〜ドラえもん のび太と異世界の盗賊〜


第13話


とある盗賊の実験室ラボラトリー




イメージBGM:ボスダンジョン
 「「「「「「!?……」」」」」」

 突然泡立ち始めた桶の水を、ドラえもん達は不安げに眺めた。

 桶から立ち上っていく泡は、やがてゆっくりと収まった。かと思うと、水面あたりからキラキラ輝く、小さな丸い目が6人のいる方を見つめていた。そして…


バシャアッ!

イメージBGM:通常戦闘
 突然桶の中から、銀色の怪物が飛び出してきた。その怪物とは…

 「わあっ! ドラゴンだぁーっ!!…って、何これ? アハハハ…」

 「ガッハッハ。何だよ、こんなに小っちゃいドラゴンが出てきたぜ」

 のび太とジャイアンの笑い声が響いた。

 出てきた怪物は翼の生えた、銀色のドラゴンだった。ただし、猫ほどの大きさしかなかったが…

 小さいといっても、別に子供のドラゴンというわけではない。外見は確かに立派な大人のドラゴンなのだが、それがまるでスモールライトで縮小されたかのように小さくなっているのだ。

 「うわあ、綺麗…ペットにしたいくらいだわ…」

 「小っちゃいけどかっこ良いな…僕ん家にも1匹欲しいな…」

 6人が完全に油断していると、ミニチュア版のドラゴンは突然息を吸い込み…
(ジャイアン、回避判定…失敗)

ブオッ!


 ジャイアン目掛けて息を吐き出した。油断していたジャイアンは、それをまともに喰らってしまう。ドラゴンの息は冷気を帯びており、ジャイアンの顔が白い霜に覆われる。

 「うわぁっ! 冷てーっ!…こいつ、チビのくせに生意気だ!」

 怒ったジャイアンはショックスティックを構えた。スーパー手袋をはめたダッパ、空気砲を構えたドラえもんも前に出る。
(ジャイアン、ダッパ、ドラえもんVSミニチュア銀龍(四人同時攻撃可能) 戦闘判定…ジャイアンの攻撃が命中、クリティカル)
 ダッパがドラゴンに掴みかかるが、ドラゴンは素早く飛び回って逃れた。部屋が狭いので、体が小さい上に空を飛び回れるドラゴンには、思いのほか攻撃を当て辛いようだ。

 ドラえもんは空気砲を構えるも、敵は素早く飛び回る上に、狭い部屋では迂闊に発射できない。ドラえもんが戸惑っていると、ドラゴンは突然足の爪を前に突き出し、ドラえもん目掛けて突進してきた。

 だがドラえもんは咄嗟に空気砲を横にして、側面でドラゴンの爪を受け止めた。攻撃を防がれたドラゴンはそのままドラえもんから離れた。

 そこへジャイアンがショックスティックを力いっぱい振り下ろした。その攻撃はドラゴンを直撃し、ドラゴンを桶の中に叩き伏せた。


バシャアッ! ズビビビビビッ!!


 しかも、ショックスティックには電撃スイッチが入っていたため、スティックから流れる電流は、濡れたドラゴンの体を通して桶の中の水にも流れ、 ドラゴンは、言わば出力を制御していない電気風呂に入ったかのような状態になってしまった。

 やがてドラゴンは黒焦げになって息絶えた。するとその体は、焦げた粉末となって水に混ざってしまった。


イメージBGM:ボスダンジョン
 「…こ、粉になっちゃった…」

 のび太が呆然としながらつぶやく。

 「…もしかして…」

 ドラえもんは桶のそばに落ちている、青い粉が少し入った、割れた試験管を拾い上げた。続いて、床に散乱した書類の一部を拾い上げ、それに軽く目を通した。

 「…分かったよ! この粉は、怪物を粉にしたものなんだ! 怪物を精製、濃縮して、粉末化したのが、この部屋に置いてある粉なんだ! しかもこれは、水を加えると元の生物に戻るんだ!」

 「怪物を粉にする、だって!? 謎かけ盗賊はそんな事もできるのか!」

 「謎かけ盗賊は、本当にドラえもん並みにすごい道具を作れるんだね…」

 謎かけ盗賊の魔法技術に、改めて驚くダッパとのび太。ここでスネ夫は、ある事に思い当たる。

 「じゃあさ、さっきのドラゴンが小さかったのって…」

 「うん。粉が足りなかったから、元の大きさになれなかったんだ」

 「…ここにある粉って、全部怪物なのかしら…」

 「全く、危ないもん作りやがって…」

 ジャイアンは不機嫌そうに、板張りの壁をバンと叩いた。するとその衝撃で、先ほどの戦いで不安定に立っていた試験管の1つが倒れ、そのまま桶の中に落ちて割れてしまった。

  ゴボゴボゴボゴボ…

 先ほどのように、桶からものすごい泡が立ち始めたかと思うと、やがてゆっくりと収まった…

 「……!」

 「ジャ、ジャイアン! 何やってんの!」

 顔が青ざめるジャイアンと、ジャイアンの失態に怒鳴り声を上げるスネ夫。そうこうしている間に、桶の中から翼を持った何かが飛び出した。


バシャアッ! バサバサバサッ!


 「わあっ! 出たーっ! …って、鳥…?」

 のび太の言う通り、桶から出てきたのはごく普通の鳥だった。どうやら鳩らしい。

 鳩はそのまま部屋の扉の方へと飛んで行ったが、扉は閉まっていたので外へは出られない。しずかが扉を開けてやると、鳩はそこから廊下へと出て行った。

 「…ただの鳩だったみたいだね…」

 ドラえもんがつぶやく。6人は胸を撫で下ろした。その後6人は、粉末生物の入った試験管をいくつか持って行く事も考えたが、どの粉末がどの生物なのか分からない上に、 元に戻した途端に自分達を襲ってくる可能性もあるという事で、手を出さずに部屋を出る事にした。



 廊下に戻った6人は相談の末、次は入って左の真ん中の扉を試す事にした。

 扉の向こうはかなり狭く、明かりが穏やかに明滅している部屋だった。奥の方に2メートル四方の金属板が向かい合わせに立てられている。その間で、色とりどりの光が踊るように動き、 甲高いパチパチという音を発している。

 「何かしら、これ?」

 「これは…魔法場かも知れないな。あの光ってるのは魔力のようだ」

 「つまり、魔力を使った電磁場のようなものだね。じゃあ、あの板は魔力を生み出して、それをここに維持させる装置というわけだね」

 ダッパの説明を理解するドラえもん。

 「でもよ、もし俺達が、その魔法場とかいう奴に触ったら、どうなるんだ?」

 「もしかして、ボク達でも魔法が使えるようになったりして?」

 のび太の声には多少の期待がこもっていた。

 「まさか。何だか触ったら危なそうだよ」
(ドラえもん、運試し判定…吉)
 スネ夫の発言を裏付けるかのように、部屋の中に1匹の大きな蛾が入ってきたかと思うと、光に集まる習性故か、魔法場に入っていった。すると…

  パチパチパチパチ…

 6人の目の前で、蛾はあっという間に変異を起こした。色が変化し、新たに4枚の羽が生えて8枚羽になったかと思うと、その場に落ちて死んでしまった。

 「…どうやらこの魔法場は、生き物を突然変異させるものみたいだね」

 ドラえもんが言う。するとのび太が、震えながらつぶやいた。

 「じゃ、じゃあ、もしボク達が入ったりなんかしたら…」

 「魔法が使えるどころじゃないね。やっぱり僕の言った通り、触ったら危ないものだったんだ…」

 スネ夫が答える。ここでダッパは、謎かけ盗賊の変異したトカゲ兵達の事を思い出した。

 「もしかしたら、謎かけ盗賊のトカゲ兵達も、これを使って普通のトカゲ兵には無い力を手に入れたのかもな…」

 「生き物を怪物に変える装置なんて、酷いわね…」

 「おい、これをこのままにしておいて良いのか? ぶっ壊した方が良いんじゃねえか?」

 ジャイアンがショックスティックを構える。ダッパもスーパー手袋をはめた。

 「…確かに、これをこのままにはできないね。でも、下手にこの板に触っても危ないと思うんだ。ここは確実に破壊できる方法を取ろう」

 ドラえもんはそう言って、ポケットに手を入れた。
(ドラえもん、ひみつ道具判定2回…2回とも成功)
 「材質変換機と秘密書類焼き捨て銃!」

 ドラえもんは光を当てた物体の材質を変化させる手提げランプのような道具・材質変換機と、スパイに奪われた秘密書類を遠くから焼き捨てるライフル・秘密書類焼き捨て銃を取り出す。

 ドラえもんは材質変換機の光を、魔法場を発生させている2枚の板に当てた。

 「これでこの装置は紙になった。後はこれだ。さ、みんな危ないから一度外に出て」

 「紙に?」

 ダッパが首を傾げるも、ドラえもんは構わずに仲間達を部屋の外に出し、自分も外に出ると、入口の前に立って秘密書類焼き捨て銃を構え、引き金を引いた後、すぐに扉を閉じた。次の瞬間…


ボウッ!!


 部屋の中では、ものすごい勢いで魔法場発生板が燃え上がり、あっという間に燃え尽きてしまった。

 しばらくしてドラえもん達が扉を開けて中を覗き込むと、そこには紙くずの燃えたような灰があるだけだった。

 「こ、これが、あの装置?…すごい、紙みたいに燃え尽きてる…」

 「だから言っただろ、装置を紙にしたって」

 息を呑むダッパに対し、ドラえもんは得意気に言った。



 「もしかしたら、この階自体が謎かけ盗賊の実験室なのかも知れないね」

 「この階自体が実験室?」

 「そう。この階の部屋には、謎かけ盗賊が作った物や、何かを作るのに使った機械が置かれてるみたいだし。実験の種類に合わせて、部屋を使い分けてるのかも」

 「それじゃ、この階を調べていれば、何かすごい道具が手に入るかも知れないね」

 「そうかもね。もし、さっきの機械みたいに危ないものを見つけたら、また壊しておこう」

 「そうだね。ところで、次はどの部屋を調べるの?」

 ドラえもんとのび太が、廊下でそんな会話をしていた時だった。

  ガチャッ…

 廊下に入って右側の、一番手前の扉が開き、そこから1人の合成人間が姿を現した。

 「「「「「「!!」」」」」」

 「! グオオ…」

 6人は合成人間を見ると、慌てて武器を構えた。合成人間は6人と顔を合わせると、1人では不利と考えたのか、慌てて先ほど出てきた扉へと戻っていき、中に入って扉を閉めた。

 6人はその後を追って扉の前まで走り、扉を開けた。すると…


イメージBGM:通常戦闘
 扉の向こうは縦長のかなり広い部屋だった。中からはゴボゴボという大きな音が聞こえてくる。部屋はかなり広いが、床に置かれた、3つの巨大な木製の桶で占められている。

 桶の上には、天井からレールの付いた吊り下げ機がぶら下がっており、気味の悪い物体が3つ引っ掛けられている。一番奥のものは真っ白な人体骨格、後の2つはその上にゼリー状の物体がまとわりついたものだ。 3つの物体は、それぞれが別々の桶の真上に来るまでゆっくりと移動させられてから、桶の中に降ろされる。

 部屋の中には数人の合成人間がおり、それぞれが何かの作業をしているようだ。

 「な、何これ?」

 「これは…合成人間の工場かな?」

 のび太とドラえもんがつぶやく。だが彼らには、目の前の物体に気を取られている余裕は無かった。合成人間達が作業を中断して、手に樽や骨等を持って、ドラえもん達に迫ってきたからだ。

 「「「「グオオオオオ…」」」」

 「「「「「ウウウウォォォ…」」」」」

 合成人間達は全部で9人おり、その中には、先ほど廊下でドラえもん達と出会った個体も含まれていた。

 「またこいつらか!」

 早速、ショックスティックを構えるジャイアン。だがドラえもんはそれを制止する。

 「待った! 一度廊下に出よう。入口を挟んで攻撃すれば、敵は入口を通らなきゃこちらに来られないから、接近されても1人ずつ相手にできる!」

 6人は急いで廊下に出ると、ドラえもん、のび太、しずかの3人で入口からの射撃攻撃に出た。
(ドラえもん、射撃判定2回…2回とも成功。合成人間A、Bにそれぞれ命中)

ドカンッ! ドカンッ!


 ドラえもんの空気砲が2連続で炸裂し、2人の合成人間が吹っ飛ばされて動かなくなった。
(のび太、しずか、射撃判定2回…2人とも全て成功。合成人間C、Dにそれぞれ命中)

バシュッ! バシュッ! バシュッ! バシュッ!


 のび太としずかも、それぞれショックガンを命中させる。合成人間2人は頭にショックガンを2発受けて倒れた。

 4人を倒したドラえもん達だが、残る5人はなおも前進してきた。
(ドラえもん、のび太、しずか、スネ夫、射撃判定…のび太、スネ夫が成功。合成人間E、Fにそれぞれ命中)
 「ようし、僕も!」

 敵が瞬間接着銃の射程範囲に入ったため、スネ夫も加わって4人で一斉射撃に出る。のび太は命中させるも、しずかとドラえもんは外してしまう。スネ夫は命中させて、敵1体の動きを封じた。

 「みんな、敵が近くなってきた! 一度入口から離れるんだ!」

 ドラえもんの叫びと共に、6人は一度入口から離れ、敵が出てきたところを狙う作戦に変更する。
(ダッパVS合成人間G 戦闘判定…ダッパの攻撃が命中)
 合成人間の1人が入口を通って出てくるも、そこへスーパー手袋をはめたダッパが殴りかかる。


ドカッ!!


 ダッパの右ストレートが敵を直撃し、敵は吹っ飛んで、先ほど瞬間接着銃で動きを封じられた合成人間に激突、そのまま動かなくなった。

 だが皮肉にも、片方の合成人間を固めていた接着剤が、激突の衝撃で砕けてしまい、その合成人間は自由を取り戻してしまう。
(ジャイアンVS合成人間E 戦闘判定…ジャイアンの攻撃が命中)
 次の合成人間が入口を通って出てきたが、ジャイアンにショックスティックを突き立てられ、電撃で倒された。

 「どうだ!」
(のび太、しずか、射撃判定…しずかは成功。合成人間Hに命中)
 また次の合成人間が入口から出てきた。入口から離れた位置にいたのび太がショックガンを構えたが、敵は手に持っていた骨を、のび太目掛けて投げつけてきた。

 「!!」

 のび太は何とかショックガンでそれを迎撃する。その直後、しずかのショックガンが合成人間に炸裂した。
(ジャイアンVS合成人間E 戦闘判定…ジャイアンの攻撃が命中)
 ショックガンで怯んだ合成人間に、ジャイアンが殴りかかって追い討ちをかける。ジャイアンの拳は敵の顔面を直撃し、敵を殴り飛ばした。敵はそのまま床に投げ出され、そのまま動かなくなった。
(ダッパVS合成人間I 戦闘判定…合成人間Iの攻撃が命中 クリティカル)
 「いいぞ! この調子なら行ける!」

 戦闘が流れに乗って、次の合成人間が出てくる前に入口に飛び込むダッパ。だがそれは軽率だった。

 ダッパが飛び込んだ先には、次の合成人間が、両手で樽を持ち上げた状態で待ち構えていたのだ。


ボカッ!!


 そのままダッパに樽を振り下ろす合成人間。ダッパはそのまま敵の樽で殴り飛ばされて、廊下まで吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。

 「ダッパ! 大丈夫か!?」

 ジャイアンが呼びかけるも、ダッパは気絶してしまったのか、動かない。
(ドラえもん、射撃判定…成功。合成人間Iに命中)
 だがそれに気を取られている暇もなく、ダッパを殴り倒した合成人間が入口から出てきた。ドラえもんは空気砲でその合成人間を倒す。
(しずか、射撃判定…成功。合成人間Fに命中)
 また次の合成人間が出てきた。のび太としずかが同時射撃を行う…はずであったが、のび太のショックガンは発射されなかった。

 「クッ! 弾切れか!」

 のび太はショックガンを捨て、ホルスターに収めていた衝撃波ピストルに持ち替える。

 一方、しずかのショックガンは合成人間に命中する。その合成人間は既にダメージを受けていた個体だったため、とどめを刺す事ができた。

 「やったわ!」
(ジャイアンVS合成人間J 戦闘判定…ジャイアンの攻撃が命中)
 また次の合成人間が出てくるも、それはジャイアンのショックスティックで倒された。だが、また次の合成人間が出て来た。

 「まだいるの!?」
(スネ夫、射撃判定…成功。合成人間Kに命中)
 スネ夫がそう言いながら撃った瞬間接着銃が命中して、合成人間はその場に釘付けとなる。

 「ドカン!」

 後はドラえもんが至近距離から発射した空気砲でとどめを刺した。

 ドラえもん達は次の合成人間が出てくるのを待ったが、もう合成人間は出てこなかった。

 「ダッパ君!」

 ドラえもん達は気絶しているダッパに、まだ1回分残っていた魔法の治療薬を飲ませる。ダッパはすぐに意識を取り戻した。

 「良かった…ダッパさん、大丈夫?」

 「ああ。みんな、心配かけたな。オイラ、油断してたよ…」

 ダッパは済まなそうにそう言うと、立ち上がった。

 「…あれ?」

 スネ夫が突然首を傾げる。のび太はスネ夫の顔を見た。

 「スネ夫、どうしたの?」

 「ねえ、この部屋に合成人間は9人いたよね? なのに、僕達が倒した合成人間は11人いるんだよ…」

 「気のせいじゃねえのか?」

 ジャイアンはそう言うも、しずかは指を折って数え始めた。

 「…そう言えばそうだわ。私達が倒したのは11人だったわ」

 「…まさか!」

 ドラえもんは突然、空いたままの扉をくぐって部屋に飛び込んだ。

 「ちょっとドラえもん、待ってよ〜」

 のび太もその後を追って部屋に飛び込んだ。すると…

 「やっぱり!」

 「あっ! まだいたの!?」

 「グオオオオオ…」

 そこにはもう1人、合成人間がいた。その合成人間は、ドラえもんとのび太を見るや否や、両手を前に突き出して迫ってきた。
(のび太、射撃判定…成功。合成人間Lに命中)

ボンッ!


 のび太は装備したばかりの衝撃波ピストルで合成人間を狙い撃ちした。合成人間は一撃で吹っ飛ばされ、動かなくなった。


イメージBGM:ボスダンジョン
 「どうしたの、ドラちゃん?」

 「いきなり部屋に飛び込んでいきやがって…」

 そこへ残りの4人も入ってきた。

 「みんな、合成人間がもう1人いたんだ。今ボクがやっつけたところだけど…」

 「…みんな、やっぱりここは、合成人間の工場だったんだよ。ぼく達がこの部屋に入った時、合成人間は9人いたのに、ぼく達が倒したのは11人…いや、さっきのび太君が倒したのも合わせると12人だ。 それは、僕達が戦ってる間に、この装置が新しい合成人間を作っていたからなんだ」

 ドラえもんの説明を聞いたしずかは、部屋に入った時の事を思い出した。

 「そういえば、私達がここに入った時、作りかけの合成人間みたいなのがぶら下がってたわね」

 「うん。ぼく達が戦ってる間に、その合成人間が完成して、戦いに加わったんだ。その証拠に、ぶら下がってたのは3体あったけど、今はその3体が全部無くなってる」

 今も天井を動いている吊り下げ機を見ると、確かに最初に入った時にぶら下がっていた3つの物体が、今は1つも無くなっていた。それを見たスネ夫が言う。

 「そっか。最初からいた9体に、僕達が戦ってる間に完成した3体が加わって12体か…って、確かぶら下がってた奴の1つって、完全な骸骨だったよね? という事は…」

 「そう。やっぱり合成人間の材料は骸骨だったんだ。完全な人体骨格に、この桶の中のゼリーみたいな物をかぶせて作っていたんだ」

 「謎かけ盗賊は、自分で作った合成人間達に、自分で仲間を増やさせていたのか…オイラ達がここに来なかったら、もっと合成人間が増えていたんだな…」

 ダッパがつぶやく。するとジャイアンが顔をしかめて言った。

 「謎かけ盗賊の奴、気持ち悪い物作りやがって。おいドラえもん、これも止めとこうぜ」

 「そうだね。もうここで働いてた合成人間達は倒したけど、これ以上作れないようにしておいた方が良いね。天井の機械はあのレバーがスイッチみたいだから、あれを引けば止まると思うよ」

 ドラえもんは右手で部屋の奥を指し示す。そこには長さ1メートルほどの大きなレバーがあった。ジャイアンがそれを引くと、天井の吊り下げ機が止まった。
(ダッパ、剛力判定3回…3回とも成功)
 さらにダッパがスーパー手袋の怪力で、ゼリー状の液体が入った3つの桶をひっくり返した。

 6人はさらに部屋を調べたが、他にあるものと言えば、組立て途中の骸骨数体と、バケツや引っ掛け棒等の作業道具、右側の壁にある、かんぬきのかかった鉄の扉だけだった。

 「ねえ、この扉の先にある物ってまさか…」

 しずかが不安げに言う。

 「…多分そうだろうね。でも一応確認しておこう」

 ドラえもんはそう言うと、鉄の扉を開けた。

 6人の予想通り、扉の先は小さな倉庫になっており、合成人間の材料である、たくさんの骸骨が積まれていた。6人はがっくりと肩を落とす。

 「…やっぱり…って、誰も怖がらないんだね…」

 「何度も骸骨に会ったから、もう慣れちまったぜ…」

 「僕だって、こんな事に慣れたくはなかったけどさ…」

 のび太の指摘に答えるジャイアンとスネ夫。

 「…? あの穴は…上の階に繋がってるのか?…そうか、上にあった穴から材料を落としていたんだな…」

 ダッパが倉庫の天井に開いている、四角い穴を指差しながら言う。どうやら上の階にあった、「骨」と書かれた穴に繋がっているらしい。

 6人は骸骨に慣れてしまったとは言え、やはり骸骨だらけの倉庫を詳しく調べる気にはなれず、扉を閉じて再びかんぬきを下ろし、合成人間製造工場を出た。



 廊下に戻った6人は相談の末、次は入って右の真ん中、つまり合成人間製造工場の隣の扉を試す事にした。

 扉の向こうに合った部屋は、黒くて大きな機械で占領されていた。あちこちの継手から蒸気が音を立てて漏れ、オイルが床に滴り、金属がきしる音がする。2つの大きな投入口らしき物が扉の方を向いている。

 「…何だろう、この機械?」

 「この穴に、何かを入れろって事かしら?」

 のび太としずかが機械を見ながら言う。

 「うーん、ちょっと試してみるか」

 ドラえもんは足元に落ちていた小石を拾い上げると、右の投入口に投げ込んだ。すると…


ガタンガタン…カチカチ…チーン…


 機械が動く大きな音がしたかと思うと、数秒で止んだ。

 「…何も起きねえじゃねえか」

 「…いや、そうでもないみたいだ。みんな、こっちを見てくれ」

 ダッパは機械の後ろ側に、大きな穴が開いているのを発見した。その穴は多少の蒸気を出しており、その付近には、さっきドラえもんが入れたと思われる小石が落ちている。

 「前の穴から入れた物が、後ろの穴から出てくるのか? でもそんな事して何になるのさ?」

 スネ夫が不思議がる。ドラえもんは、後ろの穴から出てきた小石を拾い上げてまじまじと見つめた。

 「うーん、この石、何だか前よりも綺麗になってるような…待てよ…」

 ドラえもんは、足元からさらにもう1つの小石を拾い上げると、先ほど試した石を右の投入口に、新しく拾った石を左の投入口に投げ込んだ。すると…

 また機械が大きな音を立てて動き、後ろの穴から小石が出てきた。ただし、先ほどとは違うところがあった。

 「あれっ!? 石が1個しか出てこないぞ」

 「それにこの石、ドラちゃんが入れた物よりも大きいわ」

 「それにこの大きさ、まるで2つの石が合体したみたいだ…」

 のび太、しずか、ダッパが、出てきた石を見ながら不思議がる。ドラえもんはその石を手に取ってしばらく考えていた。
(ドラえもん、機械の知識判定…成功)
 「…分かったよ! これは物体を分解して再構築する装置なんだ。この機械に入れた物は、分子の単位にまで分解されて、再構築されて後ろの穴から出てくるんだ」

 「…おいドラえもん、もっと分かりやすく言えよ。つまり、どういう事だよ?」

 「つまり、これに入れた物は一度バラバラにされて、また作り直されて後ろの穴から出て来るって事」

 それを聞いたスネ夫は、先ほどの2つの石を入れた実験結果の意味に気付いた。

 「それじゃあさ、さっき2つの石を入れたら、大きな1つの石が出てきたのって、もしかして…」

 「そう。2つの物を同時に入れると、両方とも分解されて、再構築の際に1つの物になって出てくるんだ。つまり、これを使えば、2つの物を1つに合体させられるんだ」

 「うーん、よく分からないけど、これはずっと前にボクとドラえもんが使った、ウルトラミキサーみたいな物だって事?」

 「そういう事になるね。でもウルトラミキサーは生き物を生きたまま合体できるけど、この機械はそこまで高性能じゃなさそうだね。生き物なんか入れたら、再構築の時には死んじゃうだろうね」

 「…謎かけ盗賊は、こんなすごい物ばかり、たった1人で作ったって言うのか?」

 目を丸くしてつぶやくダッパ。するとドラえもんは言った。

 「…ダッパ君、そうとも限らないよ。もしかしたら、謎かけ盗賊に協力している科学者がいるのかも知れないし。もしそうだとして、今でもいるかどうかは分からないけどね」

 その後6人は部屋を調べたが、他に興味をひくものはなく、目の前の機械を使って合体させたい物も特に無かったので、部屋を出る事にした。



 廊下に戻った6人は、今度は廊下に入って右の一番奥、つまり今出た扉の隣の扉を試す事にした。

 扉の向こうにあったのは、一種の作業室だった。部屋の中はペンチやスツールや奇妙な形をした機械部品でいっぱいで、一方の隅には金床を備えた鍛冶場があり、壁にはあらゆる種類の工具がかけられている。

 6人は早速この部屋を調べてみたが、置いてある機械部品は不良品やスクラップばかりで、役に立ちそうなものは何一つ無かった。

 「何だよ、がらくたばっかりじゃねえか」

 「ほんとだよ。何かまた、すごい機械でもあるのかと思ったのに」

 がっかりするジャイアンとスネ夫。一方、ドラえもんは床にかがんで、部屋の床の一部を見つめていた。

 「どうしたの、ドラえもん?」

 「…のび太君、この床だけ周りと色が違うんだ。もしかしたら、つい最近まで何かが置かれてたのかも知れないね」

 「何かって、何が?」

 「それは分からないけど…何だかこの跡、足跡のようにも見えるんだよね」

 しずかとダッパもその床を覗き込む。

 「足跡? ここに大きな人形でも置いてあったのかしら?」

 「それはあり得るな。動く剥製や合成人間みたいに、動く大きな人形を作ってたんじゃないか?」

 6人は部屋をもう十分に調べたと判断し、部屋を出て廊下に戻った。



 廊下に戻った6人は、この廊下ではまだ調べていない最後の扉である、入って左の一番奥、つまり今出てきた部屋の向かいの扉を調べた。

 この扉の上には真鍮の輪が4つ付いており、そのうちの1つにはボロボロになったロープの切れ端が結えられたままになっている。扉を開けると、中は真っ暗で何も見えない。

 「何だここ? 真っ暗で何も見えねえじゃねえか」

 「船の中にあった、斧が吊るしてあった通路と同じ仕掛けなのか?」

 ダッパはそう言いながら、闇の中に顔を入れて中を覗き込む。

 「…ダメだ、オイラのアイパッチでも中が見えないや」
(ドラえもん、ひみつ道具判定…成功)
 「これなら照らせるかな…ラジコン太陽!」

 ドラえもんはポケットからラジコン太陽を出すと、それを闇の中に入れて照らそうとした。だが、やはり真っ暗なままであり、ラジコン太陽自体が闇に消えて見えなくなってしまった。

 「…あれ? ドラえもん、この部屋、床が無いみたいだよ」

 のび太はしゃがみながら闇の中に右手を突っ込んでいた。するとスネ夫が言った。

 「ねえみんな、ここには入らない方が良さそうじゃない? 僕、何だか嫌な予感がするよ」

 「私もそう思うわ。ここに入ったら、もう戻って来られないような、そんな気がするのよ」

 「…そうだね。ここは放っておいて先に進もう…あれ、ラジコン太陽が戻ってこないぞ…見えないから、どう動かして良いか分からな…あ、戻ってきた」

 ドラえもんは何とかラジコン太陽を回収すると、扉を閉じた。



 この階の全ての扉を調べ終えた6人は、廊下の奥へと進み、曲がり角を左に曲がり、真っ直ぐに進んでいった。

 やがて前方に大きな鉄の扉が見えた。6人がそれを目指して前進していると…


ドスッ!!

イメージBGM:通常戦闘
 「「「「「「わあぁっ!!」」」」」」

 突然、6人の前方に大きな物体が落ちてきた。

 その物体は大柄な全身鎧だった。それは背丈が2メートル以上はあり、全身がトゲの付いた厚い装甲板に覆われている。頭部には視界と通気のための小さい穴だけが開いた、顔全体を覆う兜を備えている。 その装甲の厚さと部品の精密さは、どこを取っても無防備な点が見つからない代物だった。

 鎧は落ちてきたかと思うと動き出し、6人の方を向いて身構えた。

 「な、何だこいつ…」

 「な、何だかすごく強そうだよ…」

 「で、でも、こいつを倒さなきゃ進めそうにないね…」

  ガチャッ、ガチャッ、ガチャッ…

 ジャイアン、スネ夫、のび太がそんな話をしていると、鎧が前進してきた。
(ドラえもん、のび太、しずか、射撃判定…3人とも成功。機械鎧に命中)

バシュッ! ボンッ! ドカンッ!


 しずかのショックガン、のび太の衝撃波ピストル、ドラえもんの空気砲による一斉射撃が炸裂した。だが鎧は一瞬動きを止めただけで、すぐに前進してくる。
(ジャイアン、ダッパVS機械鎧 戦闘判定…機械鎧の攻撃がジャイアンに命中)
 ジャイアンとダッパが同時に接近戦を仕掛けるも、鎧は鈍重そうな外見によらぬ素早い動きで打撃を繰り出してくるため、かわすのが精一杯だった。そうしているうちにジャイアンが敵に殴り飛ばされてしまう。

 「ぐはぁっ!」

 「「ジャイアン!」」

 吹っ飛ばされたジャイアンの身を案じるドラえもんとのび太。だがその間にも、鎧は前進しつつ殴りかかってくる。
(スネ夫、射撃判定…成功。機械鎧に命中)

バシャッ!


 スネ夫が何とか瞬間接着銃を命中させて敵の動きを封じ、その隙に後退するドラえもん達。ジャイアンも立ち上がる。だが鎧は、固まった接着剤を簡単に砕いて脱出してしまった。

 「あの接着剤を、あんなに簡単に破るなんて!」

 驚愕するドラえもん。

 「こっちへ来るわ!」

 「ドラえもん、しずかちゃん、もう一回撃つんだ!」
(ドラえもん、のび太、しずか、射撃判定…3人とも成功。機械鎧に命中)
 のび太の叫びと共に、ドラえもん、のび太、しずかが再度一斉射撃を決めるも、鎧はやはり前進を止めないばかりか、今度は走って間合いを詰めてきた。
(ジャイアン、スネ夫、ダッパVS機械鎧 戦闘判定…機械鎧の攻撃がジャイアンに命中 クリティカル)
 再びジャイアンとダッパが前に出る。スネ夫も瞬間接着銃を構える。だがやはり、鎧の素早い打撃に、避けるのが精一杯であり、今度は接着銃を警戒してか、スネ夫にも殴りかかってくるため、 スネ夫も引き金を引く余裕さえなかった。


ボコッ! ドカッ!!


 そうこうしているうちに、鎧の拳がジャイアンの鳩尾を直撃し、さらにジャイアンを蹴り飛ばしてしまった。ジャイアンは大きく飛ばされて地面に投げ出され、そのまま気絶してしまった。

 「タケシさんが!」

 「ジャ、ジャイアンがやられたー!」

 しずかとスネ夫が叫ぶも、そちらに気を取られる余裕も無かった。
(ドラえもん、のび太、しずか、スネ夫、ダッパVS機械鎧 戦闘判定3回…機械鎧の攻撃がドラえもんに2回、スネ夫に1回命中)
 鎧は脚と拳だけで5人を圧倒してくる。その素早い攻撃は、銃を撃つ余裕さえ与えてくれず、間合いを広げるのも困難であった。

 そうしているうちに、ドラえもんが敵のフックとアッパーを立て続けに喰らい、さらにスネ夫も裏拳で殴られてしまう。

 「うぐっ!!」

 「いたーい!!」
(ドラえもん、回避判定…成功)
 ドラえもんは何とか立ち上がり、鎧の隙を見て距離を取る事に成功し、慌てながらもポケットに手を入れた。
(ドラえもん、ひみつ道具判定…大失敗)
 「材質変換機で鎧を紙にしてやる!」

 ドラえもんは道具を取り出し、鎧に光を当てようとスイッチを入れる。だが、光が出なかった。なぜなら…

 「…って、間違えた! これは電池切れのスモールライトだー!」

 ドラえもんは慌ててスモールライトを捨て、別の道具を出そうとする。しかし…

 「これは…心吹き込みマイクだ。関係ない…これは…ウルトラストップウォッチか。ようし…ダメだ、やっぱりもう使えない。あれでもない、これでもない…」

 ドラえもんは目当ての道具以外の道具を出しては捨て、その後もドライバーだの時計だのを出しながら捨てている。
(のび太、しずか、スネ夫、ダッパVS機械鎧 戦闘判定3回…機械鎧の攻撃がスネ夫に2回、ダッパに1回命中)
 ドラえもんが慌てている間に、スネ夫が鎧に張り倒されてしまう。ダッパが掴みかかるも、逆に鎧に首根っこを掴まれ、投げ飛ばされてスネ夫に激突してしまった。

 「いたっ! 何で僕ばっかり…」

 「ううう…」

 のび太としずかは何とか攻撃を受けずに済んでいるものの、逃げ回るのが精一杯であった。

 「ドラちゃーん!」

 「ドラえもーん、早く何とかしてー!」
(ドラえもん、ひみつ道具判定…成功)
 ドラえもんは走って距離を取りつつ、目的のひみつ道具を探し続ける。

 「ええと…あった! ネンドロン!」

 ドラえもんは胡椒の瓶のような道具を取り出し、急いで鎧に投げつけた。かけた物を粘土のようにグニャグニャにする薬品・ネンドロンである。
(ドラえもん、投擲判定…成功)
  パリンッ…

 ドラえもんの投げた瓶は鎧の胸に命中し、瓶が割れて中身が鎧にぶちまけられた。
(のび太、しずか、スネ夫、ダッパVS機械鎧 戦闘判定…機械鎧の攻撃がのび太に命中)
 鎧はドラえもんに瓶をぶつけられた事を特に気にする様子もなく、のび太達に襲いかかる。そのうちに、のび太が足がもつれて転んでしまった。立ち上がろうとするのび太の脳天に、鎧の右拳が炸裂する…
(のび太、運試し判定…吉)

グニャッ!


 「うわあぁぁっ! いた…く、ないぞ…?」

 のび太の悲鳴と、呆気にとられた声が響く。

 よく見ると、鎧の拳の方がぐにゃぐにゃに潰れてしまっている。

 しかも、足の部分にもネンドロンがかかっていたのか、敵の動きが大幅に鈍り始めた。

 本来、ネンドロンは瓶1本分をぶちまけるだけでも、部屋の床を底なし沼のようにするほどの効果があるが、やはりこの世界では、そこまで強力な効果は発揮できないようだ。

 だがそれでも、鎧を弱体化するには十分だった。

 「みんな、今だ!」

 ドラえもんの叫びと共に、5人は一斉に鎧に立ち向かった。
(ドラえもん、のび太、しずか、スネ夫、ダッパVS機械鎧 戦闘判定…ドラえもん、しずかの攻撃が命中 しずかはクリティカル)
 鎧はなおも5人に殴りかかるが、動きが鈍っているので簡単にかわされる。そこへドラえもんとしずかの近距離からの射撃が炸裂した。

 鎧は吹っ飛ばされ、そのまま床に投げ出されて、そのまま動かなくなった。鎧の胸には、先ほどの攻撃でできた大きな穴が開いている。鎧の奥にまではネンドロンの効果が届かなかったのか、貫通はしなかったが、 内部から機械のようなものがむき出しになっており、バチバチと火花を上げていた。どうやら機械で動く鎧だったらしい。

 「…か、勝った…」

 「…強敵だったな…」

 「ホントだよ…いたたたた…」

 のび太、ダッパ、スネ夫が胸を撫で下ろす。

 「…そうだ、タケシさんは!?」

 「そうだったね。ジャイアーン!」

 しずかとドラえもんは、気絶しているジャイアンに駆け寄る。のび太達も後に続いた。

 ジャイアンはすぐに意識を取り戻した。

 「ジャイアン、大丈夫か?」

 ダッパがジャイアンの顔を覗き込む。

 「お、おう…イテテテテ…あ、あいつは…あの鎧は…?」

 「大丈夫。いまやっつけたところだから。ちょっと待って、お医者さんカバンを出すから…」

 ドラえもんがそう言って、ポケットに手を入れようとしたその時…


ズボッ! ガチャッ…!


 突然、鎧のある方から音が響いた。驚いたドラえもん達がそちらを振り向くと…

 倒れていた鎧の中から、何かが鎧を突き破って立ち上がった。それは、鎧の中に入っていた、人間型生物だった。体のあちこちに、むき出しの機械が付いたプロテクターのような物を付けている。

 鎧の外部装甲がネンドロンによって柔らかくなったため、中の生物が内部装甲と内部メカの一部を体に付けたまま、外部装甲を突き破って立ち上がったのだ。

 その生物は、中途半端に体に付いている、鎧の内部メカや内部装甲を邪魔そうに自ら引っペがして捨てると、ドラえもん達の方へとゆっくり歩いてきた。

 ドラえもん達は、その生物を見て思わず息を飲んだ。ダッパが叫ぶ…

 「ハ…ハーラン!!」


 原作「謎かけ盗賊」との設定の相違

 ・粉末生物が死ぬと粉末に戻るというのは、このプレイのオリジナル設定。

 ・機械鎧は、原作では機械部品のある作業室に置かれている。また、これは一種のロボットであり、後ろから誰かが乗り込んで、内部のレバーを引いて操縦しなければ動かない。 しかも、一部のレバーに触れると勝手に凶暴化してしまう。謎かけ盗賊は自分の格闘能力の無さをカバーするためにこの鎧を作ったが、鎧の暴走癖のせいでうまく使いこなせず、 そのうちに別の実験に興味をひかれて、そのまま放置されたという設定になっている。大きさも背丈3メートルほどであり、このプレイのものよりも少し大きい。ちなみに原作では、 鎧が素早いという設定はない。


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