ドラえもん対マジンガーZ
〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜
第12話
鉄人兵団の最期
「キャアアア!!」
さやかの悲鳴がこだまする。目の前に大量に集まっている鉄人兵達が、一斉に引き金に指をかけたその時
「悪いな、ここは邪魔させてもらうぜ!」
「えっ!?」
誰かの声がしたかと思うと、突如アフロダイAの前に黒い影がたちふさがった。次の瞬間、鉄人兵団のハンドガンが一斉に火を噴く。
ドドドドドン!!
ドガガガガガ!!
ハンドガンの弾丸は、全てその黒い影に当たって防がれた。
「・・・大丈夫かい、さやかさん?」
それは、両手を大きく広げてアフロダイAをかばったマジンガーZだった。
「甲児君! ・・・もう! 遅いじゃない!」
「悪い悪い! ちょっと遅れちまった。だけど、もう安心だぜ」
その直後、マジンガーZの前にもう一つの巨大な影が現れた。
「ザンダクロスビーム!!」
グランドザンダクロスが腹から発射したビームの直撃を受け、ハンドガンを撃った鉄人兵の一群は粉々に粉砕された。
「助けに来ました!」
ドラえもんが叫ぶ。マジンガーZとグランドザンダクロスは、それぞれボスボロットとミクロスの所へ歩いていった。
「おいボス! いつまでそんなことしてるんだよ!」
マジンガーはまだ頭が地面に埋まっているボスボロットの足をつかむと、スポンと地面から引き抜いた。
「ありゃ、甲児じゃないのさ! ちくしょう、またおいしいところを持ってかれちゃったじゃないのさ!」
「んなこと言ってる場合かよ。まだ敵はいくらでもいるんだ。出番ならいくらでもあるぜ」
一方ザンダクロスは、ミクロスを助け起こしていた。
「ほらミクロス、つかまって」
「みくろす、マタ迷惑ヲ・・・僕ハダメろぼっとダア!」
「そんなことないって。さあ、もうちょっとだ。がんばろう」
これを見た鉄人兵団司令官はいきりたった。
「おのれえ! また新手のロボットか! ええい、やってしまえ!」
鉄人兵団がマジンガーとザンダクロスに襲いかかる。
「お前らなんかに負けてたまるかよ! ブレストファイヤー!!」
「光子力ビーム!!」
マジンガーとザンダクロスの武器が火を噴く。それを受けて、鉄人兵団が次々に撃墜されていった。
「私たちも負けてられないわ!」
援軍を得たさやか達も反撃に転じる。戦況は再び好転しようとしていた。
「あの子達、ずいぶんいいところで出てきてくれるじゃないの」
モニターに映るマジンガーとザンダクロスを見て、ミコトが微笑む。だが、すぐに厳しい表情に戻り、三博士に声をかけた。
「準備はどうですか?」
「AからMまでのチェック項目、全部完璧じゃ!」
「こっちもOKじゃ!」
「こっちも! 今度こそ起動させよう!」
「ええ! それじゃ・・・いきます」
ミコトが緊張の様子でスイッチを押す。すると、目の前に置かれている途方もなく巨大な光子力反応炉が、重たいうなりをあげ始めた。
「・・・」
ミコトと三博士は、緊張したまま経過を見守った。やがて、ミコトがモニターに映し出されるデータを見て、表情を輝かせた。
「・・・やった! 起動成功よ!」
それを聞いて、三博士も歓声をあげて喜んだ、光子力反応炉は安定した稼働を続けている。
「すぐに所長に連絡しなきゃ・・・」
ミコトは電話をとると、メインルームに電話をかけた。
メインルームに呼び出し音が鳴り響く。すぐに弓教授はそれをとった。
「榊君か!」
「反応炉の起動に成功しました! みんなに、できるだけ敵を研究所から遠ざけるように伝えて下さい!」
「わかった!」
すぐに弓教授はマイクをとる。
「みんな、反応炉の起動に成功した! これから秘密兵器を使うが、できるだけ敵を研究所から引き離してくれ!」
「了解! 任せといてください! みんな、聞いたな! 一気に攻めるぞ!!」
「オオッ!!」
気合いと共に、マジンガーZをはじめとするロボット達が一斉に攻撃を開始する。それに巻き込まれ、次々に爆発していく鉄人兵達。その勢いにおそれをなしたのか、鉄人兵達が一旦後退する。
「遅くなりました!」
ミコトがメインルームにかけこんできた。
「よし、それでは、光子力ストームを発生させよう!」
「はい!」
弓教授はバリア作動スイッチに近づくと、それを動かした。
ゴウン・・・
重い音がして、研究所からバリアが消える。
「なんだ!? バリアが消えちまったぞ!?」
甲児達は驚いた。だが、それを狙って鉄人兵達が光子力研究所に殺到する。
「研究所が!!」
「慌てないで。バリアを切るのはしかたがないことなんだから」
ミコトは穏やかにそう言うと、手元にあったスイッチを押した。すると、光子力研究所の敷地内にあるタワーの先端に、奇妙なアンテナが展開した。
「光子力ストーム、発生!!」
ミコトがスイッチを再び押す。
シュバババババババ!!
次の瞬間、アンテナから全周囲に強烈な閃光がほとばしる。
「うわっ!」
「まぶしい!」
そのあまりのまぶしさに、思わず目をかばう甲児達。だが・・・
「ガ・・・ガ・・・!!」
「ギギ・・・・・・!!」
それを浴びた鉄人兵達は、次々に苦しそうなうなりをあげ、ある者は爆発、あるものは火花を散らし、次々に地面へと墜落していく。それはまるで、黒く巨大な鋼鉄の雨のようだった。
「な、なにこれ・・・?」
「鉄人兵団が・・・落ちていく・・・」
それを見つめる甲児達の機体には、なんの異常もない。だが、鉄人兵達は次々ともがき苦しみ、あとからあとから落ちていく。やがて、永遠とも思われるような長い鋼鉄の雨がやみ、地表をもはや動かなくなった鉄人兵達が覆い尽くしていた。
「す、すごい。あんなにたくさんいた鉄人兵団が、全滅しちゃった・・・」
「ミコトさん、一体何を使ったんですか?」
「フフフ・・・これこそ光子力研究所の秘密兵器、光子力ストームよ」
「光子力ストーム?」
「そう。光子力反応炉が生み出した膨大な量の光子力エネルギーを、一気にあたりへ嵐のように放出する・・・これが光子力ストームよ。光子力ビームは光子力エネルギーを一方向へ集束して撃つけど、これは拡散させるのよ。光子力波の影響は半径5kmにまで及ぶわ。これで鉄人兵団は・・・」
あたりには鉄人兵達の屍が一面に折り重なっている。
「・・・」
リルルはその様を、無言で見つめていた。
「とにかく・・・俺達、勝ったんだな?」
「そういうこと」
「やったぜぇ!!」
スーパーロボット達が手を取り合って喜ぶ。それを見ながら、弓教授も顔をほころばせた。
「みんな、よくやってくれた。早く戻ってくるといい。温かいお茶を用意して待っているよ」
「ありがとう先生! よーし、みんな、帰ろうぜ」
「はい!」
「お茶ってのもいいけど、俺は腹が減っちまったぜ。カツ丼が食べたいなあ」
「さすが、武君ね。わかったわ。大急ぎで作ってもらうから」
それぞれ、喜びの声をあげながら研究所への帰途につくスーパーロボット。だが・・・
「お、おのれぇ・・・鉄人兵団が・・・鉄人兵団がぁ・・・」
誰かの声がした。驚いて振り向くスーパーロボット達。
「なんだ、今の・・・」
「今の声って、もしかして・・・」
その時、メインルームの大モニターにノイズが走り、何者かの姿が映った。
「貴様ら・・・下等動物のくせに、よくも我が鉄人兵団を・・・!」
なんとそれは、鉄人兵団司令官だった。
「なんですって・・・そんなバカな! なんで生きてるの?」
ミコトが信じられないといった様子で叫んだ。
「貴様ら・・・いよいよ生かしてはおけん! こうなれば、鉄人兵団の最後の意地を見せてやる!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
すると、大地が突然大きく揺れ始めた。
「うわっ!?」
「なっ、なんだ!?」
彼らが驚いたのもつかの間、今度は研究所から離れた場所の地面が割れ、何かが地中から姿を現し始めた。
ドガッ!! バリバリバリ・・・
最初に見えたのは、イカの頭のような巨大な三角錐だった。それが回転しながら、地面の中から出てくる。三角錐の表面には、無数の人間のような顔がはりついている。その三角錐がすっかり地上に姿を現すと、今度はその三角錐の底面から生える無数の触手が姿を現してきた。
「あ、あれは!」
「機械獣!?」
完全に空中に姿を現したそれは、イカによく似た姿をした機械獣だった。ただし、その体は途方もなく大きく、全長は100m以上あることは間違いなかった。
「かくなる上は、あの基地で見つけたこの巨大ロボットで、貴様らを地上から抹殺してやる!!」
機械獣クラーケンO5。この巨大機械獣は、そもそもDr.ヘルが光子力研究所を攻撃するために製作したものである。製作後は鬼門島の特別格納庫に保管されていたが、それを基地を征圧した鉄人兵団が手に入れ、この攻撃に投入したというわけである。鉄人兵団司令官は複数の副官とともに、その機械獣に乗り込んでいた。
「鬼門島に、あんな機械獣があったっていうの・・・?」
「たぶん、あれだけ大きかったから別の格納庫に置かれてたんだ・・・」
「あれの中にいたから、光子力ストームの影響を受けなかったのね・・・」
突如出現した巨大機械獣を見て、それぞれ驚きの声をもらす一同。だが、甲児だけはそれを見てもひるまなかった。
「おいてめえら! お前達の仲間はこのとおり、みんなやられたんだぞ! これ以上戦ってどうするんだ!」
「確かにな・・・兵団を失った今、我々だけがもとの世界に戻っても、もはや人間捕獲作戦の遂行は不可能だ。我々は作戦失敗の責任をとり、スクラップになる運命だ。だが、我ら栄光ある鉄人兵団が下等動物である貴様ら人間ごときに負けたとあっては、祖国メカトピアに向ける顔がない。それならばこの巨大ロボットをもって、刺し違える覚悟で貴様らを地獄への道連れにしてやる!!」
「なんてやつらだ! 祖国のためだかなんだかしらねえが、これ以上戦ったって何にもならねえんだぞ!! いい加減目を覚ませ!」
「うるさい! 我々は最後まで、祖国メカトピアの栄光のために戦う! それが鉄人兵団の兵士としての我々の務めなのだ! いくぞ人間共!! 宇宙の全ては、我らメカトピアのためにあることを思い知らせてくれる!!」
「ちっ! やっぱり話してわかるやつらじゃねえか! 宇宙が自分達のためにあるなんて、思い上がりもいいところだぜ! みんな、いくぞ!」
「リルルには悪いけど・・・宇宙を自分達のものにしようなんてことは、絶対に許しちゃいけない! いくよ、のび太君、ジャイアン!!」
「うん!」
「おうよ!!」
マジンガーが、そしてザンダクロスが空へと飛び上がる。
「これでもくらえ! ロケットパーンチ!!」
マジンガーZが両腕を発射する。しかし、そのパンチは機械獣のボディに当たって跳ね返ってしまった。
「くそっ! こいつも頑丈な奴だな!」
「甲児さん、僕達に任せて下さい! ザンダクロスビーム!!」
ザンダクロスの腹が開き、ビーム砲が発射される、巨大な機械獣には狙うまでもなく命中したが、全くダメージになっていない。
「だめだ! きいてねえ!」
「ハハハハハ! そこまでか? それならば、今度はこちらからだ!」
三角錐についている無数の人の顔の目が輝き、幾筋ものビームが発射される。
ドガンッ!!
「うわあっ!!」
ビームがザンダクロスに命中し、黒い煙をあげながらザンダクロスが落ちていく。
「ドラえもん! のび太! 武! あの野郎、よくもやりやがったな!!」
マジンガーが怒りにまかせ、機械獣へ突撃をかける。
「フン、愚かな人間め!」
シュルルルルル!!
機械獣が生やしている無数の触手が、マジンガーZに向かって勢いよく走る。
「うわっ!? こ、このやろう!!」
マジンガーはその触手に絡まれ、動けなくなってしまった。
バリバリバリバリ!!
「うわああああ!!」
触手に高圧電流が走り、マジンガーZは大ダメージを受けた。触手から力が抜け、マジンガーZが滑り落ちて地面へと落下していった。
「お兄ちゃん!」
「兜ぉ!!」
「甲児君!!」
「くそっ、よくも! いけ! スネ夫航空隊!!」
弾薬を補給して再び戻ってきたスネ夫航空隊が、機械獣に攻撃をかける。
ドガッ!! ドガァン!!
機械獣の周りを飛び回りながら、零戦達は空気砲やミサイルを連射する。だが・・・
「うっとうしいハエどもめ!!」
機械獣が全身についた顔から怪光線を発射する。それを受けて、全ての零戦が爆発し粉々に飛び散ってしまった。
「ああ! スネ夫航空隊が・・・」
「貴様らも邪魔だ! 死ねぇ!!」
再び機械獣が光線を発射した。その光線の雨は、空を飛ぶことができないアフロダイA、ボスボロット、そしてミクロスの上に降り注いだ。
「ドヒャアアアア!!」
「キャアアアア!!」
「ウワアアアアア!!」
「さやかさん! ボスさん!」
「ミクロスゥ!!」
光線の雨を浴びてしまったロボット達は全身穴だらけになり、動かなくなってしまっていた。もはや、光子力研究所を守るものは研究所を覆うバリアしかない。
「フハハハハハ!! 人間のような下等な動物は、そうやって地にはいつくばっていればいいのだ!!」
鉄人兵団司令官の高笑いが響く。その時
「もうやめて!!」
目の前に広がる惨状を目にしてリルルが思わず大きな声で叫んでいた。
「き、貴様はリルル!? この裏切り者め!!」
機械獣コクピット内のモニターに映る、光子力研究所内のリルルの姿を見て、鉄人兵団司令官は驚いた。
「もうやめて!! こんなことをしていいはずがないわ!!」
「黙れ、この裏切り者めが!! これがよくないことだと!? 貴様、それでもロボットか!! 忘れたか! 太古の昔、我々を作った神によって、我々は全てを支配することを許されたのだぞ! そのために虫けらのような人間を踏みつぶすことなど、なにが悪い!!」
「違うわ! 神様はそんなことを私たちに許してはいない! 私たちに、理想の世界を創れと言ったのよ!」
「その通りだ! そしてこれが、そのための戦いなのだ! 我らに逆らう者を滅ぼし、理想の世界を築くためのな!」
「違う! そんなことをしたって、理想の世界なんか創れないわ!」
「リルル・・・貴様のように善悪の判断もできないできそこないは、この研究所ごとスクラップにしてくれる!!」
すると、機械獣のイカの頭のような三角錐が、ドリルのように勢いよく回転を始めた。
「邪魔なバリアめ・・・これならばどうだ!!」
そして機械獣は、回転する頭の先端を、勢いよく光子力研究所のバリアにぶつけた。
ガガガガガガガガガガガガガ!!
パリィィィィィィン!!
「ああっ! バリアが!!」
なんとその強烈な一撃で、光子力研究所のバリアはあたかもガラスが割れるように粉々になって消滅してしまった。
「まずい! もう研究所がむき出しだ!!」
「ハハハハハハ! 所詮人間がロボットにかなうはずがない! さあ、次はこのドリルでその研究所をガレキにしてくれる!!」
機械獣の巨大な頭部が、再び高速で回転する。
「すぐに地下シェルターへ避難を!!」
「だめだ! 間に合わない!!」
メインルームに絶叫が響き渡る。
「ハハハハハハ! 死ねぇ!!」
高速回転する巨大ドリルが、光子力研究所に向かって突き立てられようとしたその時
「ダブルバニシングフラァァァァァァァッシュ!!」
ババババババババババババ!!
何人かの声が折り重なって聞こえると、どこからか強力な赤い熱線がほとばしり、機械獣クラーケンO5に命中した。
ドガァァァァァァァァァァン!!
「グゥォォオオオオオ!!」
熱線が命中し、機械獣の体の一部が大爆発を起こして吹き飛んだ。ドリルの回転も止まる。
「なっ、なんだ!?」
驚いて機械獣を熱線の飛んできた方向へ振り向ける鉄人兵団司令官。そこにいたのは・・・
マ
ジンガーZと、グランドザンダクロスだった。どちらも機械獣の攻撃によって満身創痍であり、あちこちの装甲に穴が開いていたが、それでもしっかりと大地に足を下ろし、機械獣をにらみつけている。どちらも胸の放熱板から白い蒸気を立ちのぼらせているが、特にグランドザンダクロスは最強の武器、ザンダクロスノヴァを放ったため、口や肩などの放熱スペースを開放し、そこから光と熱とを放出していた。
「きっ、貴様ら!?」
「さすがにこいつはきいたみたいだな。へへっ、あいにく、俺は出たがりなもんでね!」
「こっちだって、これぐらいのピンチ、何度も切り抜けてきたんだ! こんなことで負けてたまるか!」
「甲児君!」
「ドラちゃん! のび太さん! 武さん!」
喜びの声をあげる光子力研究所の面々に向けて、甲児達は笑顔を浮かべた。
「ようみんな。心配かけちまったな」
「けっこうやられたけど・・・まだいけるよ」
甲児とドラえもん達はそう言ってから倒れたままになっているさやか達のロボットの所へ行った。
「さやかさん! ボス! しっかりしろ!」
「ミクロス! 大丈夫か!」
ロボットは全く動かないが、さやかとボスは気絶しているだけのようだ。
「うん・・・まだ直せる。スネ夫! ミクロスも大丈夫だ!」
「よかった・・・」
安堵のため息をもらす、光子力研究所の一同。その時
「馬鹿め! 動けない連中にかまってよそみをするなど!!」
機械獣が甲児達に迫り、無数の触手がマジンガーZとグランドザンダクロス達に襲いかかる。
「来たぞ、ドラえもん!」
「わかってます!」
「それじゃいくぞ!」
「はい!」
「ダブルバニシング・・・」
「フラァァァァァァァッシュ!!」
二体のスーパーロボットが胸を張り、そして熱線を発射した。放射された二本の熱線が空中で交わり威力を増し、襲い来る触手を直撃した。
バババババババ!!
「なっ、なんだと!?」
その熱線を浴び、機械獣の触手は全てドロドロに溶けてしまった。
ダブルバニシングフラッシュ。マジンガーZのブレストファイヤーと、グランドザンダクロスのザンダクロスノヴァの合体技である。ともに超高熱の熱線である両者を同時に一点に集中することによって、照射点は10万度にまで温度が上昇、ひとたまりもなく溶解してしまうのである。彼らの合体技の中でも、最強レベルの必殺技である。
触手を全て溶かされ、空中に浮かぶ巨大な三角錐となった機械獣クラーケンO5。それに向かって、甲児が叫ぶ。
「動けない仲間にかまうのがバカだって? バカはてめえらだよ」
「なんだと!?」
「よく見てみろ、そこらじゅうに倒れてる奴らを」
光子力研究所周辺は、落下した大量の鉄人兵達によって覆い尽くされている。甲児はそれを見渡してから言った。
「・・・お前達にとっちゃ、こいつらは代わりはいくらでもいる単なる使い捨てのコマなのかもしれねえ。だけどな、さやかさん達は、俺達にとっちゃ誰にも代わりはできねえ大切な人間なんだ。さやかさん達だけじゃねえ。どんな人間だって、誰でもそいつにしかできない役割ってのを持ってる。そんな人達を死なせたくないから、俺達は仲間を助けるんだ」
「僕達は、友達や仲間がいたからここまで来れたんだ! 仲間や友達を大事にできない奴らに、理想の世界なんて築けるわけがない!」
甲児とドラえもんが、鉄人兵団司令官に言い放つ。
「甲児さん・・・ドラえもんさん・・・」
その言葉を聞きながら、リルルは凛として立つスーパーロボットの勇姿に見入っていた。
「下等動物の貴様らが・・・我々に説教をする気かぁ!!」
機械獣の無数の顔から光線が放たれる。
「行くぞ!」
「ハイッ!!」
マジンガーとザンダクロスは一斉に飛び立ち、光線はむなしく地面を直撃した。
「おのれ!!」
機械獣はそのまま全身から怪光線を発するが、マジンガーとザンダクロスは巧みに飛行しながらそれをかわす。その奮戦ぶりを見ながら、弓教授が言った。
「甲児君達を援護しよう!!」
「はい!・・・しかし所長、光子力ストームも効かないのなら、この研究所にはあの機械獣を倒せるような武装は・・・」
落ち込んだように言うミコト。しかし、弓教授は笑って言った。
「君らしくないぞ、榊君。・・・君の作った光子力ストーム発生装置・・・あれは、発射方向を集束することもできるのだろう?」
「できますが・・・もしかして、所長!?」
「そうだ。光子力ストームのため拡散させていたエネルギーを集束し、超強力な光子力ビームを、奴にぶつけるのだ」
「それならいけるかもしれません! しかし、あの機械獣の装甲では、それでも十分なダメージにはならないかもしれません・・・」
「うむ・・・」
弓教授は少し考えると、マイクを手に取った。
「甲児君! ドラえもん君! 聞こえるか?」
「よく聞こえますよ先生!」
「今忙しいですけど!」
「その機械獣を倒すための策を思いついた。だが、今のままでは効果が薄い。マジンガーとザンダクロスを使って、なんとかその機械獣の体に穴を開けてほしいんだが・・・」
「わかりました、先生!!」
「なんとかやってみます!!」
「よし! こっちも光子力エネルギーの充填を開始する! 頑張ってくれ!」
二体のスーパーロボットは光線の雨をかいくぐりながら答える。ザンダクロスに、甲児が通信を入れた。
「よおドラえもん。そっちのエネルギーはどうだ?」
「あまりありません。マジンガーは?」
「こっちもだ。残りは少ない。昼間っからずっと戦ってたからな。無理もねえ」
「それなら・・・」
「ああ。やるなら、一発勝負だ!!」
マジンガーとザンダクロスは一気にロケットを吹かし、急接近した。
「ツインビーム!!」
二体のロボットが同時に光子力ビームを発射し、機械獣の一部を爆発させた。
「うおっ!?」
穴までは開かなかったが、それでも、嵐のような攻撃が止まる。
「今だぜ! 甲児さん!」
「わかってらあ!!」
「ドラえもん、頼むよ!」
「任せといて!!」
そして、マジンガーZは胸を張り、グランドザンダクロスは口の放熱スペースをカッと開いた。
「パワー全開!! ダブルバニシングフラァァァァァァァァッシュ!!」
これまでと比べてさらにパワーを増した二本の熱線が、機械獣クラーケンO5に襲いかかる。
ドガアアアアアアアアアアアン!!
「グオオオオオオオ!!」
真っ赤な熱線は機械獣の体を直撃し、分厚い装甲をロウのように簡単に溶かして大穴を開け、内部のメカニズムをオーバーヒートさせ、大爆発を起こした。見た目にも、機械獣の飛び方がフラフラしたものになる。
「ちっ、エネルギーが・・・」
「あとは頼みます!」
ほとんどのエネルギーを使い果たしたマジンガーとザンダクロスが、ふらふらと地面に降りていく。
「エネルギー充填率、100%!!」
「よし! 照準を合わせるんだ!!」
光子力研究所ではエネルギーの充填が終わり、今や光子力砲となった光子力ストーム発生装置の照準が、機械獣に生じた破口にあわせられていた。
「照準セット、完了!!」
「光子力砲、発射!!」
弓教授がボタンを押す。
ズバババババババババババ!!
発生装置から、とてつもなく太い光の柱が、機械獣めがけて伸びていく。そして・・・
ズガアアアアアアアン!!
極太の光子力ビームは、機械獣の破口から中へと入り、内部からその強固な装甲を貫き、外側へと飛び出していった。
「そ、そんなバカなぁぁぁぁぁぁぁぁ!! い、偉大なるメカトピアに、栄光あれぇぇぇぇぇぇ!!・・・・・」
副官達ともども光の柱に飲み込まれつつ、鉄人兵団司令官が叫ぶ。だが、その叫びもやがてかき消され・・・
ドガアアアアアアアアアアン!!
大音響とともに、機械獣クラーケンO5は空中で大爆発を起こし、その破片を四散させた。
「くっ!」
「うう!!」
地上でその爆発を見ていた甲児達の所にも、強い爆風が押し寄せる。エネルギーをほとんど使い果たしていたマジンガーとザンダクロスはそれに耐え、甲児とドラえもん達を守った。
「勝ったんですね・・・」
「ああ・・・」
呆然とした顔でミコトが言ったが、やがてその表情に喜びの色が満ちあふれてきた。そして、次の瞬間には、静香、スネ夫、シローと手を取り合い、楽しそうにジャンプをしていた。
「やったぁ!」
「勝った! 僕達、勝ったんだね!」
手放しで喜ぶミコトとスネ夫、シロー。だが、静香だけは無言でたたずんでいるリルルに気づき、その側にそっと近づいた。
「ごめんなさい、リルルさん・・・」
「気にしなくてもいいわ。これでよかったのよ。やっぱり、あんなことをするのは間違いだったんだから・・・」
それぞれ戦いの終わりを迎えている彼らを見ながら、弓教授は微笑んだ。そして、マイクをとってマジンガーに通信をいれた。
「4人とも、よくやってくれた。君たちのおかげで、また平和は守られたよ」
「へへっ・・・そう言われるとうれしいけど、俺達だけじゃありませんよ。さやかさんやボス、スネ夫達、それに先生やミコトさん達ががんばってくれたから、俺達は勝てたんです」
「そうそう。勝ったのはみんなのおかげです」
甲児の言葉に、ドラえもん達も笑顔で同調した。
「そうだな・・・とにかく、みんなご苦労だった。なにか欲しい物はあるかな?」
「とりあえず、アフロダイA達を回収してください。さやかさん達は俺達で助けられるけど、マジンガーもザンダクロスもヘトヘトですから。あとは、そうですね・・・なんだか、ラーメンが食べたい気分ですね」
「あ! それ僕も!」
「俺はさっきも言ったけど、カツ丼お願いします」
「僕はやっぱりどら焼きですね」
「わかった。みんな用意しておくよ。そこで待っててくれ」
通信が切れた。甲児はなんとかマジンガーを動かし、立ち上がらせた。
「なんとか、研究所まで歩いて帰れそうだな。そっちはどうだ?」
「こっちも、なんとか帰ることはできそうです。でも甲児さん、大丈夫ですか? マジンガーはフラフラですよ?」
「へっ、そっちこそ・・・」
「さあ、肩を貸しますよ」
「おう、すまねえな。さて、さやかさん達を迎えに行こうぜ」
「ハイ!」
富士山が夕焼けに紅く染まる中、傷だらけの二体のスーパーロボットは、肩を組み合いながら彼らを待つ人達のもとへと歩き出した。
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