ドラえもん対マジンガーZ


〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜


第3話


鉄人兵団現る



 ドラえもんとのび太、ジャイアンは空気砲を手に装備し、マジンガーZのもとへと向かっていた。

「いい? バラバラに攻撃して、あいつの気をそらすんだ!」

「わかった」

「こっちもOKだぜ!」

 おりしもそのころ、スタッグD3はマジンガーZを追いつめていた。

「フフフ・・・ついに最後の時が来たようだな・・・」

「ちきしょう! なんて頑丈な奴だ・・・!」

 スタッグD3の攻撃で、マジンガーは全身の至る所に傷を生じていた。足にダメージを受け動けないマジンガーに、スタッグD3が迫る。

「死ねぇ!!」

 スタッグD3が剣を振り下ろそうとしたその時

ドカンッ!!

「何っ!?」

 爆発音がしてスタッグD3の右腕で爆発が起こった。その衝撃で、スタッグD3の剣が吹き飛び、地面に突き刺さった。

「何だ!?」

 マジンガーZとスタッグD3が、同時に同じ方向を向く。彼らが見たものは、手に筒のようなものをつけてこちらへと飛んでくる3人の影だった。

「何だあいつらは!?」

「あいつらさっきの・・・! よせ! こっちへ来るんじゃない!」

 だが3人はそれにかまわず突っ込んでくる。散開すると、辺りをバラバラに飛びながらスタッグD3に向けて空気砲で攻撃する。威力が上がっているのか、空気砲の攻撃はスーパー鋼鉄製の機械獣の体にも穴を開けていく。

「なっ、なんだと!? ええい、うるさいハエめぇ! スタッグD3よ、やつらをひねりつぶせ!」

 命令を受け、辺りを飛び回るドラえもん達をとらえようとするスタッグD3。だが、20m近い大きさの機械獣にとって人間を捕らえることは難しく、ドラえもん達は腕の下や指の間をすり抜けては機械獣に攻撃を加える。

「よし、今だ!」

 機械獣が翻弄され隙ができたと見るや、ドラえもんは何かを取りだし、機械獣の持つ盾に接近した。ドラえもんが持っていたのは、塩やコショウが入っていそうな容器。

「ネンドロン!」

 ドラえもんは盾に向かってその容器をパッパッと振った。容器から何かの粉末が出て、機械獣の盾にかかったと思った途端、なんと機械獣の盾が粘土のようにグニャリと変形してしまった。

「なんだと!? あの強固な盾が!?」

「す、すげえ・・・何者なんだ、あいつら・・・」

 甲児が驚いていると、機械獣の引きつけ役をのび太とジャイアンに任せたドラえもんがマジンガーZに近づいてきた。

「お前は一体・・・」

「味方です。今そのロボットを直しますから、援護して下さい」

 そう言うとドラえもんは、ポケットから何かを取りだした。

「復元光線!」

 ドラえもんが取りだしたのは、一種の懐中電灯だった。だがそれから出た光は、マジンガーZの損傷部分に当たるとすぐにそこを元通りに修復してしまった。見る見るうちに、傷だらけだったマジンガーZが元に戻っていく。

「す、すげえ、マジンガーが直っちまった・・・よ〜し! 誰だか知らねえけど、感謝するぜ! お前の仲間に離れるように言ってくれ!」

「わかりました。のび太君! ジャイアン! 離れて!」

「わかった!」

「おう!」

二人がパッと離れるのを確認し、マジンガーZは再び立ち上がった。そして、右腕を機械獣に向ける。
すると右腕の両側から、斧のように鋭い刃が飛び出した。

アイアンカッター!!

 両側に刃をつけたロケットパンチが、機械獣に襲いかかる。機械獣はとっさに盾で防いだが、アイアン
カッターは粘土のようにグニャグニャになっていた盾をたやすく切り裂いたばかりか、それを持って
いた左腕までも切り裂いた。

「ガオオオオオン!!」

「何だと!? ええい、こしゃくなやつめ!」

 機械獣はひるむことなく放電攻撃をマジンガーZに放つ。が、マジンガーZは右に左に、軽妙にその攻撃をかわす。

「同じ手が通用するようなマジンガーじゃないぜ!」

「おのれ! それならば!」

 剣を構え、機械獣が突進してくる。その時、機械獣とマジンガーとの間に、ドラえもんが割って入った。

「ここは任せて下さい!! 天地逆転オイル!」

 ドラえもんはそう言うと、ポケットからオイル缶のようなものを取り出し、その中身を機械獣にぶちまけた。そのとたん、機械獣が真っ逆様にひっくり返り、角を下にして地面に頭を突き刺してしまった。

「ええい、何をしておるのだ!!」

「今です!」

「よ〜し、こいつでとどめだ! ブレストファイヤー!!

 マジンガーが大きく胸を張る。すると、マジンガーの胸についている赤いプレートが、さらに真っ赤に赤熱し、直後、超高熱の熱線がそこから発射された。動けない機械獣はそれに直撃され、見る見るうちにドロドロに溶けていった。やがて機械獣スタッグD3は、溶けた鋼鉄の塊となってマジンガーの前に崩れ落ちた。

「やったぜ!!」

 甲児とドラえもん、のび太、ジャイアンが歓喜の声をあげた。

「ぬうううう・・・おのれぇ、忌々しい奴らめ!! 今に見ておくがいい! 次こそは必ず貴様らを地獄にたたき落としてやるからな!!」

 あしゅら男爵は忌々しげにそう言った。それを最後に、あしゅら男爵の声は聞こえなくなった。

「へっ、おとといきやがれってんだ! ・・・それよりも、助かったぜ。お前達がいなかったら、俺もマジンガーもやられてたかもしれねえ。ありがとうな。俺は兜甲児。お前達は?」

「僕ドラえもんです」

「野比のび太です」

「俺は剛田武です」

 マジンガーZから降りた甲児は、ドラえもん達と握手をしていった。

「ふ〜ん、ドラえもんか。変わった名前だな。それよりも、不思議な道具を持ってるんだなあ。あの機械獣の盾をグニャグニャにしたり、マジンガーの傷を直したり」

「マジンガー? このロボットの名前ですか?」

 のび太が言うと、甲児は得意げに答えた。

「そう! 俺のじいちゃんが作ったスーパーロボット、マジンガーZさ! 知らねえのか? けっこう有名なんだけどな」

「マジンガーZ・・・」

 ドラえもん達は思わずマジンガーZを見上げた。

「それよりも、お前達何者なんだ? どうみても、ただの子供には見えないけど・・・」

「それが・・・説明するとなると、ちょっと複雑で・・・」

 ドラえもんは頭をかきながら言った。

「ふうん・・・それなら、俺と一緒に光子力研究所へ帰らないか?」

「光子力研究所?」

「ああ。俺や弟が世話になってる研究所さ。マジンガーをサポートしてくれてる。親切な人ばかりだから、きっと喜んで迎えてくれるぜ。助けてもらった礼もあるし、そこでゆっくりと話そう」

「どうする・・・?」

 のび太達は相談を始めた。

「どうするもこうするもないだろ? 俺達はここでは行く当てがないんだから。それに、このロボットにも興味あるしな」

「それなら決まりだね」

「よし、そんじゃ行くとするか」

「あ、ちょっと待って下さい。まだ他にも友達が・・・」

 ドラえもんがそう言いかけたとき、声がした。

「ドラちゃーん!」

 見ると、静香とスネ夫がリルルを両側に抱えたまま飛んでくるのが見えた。その後ろに、ミクロスが続いている。

「どうしたんだい、リルル?」

「まさか、さっきの戦闘で・・・」

 ドラえもん達が心配そうにのぞき込む。

「違うの・・・。急に具合が悪くなったらしくて・・・」

「困ったな・・・このあたりはまだ避難警報が解除されていないから、病院にも誰もいないし・・・」

 甲児もそれに加わり、頭を抱える。そんな彼に、ドラえもんが言った。

「いえ、病院じゃだめです。この近くに、ロボットに詳しい研究所はありませんか?」

「ロボットに詳しい研究所? なんでだ?」

「実は・・・リルルはロボットなんです・・・」

「なんだって!?」

 甲児は驚いてリルルの顔を見ると、首を傾げた。

「どう見たって人間の女の子だけどなあ・・・。だけど、さっきの戦いでのお前達を見てると、ウソとは思えないな・・・。だけど、心配ない。光子力研究所は、マジンガーZの整備もやってくれてるから、きっとその子の修理もできるはずさ」

「よかった・・・。それなら、すぐに行きましょう」

「ああ!」

 その時、マジンガーZの上の方で何か電子音がした。それに気づき、甲児が言う。

「悪い、ちょっと待ってくれ。研究所からの通信だ」

 甲児はすぐに操縦席へ戻ると、通信機のスイッチを入れた。スクリーンにさやかの姿が映る。緊張した様子だった。

「大変よ、甲児君!」

「さやかさん、ちょうどよかった。これからそっちにお客さんが行くんだ。用意しておいてくれないかな?」

「それどころじゃないのよ! そこから少ししか離れてない場所に、たくさんのロボットが出現したらしいの!」

「なんだって!? 機械獣か!?」

「それがどうも違うらしいの。機械獣よりずっと小さいらしいわ。それに、数がものすごく多いみたい」

「まずいな・・・。わかった、今から行ってみる。あ、それから、そっちに女の子が二人行く。ロボットの修理の準備をして待っててくれ」

「女の子? ロボットの修理? ちょっとそれ、どういうこと甲児君!」

「悪い! 急ぐからまたあとで!」

 そう言って甲児は通信機を切ると、再びマジンガーから降りてドラえもん達に言った。

「悪い、また妙なロボットが出てきた」

「妙なロボット?」

「ああ。機械獣よりずっと小さくて、数がやたらと多い奴らしい」

「!!」

 ドラえもん達はそれを聞いて、思わず顔を見合わせた。

「もしかしてそれって・・・鉄人兵団!?」

「ここで人間狩りを始めたのか!?」

 慌てだしたドラえもん達を、甲児が制する。

「おい、どうしたんだ、お前達?」

「甲児さん、それはもしかしたら、僕達と一緒にこの世界にやってきたロボット達かもしれません。一緒に連れていってください!」

「お願いします!」

 急に頭を下げられ、甲児は当惑した。

「お、おいお前ら・・・。一体どういうことだ・・・?」

「事情を説明してるひまはありません! あいつらを放っておくと、とんでもないことになってしまいます!」

「お願いします!」

「・・・」

 甲児はぽかんとそれを見ていたが、やがて言った。

「・・・わかった。なんだかしらねえけど、そいつらと因縁があるみたいだな。ついてきていいぜ。ただし、あんまり無茶はするなよ」

「ありがとうございます!」

「おっと、だけどそこの女の子二人は、まっすぐに光子力研究所へ行ってくれ。場所はここに書いてある」

 甲児は地図を手渡した。

「ありがとうございます。しずかちゃん、急いでリルルを」

「わかったわ」

 ドラえもんはどこでもドアを取り出すとそれに地図をセットした。

「それじゃまた」

 リルルを連れて、静香はドアの向こうに消えた。それを見て、甲児が驚いた様子でドアの裏と表を何度も見る。

「お、おい、どうなってるんだ?」

「ドアの形をしたテレポート装置だと思って下さい」

「テレポート装置・・・ほんとにお前ら、一体何者なんだ?」

「あとで説明しますよ。とりあえず、僕らは先に行ってます」

 そういうとドラえもん達もドアの向こうに消え、やがて残っていたドアも消えてしまった。甲児は一人残され、ぽかんと立ちつくしていた。

「なんなんだあいつら・・・。まあ、しょうがねえ。俺も行くとするか」

 甲児はマジンガーのコクピットに戻った。そしてすぐに、マジンガーは背中からロケット噴射をして空へと飛び立った。



 どこでもドアから出てきたドラえもん達が見たのは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。彼らがにらんだ通り、やはり空を飛び交っているのは鉄人兵団だった。彼らは空を飛びながら熱線やハンドキャノンを放っては、街を爆撃している。あちこちで火の手があがり、街は逃げまどう人々でパニック状態にあった。

「ひでえ・・・」

「こんなところでまで・・・」

「ざっと5千体ぐらいだね・・・」

 ドラえもんが空を見上げて言った。

「許せない!」

「みんな、いくぞ!」

 ドラえもん達はタケコプターをつけると武器をもち、一斉に空へと飛んだ。そして空を飛ぶ鉄人兵達に対し、空気砲、ショックガン、瞬間接着銃などで攻撃を開始した。またたくまに、数十体の鉄人兵が撃墜される。だが、彼らの存在に気づいた鉄人兵達も、ドラえもん達に襲いかかる。

「ちくしょう! 相変わらず数だけは多いやつらだぜ!」

 ジャイアンがエネルギーが切れたショックガンを放り捨て、空気砲を装備した。その時、鉄人兵達が数十体かたまって彼らに襲いかかった。一斉に指を彼らに向ける。

「熱線が来るぞ! みんな、ヒラリマントだ!」

4人がヒラリマントを取り出そうとしたその時、あたりの空気に誰かの声が響いた。

ブレストファイヤー!!

 真っ赤な熱線がかたまりとなった鉄人兵達を飲み込み、跡形もなく消滅させた。熱線がとんできた方向を見ると、マジンガーZがブレストファイヤーの発射態勢をとって空に浮かんでいた。周囲の鉄人兵も、新手の巨大ロボットの出現にとまどっていた。

「甲児さん!」

「どうでえ! ドラえもん、こいつらみんな叩きつぶしていいんだな?」

「ええ! 頼みます!」

「よし! どこのどいつかしらねえが、マジンガーZの実力、たっぷりと思い知らせてやるぜ!」

 マジンガーZが鉄人兵団に対して攻撃を開始した。光子力ビームが鉄人兵達を撃墜し、ルストハリケーンがボロボロに腐食させる。特に光子力ビームが、鉄人兵達には効果があるようだった。ビームの直撃を受けなくても、その射線上の近くにいた鉄人兵達までがバタバタと落ちていく。

「なんだ? こいつら、光子力ビームに弱いのか?」

「僕達も負けてられない! いくよ!」

「おうっ!」

 ドラえもん達もマジンガーZという強力な応援を得て、鉄人兵団を一層激しく攻撃する。鉄人兵団はマジンガーZの方をより大きな脅威と感じたのか、マジンガーに対して大部隊を動かした。だが、鉄人兵達の攻撃はマジンガーに全く通用しない。それどころか、マジンガーに近寄ると、殺虫剤をかけられた蚊のようにバタバタと落ちていってしまうのだ。

「? こいつら、マジンガーにとことん弱いみたいだな」

 そうこうしているうちに、鉄人兵達の数はずっと減っていた。もはや数百体ほどしか残っていない。それに伴って、彼らの行動が変化した。散発的な攻撃を繰り返しつつも、撤退を始めたのである。ドラえもん達はそれを適当に追撃したが、結局鉄人兵達を街から追い出すことに成功した。

「なんとか追い払えたな。まったく、数が多い分、機械獣より始末が悪いや。でも、これでなんとか一段落ついたな。それにしてもDr.ヘルの一味だけじゃなくて、こんな奴らまで出てくるとはな。悪いけどお前ら、ちゃんと説明してくれよ」

「もちろんです。そのかわり、僕達も聞きたいことがありますけど」

「おう、任しとけ! よし、それじゃ今度こそ研究所へ戻ろうぜ。ついてこいよ!」


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