ドラえもん対マジンガーZ


〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜


第6話


魔神倒れる


 突如出現したザンダクロスを凝視するマジンガー。と、その時、マジンガーZのコクピットに通信が入った。

「甲児さん、聞こえますか?」

「ああ、ドラえもんか! あのロボットは一体何なんだ!?」

「よく聞いて下さい! 外見は変わってますけど、あれは僕達が使っていたロボット、ザンダクロスなんです!」

「何だって!? それってもしかして、リルルが言っていた・・・」

「理由はわかりませんが、Dr.ヘルがザンダクロスを手に入れて改造したとしか思えません。気をつけて下さい。ザンダクロスには、恐ろしい力がありますから・・・」

「へえ、面白いじゃねえか! マジンガーZで相手になってやるぜ!」

マジンガーはザンダクロスに対して対決の構えをとった。

「フフフ・・・準備はいいようだな。行け! イビルX!」

 ザンダクロスの目がひらめき、その巨体を動かし始めた。

「先手必勝! まずは俺様がやってやるだわさ!」

「あっ! こらボス!」

 ボスが叫ぶと、ボスボロットをザンダクロスめがけて突進させた。

「うりゃあああ! ボロットパァァァンチ!!」

 気合いと共に、ボスボロットがパンチを繰り出す。だが、ザンダクロスは身じろぎもしない。棒のように立ち、ボロットのパンチを腹に受けた。だが・・・

ガシャン!!

「ありゃ〜! ボロットの腕がやられちゃったわよん!!」

 なんと、殴ったボスボロットの腕がグシャグシャにねじれてしまった。

「ボス!」

「なんて堅さだ!」

 スクラップで出来ているとはいえ、ボスボロットのパンチを受けても平然としているイビルX。その体は、かなり固い金属でできているに違いない。すると、今度はイビルXが反撃に転じた。ボスボロットの腕と体をつかむと、そのまま抱え上げたのだ。

「ありゃりゃりゃりゃ!!」

 コクピットの中でボスが大騒ぎする。すると次の瞬間、イビルXはボスボロットを放り投げた。激しく地面にたたきつけられたボスボロットは大きな損傷を受け、動けなくなってしまった。

「ボス! 大丈夫か!?」

「あ、ああ・・・。この程度でくたばる俺様じゃないだわさ。しかし本当、とことんついてねえなあ・・・」

 ボスの嘆く声が聞こえてきた。

「ボス、お前はそこから脱出するんだ! お前の分もきっちり暴れてやるぜ! まずは挨拶代わりだ! ルストハリケーン!!

 マジンガーが口からルストハリケーンを吐き出す。それは確実にイビルXをとらえたが、驚くべきことにその装甲は全く腐食しなかった。

「なっ、何だって!? ルストハリケーンが効かない!?」

「そんな・・・」

 驚く甲児とさやかをしりめに、イビルXが反撃に転じた。おもむろに両腕をマジンガーに向けると、両腕に装備されていたミサイルを発射した。

「うわあっ!!」

 とっさのことによけきれず、ミサイルの直撃を受けるマジンガーZ。

「ち、ちきしょう!」

「甲児君!! よくもやったわねぇ! ミサイル発射!」

 マジンガーが倒れるのを見て、アフロダイAがミサイルを発射する。それは見事にイビルXに命中したが、イビルXは全く動じない。

「そ、そんな・・・アッ!!」

 イビルXがアフロダイAをにらむ。すると、その目から怪光線が発射された。怪光線を胸に受け、大破して倒れるアフロダイA。

「キャアッ!!」

「さやかさん!!」

 だが、さやかからの答えはない。どうやら、意識を失っているようだ。

「ちきしょう! よくもみんなを! 手加減しねえからな! アイアンカッター!!

 マジンガーZがアイアンカッターを発射する。だが、イビルXの体はその攻撃までも跳ね返してしまった。

「何!? アイアンカッターまで!!」

「フッフッフ・・・このロボットの装甲は、貴様よりも固い金属でできているのだ! マジンガーZ! これで貴様も終わりだ!」

「何を! 負けてたまるか! こいつならどうだ!」

 マジンガーZがブレストファイアーの発射態勢をとる。だが・・・

「そうはさせん!」

 イビルXが目から怪光線を放つ。それを受け、よろめくマジンガー。

「うわっ! くっ!」

「まだまだぁ!」

 怪光線を連射するイビルX。マジンガーはそれをよけるのに精一杯で、ブレストファイアーを発射することができない。

「うわっ!」

 怪光線がマジンガーの左腕を直撃し、吹き飛ばしてしまった。それによって、マジンガーの動きが止まる。

「まずいぜ! このままじゃ甲児さんが!!」

「ドラえもん! 早く何とかして!!」

「わかってるよ! ええと、あれでもないこれでもない!!」

 ドラえもんはそう言いながら、次々にポケットからヤカンやら枕やら全く関係のないものを取り出してはそこら中に放り投げていた。パニック状態に陥ったとき、思ったものをすぐに出すことができない悪い癖である。

 そんな光子力研究所の面々のことなど知るよしもなく、イビルXが悠然とマジンガーZを見下ろす。

「今だ! やれ!」

 イビルXの腹がジャキンと開き、ビーム砲が姿を現した。

「あれは! まずい!」

「よけて、甲児さん!」

 モニターを見ているドラえもん達が絶叫する。だがその直後、ビーム砲は発射された。

ズガアアアアン!!

「うわああああ!!」

「甲児さん!」

 ビーム砲の直撃を受けたマジンガーは腹に大きな損傷を受け、倒れてしまった。動かないマジンガーに対して、イビルXがゆっくりと近づいてくる。

「甲児君!」

「甲児君! どうしたの!? 早く動いて!」

 弓教授やミコト達が必死に呼びかけるが、マジンガーは動かない。甲児が気を失ってしまったらしい。そして、イビルXはマジンガーを見下ろすように立ち止まった。

「フフフ・・・とうとうにっくきマジンガーZを倒すときが来たのだ・・・・。さあやれ、イビルX! マジンガーZを粉々にしてやるのだ!!」

 ブロッケン伯爵の言葉を受け、イビルXがとどめのビーム砲を放とうとする。

「甲児君!!」

 光子力研究所の面々が絶叫する。そして、ビーム砲は放たれた。

チュドオオオン!!

 爆音と閃光が、あたりを照らす。そしてそれが収まったとき・・・

「!?」

 なんと、倒れていたのはイビルXの方だった。胸から煙をあげ、地面に倒れている。一方マジンガーZはと言うと、その上に大きな赤い布がかけられており、まったく被害を受けていない。

「な、何があったの・・・?」

 状況が飲み込めないミコト達。だが、傷ついたマジンガーの横にいたドラえもん達を見て、全てを理解した。ドラえもん達はどこでもドアで移動し、とっさにヒラリマントをビッグライトで巨大化させ、ビーム砲からマジンガーを守ったのである。

「ふ〜、間一髪・・・」

「一息ついてる場合じゃないよ! マジンガーとアフロダイA、それにボスボロットをスモールライトで小さくして回収するんだ!」

「おうっ!」

 スモールライトを手にしたドラえもん達が散り、現場に倒れていたスーパーロボット達を小さくしていった。

「あしゅらが言っていた連中か!? ええい、邪魔をしおって! イビルX、いつまで倒れておる! あいつらをひねりつぶせ!」

 イビルXがゆっくりと立ち上がる。それを見て、スネ夫が言った。

「もう起きあがってきた!」

「くそっ! 味方なら心強いけど、敵に回すとこんなにおっかない奴はいねえ! 俺があいつを引きつけるから、みんなは急いでくれ!」

 そう言い残すとジャイアンは空気砲を装備し、イビルXに向かっていった。

「ジャイアン! ひとりじゃ無茶だ! 僕も行くよ! ドラえもん、あとは頼む!」

 のび太もその後に続く。

「たけしさん! のび太さん!」

「しずかちゃん! 今は回収を急ぐんだ!」

 一方、ジャイアンとのび太はイビルXと戦っていた。

「うおおお!」

「ひえええ!」

 怪光線を発し腕を振り回すイビルXに、さすがの彼らも苦戦する。空気砲による攻撃も効果がない。だが、その時

「ジュド! やめて!」

 リルルが飛来し、イビルXの顔のすぐ前で止まる。すると、イビルXの動きがピタリと止まった。

「止まった!?」

「リルルの声が・・・届いたの?」

 見つめるようにたたずむイビルXに、リルルは優しく語りかける。

「ジュド、こんなことはもうやめて・・・あなたは破壊兵器なんかじゃないでしょう? だからお願い、これ以上暴れるのは、もう・・・」

 イビルXは何もせず、その場にじっとたたずんでリルルの言葉を聞いているように見えた。

「ジュド・・・あなた、操られてるのね? あんなやつらのいいなりになっちゃダメ! ジュド、目を覚まして!」

 すると、ジュドはくるりと後ろを向いたかと思うと、突然空へと飛び去ってしまった。

「ええい、どうしたというのだ!? 戻らんか、イビルX!!」

 ブロッケン伯爵が必死にコントロールしようとするが、イビルXは空のかなたへと飛び去っていった。

「ジュド・・・」

 イビルXの去った方向を見つめ、リルルが悲しげな表情をする。そんなリルルに、のび太が語りかけた。

「リルル、ザンダクロスは僕達のことを・・・」

「ジュドの電子頭脳までは、交換されていない・・・まだ心は残っているわ。だから、私たちと戦うのを拒んでここを去ったのよ・・・」

 その時、ドラえもんの声がした。

「みんな、回収が終わったぞ!!」

 三体のスーパーロボットは全てドラえもんのポケットの中に収められた。それを見て、ブロッケン伯爵がいきり立つ。

「お、おのれぇぇぇぇ! あと一歩の所を! こうなればこの街を火の海にしてやる!」

 グールが高度を下げ始めた。どうやら、街を爆撃するつもりらしい。

「あの野郎・・・!」

「みんな! いくよ!」

「オウ!!」

 ドラえもん達は一斉に空気砲を構え、グールに狙いを定めた。

「発射!!」

ドガン!!

 戦艦の主砲が発射されたときのような轟音がとどろき、五つの空気砲から発射された圧縮空気の砲弾が一つとなり、グールの主翼を直撃した。それによって、グールの巨体がゆらぐ。

「撃ち続けるんだ!」

 空気砲の連射が続き、グールは翼から火を噴き始めた。

「右エンジン炎上! 出力55%低下!」

「おおおおのれ! おのれぇ! あいつらをひねり潰すのだ!」

「ブロッケン伯爵、落ち着いて下さい! このまま攻撃を受ければ、本艦は墜落します!」

「ぬ、ぬううう! おのれ・・・撤退だ! 覚えておれよ貴様ら! マジンガーZ共々、必ず貴様らを地獄にたたき落としてやる!」

 捨てぜりふを残し、グールが撤退を開始した。

「逃げていくよ!」

「逃がしてたまるかよ! 撃ち落としてやろうぜ!」

 ジャイアン達がいきまくが、ドラえもんがそれを制止した。

「待った! 今は甲児さん達を連れて帰るのが先決だ」

「う・・・わかったよ。早くしようぜ」

 ドラえもん達はどこでもドアをくぐり、光子力研究所へと戻っていった。



 心電図の音が響く治療室。人工呼吸器をつけ、ベッドに横たわっている甲児を、ドラえもん達は沈痛な表情で見つめていた。

「うう・・・お兄ちゃん・・・」

 シローがベッドサイドで涙を流しながら甲児を見つめている。ドラえもんが申し訳なさそうに言った。

「ごめんよシロー君・・・やっぱり僕達も一緒に行くべきだったんだ。そうすれば、こんなことには・・・」

「それに、あたしがもっとしっかりしていれば・・・。あたしは甲児君のパートナーなのに・・・」

「あなた達のせいじゃないわ。それに、命に別状はないし、ドラちゃん、あなたの持っていた治療道具を使って甲児君の傷もすぐに治るはずよ・・・」

 悔いるドラえもんとさやかに、ミコトがなぐさめの言葉をかけた。

「でも・・・それでも気が済みません。操られていたとはいえ、ジュドがこんなことをしてしまうなんて・・・」

 リルルも沈痛な表情をする。

「それに、マジンガー達はドラえもんの復元光線で直ったといっても、甲児さんは意識不明でこの研究所の守りは薄くなっています。もしこの時を狙って、Dr.ヘル達が攻めてきたら・・・。一体これからどうすれば・・・」

 病室が重苦しい雰囲気に包まれる。それをうち破ったのはジャイアンだった。

「どうするかだって!? 決まってるじゃねえか!」

 みんなの視線がジャイアンに向けられる。

「あいつらの基地になぐり込みよ! あいつらの基地に忍び込んで、ザンダクロスをかっさらうんだ! そうしなきゃ、甲児さんに合わせる顔がねえじゃねえか!」

「・・・そうだね。ここでこうしてるだけじゃだめだ。今度はこっちから行くべきかもしれない」

ドラえもんもその考えに同調するが、スネ夫が慌てて言った。

「で、でも乗り込むっていっても、あいつらの基地はどこにあるの?」

「・・・わからないわ」

 ミコトが言った。だが・・・

「・・・方法はあるわ」

 リルルが何かを取りだして言った。それは、携帯電話のような物体だった。

「リルル、それは?」

「ジュドの発する信号をキャッチする装置よ。これがあれば、ジュドの居場所がわかるわ」

「そうか・・・あいつらの基地に、ザンダクロスが置かれている可能性は高いね」

「やったじゃねえか! これで決まりだな! あいつらに一泡ふかせてやろうぜ!」

「・・・そうだね!」

「やりましょう!」

 雰囲気がやや明るくなる。ドラえもんが口を開いた。

「あいつらの基地に忍び込むとなると、人数は少ない方がいいと思う」

「俺は行くぜ。前にピリカ星に潜入したこともあるからな」

「それなら僕も」

 ジャイアンとのび太が手を挙げた。

「それならあたしも連れてって!」

 さやかが手をあげる。しかし、ドラえもんは首を振った。

「さやかさんは軽いとはいえ、ケガをしています。無理をしない方がいい。それに、さやかさんには甲児さんを守っていてほしいんです。アフロダイAを操縦できるさやかさんが出ていったら、ますます守りが薄くなってしまう・・・」

「でも・・・」

「さやかさん、気持ちはわかるけど、ドラちゃんの言うとおりよ。あなたは残って、甲児君を守ってあげなさい」

「・・・はい」

ミコトはドラえもんに顔を向けた。

「そのかわりってわけじゃないけど・・・ドラちゃん、私を連れていってもらえないかしら?」

「ええっ!? ミコトさんを!?」

「基地に忍び込むとなれば、セキュリティなんかをコントロールしてるシステムを突破する必要があるはずよ。それには、コンピュータに詳しい人間がいるでしょう?」

「で、でもミコトさんは科学者でしょう?」

「あら、私の趣味がトライアスロンだってこと、言ってなかったかしら? これでも体力には自信があるのよ」

そう言えば、歓迎パーティーの席でミコトはそんなことを言っていたような気がする。

「そうですか・・・。そこまでいうなら、お願いできますか?」

「喜んで」

 にっこりとミコトが微笑む。その時、リルルが手を挙げた。

「私も、連れていって」

「リルル・・・」

「ジュドにこれ以上悪いことをしてほしくないの。お願い。連れていって」

「・・・わかった。それじゃあ僕とのび太、ジャイアン、ミコトさん、それにリルルで、あいつらの基地に侵入しよう」

「へへ、腕がなるぜ!」

 ジャイアンが楽しそうに言う。

「よし! そうと決まれば、ぐずぐずしてられない! すぐに準備にかかろう!」

「おう!」

 あわただしく動き始めるメンバー。そのとき静香が、リルルを呼び止めた。

「リルルさん・・・頑張ってね」

「静香さん・・・ありがとう」

「リルルさん、あなた、変わったわね・・・。以前は人間のことなんて、どうでもいいと思っていたのに・・・」

「そうかもしれないわね・・・。あなたやのび太さん達、それに甲児さんを見てると、今まで感じたことのなかったことが、胸にこみ上げてくるみたいで・・・」

「それでいいのよ、リルルさん」

「ありがとう、静香さん」

「気をつけてね」

「そっちも・・・」

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