時空警察ドランサー
〜帰郷〜

エピローグ


 全てが解決した翌日の夕方、高井山のふもと。そこには地面に停まっているUFO、そしてその前に
立つ4人の人間達がいた。

「残念だろうな。休暇がこれで終わりなんて」

 ドランサーが言ったが、みつ夫は首を振った。

「いや、これでいいんだ。このぐらいの休暇で」

「ところで、さっきから気になってたけど、スミレさんは?」

 のび太が辺りを見回して言った。

「今日から舞台の稽古らしい。今はお互い、自分のいる場所で頑張っていくことにした」

「ふうん・・・まあ、それでいいなら。だけどどっちにしろ、早く納得のいく男になって、戻ってきて
あげたほうがいいぞ」

「わかっているさ。それに、その日はそう遠くないだろう」

「そうか。それは何よりだな」

 みつ夫は時計を見た。

「そろそろ出発だな」

 彼はそう言って、まずドランサーとカズヤに握手を求めた。

「いろいろとありがとう。君たちのおかげで、甚内の逮捕に成功した」

彼がそう言って指さしたところには、いまだ開け放してあるUFOのカーゴがあった。その中には、
炭素冷凍され、銅像のようになった甚内が積まれている。

「個人としても、銀河連邦警察のエージェントとしても、感謝で一杯だ」

「いや、こっちこそ事件解決を手伝ってもらった。TP隊員を代表して、感謝する」

「忘れはしないよ。この時代にも君のような人がいて、世界の平和を守っていたことを」

「ありがとう。僕だって忘れないさ。君たちのような相棒がいれば、心強いんだがな・・・」

「きっと見つかるさ。同じ平和を目指して戦っていればな」  続いてみつ夫は、ドラえもんとのび太とも握手をした。

「君たちにも命を助けてもらったり、いろいろと世話になった。ありがとう」

「そんな、僕達のしたことは、当然のことですよ」

「それよりも、ドランサーの言うとおり、できるだけ早く戻ってきてあげてください。その間スミレ
さんは、責任を持って守りますよ」

「心強いな。お願いするよ。もちろん、早く戻ってくるつもりだ」

 そしてみつ夫は、4人を見渡して言った。

「それじゃあ行くよ。今度いつ帰るかはわからないが、きっとすぐだ。いつかその時になったら、また
会おう」

「ああ。元気でな」

「また会いましょう」

「体は大事にしろよ。君以外の人にとっても、大事な体なんだから・・・」

「わかっているさ。それじゃあ」

 みつ夫はUFOのタラップを登り始めた。搭乗口の手前で振り返り、一度手を振ると、彼はその中へと
消えた。やがて、機体から低いうなりが聞こえてきた。そしてUFOはフワリと浮かび、夕焼けの空へ
と昇っていった。

「さよーならー!!」

 のび太が大きく手を振った。それに答えるように、UFOは機体を左右に何回か揺らし、そして急加速
すると、たちまち見えなくなった。

「行ってしまった・・・」

 空を見上げ、ドランサーはそうつぶやいた。

「今度戻ってくるのは、いつになるんだろうか・・・」

「彼の言うとおり、彼が戻ってくる日はそう遠くないはずだ。あの二人なら、すぐに幸せになれるよ」
「そうだな」

そう言うとドランサーは、のび太とドラえもん達に向き直った。

「今回も君たちの世話になった。あらためて礼を言おう」

「そんなことはいいですよ。結果的にはいいことがあったんだし」

「ああ。だがドラえもん・・・地球破壊爆弾の件、なんであんなものを持っていたのか、呼び出される
用意はしておいてくれ」

ドラえもんはギクリとしたが、すぐにしょんぼりした顔つきになり、小さく

「ハァイ・・・」

と答えた。

「さて、あわただしいが、俺達も戻らなければならない。詳しい報告をしなければな」 「また困ったときには、声をかけてください。力になれるかどうかはわかりませんが、いざというときは
かけつけますよ」

「ありがたいが、できるだけそうならないことを期待しよう。それじゃあ、しばらくはこの時代による
こともできないだろうが、また会おう。できるだけ平和な時代に」

「さようなら」

カズヤ達はどこでもドアを取り出すと、その向こうに消えた。

「僕達も帰ろうか」

「うん」

 のび太達はそううなずきあうと、視線を空へと向けた。彼らは理解していた。かつて一度は辛い別れを経験したものとして、別々の時間の育む絆の強さと、その後の再会の喜びを。友情と愛情。のび太達とみつ夫達とはその違いこそあったが、本質的な部分で、のび太はみつ夫達の心を理解していた。だからこそ彼らには、自分達が固い絆を結べたように、みつ夫とスミレも深い絆を結べると確信していた。空には真っ赤な夕日。夕焼けはやがて夜となるが、次の日には清々しく晴れた空をもたらすという。夜があるからこそ、朝日の美しさを知ることもできる。言葉ではうまく言い表せなくとも、彼らはそのことを理解していた。


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