まえがきにかえて

「HELLSING」を知らない人達のために


 どうも、影月です。今回の小説は、平野耕太先生原作のマンガ「HELLSING」とドラえもんとのクロスオーバーという「ドラ対マジンガー」以上にとんでもない話なので、説明は不可欠です。

 「HELLSING」は、1999年のイギリスを舞台に、吸血鬼や喰屍鬼(グール)など、大英帝国と国教を犯そうとする反キリストの化物達を葬り去るために結成された特務機関「王立国教騎士団」、通称「ヘルシング機関」の戦いを描いたマンガです。これだけ書くと普通に(?)見えますが、実際に読まなければわからない恐ろしさがあるのがこの作品最大の特徴。ヘルシング機関のアーカード達と彼らの敵との戦いは、これでもかというくらいに狂気に満ちた描かれ方をされています。登場人物達も、闘争そのものを至福の喜びにしているようなアブナイ人達ばかり。自分達以外の全てを異端として活動するローマ法皇庁の特務機関や、戦争をすることだけが目的の全員吸血鬼のナチス残党集団など、すさまじい連中が登場しますが、とりあえずこの小説に登場する「HELLSING」の登場人物と組織について紹介します。ドラえもんについては、このページに来る人はよく知っていると思いますので省略。


                   

登場人物


アーカード

 「HELLSING」の主人公。自らも吸血鬼でありながら、ヘルシング機関の切り札としてその殲滅活動の先頭に立ち化物達を殺戮する対吸血鬼エキスパート「ゴミ処理係」。並の吸血鬼とはレベルが違い、すさまじい不死性をもち、首を切り落とされても心臓を突かれても、銃でハチの巣にされても霧やコウモリなどになって再生する。日光に弱いなどの吸血鬼について語られる多くの弱点は、彼にとっては弱点になりえない。まさに最強のアンデッドである。専用の武器として、人類では扱うことが不可能と言われる、13mm炸裂徹鋼弾を装備した専用巨大拳銃「ジャッカル」と、454カスール改造銃をもち、その威力は不死者である吸血鬼やグールにも死をもたらす。また、普段はその実力を自ら封印しており、「拘束制御術式」を解放することでそれを解除する。この状態でのアーカードはグロテスクな「犬」やムカデなど、恐ろしい姿に変身して敵をあっというまに抹殺する。立ちふさがる者は、人間であろうと非人間であろうと容赦なく押し潰す。彼と戦うために対峙して生きているのは今のところアンデルセン神父のみであり(彼でさえ能力限定解除をしたアーカードとは戦っていない)、どこまで強いのかはいまだに誰も知らない。10年前まで、なにかの事情でインテグラの父親である先代によって地下に封印されていたが、インテグラが偶然目覚めさせ、彼女の僕となっている。連載初期は妙にオッサンくさいところがあったが、最近ではすっかり正真正銘の化物に。戦い方の鬼畜ぶりも、パワーアップの一途をたどっている。

 主人公のアーカード。問答無用に間違いなく最強の存在です。人間らしい感情というのも無縁らしく、ただ闘争のみに楽しみをおぼえるという、この作品に出てくるキャラの典型みたいなキャラ。とにかく強くてイカレてる、という感じです。余談ですが、このマンガでは彼も含めてメガネをかけてる人がたくさん出てきます。特に丸いメガネをかけてる人は一部の例外を除きスゴク強いのです。それを考えればのび太も・・・(オイ)。アニメ版では中田譲治さんが演じており、渋い声が見事にハマってました。





サー=インテグラル=ウィンゲーツ=ヘルシング

 英国国教騎士団「HELLSING機関」局長にして、ヘルシング家当主。23歳。本名はインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング(長い!)で、「サー」はイギリスでの貴族に対する敬称。劇中では「インテグラ」もしくは「ヘルシング卿」と呼ばれている。13歳の時に先代であった父が病死し、以降はヘルシング機関の長として見事に采配を振るっている。当主争いで叔父に命を狙われたが、そのときに偶然目覚めさせたアーカードに助けられ、現在も行動を共にしている。性格は基本的に冷静沈着かつ苛烈。しかし、意外に内面には激情家のところがあり、アーカードに挑発されるようなことを言われ、自分を奮い立たせて命令を下したことも。また、部下思いで優しいところもあり、人間の食事をとれずに苦しむセラスに自らの血を与えたこともある。葉巻を愛好し、よく吸っている場面が見受けられる。

 アーカードの主人、インテグラ。内面の強い女性という私の好みのキャラで、男前な活躍ぶりに女性ファンも多いとか。男と間違われるのはかわいそうですが無理もありません。セラスに「鉄の女」などと言われてキレたこともありますが、たまに人間らしい弱さもかいま見れるところが好きです。前線に立つことはあまりないので、今回の小説でも残念ながらあまり出番がありません。局長ファンの皆さん、ごめんなさい。アニメ版のCVは「ハマーン様」「しのぶさん」を演じた榊原良子さん。彼女を演じるのに、これ以上のはまり役はいなかったと思います。





セラス=ヴィクトリア

 アーカードが吸血鬼を退治するときに巻き添えで胸を撃ち抜かれ、自らの選択でアーカードに血を吸われ、吸血鬼として生きることを選んだ新米吸血娘(ドラキュリーナ)で、年齢は19歳。それ以降、ヘルシング機関でアーカードの下僕として彼のサポートを担当している。生前は婦警をしていたので、通称「婦警」。吸血鬼になったのは生きるためにしかたなく、といった感じだったので、血を飲むことを頑なに拒み、輸血用の血液すら手にしない。それゆえ、吸血鬼としては下級の下級とされており、半人半吸血鬼のような存在。人間を殺すことも拒絶しており、まったく吸血鬼らしくない。それゆえにアーカードには半端者扱いされ、なかなか本名で呼んでもらえないが、実際にはかなり期待されており、だんだん本名で呼んでもらえるようになってきている。戦闘においては30mm口径の対化物用砲(カノン)「ハルコンネン」や、13.7mm口径のライフルなど、大口径遠距離狙撃用火器によるグールの掃討や支援砲撃などを主な任務とする。性格は普通の少女であるが、血に酔ったり追いつめられたりすると、キレて吸血鬼本来の怪力を発揮する。

 間違いなく作品中最も不幸な人物、婦警ことセラス。今でも十分不幸なのですが、これから先も不幸にまみれる人生だそうです、合掌。可愛いと思うのですが、普通の性格なので異常なキャラがゾロゾロでてくるこの作品では周囲に戸惑いどうしてもギャグ役になってしまいます。アニメ版でのCVは、折笠富美子さん。見るまでは知らなかったのですが、これまたはまり役でファンになってしまいました。





ウォルター=C=ドルネーズ

 50年以上に渡ってヘルシング家に仕えてきたと思われる執事。69歳。インテグラの父親、そしてインテグラと二代に渡ってヘルシング家に仕えており、主君に忠実でインテグラのことも「お嬢様」と呼ぶ。性格はまさに生粋のジョン・ブル(英国人)で、紳士的かつ物腰が穏やか。インテグラやアーカードだけでなく、セラスにも敬意をもって接する。非の打ち所のない最高の執事だが、ただの老人ではなく、55年前にアーカードとともに「ゴミ処理係」として、ナチスの吸血鬼研究施設を壊滅させた経歴をもつ。別名、「死神ウォルター」。鋼鉄製ワイヤーの使い手であり、その腕前は最盛期と同じとまではいかないまでも、グールや下級の吸血鬼程度なら手もなくバラバラにしてしまう。アーカードとは戦友であるためか、普段は敬語で話しかけるが、二人きりになるとタメ口で話す。アーカードも、それを気にしてはいないようだ。

 死神ウォルター。こういうふうに年をとりたいと思える一人です(ほんとか)。優秀な執事キャラはバットマンとかダイターン3などの作品でも欠かせませんが、彼の場合はそんじょそこらの執事キャラとは違います。55年前は美少年でした。インテグラと同じく、この小説では残念ながら出番少なし。アニメ版CVは清川元夢さん。アムロの親父役しか知りませんでしたが(笑)、今はこの人以外の声が思い浮かびません。





アレクサンド=アンデルセン

 ローマ法皇庁の特務機関、第13課「イスカリオテ機関」に所属する神父。実年齢は60歳だが、外見は30代。出身、人種などは全て不明で、「聖堂騎士(パラディン)」、「銃剣(バヨネット)」、「首斬判事」、「天使の塵(エンゼルダスト)」など、いくつもの通り名をもつ。アーカードがヘルシングの切り札であるように、13課にとっての対化物の切り札。精鋭揃いの13課でも、指折りの手練れと思われる。人間ではあるが生身ではなく、その体には生物工学の粋を凝らした自己再生能力や回復法術といった処置が施されており、並の攻撃では傷一つつけることのできない「再生者(リジェネレーター)」としての能力をもつ。祝福儀礼の施された銃剣をどこからか大量に取り出し、敵の首を切り落としたり投げつけてハチの巣にしたりといったすさまじい戦い方をする。超過激な思想をもつ13課の中でもとりわけ異端に対する排除意識が強く、とりわけアーカードと対したときには上司の制止をも受けつけない。普段はローマ郊外のカトリック系孤児院に勤めており、(カトリックの)子供達に対しては優しい面ももつ。

 キレているという意味では、アーカード以上にキレていると思われるアンデルセン神父。アーカードとは大の仲良しで、出会った途端にグーパンチで殴り合ったりします(笑)。子どもに対しては優しい彼ですが、それはあくまでカトリックの子ども達の話。のび太に対しては容赦なく銃剣を投げつけます。それにしても彼、いろいろなことを体にされているようですが、それって「改造人間」なんじゃないかと思うのは私だけでしょうか・・・? アニメ版のCVは、アラン・ドロンの吹き替えでおなじみ野沢那智さん。見事にこの踊る殺戮神父の狂気を演じてくれました。





ハインケル=ウーフー

 神父の格好をした13課所属のエージェント。もともとは「HELLSING」の登場人物ではなく、「HELLSING」単行本1〜3巻に同時収録されている作品「CROSS FIRE」の主人公の一人。「CROSS FIRE」は13課が主役の話であり、彼女以外にも登場人物など設定のいくつかが「HELLSING」にも引き継がれている。一見して男にも女にも見えるが、少なくとも「CROSS FIRE」では女。劇中では相棒の高木由美子(由美江)とともに、イスラムテロリスト、共産主義テロリスト、過激派新興宗教と、ヴァチカンに楯突く者達をやっぱり皆殺しにしていた。性格は由美江よりは分別があるが、やはり異教徒には容赦ない。武器は拳銃全般で、リボルバー、オートマチック問わず何でも使いこなす。敵の撃った銃弾は彼女たちには当たらない(笑)。「HELLSING」では性別が不明だが、裏切り者の司教の処刑や、円卓会議に出席したマクスウェルの護衛などの仕事をしていた。吸血鬼と渡り合えるかどうかは今のところ不明。名前の由来は、おそらく大戦中のドイツの軍用機メーカーハインケル社が作った夜間戦闘機、He219A-0「ウーフー」。

 相棒の由美子(由美江)とともに人気のあるハインケル。由美子曰く、「女松田優作」です。この小説にも登場しますが、「HELLSING」の番外編的な「CROSS FIRE」同様、番外編「ススキヶ原CROSS FIRE」での登場です。ファンの皆さん、ごめんなさい。





高木由美子(由美江)

 シスターの格好をした13課所属のエージェント。相棒のハインケルと同じく「CROSS FIRE」の登場人物だが、ハインケルと違って「HELLSING」には登場していない(しているにはしているのだが・・・)。「由美子」はメガネをかけた地味な感じの少女であり、外見通り虫も殺せぬおとなしい性格。だが、彼女は二重人格であり、ひとたびもう一つの人格「由美江」が目覚めると、メガネを外し「狂戦士(バーサーカー)」としか言いようのない人間に変貌する。島原抜刀居合の使い手であり、日本刀を振るって異教徒達を真っ二つにしてしまう。あまり無駄口を叩かずに黙々と敵を始末している印象のあるハインケルと比べ、敵意むき出しのヤバイセリフをぶちまけつつ楽しそうに仕事をしている。由美子から由美江へと「チェンジ」するのは簡単なようだが、由美江を眠らせるのはたいへんらしい。ちなみに、彼女が使う島原抜刀居合の技の名前「秋水」「震電」「天山」は、全て大戦中の日本軍機の名前である。

 ハインケルは出ていながら、いまだ本編には登場していない由美子(由美江)。ハインケル曰く、「二重人格バーサーカー」。人気もあるし、是非とも登場してほしいものです。今回の小説でも、やっぱりハインケルとペア。「ススキヶ原CROSS FIRE」で、いつもの空き地でジャイアン達と死闘を繰り広げます。こんなショボイ話書いてすいません。悪気はないんです。勝手に長崎出身ということにしちゃいましたが、島原抜刀居合を使うので、あながち間違いではないと思いますが・・・。


登場組織


王立国教騎士団(HELLSING機関)

 大英帝国と国教を犯そうとする反キリストの化物たちを葬り去る為組織された特務機関。百年前に初代ヘルシング卿によって設立された。現局長のインテグラは、十年前死去した父に代わり、わずか十三歳にしてその地位に就いた。アーカードやセラス、ウォルターらが所属する。本部はロンドン郊外にある三階建ての屋敷で、実質的にイギリスを裏から支配する結社「円卓会議」の後ろ盾のもと活動している。

 百年の伝統があるとはいえ、アンデルセンの言うとおり、大昔から吸血鬼と戦い続けているローマカトリックのイスカリオテ機関に比べれば歴史は浅い。戦力的にもアーカードやウォルター、セラスといった一部の超絶的な力を持った「ゴミ処理係」に頼っており、一般の隊員はグールの前でもほとんど無力。1999年9月3日、ミレニアムの手先である吸血鬼、バレンタイン兄弟率いるグールの軍隊による本部襲撃で隊員のほとんどを失い、現在は傭兵集団「ワイルドギース」を雇って戦力としている。今回の小説はそれから10日にインテグラと13課の課長マクスウェルがロンドンで会見するまでの間の6日と7日に起こった話という設定。





イスカリオテ機関

 ローマカトリック、ヴァチカン法皇庁特務第13課。ヴァチカンの非公式特務実行部隊。神罰の地上代行者を自認する、ヴァチカンの持つ唯一にして最強の戦力。「イスカリオテ(ユダ)」の名を持つ存在しないはずの第13課。悪魔退治(エクソシズム)・異教弾圧・異端殲滅のプロフェッショナル集団として、ヘルシング機関などよりはるかに昔から「化物たち」との闘争を続けてきた。課長はエンリコ・マクスウェル。アンデルセンやハインケル・ウーフー、高木由美子(由美江)などが所属する。

 徹底した排他主義者の集団であり、自分達に楯突く者はいかなる者であっても徹底的に排除する。ローマ・カトリックの信者以外は人とも思わず、共通の敵を前にしても他の集団とは一切与しない。「CROSS FIRE」では、主役は彼ら。課の名前はキリストを裏切ったイスカリオテのユダに由来し、第2話でその教義が「教義のためなら教祖をも殺す」と語られていた。アンデルセンを見れば、どんな組織かはすぐに理解できる。





ミレニアム

 南米に本拠地を置く、ナチス残党の秘密組織。第二時世界大戦中にナチスドイツが実施した秘匿作戦の名称とそれを実行した部隊に起源をもつ。実質的指導者は「大隊指揮官」、「総統代行」とも呼ばれる、デブ、チビ、メガネの「少佐」。規模、目的、人員構成など、未だ謎な部分の多い組織であるが、その組織力は卓絶しており、南米各国の上層部はおろか、世界中の政界・財界・宗教界の上層部にまで根を張っているらしい。人工吸血鬼の製造法研究の結果、所属する一個大隊千人の兵士が全員吸血鬼となった、戦争をすることしか頭にない狂気の集団。55年前に一度アーカードとウォルターに壊滅させられており、人工吸血鬼を作って猟奇殺人を多発させたり、バレンタイン兄弟にヘルシング本部を襲撃させたりと、姿を現す前からイギリスでいろいろと暗躍していた。

 戦争のことしか頭にないという、単純だけれど13課以上に異常なミレニアム。すごく迷惑です。「手段のためには目的を選ばない」が信条の「少佐」以下、登場以来ひとっことも口をきいていない「大尉」や、ヘソ出し、おかっぱ、多重レンズ眼鏡の「博士(男)」、「少佐」お気に入りの犬耳ヒトラーユーゲント少年「シュレディンガー准尉」など、わけのわからない奴らがわんさかたむろしてます。人体改造の結果吸血鬼になったというあたりが、やはりナチス残党説がささやかれる某悪の秘密結社とのつながりを疑ってしまいます。戦争が唯一の楽しみなのに、50年以上ものあいだ南米の穴倉の中でくすぶりながら何をやってヒマをつぶしてたのかなど、どうでもいいことが気になります。メチャクチャあくが強いのですが、今回の小説には名前しか出てきません。戦争が好きな方々、ごめんなさい(謝ってばっかりだ)。


 とまあ、今回の小説に関係してくる人や組織を挙げると、こんな感じでしょうか。他にも「ワイルドギース」の隊長さん、ピップ・ベルナドットや、爬虫類っぽい13課の課長マクスウェル、ミレニアムの愉快な仲間達といった人(?)達が出てくるのですが、今回はこのあたりで。詳しく知りたい人は、ぜひ本編をお読みになって下さい。それでは。


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