ドラえもん対マジンガーZ


〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜


第4話


光子力研究所


 富士の裾野に、少し前衛的な形をした白い大きな建物がそびえ立っていた。一回見ただけでは、どんな施設なのかちょっと見当がつかない。

 光子力研究所。そこはそんな名前の研究施設である。10年ほど前に甲児の祖父、兜十蔵博士が国の援助を受けて創設した研究所である。名前にもある光子力と、この研究所が建っている場所との間には、密接な関係がある。光子力とは、兜博士が発見した新エネルギーで、原子力の数十倍の力をもっているともいわれるほどの力をもち、マジンガーZのエネルギーにもなっている。そしてこのエネルギーを抽出できるのは、ジャパニウムという新元素の鉱石からのみである。そしてそのジャパニウムは、この光子力研究所の周辺、すなわち富士山一帯の地下からしか採掘されないのである。そのため、光子力研究所はこの場所に建っている。また、ジャパニウムからはそれまでのあらゆる金属をこえる強さをもつ金属、超合金Zを生成できるが、これもマジンガーZに使われている。すなわちマジンガーZは、製作者である兜十蔵博士が自分のもつ技術の粋を集めて作ったスーパーロボットなのである。

 この研究所へやって来た甲児とドラえもん達を迎えたのは、栗色の髪を少し長く伸ばした美少女、弓さやかと、のび太達とそれほど変わらない年の少年だった。少年は甲児の姿を見ると、彼に飛びついてきた。

「おかえり、お兄ちゃん! 大丈夫だった?」

「おう! ちょっと危ない目にあったけど、ドラえもん達のおかげで助かった。みんな、紹介するよ。弟のシローだ」

「兜シローです。よろしく」

「僕ドラえもんです。よろしく」

「僕、野比のび太。よろしく」

「俺は剛田武、よろしくな」

「僕は骨川スネ夫だよ。よろしく」

 ドラえもん達はシローと握手をした。その時、甲児が何かに気づいたように言った。

「そういやのび太、お前達、何年生だ?」

「5年生ですけど・・・」

「そうか。それじゃあ、シローと同じ年だな。みんな、シローと仲良くしてくれ」

「もちろんです。よろしくね、シロー君!」

「こっちこそ、よろしく!」

 さやかがドラえもんに近づいてきた。

「私は弓さやか。よろしくね。甲児君を助けてくれてありがとう。私も一緒に行くべきだったけど、アフロダイAが調整中だったから・・・。私からもお礼をいうわ。甲児君ってほんとに無茶するけど、よろしく頼むわね」

「もちろんです。それに、助けられたのはお互い様でしたから・・・。それよりも、リルルの調子はどうなんですか?」

「大丈夫よ。もう処置は終わってるから。さあみんな、中へ入って」

 さやかのあとについて、ドラえもん達は中へと入っていった。



 光子力研究所の中は、外から見たとおりとても広いものだった。その中を歩き回り、一同は第2工作室と書かれた部屋の前に来た。さやかがノックをする。

「どうぞ」

 中から静香の声がした。ドアを開けて中にはいると、そこにはベッドに横たわるリルルと、その傍らにいる二人の女性がいた。一人は静香、そしてもう一人は、白衣を着た理知的な感じの美しい女性だった。

「みんな、大丈夫だった?」

 静香が心配そうに尋ねた。

「うん。甲児さんもいたから、鉄人兵団を全て追い払えたよ。それより、リルルの具合は?」

「何カ所かダメージを受けている部品があったわ。だけど、もう大丈夫。ミコトさんが直してくれたから。今は休ませるために眠っているわ」

 さやかが言うと、静香の隣にいた女性研究員が頭を下げた。

「光子力研究所の研究員、榊ミコトです。みんな、よろしくね」

「女の子のロボットだったから、ミコトさんと私だけで直したわ」

「しっかし、本当にロボットなのかよ・・・」

 甲児はまだ信じられないといったようすで、リルルの寝顔を見た。

「私も最初は信じられなかったけど、本当よ。この子の体の中は、マジンガーよりも機械獣よりも複雑なメカでぎっしりだったわ。今でも信じられないわね。こんなにも複雑で、人間に近いロボットがいるなんて・・・」

 ミコトが心底驚嘆している様子で言った。

「それでミコトさん、リルルが調子を悪くした理由は、何だったんですか?」

「まだ仮説にすぎないけど・・・一応見当はついてるわ。でもそれについては、所長も交えて話をしたいの」

「そうだな。俺もまだドラえもん達について、何も知らないし。それじゃ行こうか。こっちは聞きたいことならなんでも答えるよ」

「こっちも、秘密にすることなんてありません。ちゃんと全て話しますよ」



 ドラえもん達が通されたのは、光子力研究所でも最上階にある大きな会議室のような部屋だった。そこではメガネと口ひげが特徴的な白衣の男と、それぞれ顔と体つきが特徴的な3人の研究員が彼らを待っていた。

「ようこそ、みなさん。私がこの研究所の所長を務めている弓弦之助です」

「わしはここの研究員、せわし博士じゃ」

「おなじく、のっそり博士」

「おなじく、もりもり博士じゃ。よろしく」

 ドラえもん達は彼らと握手をし、自己紹介をした。

「あの・・・名字が弓ってことは・・・」

「そう。さやかは私の娘だよ」

「せわし博士・・・ですか」

 ドラえもんとのび太がせわし博士をまじまじと見つめた。

「ん? わしがどうかしたのかね?」

「いえ、知り合いに同じ名前の人がいるものですから。気にしないで下さい」

「それではドラえもん君、早速で悪いが、君たちについて話してくれるかね」

「はい・・・」

 全員が席に着き、ドラえもん達は話し始めた。ドラえもんが22世紀から来たロボットであること、北極で拾ったロボットのこと、それが恐ろしい破壊兵器だったこと、地球に押し寄せる鉄人兵団、リルルがそのスパイだったこと、そして、決戦の最中に発生した謎のブラックホールのようなものにより、どうやら別の世界へと飛ばされてしまったこと・・・。弓教授達はその話に驚きながら聞き入った。

「つまり・・・君たちは私たちとは別の世界から来たということかね?」

「そういうことのようです。言ってみるなら、僕達にとってお互いの世界はパラレルワールド、ということになります」

「パラレルワールド・・・どこかで聞いたことがあるね」

 のび太が首を傾げた。

「僕達が前に大魔王デマオンと戦った魔法世界、あれもその一つだよ。一種の異次元と言ってもいいね」

「うむ・・・君たちが別の世界から来たことは、君たちのこれまでの行動から考えて真実だろう」

「そうだよな。でなけりゃ、しょっちゅうこの研究所を襲ってくる機械獣と派手に戦ってる俺達を、知らないわけないもんな」

 甲児が口をはさむ。

「しかし、君たちを飲み込んだブラックホールのようなもの、その正体は何なのだろう?」

「たぶんそれは・・・「次元乱流」だと思います」

「次元乱流?」

 聞き慣れない言葉に、ドラえもんを除く全員が言った。

「はい。僕のいた22世紀ではタイムマシンが発明されているので、時間に関する研究が進んでいます。それによって明らかになった現象の一つに、時空間乱流というものがあります。時空間乱流は、空で発生する乱気流のように、時空間にひずみが生じることでおきるブラックホールのような現象で、それに吸い込まれた人や物は別の時代へと飛ばされてしまいます。昔から日本では突然誰かがいなくなってしまうことを天狗のしわざとか神隠しとか言っていましたが、単なる行方不明以外の人間消失事件のほとんどは、これが原因らしいです」

「なるほど・・・それで、その時空間乱流と次元乱流とは、どう違うのかね?」

「次元乱流は時空間乱流と基本的に性質は同じです。違うのは強さなんです。時空間乱流がただの乱気流なら、次元乱流はハリケーン。あまりにも強さが大きいので、吸い込まれたものは時間ばかりか次元まで飛び越してしまいます。事例は少ないですが、この現象の例はいくつか報告されています」

「つまり君たちは、その次元乱流によって私たちの世界へと飛ばされてしまったということか。むう・・・」

 弓教授は腕組みをして考えた。

「ドラえもん、気になってるんだけど、僕達、どうやって元の世界へ戻ればいいんだい?」

 のび太が尋ねたが、ドラえもんはばつの悪そうな顔で下を向いた。それを見て、のび太が青ざめる。

「ま、まさか、二度と元の世界へ帰ることができないんじゃ・・・」

「・・・」

「そ、そんなのイヤだよ!!」

 パニック状態に陥るのび太達。それを見て、さやかが弓教授に尋ねた。

「お父様、なんとかみんなを元の世界へ返すことはできないの?」

 だが、弓教授は眉間にしわをよせたまま答えた。

「うむ・・・何しろ例のない現象だからな・・・その分野に詳しい学者がいればいいのだが、心当たりは・・・」

「わしらにもそんな知識はない・・・」

 三博士も頭を抱える。

「そんな・・・」

 その時、ドラえもんが顔を上げた。

「方法がないわけではないのですが・・・」

 それを聞き、全員の視線がドラえもんに集中する。

「それってどういうこと、ドラえもん!?」

「・・・時空間乱流も次元乱流も、時空にひずみが生じることによって起きる。そしてその原因は、空間に何かの原因で強烈な電磁場が生じたときなんだ。そのためには膨大なエネルギーが必要なんだけど、それを再現すれば、人工的に次元乱流を発生させることができる。そのなかに飛び込めば、あとは僕の道具を使って僕達の次元へ帰れると思う」

「なんだよ、方法があるんじゃないか! 心配させやがって!」

 ジャイアンがうって変わって明るい調子で言う。しかし、ドラえもんは相変わらず深刻そうな顔で言った。

「それがね・・・必要なエネルギーの量が、はんぱじゃないんだ・・・」

「どれくらい?」

「ざっと、日本全体の電力の三ヶ月分」

「なんだってぇ!?」

 その数値に、皆が驚いた。

「そんなエネルギー、マジンガーの光子力エンジンを使っても無理だぜ・・・」

「どうすればいいの・・・」

 皆が落胆する中、弓教授だけは黙って考えていた。そして、突然顔を上げて言った。

「いや・・・なんとかなるかもしれないぞ」

「えっ!?」

 今度は弓教授に視線が集中する。

「お父様、それってどういうこと!?」

「実は今、新型の光子力反応炉の開発を行っている。それならば、あるいはそれだけのエネルギーを発生させることも可能かもしれん。榊君、どう思うかね?」

「ええ・・・設計段階のスペックを達成できれば、十分可能だと思います」

「やったじゃねえか! 先生、早くその反応炉を完成させて下さいよ!」

 甲児がせかしたが、教授はそれをいさめた。

「甲児君、私もその気持ちはやまやまだが、完成までにはテストも含めてどうやってもまだ一ヶ月以上の時間がかかる。いますぐにそれを完成させることはできない」

「そ、そうなんですか・・・」

「でも、これで望みがでてきました。申し訳ありませんが、その反応炉が完成するまで、待たせてもらっていいですか?」

「もちろんだとも。甲児君を助けてもらったお礼もあるし、完成までこの光子力研究所でゆっくりするといい。ここにはまだたくさん空き部屋があるから、そこを好きに使ってもらってもかまわんよ」

「それじゃあドラえもん達は、ここで暮らすんだね!」

 シローが嬉しそうに言った。

「そこまでしていただけるなら、ありがたくお言葉に甘えます。みんなもいいね?」

「ええ!」

「断る理由なんてあるかよ」

「それじゃあ弓先生、僕達、ご厄介になります」

「ああ。これからもよろしく」

 ドラえもんと弓教授はあらためて握手をかわした。

「・・・それでは、今度は私たちから話をしよう。何について知りたいかね?」

「決まってるさ! マジンガーZと戦ってたあのロボット。あいつら一体なんなんですか?」

 ジャイアンが言った。

「あれは機械獣というロボットだ」

「機械獣?」

「機械でありながら、獣のように動くロボット・・・そういう意味だ。機械獣はDr.ヘルという科学者によって作られ、この光子力研究所やマジンガーZを狙って襲ってくる」

「Dr.ヘル・・・いかにも、悪の科学者ってかんじだね」

「おう。悪党も悪党さ」

 甲児が言った。

「でもDr.ヘルは、なぜこの研究所を狙うんです?」

「君たちも聞いたと思うが、マジンガーZは光子力エネルギーで動き、超合金Zで身を固めた最強のスーパーロボットだ。Dr.ヘルは世界征服のため、この光子力エネルギーと超合金Zを欲しがっている。だが、そのどちらもジャパニウムという元素からしか作り出すことはできないのだが、そのジャパニウムはこの研究所の周辺、すなわち、富士山一帯の地下からしか採れないのだよ」

「なるほど、それでDr.ヘルはこの研究所を襲ったり、研究所を守るマジンガーZを倒そうとしたりしてるんですね」

「そういうことだ」

「あいつらの攻撃も、だんだん激しくなってきてる・・・。だからマジンガーもジェットスクランダーを装備したり、いろいろとパワーアップしてるんだよ」

「でも、大変なことになりましたね。機械獣だけじゃなくって、鉄人兵団がこの世界に来てしまったから・・・」

「へっ、心配はいらねえよ! あんな奴ら、マジンガーと俺達で蹴散らしてやろうぜ!」

「もう、甲児君たらっ! いくらマジンガーでも、あれだけの数を相手にしたら危ないかもしれないわよ」

「それに、鉄人兵団の本当の力はあんなものじゃありません。本隊は何万もロボットがいるんですよ?」

「そ、そんなにいるのかよ・・・。でも、なんとかなるんじゃねえのか? あいつらなんだかしらねえけど、光子力エネルギーに弱いみたいだし」

「光子力エネルギーに弱い? それ本当なの、甲児君?」

 ミコトが身を乗り出して尋ねた。

「ああ。機械獣より光子力ビームがよく効いているみたいだったし、それにマジンガーに近づいただけでも、どんどん落ちていった」

「ふうん・・・やっぱりね」

 思わせぶりな口調で言うミコト。

「やっぱりって・・・どういうことだよ、ミコトさん?」

「リルルの壊れた部品を調べてみたら、光子力波の影響を受けていたのよ。制御回路が光子力波の影響を受けやすいみたい」

「光子力波って、なんですか?」

 静香が尋ねた。

「電磁波の一種で、光子力エネルギーから発せられるものよ」

「へえ、そんなものが光子力エネルギーから出てるんだ」

「甲児君、知らなかったの?」

 意外そうに言う甲児に、さやかがあきれ顔で言った。

「つまり、光子力波は鉄人兵団のロボットにとっては、私たちにとっての放射線と同じで有害なものってことね」

「その光子力波、俺達には害はないんですか?」

 甲児が少し心配そうな様子で言うと、のっそり博士が答えた。

「何を言っておるんじゃ。有害じゃったらわしらもお前も、とっくにそれから身を守るための防護服でも身につけておるはずだろう?」

「そ、そうだよな・・・」

「とにかく、光子力エネルギーは鉄人兵団に対して有効な力になりそうね」

「でも、リルルさんが心配だわ。もともと鉄人兵団のロボットだったから、その影響を・・・」

「大丈夫。光子力波を防ぐ光子力フィルターを、私が作ってあげるわ。それをつければ、リルルもあなたたちと一緒に動けるはずよ」

「本当ですか? よかった・・・」

 静香が胸をなで下ろす。

「僕達もおせわになるだけじゃ申し訳ありませんから、少しでもお手伝いをさせてもらいます。とにかく鉄人兵団だけは、なんとかこの世界で倒すか追い出すかしないと・・・」

「うむ。あまり君たちには戦って欲しくはないが、いざというときは君たちの力を借りるかもしれない。よろしく頼むよ、ドラえもん君、みんな」

「はい!」

「よーし! それじゃあ今夜は、パーッと歓迎パーティーを開こうぜ! さやかさん! シロー! 買い出しに行こうぜ!」

「あ! 待ってよ、甲児君!」

「置いてかないでよー!」

 早速会議室から飛び出す甲児と、慌ててそれを追うさやかとシロー。それを見て苦笑しながら、ミコトが言った。

「ああいうふうににぎやかだけど、よろしく頼むわね。」

「いえ、僕達もいつも同じ様な感じですから」

「それじゃあ私が、光子力研究所の中を案内するわ」

「よろしくおねがいします。それでは、失礼します」

 ミコトのあとについて、ドラえもん達も会議室から出ていった。会議室には弓教授と三博士だけが残された。

「別世界からとは、とんでもないお客さんですな、所長」

「またにぎやかになりそうですね」

 三博士が言うと、弓教授はにこやかな笑みを浮かべた。

「いいじゃないか。いつも苦しい戦いを続けている甲児君やさやかにとって、彼らはいい友達になれると思うよ」



 一方そのころ、地中海・バードス島。Dr.ヘルの本拠地である。この島に置かれている基地の廊下を、奇妙な人物が歩いていた。長いローブをまとい、顔の左半分が男、右半分が女になっている怪人。またもやマジンガーZに敗れ、苦い顔をしながら戻ってきたあしゅら男爵だった。

「まったく、いまいましいマジンガーZめ・・・。おまけに、機械獣とも渡り合える非常識なガキ共まで現れおった・・・。Dr.ヘルから、どんなお叱りを受けるか・・・」

 あしゅら男爵は苦々しさと不安のいりまじった顔で、一つの大きなドアの前に立った。

「あしゅら男爵、ただいま帰還いたしました」

「はいれ」

 ドアが開き、あしゅら男爵は中に入った。部屋の中には玉座のようなイスがおかれており、そこに老人が腰掛けていた。髪と髭をぼうぼうにのばし、マントを身にまとっている。一見して、悪い魔法使いのようにも見えるこの男こそ、悪の科学者、Dr.ヘルである。あしゅら男爵は彼の前でひざまずいた。

「またしても作戦に失敗したようだな・・・」

「はっ、もうしわけございません、Dr.ヘル」

「おのれマジンガーZめ・・・」

「しかし、ブロッケンの方の作戦はどうなったのです? 私の機械獣達がマジンガーZを引きつけている間に、ブロッケンの部隊が光子力研究所を襲撃する作戦では?」

「あれは中止となった」

「なんですと!?」

 あしゅら男爵は思わぬ言葉に愕然とした。

「どういうことです! 私がマジンガーと戦っている間、ブロッケンは何をしていたのです!? それでは私の戦いはムダではありませんか!」

「すまぬな、連絡が遅れた。ブロッケンが移動中にあるものを発見したので、急遽作戦をとりやめたが、そのころにはお前とマジンガーZは戦いを始めておった。あわよくばお前がマジンガーを葬れるかと思い、あえて中止命令を伝えずに戦いを続けさせたが・・・期待はずれじゃったな」

「も、申し訳ございません。しかし、ブロッケンが発見したものとは何なのです!?」

「十分にマジンガーZを葬れる力をもったものだ」

 誰かの声がして、あしゅら男爵は後ろを振り返った。見ると、そこにはまたしても奇怪な姿の男が立っていた。体をナチスを思わせる軍服で身を包んだ男。しかし、その男の首はあるべき場所にはなく、なんと小脇に首を抱えている。Dr.ヘルのもう一人の側近、ブロッケン伯爵である。

「ブロッケン! 貴様、どういうことだ!?」

「フフフ・・・あしゅらよ、お前もわしが見つけたものを見れば、文句も言えなくなるだろう。Dr.ヘル、グールで例のものを運んできました」

「おおそうか! 早く実物を見たい! 案内せい!」

「ハッ。すでにグールから下ろし、格納庫に置いてあります」

「よし。あしゅらよ、お前も来るのだ」

「・・・ハッ」

 Dr.ヘル達は基地の格納庫まで歩いていった。

「これです」

「おお・・・」

「な、何だこれは!?」

 Dr.ヘルとあしゅら男爵は、そこに置かれていたものを見て驚きをあらわにした。

「こんなものをどこで・・・」

「移動中に、日本アルプスに落下していたところを発見したのだ。いかがですかDr.ヘル。これさえあれば、マジンガーZなど・・・」

「おお、簡単にひねり潰すことができるだろう。それについさっき報告があった、謎の人型ロボットの軍団にも、十分たちうちできるだろう。でかしたぞ、ブロッケン。すぐに実戦投入のために準備を始めるのだ」

「ハッ。鬼門島で武装の追加を行ったのち、ただちにマジンガーZに向かわせるつもりです」

「フフフ・・・これさえあれば、マジンガーZを倒し、光子力エネルギーを手に入れるなど造作もないこと。そうなれば、もはや世界征服は目前だ! フフフフフ・・・フハハハハハハハハ!!」

 格納庫にDr.ヘルの笑い声がこだました。


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