ドラえもん対マジンガーZ


〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜


第11話


決戦! 光子力研究所


 マジンガーZとグランドザンダクロスが戦いを始めた頃・・・彼らの去っていった光子力研究所でも、緊急事態が発生していた。

「しょ、所長!」

「どうした!」

「レーダーが・・・レーダーが、真っ黒です!」

 所員がレーダーを見て青ざめる。見ると、光子力研究所に向かっていくつもの黒いものが全方位から迫ってくるのがレーダーに映っていた。

「なんじゃこりゃ!?」

「すごい数じゃわい・・・」

 それを見た三博士も、驚きの表情を浮かべる。そんな中、弓教授は落ち着いて言った。

「もしや・・・鉄人兵団の本隊か?」

「だとしたらまずいんじゃないですか? 今は甲児さんもドラちゃん達もいないし・・・」

「それに、なぜ鉄人兵団はここを攻めようとしているのかしら・・・」

 静香とミコトが言う。

「詮索をしていても始まらない。榊君、君はすぐに光子力反応炉の起動を行ってくれたまえ」

「反応炉を起動させるのですか? しかしあれを起動させるのはまだ・・・」

「君の開発した光子力ストーム発生装置を作動させるには、あれのエネルギーが必要なんだ。そのためには、なんとしてもあれを起動させなければならない。頼む」

「・・・わかりました。せわし博士、のっそり博士、もりもり博士、悪いですが、手伝って下さい」

「もちろんじゃとも」

「それじゃ所長、あとをよろしくお願いします」

 ミコトは三博士を連れて出ていった。研究所に迫る鉄人兵団は、メインルームの窓からでも目視確認できるほどの数だった。まるで、異常繁殖したイナゴの大群のようである。さやかが心配そうに弓教授に近づく。

「お父様・・・」

「さやか、悪いが君たちも研究所の防衛を手伝ってくれ。ミコト君が起動に成功するまでの時間を稼いでくれれば、あとは私たちの秘密兵器で対処できるはずだ。あれだけの数を相手にするのは危険だが、すまない。甲児君のためにも、ドラえもん君達のためにも、この研究所は何としても守らなければならないのだ」

「わかってます。私はアフロダイAで、全力で戦ってみせます」

「心配はいらないわよ、弓先生。なんたって俺のボロットもパワーアップしたんだから、さやかさんも研究所も必ず守ってみせるだわさ」

 ボスも得意そうに言った。弓教授は静かにうなずく。

「二人とも、頼んだぞ・・・」

「それじゃ、行ってきます」

 さやかとボスは、メインルームから出ていった。それを見送りながら、静香が辛そうに言う。

「私たちもなにか、お手伝いができたらいいのに・・・」

 弓教授はそんな彼女に優しく言った。

「気にしなくてもいい。みんな必死に頑張ってくれるし、甲児君達もすぐに戻ってくるはずだ。それを信じて、必ず勝てることを祈っていてくれれば。さあ、ここは危ないから、早く地下のシェルターに避難するんだ」

「すみませんが、それはできません。戦えない分、私はここからみんなを見守ります。それぐらいはしないと、気持ちがおさまりません」

「私も・・・静香さんがそうするなら、私もそれに従います」

「僕も。さやかお姉ちゃん達が戦ってるのに逃げたりしたら・・・」

 リルルやシローも静香の言葉に同調する。弓教授はその決意を見て、反対するのをやめた。

「・・・わかった。ただし、危なくなったらすぐに地下に避難することだけは約束してほしい」

「わかっています」

「・・・それに、静香ちゃん。僕達だって、何もできないってわけじゃないよ」

 それまで黙っていたスネ夫が、唐突に口を開いた。

「えっ・・・? スネ夫さん、それってどういうこと・・・?」

「こっちに来て。見せてあげるよ」

 スネ夫に招かれるまま、静香とリルル、シローは窓際へとやってきた。そこからは、研究所の敷地内にある格納庫が見える。

「見ててごらん」

 そう言うとスネ夫は、何かを取りだした。それは、ラジコンのプロポだった。

「格納庫、ゲートオープン!!」

スネ夫がプロポについている赤いスイッチを押す。すると、格納庫のシャッターが開いていくのが見えた。

「スネ夫航空隊、出撃!!」

 スネ夫が別のスイッチを押す。すると、格納庫の中から、何かがゾロゾロと出てきた。

「あれって、もしかして・・・」

「すごい! 零戦だぁ!」

 陽光の下に出てきたもの。それを見て、シローが歓声をあげた。それは、飛行機だった。しかも、ただの飛行機ではない。丸みを帯びた主翼。深緑の機体色。そして、主翼と機体側面に塗られた、大きく真っ赤な円。そう、それは日本人なら知らぬ者はいないであろう、太平洋戦争中の旧日本軍の名機・零式艦上戦闘機、通称「零戦」だったのである。格納庫の中から10機ほどの零戦が出てきて、規則正しく2列に整列した。

「あの飛行機、どうしたの?」

「みんな僕のラジコンコレクションだよ。でもただのラジコンじゃない。ミコトさんが僕にも活躍の機会をプレゼントするっていって、いろいろと改造してくれたんだ。まず、機体の外装には超合金Zを使って、ビッグライトで巨大化させた。それに、空気砲とミサイルも装備しているんだ。そして何より、今僕が持っているこのリモコンで、10機同時に動かすことができるんだ。これさえあれば、数で攻めてくる鉄人兵団にも十分対抗できるよ」

「すごいじゃない!」

「へへ、驚くのはまだ早いよ」

 スネ夫が得意げに言うと、またも格納庫の中から何かが出てきた。

「ミクロス!?」

 静香は驚いた。それは、マジンガーとほぼ同じぐらいの大きさになったミクロスだったのである。

「どうしてあんな大きさに・・・」

「あいつがどうしても大きくなって戦いたいっていうんだ。それに、あいつも僕に似てけっこうできがいいからね。きっと活躍してくれるよ」

「スネ夫様! シズカサン! 見テイテ下サイ!」

 ミクロスがこちらに向かって大きく手を振る。

「ちゃんと見てるから、くれぐれも無理しないでね」

 その時、所員が大声で叫んだ。鉄人兵団は、完全に研究所を包囲していた。

「所長、怪電波が入っています」

「きたか・・・つないでくれ」


 メインルームの大型モニターにノイズが走り、やがて一体のロボットの姿が映る。体は金色で、明らかに他のロボットとは違う。

「間違いない。鉄人兵団の司令官です」

 スネ夫が言った。そして、鉄人兵団司令官が口を開いた。

「人間共に告ぐ。おとなしくこの研究所を明け渡すのだ。さもなければ我ら鉄人兵団は、全力をもってこの研究所を攻め落とす!」

「私はこの光子力研究所の所長、弓弦之助だ。なぜこの研究所を狙うのか、その理由を聞かせてもらいたい。もしそちらに我々との共存の意志があり、我々のルールを守って平和に暮らす意志があるのなら、我々にも話し合いの余地はある」

「フン、共存だと? 宇宙の全ては、我が祖国メカトピアのものだ。下等動物である人間は、我ら高貴なロボットに従うしか生存は許されない。我々もこの世界に来てから、いろいろともとの世界に戻る手段を探していた。そして、とうとう見つけたのだ。お前達が開発した新型のエネルギー炉を使えば、元の世界へ戻る扉を開けられるという情報を入手したのだ。さあ、おとなしくそれを渡せ!」

「やはり、それが狙いか・・・。だが、お前達の言うことを聞くわけにはいかない」

「なんだと!?」

「お前達のことについては、ドラえもん君達から聞いてよく知っている。お前達の目的は、自分達の国の労働力不足解消のための奴隷を確保するため、人間を捕獲することだそうだな。だが、我々も人間だ。例え異次元の人々であっても、私たちは同じ人間を守らなければならない。お前達をもとの世界に帰すことを許せば、ドラえもん君達の世界の人々が悲劇に見舞われることとなる。そんなことを許せるはずがない。だから私たちは、断固としてお前達と戦う!」

「おのれ・・・。所詮下等動物である人間などが、我らロボットの話など聞けるものではなかったか・・・。それならば言ったように、総攻撃を開始する! 鉄人兵団に逆らったこと、必ず後悔させてやるぞ!」

 その言葉を最後に、モニターから通信が途切れた。それと同時に、鉄人兵団が動き始める。

「動き始めたぞ! みんな、出撃してくれ!」

 弓教授が叫ぶと同時に、待機していたさやか達が出動する。

「スネ夫航空隊、発進!! ミクロス! お前も頼むぞ!」

「了解!」

 スネ夫の指示を受け、スネ夫航空隊と巨大ミクロスが勢いよく空中へ舞い上がっていく。一方、アフロダイAは格納庫の出口で、なかなか出てこないボスボロットを待っていた。

「何してるのよボス! 早くしないと敵が攻めてきちゃうわよ!」

「今行くだわさ! ジャンジャジャ〜ン!!」

 ボスがそう言いながら、格納庫から出てくる。

「ボ、ボス! ボロットの頭についてるそれって・・・」

 さやかは格納庫から出てきたボスボロットの頭についているものを見て驚いた。ボスボロットの頭には、竹とんぼのような黄色いプロペラがついていたのである。それは間違いなく、ドラえもん達が空を飛ぶときに使う道具、タケコプターであった。

「そう! タケコプターだわさ! これさえあれば、ついにボスボロットも空を飛べるのよん! 名付けて、フライングボスボロットだわさ!」

 嬉しさを思いっきり言葉の調子に詰め込んでボスが言う。さやかは少しあきれていた。

「あきれた。ドラちゃんからもらったのって、それだったのね」

「いいじゃないのさ! これでボロットも、マジンガーにひけをとらないだわさ。それじゃ、先に行ってるわよん!」

 ボスボロットはタケコプターを回転させ、大空へと舞い上がった。

「ヒャッホー!! 気持ちいいだわさ! この気分で鉄人兵団なんか、あっという間にやっつけてやるぞ!」

 ご機嫌気分で空を飛ぶボスボロット。

「まあ、たしかに空を飛べた方が有利よね。でも、私も負けてられないわ」

 アフロダイAが研究所の敷地外に出ていく。それを確認して、弓教授が傍らにいる所員に指示を出した。

「よし、バリアを張るんだ!」

「はい!」

 所員がうなずくと、スイッチを入れる。すると、光子力研究所の周りにドーム状の薄い光の膜が形成される。研究所を防衛するためのバリアである。迎撃態勢は整った。光子力研究所を舞台に、鉄人兵団との最後の決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。



「研究所は破壊するな! エネルギー炉を無傷で手に入れろ!」

 鉄人兵団司令官の指示を受け、大量の鉄人兵達が研究所に殺到する。

「やらせるか! いけっ、スネ夫航空隊!」

 モニターに映るスネ夫航空隊を見ながら、スネ夫がプロポでラジコン零戦達を操縦する。普段からラジコンを操縦し慣れている彼は零戦を自分の手足のように動かす。それによって零戦達は、まるでかつての空の英雄達の霊が乗り移ったかのような動きを見せ、襲いかかる鉄人兵達の間をすり抜けながら撃ち落としていく。

「みくろすモガンバルゾ!!」

 背中のプロペラで飛行しながら、ミクロスも鉄人兵達をたたき落としていく。その攻撃に、フライングボスボロットも加わる。

「俺様も加勢するだわさ! 今こそボスボロットの真の力、思う存分見せてやる!」

 ボスボロットは空を飛びながら端から見ればハチャメチャな動きで攻撃をする。しかし、鉄人兵達はそこらじゅうを飛び交っているので、ただ腕を振り回しただけでもけっこうな数が落ちていく。

「ミサイル発射!」

 地上ではアフロダイAが、空に向かって胸を突きだしていた。その直後、アフロダイAの胸に内蔵された2発のミサイルが発射され、空中の鉄人兵達を相当数巻き込んで爆発した。

「もう! なんで2発しかミサイルがないの!」

もともとアフロダイAは戦闘用に作られたものではないので、武装は今放ったミサイルが全てである。

「やっぱり私も空を飛べるようにしておいたほうがよかったかしら・・・。まあ、心配はいらないわね。
さあ、かかってらっしゃい!」

 鉄人兵達がアフロダイAに殺到する。向こうから次々と襲いかかる鉄人兵達を、アフロダイAは次々と手刀でたたき落としていった。



 そんな戦いが30分以上続いた。単体の防御力が極めて低い鉄人兵達は、相も変わらず光子力研究所を守るさやか達によって次々に落とされていく。しかし、鉄人兵達もまた相変わらず数を頼んだ戦いを続け、彼らの攻撃をすり抜けて光子力研究所へ取りつこうとしている。

ドカン!!

 鉄人兵の放った攻撃が、またバリアにぶつかる。

「しつこいぞお前達!!」

 スネ夫の操る零戦が、たちまちその鉄人兵を撃墜する。スネ夫航空隊は、研究所のバリアを破壊しようとする鉄人兵達を撃墜する仕事に回っていた。しかし、彼らの健闘も及ばず、迎撃をすり抜けてバリアに攻撃をしかける鉄人兵達の数は次第に増えていっている。

「ううむ・・・このままでは、どれだけバリアが保つかどうか・・・」

 光子力研究所のバリアは鉄壁というわけではない。連続して攻撃を受ければ、やがては破壊されてしまう。弓教授は時折バリアに炸裂する敵の熱線や弾を見ながら、マイクをとった。

「榊君、起動の方はどうなっている?」

 すると、メインルームにミコトの声が響いた。

「すみません所長。難航しています」

「急いでくれ。バリアはそう長くもちそうにない」

「わかっています。もう少し頑張ってくれるように、みんなに伝えて下さい」



 ミコトは通信を切ると、再びパソコンを前に作業を開始した。彼女の周りでは、やはり忙しそうに三博士が動き回っている。ミコトはモニターを前に、髪を掻き上げた。

「もう! シミュレーション上ではいつも調子よく動いていたのに、なんでこういうときに限ってうまく動いてくれないのよ・・・」

 ミコトはイライラを押さえつつ、起動作業手順のチェックを再び始めた。



 次第に光子力研究所へ攻撃の手を強める鉄人兵団だったが、彼らの圧倒的な兵力には研究所攻撃だけでなく、そこを守るさやか達を攻撃する余裕すらあった。

ドカン!!

 鉄人兵団の集中攻撃を受け、一機の零戦が墜落する。

「くっ! またやられた!」

 スネ夫が悔しそうな顔を見せる。撃墜された零戦は、これで3機目である。また、撃墜されなくともほとんどの零戦はミサイルも空気砲のエネルギーも使い尽くしたものがほとんどで、戦闘継続のための力は残っていなかった。

「しょうがない、戻すしかないか・・・」

 スネ夫は悔しそうな顔のまま、スネ夫航空隊を戦線から離脱させた。

ドカンッ!!

「うわーっ! タケコプターがあ!!」

 続いて、フライングボスボロットのタケコプターが狙われた。タケコプターは鉄人兵団の集中攻撃を受けて破壊され、飛行手段を失ったボスボロットはそのまま地面へと落下した。

ドォォォォン!!

 頭から地上に落下し、なんとか起きあがろうとジタバタと体を動かすボスボロット。

ドカン!!

「ウワーッ!!」

 今度はミクロスの背中のプロペラが破壊され、やはり地上へと落下した。

「ボス!! ミクロス!!」

 さやかが叫ぶ。だが、アフロダイAにも大量の鉄人兵達が襲いかかり、体中にびっしりと張り付く。コクピットのガラスにまで、鉄人兵達が群がり視界がきかない。

「もう! あっちに行きなさい!」

 さやかはアフロダイAを力一杯動かし、それを振り払う。だが、それによって視界がきくようになったアフロダイAの前には・・・

「!? キャアアアア!!」

 大量の鉄人兵達が塊をなし、全員がアフロダイAに向けてハンドガンを向けていた。

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