健二が銀色のロボット、アポカリプスと遭遇していた頃、

 「フフフ、アポカリプスよ、奴を処刑するのだ・・・。ジャイロソルジャーは破壊された。貴様の実力を見せてやれ」

 沢田は画面を見ながら笑う。

 「さて、もう一つの脱獄者も処刑せねばな・・・」

 そう言うと沢田は、近くにあったもう一つの画面を見た。

 「ククク・・・」

 沢田は画面を見て再び笑った。


仮面ライダーコブラ

第10話
黙示録の処刑人


 「もう一つ作戦があるだと・・・?」

 沢田の話を聞いたマッドが怪訝そうな顔をする。

 「その通りです。それが今回の作戦の目的の一つでもあります・・・」

 「面白い。聞かせてみろ」

 「サンプル1にはメタルソルジャーを。サンプル2にはバイオソルジャーを仕向けるのです」

 「ほう、その作戦のメリットは・・・」

 「単体での戦闘能力はバイオソルジャーの方が上です。その為まだ戦闘データの少ないサンプル2に仕向け、データ回収目的も兼ねて戦闘させます。そしてサンプル1には空戦用のジャイロソルジャーをテストを兼ねて仕向ける、これが今回の作戦です」

 「ほう、面白い。やってみせてくれたまえ。しかし、失敗は許されんぞ・・・」

 「了解致しました・・・」




 「アンタがさっきのメタルソルジャーの親玉か?」

 健二は対峙するアポカリプスに言う。

 「フフフ、その通りだ・・・。しかし、空中戦用のアポカリプスを倒すとはな・・・。驚いたよ・・・」

 「オレが奴に倒されると思ってたのか?」

 「君には飛び道具やリーチの長い武器は無いと報告されていたからな。データ通りに進めば君の敗北は確実だっただろう」

 「だが実際は」

 「倒された様だな・・・。しかし君の気転の良さには驚かされた。賞賛したい程だ」

 「そりゃどうも。で、親玉の登場という訳か・・・」

 「フ、そういう事だ」

 ガシャッ

 そう言うとアポカリプスは左腕を変形させ、マシンガンの銃口を健二に向けた。

 「が、君は我々にとって非常に厄介な存在の様だ・・・。残念だが、消えてもらう!!」

 ダダダッ!!

 アポカリプスはマシンガンを掃射して来た。

 「チッ!!」

 健二はそれをかわす。

 「結局タダでは帰らせてもらえないって事か・・・」

 健二はアポカリプスを睨んだ。

 「やるしか、ないか・・・」




 同じ頃

 「・・・」

 祐樹は無言でバイクを走らせていた。

 大学に行く訳でも無く、ただフラフラしていた。が、

 「・・・!! あれは・・・!!」

 祐樹は信号で止まった。しかし、その時振り向いた先にいた人間を見た彼は驚いた。

 そこには、既に殺した筈の武山がいたのだ。

 「アイツは・・・!! 確かにオレが殺した筈・・・!!」

 祐樹は驚愕した。が、

 フッ

 「何!?」

 突如として武山の姿は消えた。

 「な、何だ今のは・・・!? 幻影か・・・!?」

 祐樹は我が目を疑った。が、

 フッ

 武山の幻影は信号を右折した道に再び現れた。

 「ど、どうなっているんだ・・・!?」

 ますます訳が解らなくなる。が、

 フッ

 再び幻影は姿を消す。

 「い、一体これは・・・」

 祐樹はまたも驚愕する。が、

 「こうなったら、追って正体を突き止めてやる・・・!!」

 そう言うと祐樹は再びバイクを走らせた。




 「ここは・・・」

 幻影を追って祐樹が辿りついた場所は、倉庫の様な建物だった。

 「ここは確か・・・数ヶ月前に潰れた工場だった筈・・・」

 祐樹は不信に思った。

 しかし、自分を拉致した奴等は得体の知れない連中であった。何をするかも解らない。

 「・・・調べる価値はありそうだな・・・」

 祐樹は決心を固め、廃工場へ足を踏み入れた。




 「ホントにちょっと前まで機能していたとは思えない程錆びれてるな・・・」

 倉庫の中はほこりっぽく、鉄骨は錆びついて赤くなっており、とても数ヶ月前まで機能していたとは思えない程ボロボロであった。

 「しかし、ここに一体何が有るというんだ・・・?」

 祐樹は顔をしかめた。が、

 ガシャッ!!

 「何!?」

 突然入り口のドアが音を立ててしまった。

 「どういう事だ!?」

 祐樹はドアに手をかけた。しかし、ドアは固く閉じており、力を込めてもこじ開けられない。

 「どうなってんだ・・・!?」

 祐樹は状況が見えなかった。が、

 「ヒャハハハハ!! 来やがったなクソヤローが!!」

 突然声が響いた。

 「だ、誰だ!?」

 祐樹は驚いて声の方を向いた。

 「イヤッハーーー!! まさかこうも上手くいくとは思っても無かったぜ!!」

 そこにいたのは、下半身は人型、上半身は鮫のような形の怪物だった。

 「お前は・・・!!」

 「ヒャハハハハ!! オレサマは上級バイオソルジャー、ハンマーヘッドだ!! ビビったかクソヤローが!!」

 ハンマーヘッドは笑いながら言う。

 「上級バイオソルジャーだと?」

 「そうさ、あの無能な博士の尻拭いをやらされるハメになっちまった訳さ。全くろくでもないぜ!」

 「無能な博士・・・オレが殺したあの男か?」

 「ああそうさ。ま、所詮は学者としての能も殆ど無かった奴を改造した所でまともな成果なんてモンは期待するなってこった。ヒャーハッハ!! そうこう言う訳でテメーを処刑させてもらうぜ!! サンプル2よ」

 「サンプル2だと?」

 「所詮テメーはオレさまの様なイカすバイオソルジャーとは違う出来損ないだ! そんな奴が逃亡なんてウゼーんだよ!」

 「チッ、訳の解らない言語を連発しやがって・・・。だったら戦うしかないな・・・」

 祐樹はバッグから2つの機械を取り出した。

 「変身!!」

 祐樹はライダースーツを装着した。

 「ヒャッハッハーーー!!! そうこなくちゃなぁ!!」

 ハンマーヘッドは戦闘態勢に入った。

 「おっと、言い忘れた事があったぜ」

 「何だ?」

 「この倉庫の下には硫酸プールだ!」

 「何?」

 「しかもこの倉庫はあと10分で床ごとそのプールにドボンだ!!そして入り口は固く閉められ、ここから脱出出来るカギはオレしか持っていない! 残念だが、手前はオレに殺された後硫酸プールに落ちて死亡だ! どう足掻いても手前はあと10分でアーメンって事だ! ヒャハハハハ!」

 ハンマーヘッドは勝ち誇った様に言った。

 「チッ、随分手の込んだ罠を仕掛けてくれたな・・・」

 祐樹はハンマーヘッドを睨む。

 「ヒャハハハハ!! 早速テメーをぶっ殺すショーを始めるか!! とりあえず情けとしてこれを渡してやらぁ!!」

 そう言うとハンマーヘッドはストップウオッチを投げつけた。

 「せいぜいあと10分以内でどうやってオレの攻撃から逃げ切れるか考えるんだな!! ヒャハハハハ!!」




 ダダダッ!!

 アポカリプスはマシンガンでの機銃掃射を仕掛けて来た。

 「チッ!」

 健二はそれをかわす。

 「でえぇい!!」

 シュタッ

 健二はアポカリプスの懐へ飛び込んだ。

 「食らえ!」

 健二はコンバットソードを振り下ろす。

 ガキイッ!!

 アポカリプスはそれを左腕で受けとめた。鉄と鉄がぶつかり鈍い音が響く。

 「クッ!」

 ブンッ

 「のわあっ!!」

 アポカリプスは攻撃を振り払う。そして、

 「くたばれ!!」

 ダダダッ!!

 再び機銃掃射が来る。

 「当たるかよ!!」

 シュタッ

 地面に着地した健二は、攻撃をかわす。

 「フ、報告通り、スピードに関してはなかなかだな・・・」

 「へ、そりゃどうも・・・」

 「だったら、これはどうかな?」

 そう言うとアポカリプスは右腕をバズーカに変形させた。

 「何だ・・・?」

 健二はバズーカを見て驚いた。

 「食らえ!!」

 バアンッ!!

 バズーカが火を吹いた。

 「うわっ!!」

 健二は弾丸をかわす。

 ドガアァン!!

 弾丸は着弾し、爆発を起こした。

 かなりの破壊力を持っている事は爆発音で理解できた。

 「全く、物騒な物持ってるねぇ・・・」

 健二は呆れた様に言った。

 「フフフ、まだだ!!」

 ダダダッ!!

 今度はマシンガンが火を吹いた。

 「クソッ!!」

 健二は弾丸をかわしながら走る。

 バアンッ!!

 更にバズーカの弾丸が飛んできた。

 「おわあっ!!」

 ドガアァン!!

 弾丸が着弾する。

 「チッ! あの武器のどちらかを潰すべきだな・・・」

 健二はアポカリプスの左腕のマシンガンを見た。

 「これで叩っ切る事が出来るか・・・?」

 健二は手に持ったコンバットソードを見た。

 「何か策を練っている様だな。ならば見せてもらおうか、その考えを!!」

 アポカリプスは再び銃口を向ける。

 「いちかばちかだ・・・」

 健二はコンバットソードを握り締めた。




 「イヤッハーーー!!」

 ズバアッ!!

 「クソッ!!」

 祐樹はハンマーヘッドの攻撃をかわした。

 「ヒャハハハハ! とっとと切られろや!!」

 再びハンマーヘッドが突撃してくる。

 「クソッ!!」

 バアァン!!

 「うわあっ!!」

 祐樹は体当たりを食らって吹っ飛ばされた。

 「ハーッハッハーーー!! 大したこたぁねえな!!」

 ハンマーヘッドは大笑いする。

 既に戦闘開始から3分が経過した。残り7分足らずで床下の硫酸プールにドボンである。

 「チッ、何てヤツだ・・・」

 祐樹は舌打ちした。

 実際ハンマーヘッドは上級バイオソルジャーを自称するだけあってかなり手強い。

 奴は右腕から突き出た鋭利な刃物を武器している。更にパワーが強く、装甲も硬い。

 「ヒャハハハハ!怖気づきやがったか!!」

 ハンマーヘッドは勝ち誇った顔をしている。

 「あまり時間をかけると脱出出来なくなるからな・・・。そろそろ終わらせるか・・・。ヒャハハハハ!!」

 そう言うとハンマーヘッドは、壁に取り付けられた巨大な鉄鎚の様な武器に手をかけた。

 「ヒャハハハハ!! これがオレサマの最強の武器、グランドハンマーだ!!」

 「巨大なハンマーだと?」

 祐樹はグランドハンマーを見て驚いた。

 「ヒャハハハハ!! これで手前をぶっ潰してやるぜ!!」

 そう言うとハンマーヘッドは再び突撃してきた。

 「何!?」

 それを見た祐樹は回避しようとした。が、

 ドガアッ!!

 「うわあっ!!」

 回避は間に合わず、祐樹の腹部に攻撃が直撃し、吹っ飛んだ。

 バアンッ!!

 祐樹は壁に激突した。

 「ぐっ・・・」

 祐樹は立ち上がる。が、

 「ヒャハハハハ!!」

 再びハンマーヘッドがグランドハンマーを振り下ろしてきた。

 「クソッ!!」

 祐樹は間一髪攻撃をかわした。

 「ヒャハハハハ! 無様だな」

 ハンマーヘッドは再び笑う。

 「次の一撃であの世に送ってやる!!」

 再びハンマーヘッドは攻撃を仕掛けようとした。

 「ぐ・・・どうすれば・・・」

 あの攻撃を何度も食らえばただでは済まない。しかし、かわす以外の方法が無い。

 「チッ・・・」

 祐樹はストップウォッチを見た。

 残り時間は3分を切った。

 「あの壁は相当頑丈だが、あのハンマーを使えば破れるか?」

 祐樹はグランドハンマーを使って脱出する方法を考えた。

 「奪えるチャンスは・・・ある!」

 祐樹はハンマーヘッドを見据える。

 「ギャハハハハ!!死ねや!!」

 ハンマーヘッドが高速で接近し、グランドハンマーを振り上げた。

 「よし!!」

 その時祐樹は待ってましたとばかりに拳に力を込めた。そして、

 「でえぇい!!」

 ドガアッ!!

 「グガァァッ!?」

 祐樹はハンマーヘッドの腹部にパンチを繰り出した。

 「き、貴様・・・!!」

 「悪いが、死ぬわけにはいかないんだ!!」

 祐樹は更に腕に力を込めた。

 「ぐ、ゴハァ!!」

 ガシャッ

 グランドハンマーが鈍い音と共に落下した。

 「よし!」

 ダッ

 祐樹は素早くグランドハンマーを取った。そして、

 「食らえ!!」

 ドガアッ!!

 「グヘェ!!」

 祐樹はグランドハンマーをハンマーヘッドの腹部に叩きこんだ。

 しかし、既にストップウォッチは1分を切っていた。

 「チッ!」

 祐樹は入り口に向かって走り出した。

 「ちくしょおっ!!」

 ドガアッ!!

 そしてグランドハンマーで壁を叩いた。

 「でえぇい!!」

 ドガアッ!!

 再び壁を叩く。

 ミシッ

 僅かに壁が軋む。

 「おらあぁっ!!」

 ドガァン!!

 壁は音を立てて壊れた。

 ストップウォッチは残り10秒を切った。

 「よし!」

 祐樹は壊れた壁から外へ逃げた。

 「ま、待て・・・」

 ハンマーヘッドはまだ中にいた。が、

 ビー

 機械音が響いた。そして、

 グオオ

 「ひ!?」

 工場の床が真っ二つに割れ始めた。

 「そ、そんな! 生き残るのはオレじゃないか!! 待て!! 馬鹿な!!」

 そして床が真っ二つに割れ、ハンマーヘッドは転落した。

 「そ、そんな・・・!! オレが勝つシナリオだったのに!! な、何で!! た、助けてくれよーーー!!!」

 ブシャアッ!!

 「ギャアァァッ!!」

 ハンマーヘッドは断末魔の叫びを挙げ、硫酸プールに沈んだ。

 「ハア、ハア・・・:

 変身を解除した祐樹は、硫酸プールを見た。

 「あ、危なかった・・・」

 もしあの時攻撃を受け止めてなかったら、自分はあのプールに落ちていただろう。そう思うとゾッとした。

 「とりあえず、戦利品は手に入れたな・・・」

 そう言うと祐樹は地面に座り、側に転がったグランドハンマーを見た。




 「うおぉぉっ!!」

 健二は全速力でアポカリプスに突進を仕掛けた。

 「バカが!!闇雲に突っ込んで勝てるものか!!」

 ダダダッ!!

 アポカリプスはマシンガンを連射した。が、

 「何!?」

 健二はスピードを落とさず、尚も高速で向かってきた。

 「でえぇい!!」

 健二は大きく跳躍した。

 「何!?」

 アポカリプスは牽制しようとした。が、

 「させるかぁ!!」

 そう言うと健二はコンバットソードを振り下ろした。

 ガキイッ!!

 鈍い音が走る。

 「グッ!!」

 アポカリプスは攻撃を受けとめる。が、

 「まだまだぁ!!」

 バキイッ!!

 そして健二はもう一本のコンバットソードをアポカリプスの間接に突き刺した。

 「ぐ、ぐあぁぁ!!」

 アポカリプスは悲鳴をあげた。

 バアンッ!!

 そしてアポカリプスのマシンガンは地面に落ちた。

 「ぐ・・・おのれ・・・」

 アポカリプスは破壊された左腕を押さえて言った。

 「思った通り、間接の装甲は薄かった様だな」

 健二が言う。が、

 「フ、フハハハハ!! 面白いぞ! 仮面ライダーよ!! 君の様な奴がいるから、戦いはやめられんのだ!! フハハハハ!!」

 アポカリプスは大声で笑い出した。

 「私の考えが間違っていた。飛び道具では戦いの真の面白さを味わえんな。ここは私も格闘戦にさせてもらおうか」

 ガシッ

 そう言うとアポカリプスは、背中から一本の剣を取り出した。

 「何!?」

 健二はアポカリプスの予想外の行動に驚いた。

 「フフフフフ、では始めよう・・・。勝負だ!!仮面ライダー!!」

 アポカリプスは健二に剣を向けた。

 人間と機械の戦い、最後に笑うのは、人か、機械か・・・。


次回予告

 戦いの末、健二は辛うじてアポカリプスを退ける。しかし、新たに現れた敵に、戦いの激化を覚悟する。が、健二は姉を探して日本に来た留学生、リューク・デカルトと出会う。しかし、再びジャイロソルジャーが空から迫る!

 仮面ライダーコブラ 第11話 姉を尋ねて遥々と

 魂の叫びが 聞こえるか?


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