ドラえもん対マジンガーZ
〜「ドラえもん のび太と鉄人兵団」アナザーストーリー〜
第7話
ザンダクロス奪還作戦
真夜中の海。夜の闇に黒く染まった穏やかな海面の下を、一隻の潜水艦が航行していた。潜水艦の中には、5人の乗員がいた。ザンダクロス奪還作戦のメンバーとして選ばれた5人である。数々の秘密道具を使いこなすドラえもん、射撃の名手のび太、力自慢のジャイアン、科学者のミコト、そしてザンダクロスの居場所を知ることができるリルルと、言ってみればスペシャリストである。
ザンダクロス奪還作戦を決定してすぐに、ドラえもん達は準備にかかった。そして、潜水艦に乗って出航したのが2時間前。ちなみに潜水艦は、ドラえもんが持っていた「ミサイルつき原子力潜水艦」をビッグライトで巨大化したものである。これはラジコンであるが、性能は本物よりも上である。また、外装には透明ペンキが塗られており、文字どおり見えない潜水艦となっている。
「ミコトさん、この船の向かう先、わかりました?」
のび太が地図とにらめっこをしているミコトに尋ねた。この潜水艦にはザンダクロスの発する信号をとらえるレーダーが備えられている。リルルが持っていた装置を組み込み、ミコトが開発したものである。潜水艦は今、その反応が示す先へと向かっている。ミコトは地図から顔をあげた。
「うん、絞れたわ。たぶん基地は、この島にあるはずよ」
ミコトの指し示したポイントに、全員の目が集中する。そこには「鬼門島」と書かれた小さな島が描かれていた。
「鬼門島。ちょっと前までは集落があって人が住んでいた島だったけど、2年前に起きた地震で大きな崖崩れが起きて、大きな被害が出たの。もとから不便な島だったから、島の人もそれから島を離れて、今では無人島になっているわ」
「なるほど。基地を作りそうな場所ですね」
「鬼門島っていうのも、それっぽい名前だしな」
ドラえもんは潜望鏡を上げると、それをのぞき込んだ。
「あ、あれかな? 島が小さく見えてきた・・・」
潜望鏡の先に映る小さな島こそ、彼らの目的地、鬼門島だった。
鬼門島に到着した5人は潜水艦を目立たないところに接岸させ、島に上陸した。早速敵と出会った時に備え、皆武器を装備する。ドラえもんは空気砲、のび太はショックガン、ジャイアンはスーパー手袋。リルルはもともと熱線を発射する力があるので、武器はいらなかった。
「私は何がいいかしら?」
「そうですね・・・ミコトさんは、これが使いやすいんじゃないですか?」
ドラえもんはスモールライトを手渡した。
「光を当てると物が小さくなるライトね。不思議よねぇ、質量保存の法則を、どうやってクリアしてるのかしら。分解して調べたいわ・・・」
「それはあとで。それじゃみんな、これをつけてくれ」
ライトを見ながらぶつぶつ言うミコトを軽くたしなめ、ドラえもんは灰色の丸い帽子を取りだして、メンバーに手渡し始めた。
「何これ?」
「石ころ帽子です。かぶれば石ころみたいに、誰にも気にされなくなるんですよ」
「ピリカ星のときみたいに、有効期限が4時間とかいうことはないだろうな?」
「あんなへまはもうしないよ。大丈夫。これは効き目が切れることはないよ。それじゃリルル、道案内をよろしく」
「わかったわ」
探知機を手に持ったリルルを先頭に、一行は森の中へと分け入っていった。
しばらく森の中を進んだ一行。すると、突然リルルが皆を止めた。
「止まって」
「何?」
「この地下に反応があるの」
「それじゃ、この下に秘密基地があるのかな」
「・・・? 誰か来る! みんな、静かにして」
ドラえもん達は息をひそめた。やがて、自動車が走ってくる音がして、すぐにその音の主が姿を現した。軍服を着た男達が数人、ジープに乗って現れたのだ。男達は岩壁の一角でなにやらやっていたが、すると岩壁に自動ドアのように穴が開き、男達はジープごとその中へと入っていった。男達が入ると穴は再びしまり、あたりにまた静けさが戻った。
「あそこに自動ドアがあるみたいだね」
「まったく、わかりやすいわ」
「行ってみよう」
ドラえもん達がそこへ行くと、パスワードを打ち込むためのものらしいキーが岩壁についていた。
「パスワードが必要みたいだ」
「ミコトさん、解読できませんか?」
「やってやれないことはないけど・・・」
「心配はいらない。これを使えばいいんだ。通り抜けフープ!」
ドラえもんは通り抜けフープを取り出すと、岩壁にとりつけた。岩壁に丸い穴が開く。
「さ、早く入って」
ドラえもんに続き、一行はエレベーターの中へ入った。エレベーターは地上との連絡用らしく、行き先は
地下の1フロアだけだった。ドアが開くと、そこには四方に通路の広がる基地が存在した。
「うわあ・・・」
「本当に、秘密基地だね・・・」
「そんなことより、早くザンダクロスの居場所を見つけて、とっとと帰ろうぜ」
「待って。それよりも先に、ここのシステムと接続できるコンピュータのある部屋を見つけるのよ」
「それでどうするんです、ミコトさん?」
「力押しってのもいいけど、頭を使えばもっと効果的なことができるのよ。まあ、見てなさいって」
ミコトはそう言ってにっこりと笑った。
壁に丸い穴が開き、そこからドラえもんが室内に顔をのぞかせる。室内にはコンピュータの端末がいくつも置かれており、それらの前に3人の鉄十字軍団員が座り、作業を行っていた。ドラえもんはいったん通り抜けフープの穴から顔をひっこめると、ミコトに言った。
「ここならコンピュータがありますよ」
「わかったわ。みんな、静かに入って」
石ころと同等になっているドラえもん達が、室内へと入り込む。鉄十字軍団員達は、まったく気がついていない。
「のび太君、頼むよ」
「オッケー」
のび太はゆっくりとポケットからショックガンを取り出すと、目にも留まらぬ動きで引き金を続けざまに引いた。ショックガンから放たれた光線はあっというまに鉄十字軍団員達を気絶させた。
「さすがだね」
「軽い軽い」
のび太は西部劇映画のようにショックガンをくるくると回すと、ポケットにしまった。
「さ、早く作業に取りかかりましょう」
鉄十字軍団員達を縛り上げたドラえもん達は、早速作業に取りかかった。といっても、実際に手を動かしているのは、端末を前にしているミコトだけであるが。
「何をするんですか?」
「まずは、ザンダクロスのデータをそっくりいただいちゃいましょう。ザンダクロスを奪っても、データが残ってたらDr.ヘル達が新しく作っちゃうかもしれないでしょ?」
そう言いながら、ミコトは慣れた手つきで次々にシステムの障壁を突破していく。
「甘いセキュリティねえ・・・。自分が天才だと思ってる科学者は、こういうところが命取りなのよね、と!」
ミコトがキーを勢いよく押すと、ザンダクロスの設計図と各種データが浮かび上がった。
「やった!」
「ふうん、けっこうしっかりデータとってるじゃないの。こっちの手間が省けるわね。さ、それじゃいただいちゃいましょ」
ミコトはディスクをドライブに入れると、データをそっくりディスクへと移動させた。
「これでOK。次に、この基地の構造図を・・・」
ミコトがまたいくつか操作をすると、今度は基地の見取り図が浮かび上がった。
「ええっと、格納庫は・・・あった! ここね」
ミコトはそれをプリントアウトすると、また別な作業にかかった。
「今度はなにを?」
「欲しい物は手に入ったし、もらってばかりじゃ悪いから、ちょっとしたプレゼントをあげようと思って」
そう言ってミコトが取りだしたのは、一枚のディスクだった。ミコトはそれをディスクドライブに入れる。
「何ですか? それ」
「コンピュータウィルス。それも、「電子の死神」って呼ばれるほどタチの悪いやつよ。ちょっと前に光子力研究所にネット攻撃をしてきた奴なんだけど、まさかこんなことに使えるとはねえ・・・」
ミコトはそう言うと、ディスクの内容をシステムに流した。
「これでオッケー。20分も経てば、この基地のシステムは完全に食い尽くされるわ。それまでにザンダクロスを奪って、さっさと逃げましょう。行くわよ」
そう言ってミコトは、先を切って出ていった。
「あ、ミコトさん!」
「思ってた以上にアクティブな人なんだな・・・」
半ば呆気にとられながら、4人はあとを追った。
「あったわ! ザンダクロスよ」
端末から入手した見取り図をもとに格納庫に向かった5人が見たのは、機械獣とともに格納庫に置かれているザンダクロスだった。相変わらず、機械獣のようなゴテゴテした外装が取り付けられている。格納庫の中には、数名の整備兵しかいない。
「奪うなら、今がチャンスね・・・」
「待って、誰かくる・・・」
5人はそのまま物陰から様子をうかがっていた。リルルの言葉通り、格納庫の入り口から何者かが入ってきた。格納庫の整備兵達が、一斉に敬礼をする。
「あいつは・・・Dr.ヘル!」
「あいつが・・・?」
格納庫に入ってきたのは、あしゅら男爵とブロッケン伯爵を引き連れたDr.ヘルだった。
「なんだか科学者っていうより、悪い魔法使いみたいな奴だね」
「ほんとだぜ。顔に悪人って書かれてるような奴だ」
「あいつの右にいる、半分男で半分女なのがあしゅら男爵。左にいる首が宙に浮いてる奴がブロッケン伯爵よ。あんな気色のいい連中を好きで引き連れてるぐらいだから、ただの科学者なわけないけどね・・・」
一同が言いたい放題言っていることも知らず、Dr.ヘル達はザンダクロスを前にして話を始めた。
「まさか、こいつが自分の意識を持っているとはな。なぜ気づかなかったのだ、ブロッケン」
「その通りだ。おかげでマジンガーを倒すチャンスをふいにしおって・・・」
「だまれあしゅら男爵。申し訳ございません、Dr.ヘル。戦線投入を焦って、基本システムを交換せずに戦いに出してしまいました。しかしご安心下さい。これからすぐに、機械獣と同じ人工知能システムを組み込む作業を行います。そうすればこのロボットも、今度こそ我らの忠実なるしもべとなるでしょう」
「今度は手抜かりなくやるのだぞ、よいな?」
「ハハッ。おいお前達、わかっておるな?」
「ハッ。完全に作業を徹底させます」
整備兵達が敬礼をする。
「よかろう。それではブロッケン、案内を続けるのだ」
「ハッ。それではDr.ヘル、こちらへ・・・」
Dr.ヘル達は、再び出ていった。
「ジュドのシステムを入れ替えるですって・・・? そんなことをしたら、ジュドが・・・」
リルルが怒りの表情を浮かべる。
「Dr.ヘル達も行っちゃったし、やっぱりやるなら今しかないね。みんな、準備はいい?」
「オウ!」
ドラえもん達は物陰から飛び出した。のび太がショックガンを抜き放ち、たちまち整備兵達を昏倒させる。意外なほどあっけなく、のび太達は開けっ放しになっていたザンダクロスのコクピットにたどり着いていた。コクピットのレイアウトは、以前ドラえもん達が目にしたものと全く変わりなかった。
「相変わらず、ややっこしいコクピットだね・・・」
「ミコトさん、わかります?」
ミコトはコクピットの中のあらゆる設備を見回してから言った。
「・・・うん、なんとかなりそう。マジンガーのコクピットを、ちょっと難しくしたぐらいね。ただ、それでも一人じゃちょっと大変みたいだから、みんなも手伝って。それじゃ、いくわよ」
ミコトがスイッチの一つを押すと、開けっ放しになっていたコクピットハッチが閉まり、同時にコクピット内モニターに周囲の映像が映される。
「エンジン始動!」
別のスイッチを押すと、エンジンがかかるうなり声が聞こえてきた。
「ここまでは順調ね。それじゃ、微速前進!」
ミコトが一本のレバーを引く。だが、とたんに機体に大きな衝撃が走った。ザンダクロスは前進するのではなく後退してしまい、後ろの壁に背中をぶつけてしまったのだ。
「あら、間違えちゃったわ」
「ミコトさん、ほんとに大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。甲児君だって初めてマジンガーを動かしたときは、それは派手にあちこち壊したらしいわよ。それに比べれば、可愛いものでしょ? それに、ここならどれだけ壊しても良心が痛むこともないし。さ、気を取り直して!」
ミコトがレバーを前に倒すと、今度はちゃんと前進した。そのままザンダクロスは前進を続ける。
「いい調子ね!」
ところがその時、先ほどの音を聞きつけ、格納庫に入ってくる者達がいた。そう、Dr.ヘル達である。彼らはザンダクロスが動いているのを見ると、肝を潰した。
「なっ、なんだ!? 勝手に動いているぞ!」
「ブロッケン! これはどういうことだ!」
「わ、わかりません! 今止めます!」
ブロッケンは近くにあったコントロール装置に駆け寄る。だが、モニターを見て愕然とする。そこには鎌を持った死神が笑っていたのだ。
「な、何だと!? システムが破壊されている!?」
あわてふためくDr.ヘル達に、ドラえもん達も気がついた。
「電子の死神が、動き出したみたいね。これでもう、あいつらからのコントロールは受けつけないわ」
「それならちょっとあいさつ代わりに、この基地ぶっ壊していかないか? 甲児さん達にケガをさせた礼も、たっぷりと返してやろうぜ」
「いいね、それ」
「やろうやろう!」
「そういうことなら、のび太君、そこの黄色いボタンを押してみて」
「これですか?」
のび太がそれを押すと、ザンダクロスの目から怪光線が発射され、格納庫の壁に当たって大爆発を起こした。
「うわーっ!」
Dr.ヘル達が悲鳴をあげる。
「こりゃあいいや! のび太、もっとどんどんやれ!」
「わかった!」
調子づいたのび太がボタンを押すたび、発射される怪光線で基地の中はメチャクチャになっていく。
「ブロッケン、奴を止めるのだ! 機械獣を動かして止めさせろ!」
「ダメです! 機械獣の起動プログラムまで完全に破壊されています!」
「な、なんだと!?」
その時、ザンダクロスから声がした。
「へへっ、いい気味だぜ、Dr.ヘル!」
「子供の声!? 貴様、何者だ!?」
「へっ! 俺は剛田武、人呼んでジャイアン様だ!」
「同じく、野比のび太!」
「ドラえもんだ!」
「その声・・・貴様ら、あの時我が輩の邪魔をしてくれた連中だな! おのれぇ!」
ブロッケン伯爵がいきり立つ。それをあおるように、ジャイアンが続ける。
「世界征服を企む科学者っていうから、どんな奴かと思ってたけど・・・ヨボヨボのじいさんじゃねえか! 世界征服なんかうまくいったって、あと何年生きられると思ってるんだ!?」
「な、なんだと!? 貴様、無礼な!?」
「お前らみたいな奴らに、俺達のザンダクロスを動かす資格はねえぜ! のび太! 甲児さん達のお礼、たっぷり返してやろうぜ!」
「わかってる! いくぞぉ!」
ますます激しく怪光線を放つザンダクロス。その直撃を受け、格納庫に置かれている機械獣達が次々と爆発していく。
「ああっ、わしの機械獣が! やめんか、この盗人め!」
「盗人が聞いてあきれるぜ! ザンダクロスはもともとリルルと俺達のものだったんだからな! 返させてもらうぜ!」
「そうだそうだ! ジャイアン、いつものアレを言ってやりなよ」
「いつものアレ? おお、アレか! お前の物は俺の物、俺の物は俺の物だぁーっ!」
「な、なんてむちゃくちゃな理屈なの・・・」
自らの人生哲学とも言えるおなじみのセリフを吐くジャイアン。思わずミコトは絶句した。いつもはそう思うセリフだが、この状況では頼もしく思えてしまうから不思議だ。そんな間にも、今度は腕からミサイルが発射され、ますます格納庫の被害を甚大にしていく。ついには格納庫内の全ての機械獣は鉄の塊と化し、格納庫はもはやその原型を失っていた。
「さーて、これぐらいでいいかな。ミコトさん、さっさと逃げようぜ!」
「あんた達、悪口も攻撃も、ずいぶん派手にやってくれたわね・・・。まあいいわ。了解」
ザンダクロスはそのまま格納庫の破壊されたハッチへ近づくと、そのまま外へと飛び出して行ってしまった。
まだ格納庫では、あちこちで炎が巻き起こっている。立ち上がろうとするDr.ヘルを、ブロッケン伯爵が助け起こそうとする。
「ご無事ですか、Dr.ヘル!」
「ええい触るな! この役たたずめ!」
「も、もうしわけございません!」
「おのれぇぇぇぇ、あのガキ共ぉぉぉぉぉ!! お前達! マジンガーZより先に、わしを徹底的にコケにしてくれたあのガキ共を血祭りにあげるのだ! 何としてもだ! わかったな!?」
「ハ、ハイ!!」
怒りと屈辱に、Dr.ヘルは普段青白い顔を真っ赤に染めて激怒していた。
一方、脱出に成功したザンダクロスは、一路光子力研究所に向かって飛行していた。
「いやー、すっきりしたなあ!!」
まさに気分爽快といった感じで、ジャイアンが言った。
「ほんとほんと。スネ夫も連れてくればよかったね。こういうときこそ、あいつの口が役に立つと思うけど」
「まあいいじゃないの。それよりも、無事にザンダクロスを取り戻せてよかったわね、リルル」
「ええ、ありがとうございます・・・」
リルルが笑顔を浮かべて言った。
「それにしても、ずいぶん乗り心地のいいロボットね。さっきから結構派手に動いてるのに、ちょっと揺れるだけで全然激しい動きを感じないわね」
「どんな向きになっても、内部の重力場はいつも一定の方向みたいです」
「重力場・・・ふうん。進んでるのね。ちょっと研究してみようかしら」
その時、突然ザンダクロスの動きがガクンと止まり、空中に静止した。
「ミコトさん、どうしたの?」
「おかしいわね・・・。わかんないけど、突然操縦がオートに切り替わったみたい」
ミコトがいろいろと動かすが、いっこうに反応しない。その時、リルルが口を開いた。
「ジュド、どうしたの?」
「リルル、ザンダクロスと話せるの?」
「ええ。ジュド、一体何が?」
「な、何コレ・・・」
ミコトがレーダーを見て目を見張っていた。見ると、8時の方向に何かの影が大量に映っていた。
「追っ手ですか?」
「いえ、違うわ。もっと小さい・・・」
その時、ザンダクロスの向きが勝手に変わり、メインカメラが何かをとらえた。モニターに映ったそれを見て、一同は息を呑んだ。
「鉄人兵団・・・!」
それは、空を行く無数の人型ロボット軍団だった。
「あいつらが鉄人兵団・・・なんて数なの!」
「間違いない・・・あれが本隊だわ。でも、どうしてこんなところに・・・」
リルルが不思議に思っていると、ドラえもんが一つのことに気づいた。
「ねえ、あいつら、鬼門島に向かっているみたいだよ」
確かに、鉄人兵団は鬼門島を目指して動いていた。
「本当だ。でも、なぜ鬼門島なんかを・・・」
「きっと、基地を確保するためよ・・・」
リルルが言った。
「鉄人兵団が私を地球に送り込んだのも、地球に前線基地を建設させることが目的だった。いくら大軍でも、侵略には大きな基地が必要になるわ。どこであの基地のことを知ったかは知らないけど、きっとあそこを攻め落として、自分達の基地にするつもりなんだわ」
「なるほどねえ・・・。ミコトさん、どうするんです? あの基地が鉄人兵団の手に渡ったら、ちょっとまずいことになるんじゃ・・・」
ミコトは少し考えてから言った。
「このままかまわずに、光子力研究所へ帰りましょう」
「大丈夫なんですか?」
「脅威なのはあの基地じゃなくて、あそこに置かれていた大量の機械獣だった。それは脱出の時に破壊したから、もうあの基地は脅威ではないわ。それに、ザンダクロスといってもあれだけのロボットが相手じゃ、分が悪いわ。ここはおとなしく帰って、態勢を立て直しましょう」
「そうですね・・・」
「それじゃあ、行くわよ」
再びマニュアル操縦に戻ったザンダクロスを動かし、一同は鉄人兵団の動きを気にかけながら帰途についた。
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