アイアンカッター!!

 マジンガーの腕の側部から斧のような鋭い刃が出て、マジンガーはそれを発射した。だが、命中はしたものの、アイアンカッターの鋭い刃でも機械獣の強固なヨロイを切り裂くことはできなかった。しかも、そればかりではなかった。

「ちっ・・・」

 マジンガーが戻ってきたパンチを再装着する。しかし、それを見て甲児は驚いた。

「なっ、なんだこりゃ!?」

 なんと、超合金Zでできているアイアンカッターの刃が、ジュウジュウと白い煙をたてながら溶けているのである。

「あいつの溶解液か・・・」

 機械獣の体からは、常に赤い液体がしみ出ている。体からしたたるそれがコンクリートなどに触れて溶かしているのは目にしていたが、まさか超合金Zをも溶かすほどのものとは思いもしなかったのである。

「くそっ! これじゃうかつに触ることもできねえ・・・。だけど、なんとかしなくちゃな」

 甲児はそれでもあきらめることなく、機械獣ソドムD7に立ち向かった。



シュバッ! シュバッ!


 グランドザンダクロスの光子力マグナムが火を噴く。だが、光線は空飛ぶ機械獣ゴモラD8に当たることなく、高空へと飛んでいった。

「なにしてるんだよのび太! ちゃんと狙えよ!」

「やってるよ! あいつの動きが速すぎるんだ!」

 そうこうしているうちに機械獣は反転し、口から怪光線を吐く。

「うわっ!」

 直撃を受けるザンダクロスだが、すぐに態勢を立て直す。

「ちくしょう! このままじゃやられちまうぜ!」

「ドラえもん! どうしよう!」

「落ち着くんだ! なにかいい考えが思いつけば・・・」

 しかし、容赦なく機械獣は攻撃を加えてくる。

「思いつきを待ってちゃやられちまうぜ! 今は戦わないと! ロケットパーンチ!!」

 ザンダクロスがロケットパンチを発射する。だが、機械獣は四枚の翼で突風を起こし、ロケットパンチのコースをそらす。

「くそっ! やっぱりだめか!」

「・・・そうか!」

 ドラえもんが何かをひらめいたように、顔を輝かせた。

「ドラえもん! 何か思いついたの!」

「うん! これならなんとかなるかもしれない。のび太君、よく聞いてくれ・・・」

 ドラえもんはそう言って、二人に策を伝えた。

「これはタイミングが大事なんだ。わかってるね、のび太君?」

「もちろん。へまはしないさ」

「よし。それじゃ、次にあいつが攻撃してきたときがチャンスだ。いいね?」

 すると、早速機械獣が攻撃をしかけてきた。

「ロケットパーンチ!」

 ドラえもんの叫びと共に、グランドザンダクロスがロケットパンチの発射態勢をとる。それを見た機械獣は、またかという様子で四枚の翼をはばたかせ始めた。だが・・・

「今だ! のび太君!」

「当たれ!」

 グランドザンダクロスは、突然ロケットパンチの発射態勢を崩した。そしてそのまま、腰の光子力マグナムを引き抜いた。予想外の行動に、機械獣は対応できない。その間に光子力マグナムは発射され、機械獣の2枚の翼を撃ち抜いた。そして機械獣は、煙を吐きながら、まっさかさまに地面へと墜落していった。

「やったぜ!」

 その様を見ながら、歓喜の声をあげるドラえもん達だった。


「くそっ! マジンガーの全部の武器を叩き込めば、ちょっとはチャンスもできると思うけどな・・・」

 マジンガーは相変わらず苦戦を強いられていた。振り回されるハサミと、光線を出す巨大な尻尾、そして強力な溶解液をかわしながら、なんとかチャンスをうかがっている。

「あの溶解液さえなんとかできればな・・・」

 その時、爆音がしたかと思うと、右手の方から大きな爆発音がした。

チュドオオオオン!!

「なんだ!?」

 見ると、もうもうとあがる砂煙の中に、鳥型の機械獣が横たわっていた。

「甲児さーん!」

 グランドザンダクロスが降りてきた。

「大丈夫ですか?」

「いや、正直あんまりよくねえな。それよりも、あの機械獣は倒したのか?」

「ええ、もう大丈夫です。それよりも・・・」

「ああ、こいつだ。やけに堅いうえに、全身溶解液まみれでうかつに触ることもできねえ。一体どうすれば・・・」

 ドラえもんは少し考えて、やがて言った。

「甲児さん。あいつの溶解液さえなければ、あいつのヨロイを破壊できますか?」

「ああ。いくら堅いっていっても、マジンガーの武器を全部叩き込めば壊せねえはずはねえ」

「それなら・・・甲児さん、あいつに思いっきりパワーを強くしたルストハリケーンを、どこか一点に絞ってくらわせて下さい!」

「いい作戦があるのか?」

「はい!」

「よーし! それじゃいくぜ! ルストハリケーン!!」

 マジンガーZがルストハリケーンを口から吐き出す。ただ、これまでと違って、その勢いは台風並である。あまりの勢いの強さに倒れかかるマジンガーを、グランドザンダクロスが後ろから支える。

「グオオオオ!!」

 機械獣が吼えるが、装甲には依然としてダメージがない。

「くそっ! やっぱりだめか!」

「いえ! 見て下さい」

 見ると、ルストハリケーンが直撃した部分には溶解液が張られておらず、装甲がむき出しになっている。

「そうか・・・ルストハリケーンの強風で、溶解液が吹き散らされたんだな!」

「甲児さん、今のうちに!」

「よーし! マジンガー、パワー全開だ!」

 甲児は気合いと共に、全ての武器の発射ボタンを押した。次の瞬間現れた光景は、すさまじいものだった。光子力ビーム、冷凍ビーム、ロケットパンチ、ルストハリケーン、アームミサイル、ミサイルパンチ、そしてブレストファイヤーと、マジンガーZのもつ全ての武器が一斉に発射されたのだ。ものすごい光を放ちながら、一斉発射された武器の塊は、溶解液を吹き散らされた機械獣の一点へと集中して襲いかかり、盛大な爆炎と閃光をあげた。

ドガァァァァァン!!

「僕達も手伝うぞ!」

続けて、グランドザンダクロスも武器の一斉発射を行う。これも機械獣の一点を襲う。

「やったか・・・?」

 もうもうと立ちこめていた煙が晴れる。すると、そこに現れたのは、背中に大きな破口を生じた機械獣の姿だった。

「よっしゃあ!」

「続けていくぜ! ブレストファイヤー!!

 マジンガーZは追い打ちとして、その破口へとブレストファイヤーを発射した。破口に熱線が命中し、内部の機械類を誘爆させて大爆発を起こす。

ドガアアアアン!!

「ギシャアアアア!!」

 機械獣が悲鳴をあげる。そして、その巨体を支えている何本もの側足から力が失われ・・・大地を揺らし、砂煙をまき散らしてズズンという重い音とともに地に伏した。

「やったぜ!」

「どうでえ、Dr.ヘル! 俺達が無敵だってこと、わかったかよ!」

 甲児は空中に浮かぶグールに向けて高らかに叫んだ。



「グヌヌヌヌ・・・お、おのれえ! こうなれば奥の手中の奥の手だ! 機械獣よ! 再び立て! そして戦え!」

 Dr.ヘルが手にしたバードスの杖を振りかざす。すると・・・

ゴゴゴゴゴ・・・

 うなるような音が聞こえ始める。

「こ、今度はなんだってんだ!?」

 すると、予想外のことが起こった。まず始めに、遠くに倒れていた機械獣ゴモラD8が、ゆっくりと起きあがった。機械獣は空に向かって一声鳴くと、そのまま空中へと飛び上がった。

「グオオオオオ!!」

 続いて、地に伏していた機械獣ソドムD7も、起きあがり始める。

「復活した!?」

「やるじゃねえか。だが、一度は俺達にやられた奴らだ。もう一度ぶっとばすまでだぜ!」

 息巻く甲児。だが、機械獣は予想外の行動に出た。ゴモラD8がソドムD7の真上まで来ると、そのままその背中の上に降り立つように、降下を始めたのである。そして、その足がソドムD7の背中に降りた途端・・・強烈な閃光が起こった。

「うわっ!」

「まぶしい!」

 思わず目を覆うスーパーロボット。そして、それが晴れたとき・・・

「ガオオオオオン!!」

 そこには、ゴモラD8を背中に「生やした」ソドムD7がいた。

「フハハハハハ! 驚いたか! これこそソドムD7とゴモラD8が合体した究極の機械獣、メギドD9だぁ!」

 Dr.ヘルが得意げに言った。

「合体ぃ? へっ、ただサソリの上に鳥が乗っかっただけじゃねえか! そんな奴なんざ、俺達がやっつけてやるぜ!」

「そうだそうだ!」

「ふふふ・・・2体の合体は、ただの合体ではない。それは1+1という枠組みを越えた力を引き出すのだ」

「自慢は聞き飽きたぜ! いくぜ、ドラえもん! のび太! 武!」

「わかってます!」

「今度こそやっつけてやる!」

「覚悟しろ!」

 猛然と巨大機械獣に攻撃をかけるスーパーロボット。しかし、機械獣はもととなった2体の機械獣の武器を使い、その接近を妨げる。

「うわあっ!」

 ソドムD7が振り回したハサミの直撃を受け、グランドザンダクロスが大きく吹き飛ばされ、ビルに激突する。その衝撃でビルが崩れ、ザンダクロスに倒れかかった。

「みんな!」

 だが、そう叫んだ甲児のマジンガーもまた、ゴモラD8の口から放たれる光線を受けて倒れる。

「くそっ! さすがに、合体して弱くなるなんて話はねえか!」

 その時、グランドザンダクロスもガレキの山から這い出してきた。

「お前ら! 無事か!?」

「な、なんとか・・・」

「フフフ・・・機械獣の攻撃の前に、うかつには動けないようだな。それならば・・・メギドD9よ!
 メギドの雷を放て!」

 Dr.ヘルの指令を受け、メギドD9の上部に当たるゴモラD8が体を反らし、巨大な穴の開いた腹をスーパーロボット達に向ける。

「なんだ、あの穴は?」

 ところが次の瞬間、その穴の中にボウッとした光が灯る。

「ま、まさか・・・」

 ドラえもんの悪い予感は当たった。ザンダクロスの人工知能が機械獣の中に膨大なエネルギー反応を
感知し、警告を出してきたのである。

「甲児さん! あれは巨大なビーム砲です! よけて下さい!」

「何ぃ!?」

 ザンダクロスとマジンガーが、それぞれ左右に横飛びに飛んだ次の瞬間・・・ソドムD7とゴモラD8の結合部であるその方向から、極太のビームが放たれた。

ズバアアアアアッ!!

「うわあっ!」

「くぅっ!」

 スーパーロボット達のすぐ横を、光の柱が通り抜ける。やがて、それは徐々に弱まっていき、消滅した。だが、そのビームが通過した射線上には何も残ってはいなかった。そして、スーパーロボット達も、かすっただけとはいえ被害を受けていた。

「くそっ、ジェットスクランダーが・・・」

 マジンガーはビームによって、ジェットスクランダーの右翼の先端を溶かされていた。

「ああ、左手が・・・」

 グランドザンダクロスの左手もまた、ビームに飲み込まれて消滅していた。

「むう、外したか。メギドD9よ、再チャージを開始しろ。次は外すな」

 その指令を受け、再び機械獣はエネルギーのチャージにかかった。

「くそっ! そうはさせるかよ! ロケットパーンチ!

 マジンガーZがむき出しとなっている砲口にロケットパンチを発射する。だが・・・その砲口は、ロケットパンチをはじき返した。

「なにっ!?」

「フハハハ! 切り札は大事にするものだ。お前達の攻撃にも耐えられるよう、メギドの雷の砲口は特別に強化されてあるのだ!」

「ちくしょう! さすがに考えてやがるな!」

「機械獣よ! 攻撃の手をゆるめるな!」

 機械獣は動きだし、両腕のハサミや尻尾、口からの怪光線、それに突風でスーパーロボット達に攻撃を始めた。

「ちくしょう! どうすりゃいいんだ!」

「あきらめるな! まだ手はある!」

「どうやって!?」

「いいかい? あいつのビーム砲は強化されている。もちろん、やられないようにするために。それがどういうことか、わかるかい?」

「もったいぶってる場合かよ! 教えてくれ!」

「つまりそれだけ、あの機械獣にとってはあの部分が重要なんだ。あそこを攻撃されるとやられてしまうぐらいに。つまり、弱点だ。弱点があるなら、そこを攻撃すればいい」

「さっき甲児さんがやっただろう!?」

「ロケットパンチ一発じゃ、たぶんダメなんだ。あいつの腹にダメージを与えるには、僕達の力をあわせないと」

「それってもしかして・・・」

「そう、合体技さ!」

「オオッ! そういうのを待ってたんだよ!」

 ドラえもんは甲児に声をかけた。

「甲児さん、聞きましたか?」

「ああ。マジンガーとザンダクロスで、あいつの腹に合体技をお見舞いするんだな?」

「そうです。でもタイミングが大事ですから、しっかりあわせてくださいね」

「言われるまでもねえ。完璧にやってみせるさ。それじゃ、用意はいいな?」

「ハイ!」

 マジンガーとザンダクロスは、攻撃から逃れるふりをして互いにジャンプして近づいた。

「よし、今だメギドD9! メギドの雷を発射せよ!」

 機械獣が向きを変え、砲口をスーパーロボットに向ける。砲口の中に、不気味に光が灯る。

「よし! 今だ!」

「行くぞ!」

 そして、4人は同時に叫んだ。

「スパイラルツイスターパーンチ!!」

 マジンガーが両手を、ザンダクロスが残っている右腕を、同時に発射した。

「ロケットパンチ!? だが、例え3発同時にくらっても、メギドの雷を破壊することはできんぞ!」

 Dr.ヘルが不敵に笑う。だが・・・

「へっ、そいつはどうかな」

 甲児も余裕のある笑みを見せた。すると次の瞬間、普段のロケットパンチには見られない動きが起こり始めた。3つのロケットパンチは接近すると、一定の回転軸があるようにグルグルと高速で回転しながら、メギドD9へと突っ込んでいく。

「なっ、なにい!?」

 驚きの表情を浮かべるDr.ヘル。だが、ロケットパンチの回転はもはやそれぞれを識別できないほどに高まり、まるで一つの巨大なドリルが突進しているようだった。

「いっけぇー!!」

 のび太が叫ぶ。そして次の瞬間

ズガァァァァァン!!

 一つのドリルと化した3つのパンチは、メギドD9の砲口をやすやすと貫き、反対側から勢いよく突破してきた。

「グオオオオオオオ!!」

 機械獣が絶叫をあげる。ぶちぬかれた腹からは、まばゆい光があふれ出す。

「い、いかん! エネルギー炉がぁ!!」

 Dr.ヘルが絶叫した途端、機械獣は大爆発を起こした。あたりにすさまじい熱線と爆風が襲いかかる。

ドッカァァァァァァァン!!

「うわっ!」

「ふせろ!!」

 甲児の指示を受け、ザンダクロスはとっさに地面に身を伏せた。その頭上を、ものすごい速さで様々な破片などが通過していく。やがて、それは勢いを弱めていった・・・。


「ふぃ〜、助かったぜ」

 マジンガーが背中に積もったガレキを落としながら立ち上がる。そのすぐ近くでも、グランドザンダクロスが立ち上がろうとしていた。

「よお、大丈夫だったか?」

「ええ、平気です。それにしても、やりましたね」

「ああ。合体技、あんなにすごい威力を持ってたなんてな」

 グランドザンダクロスはマジンガーZとの共同作戦を想定して作られたため、一部の武装を使ってマジンガーと合体技を繰り出すこともできる。メギドD9を葬ったスパイラルツイスターパンチもその一つで、これは二つ以上のロケットパンチが絡み合うように回転しながら超高速で飛行、ドリルのように敵を貫くという技で、単に二発のロケットパンチを放つよりも数倍高い威力をもっている。

「そういや、あいつらはどこ行った!?」

 甲児がDr.ヘル達のことを思い出し、空を見上げる。その直後、グランドザンダクロスが点の一点を指さした。

「あっ、あれ! 逃げようとしてる!」

 飛行要塞グールはこちらに背を向け、戦線から離脱しようとしていた。

「あの野郎! 逃がしてたまるか! 追うぞ!」

「ハイ!!」

 スーパーロボットは地を蹴り、大空へと舞い上がった。


 Dr.ヘルが何やら叫びながら、あちこちの壁を叩いている。戦力のほとんどであった機械獣を破壊され、なおかつ切り札であった機械獣まで失い、おとなしく撤退しなければならないという状況なのだから、我を忘れて激怒するのも当たり前であった。あしゅら男爵もブロッケン伯爵も、ただオロオロしながらそれを見つめるだけである。その時、レーダー係であった鉄十字軍団員が声をあげた。

「Dr.ヘル! マジンガーと巨大ロボットが、このグールに急速接近しています!」

「なんだと!? すぐに迎撃しろ!!」

 だが、グールの動きはあまりにも鈍重だった。

「光子力!」

「ビーム!」

 マジンガーとザンダクロスが同時に目から光子力ビームを放つ。そしてそれは、グールの巨大な両翼についているジェットエンジンを直撃した。

「全エンジン被弾! 動力停止! コントロールできません! このままでは墜落します!」

「ええい奴らめ! このグールまでも!」

「Dr.ヘル! 早く脱出ポッドへ!」

「お急ぎ下さい!」

 あしゅら男爵とブロッケン伯爵に引きずられるように、Dr.ヘルは司令室を去っていった。その直後、グールの目の前に、マジンガーとザンダクロスが現れる。

「さあて、最後は派手な花火を打ち上げようぜ!」

「賛成!」

 そうしてマジンガーZは胸を張るポーズをし、グランドザンダクロスは腹のパネルを展開した。

「ブレストファイヤー!!」

「ザンダクロスビーム!!」

 二体のスーパーロボットから、強力な熱線が放射される。そしてその直撃を受けたグールは、爆発を繰り返しながら地上へと墜落していった。それを見ながら、ドラえもんが言う。

「これで、Dr.ヘルも終わりでしょうか?」

「さあてな。何しろ、ゴキブリ並にしぶとい奴らだからな。もしかしたら、ぬけぬけと脱出したかもしれねえ。その時はその時さ。何度こようが、同じことだぜ。それに、こんだけ機械獣をつぶされたんだ。当分は暴れたくても暴れられねえだろうさ。今はとりあえず、俺達の勝利を喜ぼうぜ! ハハハハハ!」

「そうですね。ウ〜フ〜フ〜」

「さて、あいつらも片づけたし、光子力研究所へ戻るとするか」

 その時、マジンガーのコクピットに通信が入った。

「甲児君! 聞こえる!?」

 通信の送り主はミコトだった。

「ミコトさん、Dr.ヘルの連中は片づけたぜ。これからそっちに戻る」

「できるだけ早くね。鉄人兵団の大軍がこっちへ攻めてきてるの」

「なんだって!?」

「鉄人兵団が!?」

 鉄人兵団が思っていたよりもずっと早く、しかも光子力研究所へ攻めてきているという知らせに、甲児とドラえもん達は肝を潰した。

「今さやかさんやボス君、それにスネ夫君が、あいつらを迎え撃つ準備をしているわ。でもそれだけじゃ、あいつらの数にはかないそうにないわ。こっちも秘密兵器を準備してる最中だから、一刻も早く戻ってきて」

「わかりました。すぐに戻ります!」

 甲児は一旦通信を切った。

「聞いたな? あいつら、何故かしらねえけど光子力研究所に攻めてきたみたいだ」

「はい! すぐに戻りましょう!」

「待って! その前に、復元光線でマジンガーとザンダクロスの傷を治そう」

 ドラえもんはそう言って、ポケットから復元光線を取りだした。最後の決戦は、すぐ目の前に迫ろうとしていた・・・。

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