「のび太君、のび太君…起きてよ…」
「むにゃ…ん…ドラえもん?…ここは…?」
ドラえもんの声と共に目を開けるのび太。彼の目の前には、砂だらけの地面があった。近くからは波のような音が聞こえてくる。どうやら彼はどこかの砂浜で、うつ伏せに倒れていたらしい。
のび太はのろのろと起き上がる。そして、心配そうな顔でのび太を見ているドラえもんの姿を確認すると、周囲を見回した。するとそこはやはり砂浜であり、スネ夫、ジャイアン、しずか…
彼らの仲間達が散らばって倒れているのが見えた。
のび太はドラえもんと共に彼らに駆け寄り、助け起こした。
「…ん…あれ?…」
「…フガ?…」
「…のび太さん?…」
5人は自分達が何をしていたのか、自分達に何が起きたのかを思い返した。
〜ドラえもん のび太と異世界の盗賊〜
プロローグ
割れた時空
♪イメージBGM:ロード画面
夏休みも終わりに近づいた頃の話である。
5人はドラえもんのタイムマシンで22世紀に行っていた。22世紀に新しいアトラクション施設が建設され、そのチケット6人分をドラミが福引で当て、それをドラえもん達に分けてくれたため、
5人は早速、そのアトラクション施設を楽しみに行ったのである。
そして5人は未来世界の楽しい娯楽を満喫し、タイムマシンで元の時代へと帰ろうとしていた。
「楽しかったわ…私達だけの楽しみにするのが、もったいないくらいだったわね」
「ウフフ。これもみんな、ドラミがチケットを当ててくれたおかげだね。後でお礼にメロンパンを持っていかないとね」
「あの射撃ゲーム、すごい迫力だったな〜。あんなに面白かったのはドリーマーズランド以来かな。ボクがランキングで1位取ったら、こんなにかっこいいホルスターがもらえたし」
「どうせなら、カラオケゲームも欲しかったな。それなら、俺の歌で一等賞間違い無しだったのにな」
「無くて良かったよ、ホント」
「おいスネ夫、何か言ったか?」
「い、いや、確かに無かったのは残念だな〜と…」
タイムマシンの上で楽しくしゃべりながら、時空間の中を帰路につく5人。その時…
「警告! 警告! 進行方向前方ニ大キナ時空ノ乱レ発生!」
突如、タイムマシンのコンピュータが警報を発した。そして前方に、稲光のようなスパークが発生したかと思うと、そこにヒビが入り…
バリイイィィン!!
時空間の一部が、ガラスのごとく割れた。割れた空間の先は真っ暗で何も見えない。
「な、何だありゃあ!?」
「じっ、時空間が割れたぁ!?」
ジャイアンとスネ夫の叫びが響く。ドラえもんは思わぬ事態に動揺しつつ、状況を確認する。
「そんな、時空間がガラスみたいに割れるなんて、こんな事は…まずい、このままじゃ、あの暗闇に突っ込んじゃう! タイムマシン、方向転換!」
咄嗟にタイムマシンを操縦して、時空間の割れ目から離れようと試みるドラえもん。だが、割れ目はブラックホールのごとくタイムマシンを引き寄せてきた。
「このままじゃ吸い込まれちゃうわ!」
「何とかしてよ〜、ドラえも〜ん!」
「何とかしろって言ったって…タイムマシン、全速力で振り切れ!」
「警告! 警告! 時空間ニ正体不明ノ異常発生! 制御不能、制御不能…」
ドラえもんの必死の抵抗も虚しく、時空間の割れ目に吸い込まれていくタイムマシン。その中で、5人は見た。
真っ暗闇の中で、赤いフードをかぶった不気味な人物の巨大な顔が映し出され、不気味な笑みを浮かべていたのを…
♪イメージBGM:魔界フィールド
「そうだ、僕達はあの割れ目に飲み込まれて…それにしても、ここはどこなの?」
動揺しながら周囲を見回すスネ夫。
「多分、どこかの時代のどこかの海だと思うけど…」
「だから、それがいつの時代のどこの海だって聞いてんだよ!」
のび太の素っ頓狂な返事に、ジャイアンは怒りに任せてのび太の胸ぐらを掴む。
「フガガガ…」
「タケシさん、のび太さんに当たっても何にもならないわよ。ねえドラちゃん、ここはいつの時代のどこなの?」
しずかの質問に対し、ドラえもんは困った表情で答えた。
「うーん、それが、いつの時代のどこの海かという問題以前に、ぼく達のいた世界ですら無いのかも知れないんだ」
思わぬ返事に困惑するのび太達。のび太がその言葉の意味を尋ねた。
「ボク達のいた世界じゃない? ドラえもん、それどういう事?」
「ぼく達の住んでいる世界とは別の世界って事だよ。そういう世界なら、これまでにぼく達も何度か行った事があるだろ。もしもボックスで作った世界とか、鏡の向こうの世界とか、絵本の中の世界とか、
夢の世界とか」
「ここが別世界だって? この砂浜は僕達のいる世界の砂浜にそっくりじゃないか。何でそんな事が分かるのさ?」
納得できない様子でスネ夫が言う。
「タイム電話でドラミと連絡を取ろうとしても繋がらないし、タイムテレビや宇宙完全大百科端末機も使えないんだ。ぼく達のいる世界なら、どれも使えるはずなのに」
「また故障じゃねえのか?」
怪訝そうな顔をしてジャイアンが言う。ドラえもんの道具は安物や使い捨て、レンタル品が多く、故障することも珍しくは無い。
「どれも故障なんてしてなかったよ。あの時空間の割れ目を抜けた先がこの世界だったんだね。あの現象は、時空乱流とも、タイムラビリンスとも、ねじれゾーンとも違う、ぼくも見た事が無い現象だった。
タイムマシンがあれば、タイムマシンのコンピュータであの割れ目の事が、何か分かるかも知れないんだけど…」
「タイムマシンがどうしたの?」
「それが、ぼくが目覚めた時には無かったんだ。ぼく達のいる場所とは別の場所に落ちたのか、誰かが持ち去ったのか…」
ドラえもんがしずかの質問に答えたところで、しばらく黙り込む5人。やがてのび太が口を開いた。
「ドラえもん、ここがボク達の住んでいる世界じゃないかも知れないのは分かったけど、それなら元の世界には帰れるの?」
「うーん…」
「まさか僕達、二度と帰れないなんて言うんじゃないよね?」
「じょ、冗談じゃないぜ!」
のび太、スネ夫、ジャイアンは慌ててその場でぐるぐると走り回って騒ぎ出す。
「みんな、落ち着いて! まだ帰れないって決まったわけじゃないのよ。そうよね、ドラちゃん?」
「現時点では何とも言えないね。分からない事が多すぎるし。でも、突然あの割れ目が出てきた事も、ぼく達がこの世界に来た事も、偶然とは思えない。
だから、この世界を調べていれば、ぼく達がこの世界に飛ばされた原因も、元の世界に帰る手がかりも見つけられると思うんだ」
「…それなら、ここでこうしていても仕方がないわね。この世界の事を調べましょう。諦めるのはまだ早いわ」
ドラえもんとしずかの話を聞いて、3人は落ち着きを取り戻す。
「…そうだね。ボク達、これまで何度も危ない目に遭ってきたけど、いつも切り抜けてきたんだしね。信じよう、きっと帰れるって」
「そうと決まれば話は早いぜ。みんな、行くぞ!」
右拳を振り上げて叫ぶジャイアン。
「行くぞ! は良いけど、行く宛てはあるの? 僕達、ここに初めて来たんだよ?」
スネ夫の指摘に、また黙り込む5人。するとしずかが、どこか遠くを指差した。
「ねえ、向こうに何か見えるわ。街じゃないかしら?」
しずかが指差した先には、高い塔がそびえているのが見えた。その下には、確かに街らしきものが見える。見たところさほど近代的ではなく、中性のヨーロッパか中東辺りの街並みのようだ。
「行ってみよう。結構大きな街みたいだし、何か手がかりがつかめるかも知れない」
ドラえもん達は街を目指して歩き始めた。
「ねえみんな、僕達が割れ目に吸い込まれた時さ、妙な顔を見…」
歩きながら話し始めるスネ夫だったが、彼の話は思わぬ形で中断された。
ボコォッ!!
♪イメージBGM:通常戦闘
突如、5人の前方の砂が噴き上がり、周囲に砂煙が舞った。そして砂煙が止んだ後、そこから現れたのは…
「キャーッ!!」
「出たあーっ!!」
「カッカカカ、カニのお化けだぁー!」
しずか、スネ夫、のび太の悲鳴が響く。5人の前に現れたもの、それは巨大なカニであった。巨大といっても、高さはジャイアンと同じくらいであったが、
それでも普通のカニに比べれば充分に巨大と言えるだろう。
5人が驚いている間に、大ガニは見かけによらぬ素早い動きで5人に接近し、右手のハサミで殴りかかってきた。
※(ジャイアン、回避判定…失敗。大ガニの攻撃が命中)
ガツンッ!
「いてっ!!」
大ガニのハサミはジャイアンに命中し、ジャイアンは弾き飛ばされた。慌てて彼に駆け寄る4人。
「ジャイアン、大丈夫?」
「痛ってーな、ちくしょう…」
ジャイアンを助け起こすスネ夫。だが、彼らを襲う危険はそれだけではなかった。
ボコォッ!! ボコォッ!!
地面からさらに2匹の大ガニが出現したのだ。
合計3匹の大ガニは、カニ特有の横歩きで、5人の周囲を回るように移動しつつ、素早く5人に接近してくる。
「ど、どうしよう。僕達、囲まれちゃったよ…」
「ふん、ちょっとでかいだけのカニぐらい何だってんだ。俺様がぶっ飛ばしてやるぜ」
「ドラえもん、武器は?」
※(ドラえもん、ひみつ道具判定…成功)
「ちょっと待って、ええと…あった。ショックガン!」
ドラえもんはポケットから、相手を傷つけずに気絶させる光線銃・ショックガンを取り出した。
ドラえもんからショックガンを受け取ったのび太は、早速それを大ガニの1匹に向けて発射した。
※(のび太、射撃判定…成功。大ガニBに命中)
「ギイィィィ!」
ショックガンからほどばしる光線は、正確に大ガニに命中し、大ガニは悲鳴を上げてしばらく震えた後、動きを止める。
…が、やがてまた動き始めた。ただし、ダメージが残っているのか、動きはやや遅くなっている。
「効かない? …いや、ダメージは与えたみたいだ。これなら何とかなりそうだ」
そう言うと、ドラえもんは再びポケットに手を入れる。
※(ドラえもん、ひみつ道具判定…成功)
「空気砲!」
空気の塊を発射する武器・空気砲を右手に装着するドラえもん。そうしている間にも、3匹の大ガニはどんどん近づいてくる。もう次の武器を出す余裕はない。
「のび太、ドラえもん、こいつは俺がやるから、あとの2匹は任せた!」
拳を握りしめて大ガニの1匹を睨みつけるジャイアン。それは、先ほどジャイアンに不意打ちを喰らわせた個体である。
「タケシさん、武器も無いのに大丈夫?」
「ふん、こんな奴、げんこつで充分だぜ」
「分かった。こいつはボクが引き受けるよ」
のび太は先ほどショックガンを喰らわせた大ガニを睨みつける。
「ぼ、僕はええと…しずかちゃんを守るよ!」
震えながらしずかの前に立つスネ夫。
「こいつはぼくがやる。みんな気を付けて!」
ドラえもんの叫びと共に、ドラえもん、のび太、ジャイアンの3人が、それぞれ大ガニに立ち向かう。
ジャイアンに襲いかかる大ガニ。今度は左手のハサミで殴りかかる。
※(ジャイアンVS大ガニA、戦闘判定…ジャイアンの攻撃命中)
だがジャイアンは、そのまま突進してハサミ攻撃をすり抜けると、大ガニに飛びついて押し倒し、そのままのしかかって大ガニの腹を殴り始めた。
全身を甲殻で覆われている大ガニも、腹の部分はさほど硬くはないのか、殴られる度に小さな悲鳴を上げている…
※(のび太VS大ガニB、戦闘判定…大ガニBの攻撃命中)
一方、のび太は2匹目の大ガニから距離を取るように走りながらショックガンを構える。だが…
「うわっ!」
あろう事か、足元に転がっていた小さな流木に足を取られ、転んでしまった。慌てて起き上がるのび太だが、その隙に大ガニの接近を許してしまい…
ガツッ!
大ガニの右手のハサミで腹を捕らえられてしまった。ハサミを少しずつ締めながら、のび太を少しずつ持ち上げる大ガニ。
「いたたたたた!!」
悲鳴を上げながらジタバタするのび太…
※(ドラえもんVS大ガニC、戦闘判定…引き分け)
同じ頃、3匹目の大ガニに空気砲を向けていたドラえもんだが、のび太の悲鳴に思わず振り向く。
「のび太君!?」
その隙に接近し、右手のハサミを振り上げる大ガニ。そして振り下ろす。
「わあぁっ!」
幸いすぐに意識を大ガニに戻したため、何とか攻撃をかわす事に成功したドラえもん。だが大ガニは、素早い動きで左右のハサミを交互に振り降ろしてくる…
※(ジャイアンVS大ガニA、戦闘判定…ジャイアンの攻撃命中)
ジャイアンはジタバタする1匹目の大ガニを押さえつけつつ、なおも殴り続けている…
2匹目の大ガニは、のび太を捕らえた右手のハサミをそのまま持ち上げつつ、左手のハサミを振り上げて追い討ちをかけようとする。
「くっ!」
だが、のび太は咄嗟にショックガンを構えた。狙いは大ガニの頭部に突き出ている2つの丸い物体…目である。ショックガンから光線が2度ほとばしる。
※(のび太、射撃判定2回…2回とも成功。大ガニBの両目に命中)
「ギギギギギイィィィ!」
2発の光線は見事に大ガニの両目を直撃した。目をやられた大ガニは苦痛にうめき、捕らえていたのび太を放り出すと、そのままどこかへと逃げ去っていった。
「ふぅ…助かった…」
※(ドラえもんVS大ガニC、戦闘判定…ドラえもんの攻撃命中、クリティカル)
3匹目の大ガニは、なおもドラえもんに攻撃を繰り出していた。それをかわし、距離を取ろうとするドラえもんだが、着地の際にバランスを崩してしまう。
「おっととと!」
その隙に一気に接近し、両手のハサミを振り上げる大ガニ。だがドラえもんは、咄嗟に空気砲を前に突き出し、発射の掛け声を上げた。
「ドカン!」
ドカンッ!!
近距離で発射された空気砲は大ガニの腹部を直撃し、大ガニを十メートル以上先へと吹き飛ばした。大ガニは仰向けに落下し、そのまま意識を失った。
「やった!」
※(ジャイアンVS大ガニA、戦闘判定…ジャイアンの攻撃命中)
その頃、なおも1匹目の大ガニを押さえつけつつ、殴り続けていたジャイアン。だが大ガニは、何とか両手を振り上げてジャイアンに殴りかかろうとする。
「おっと!!」
ジャイアンは咄嗟に両手を伸ばして大ガニの両手を受け止める。だがその隙に、大ガニはたくさんの足をうまく使って体勢を立て直し、ジャイアンから離れてしまった。
身構えるジャイアン。だが大ガニは形勢不利と見たのか、そのまま横歩きで海の方へと逃げ去ってしまった。
♪イメージBGM:魔界フィールド
戦闘が終わり、戦闘に参加しなかったスネ夫と静香が3人を労う。
「のび太さん、ドラちゃん、大丈夫?」
「ぼくは平気だよ。ぼくよりのび太君が心配だよ」
「あ、あんなのへっちゃらさ、イテテテ…」
「すごいねジャイアン。化け物をげんこつでやっつけるなんて」
「ふん、あんなの化け物のうちに入らねえよ。俺を殴るなんて、のび太の…じゃなかった、カニのくせに生意気だぜ」
大ガニ達を退けた5人は、そのまま砂浜を歩き続けるうちに、街の方向へと伸びる道を発見し、それに沿って進んでいった。
5人が街に近付くにつれて、高々とそびえ立つ塔と、当のふもとに居並ぶ、ねじくれたような建築様式の建物が目に入る。
「あんな化け物がいるって事は、やっぱりここはボク達のいた世界じゃないんだね」
のび太が大ガニの事を思い出しながら言う。それを聞いて、スネ夫は体を震わせる。
「僕達、こんな所歩いてて、また化け物に襲われたりしないかな…」
「そんなの、さっきみたいにやっつければ良いだけじゃねえか。怖がる事なんてねえよ」
ジャイアンは指を鳴らしてみせる。
「そうだよ、ぼくだってついてるし。今までぼくが君らをどこかへ連れてって、危ない目に遭わせた事がいっぺんでも…あ…」
「みんな、着いたわよ」
ドラえもんが皆に「(危険な目に遭わせた事が)しょっちゅうじゃないか」と突っ込まれる前に、5人は街の門の前に着いた。
門は開いており、そばには立札が建てられている。周りに人はいない。ドラえもんが立札を覗き込むと、英語のような文字が書かれていた。
※(ドラえもん、ひみつ道具判定…成功)
「英語に似てるけど、やっぱりぼく達の世界の言葉とは違うみたいだね。ようし…翻訳こんにゃく!」
ドラえもんはポケットから、食べるとあらゆる言語を理解し、話す事が可能になる食品・翻訳こんにゃくを取り出し、一口で食べると、再度立札を覗き込んだ。
「ねえドラえもん、何て書いてあるの?」
のび太が尋ねる。
「カラメールへようこそ…この町の名前みたいだね」
「ふーん…それにしても変じゃない? 門は開けっ放しだし、門番もいないなんて…」
スネ夫の指摘に、しずかが周りを見回した。
「そういえば、門の周りには誰もいないみたいね」
「とにかく入ってみようぜ」
「待って。その前にみんなもこれを食べて。言葉が分からないんじゃ、話を聞くどころじゃないからね」
ドラえもんは全員分の翻訳こんにゃくをポケットから取り出す。それを食べ終えると、5人は門をくぐってカラメールの街に踏み込んだ。
門の向こう側には、やはり人は見当たらなかったが、すぐに街の反対側の方から、叫び声のようなものがいくつも聞こえてきた。
「何かしら?」
しずかが声のする方向を見て首を傾げる。ドラえもんもその方向を向いた。
「街の人達はあっちにいるみたいだね。何か事件でも起きたんじゃないかな」
「僕達も行ってみようよ」
野次馬根性に火が付いたのか、今回は真っ先に行こうと言い出すスネ夫。
「よーし、急げ!」
「待ってよ〜、みんな、走らないでよ〜」
ジャイアンの掛け声と共に、人々の声のする方へと走り出す5人。足の遅いのび太は他の4人に追いつくのに必死である。現場に近付くにつれて声は大きくなっていく。
道端には荷車が放り出され、店には店員の姿も無い。
門のところから出発して数分後、遅れているのび太を除いたドラえもん達は街の中央広場に着いた。
「ここみてえだな」
「すごい人の数ね。まるで街中の人が集まってるみたい」
「ここの人達の格好ってさ、前に僕達が行った、昔のアラビアで見かけた格好に似てるね」
広場はものすごい人だかりができていた。スネ夫の言う通り、人々は皆、昔の中東諸国あたりで多用されていたものに似た服装をしている。そして皆、何かを見上げて騒いでいた。
「みんな、何を見て…あっ、あれは…!」
ドラえもんは人々の見上げている方へと視線を移す。他の3人もそれに続いた。
「はぁ、はぁ、やっと追いついた…あれ、ドラえもん、何見てるの…!?」
遅れて到着したのび太も、ドラえもんの視線の先にあるものを見上げる。人々は目の前にそびえる塔の頂上を見上げていた。同じように塔を見上げた5人の目に映ったものは…
原作「謎かけ盗賊」との設定の相違
・原作では、主人公達はタイタン世界(この物語の舞台)の冒険者であり、別世界から来た存在ではない。
・原作では、主人公達が街に着いたところからスタートする。そのため、大ガニとの戦闘はもちろん、砂浜でイベントに出くわす事自体が無い。