「ああもう、ちくしょう・・・」

 学生服を着たリュークは、苛立った顔で走っていた。

 「二時間以上お説教とか、そこまで怒る事じゃ無いってのに・・・」

 実は前日、銀咲の家に戻ったリュークは、姉のレミィにこっぴどく説教を食らっていたのであった。その総時間、二時間10分弱。おまけに彼もレミィも朝には弱い為、高校への転校初日となる今日も寝坊したのである。

 「ええと・・・あった、ここだな・・・」

 リュークは高校の門の前に立った

 前日に編入試験やら入学手続きやらをクリアしていた。そして今日からここが彼の通う高校、公立赤坂高校であった。

 「今日からよろしくな、公立赤坂高校・・・」

 そう言うとリュークは校庭内に入った


仮面ライダーコブラ

第13話
二者衝突


 「ねえねえ聞いた?2−Dに転校生が来たらしいわよ」

 「知ってるわ。しかもアメリカ人と日本人のハーフですって」

 「おまけに編入試験も余裕で通過したらしいわ・・・」

 教室内で女子がざわめいていた。

 「外人の転校生だって。真琴は興味無いの?」

 真琴の親友の宮内恵美が言う。

 「え? いや、別に」

 真琴はさりげなく言い返す。

 「でも、もしかして・・・」

 真琴は考えた。

 「どうする? 見に行く?」

 「・・・うん」





 「・・・」

 「・・・」

 お互いに向き合った真琴とリュークは言葉に詰まった。

 「・・・ここに転校して来たんだ・・・」

 「え? あ、まあ・・・」

 「じゃあ、よろしくね」

 「え、あ、はい・・・」

 リュークは苦しそうに言う。

 「あの二人って知り合いなの?」

 「へえ・・・意外・・・」

 「真琴も隅に置けないわね・・・」

 周りがざわつく。

 「あ・・・また後でね」

 「え、ええ・・・」

 そう言うと真琴は走り去った。

 (やっぱり、可愛い・・・)





 「転校初日の少年は知り合いで、そして運命の人だった・・・ああ、これぞ王道的な展開ねぇ・・・」

 帰り道で、恵美が甘い声で言う。

 「そんな仲じゃ無いわよ、彼とは。馬鹿な事言わないでよ・・・」

 「またまた、照れちゃって・・・」

 「ち、違うわよ・・・。彼はお兄ちゃんの知り合いの人の弟。それだけよ・・・」

 「ふーん、で、アンタは彼に特別な感情とかは持ってるの?」

 「・・・そんな訳無いでしょ。単なる知り合い程度よ・・・」

 「だったらいいんだけどね。でも、校内であまりベタベタしない方がいいよ」

 「ベタベタってどういう意味よ・・・。だから、ホントに顔見知り程度だってば・・・」

 「まっ、君の人生だから、好きにエンジョイしてくれたまえよ。じゃあね」

 そう言うと恵美は十字路から走り去った。

 「まったく・・・何で変な誤解を受けるのかしら・・・」





 「で、どうだった、転校初日は」

 食卓を挟んで、レミィがリュークに言う。

 「うん、アメリカの学校とあんまし変わらないね」


 「そう、それなら良かったわ・・・」

 「でも、やっぱりハーフって聞くと皆物珍しそうな顔してたね・・・」

 「そりゃあね。ただの外人ならまだしも、アンタみたいに日本人ともアメリカ人とも思える顔だと、多少は困惑するわね」

 「だがよ、今は異文化交流ってのも普通だろ。その内そういう隔たりも無くなってく物だよ」

 横から銀咲が口を挟む。

 「まあ、そうかもしれませんけど・・・。ウチはお母さんが日本人だから、ある程度日本の事については解っているつもりですが・・・。文化や国境を超えて訳隔たり無く付き合えるというのはやはり難しいと思うんですよ・・・」

 「心配性なんだよ、お姉ちゃんは・・・。問題は接しようとする気持ちだよ」

 「・・・リューク、アンタ最近何か偉そうになってきてない?」

 「・・・スイマセン・・・」

 「まあまあ、気を長く持てよ、二人とも・・・」





 「へえ、じゃリューク君はお前の学校に転校して来た訳か」

 健二が言う。

 「まあね。結構皆騒いでたみたいよ」

 「今もまだ学校に外人ってのは珍しいのか・・・。ま、リューク君がハーフだって事にも理由はあるかもしれないか」

 「えっ、やっぱり彼ハーフなの?」

 「ああ。母親が日本人で父親がアメリカ人らしい」

 「ふーん、あの中途半端な童顔はその為かしら?」

 「そういうのは失礼だろ・・・。童顔なんて別に珍しい事じゃないだろ・・・」

 「そういう物なの? でも、周りの人達には何か変な目で見られちゃうし・・・。何かイヤになっちゃうよ・・・「特別な感情」とかさ・・・」

 真琴はため息をつく。

 「まあ、仮にも一晩一つ屋根の下で過ごしたから、少しは感情が芽生えても仕方ないんじゃないか?」

 「・・・馬鹿な事言わないでよ。私、20になるまで処女を捨てる気は無いんだからね・・・」

 「どうギアがずれたらそんな話になるんだよ・・・」

 「とにかく、彼には特別な感情なんて別に無いわ・・・」






 「はーっくしょん!!」

 リュークがクシャミをした。

 「どうかしたの?凄い勢いだったけど」

 「いや何も・・・。風邪かな・・・?」

 「風邪気味なら早く寝て安静にした方がいいわよ」

 「そうします・・・」






 「全く、君は何度失敗を重ねれば気が済むのかね・・・」

 マッドが冷たい声で言う。

 「君にこれまで何度もチャンスを与えて来たが、今までマトモな結果すら出せてはいないでは無いか・・・。君は損失ばかりを重ねるつもりかね?」

 「も、申し訳ございません!!」

 沢田は土下座して頭を下げた。

 「御託はもういい・・・。沢田博士、結果を出せない人材は我がガルグド・メタルには必要無いのだよ・・・。それは解っているな?」

 「お、おっしゃる通りです!」

 「ならば、失敗が重なれば君に対する待遇も悪くなる事を、肝に銘じておいてくれたまえ・・・」

 「しょ、承知いたしました・・・」

 そして回線は切られた。






 「社長、米軍の上層部の方がお越しになっています」

 マッドの秘書が言う。

 「地下の客室に通せ」

 「了解しました・・・」






 「お待たせいたしました、皆々様。で、今日はどの様な用件でしょうか・・・」

 マッドは目の前の人々に冷たい顔で言う。

 「前々から話していた、新型兵器の導入について検討しに来た。肝心の物は完成しているのかね?」

 「ご心配なく・・・。ではこれをご覧ください・・・。頼む」

 「はい・・・」

 マッドの指示を受けた秘書が、大画面の液晶を降ろした。

 「これからご覧になられる映像は我が社が開発した兵器の説明です。購入の検討はこれを見終えてから改めて行ってください・・・」

 マッドは不敵な笑みを浮かべる。そして、画面に映像が映し出された。






 「これで2体目か・・・」

 祐樹はパソコンのモニターを見ながら言う。

 「あのキチガイ学者、殺人ザメ、そして、」

 そしてそこに、健二の姿が映った。

 「奴らに復讐する為にも、コイツと改めて接触しなきゃな・・・」





 翌日、

 「でえぇい!!」

 バンッ!

 「チッ・・・」

 ボクシングジムで、健二は石倉と模擬戦を行っていた。

 「よし、そこまえ!」

 コーチが終了の合図を出した。

 「青山、前にも言ったが、やはり攻撃に積極性が欠けている。前よりはマシになったが、それでもまだ難がある・・・」

 コーチが顔を曇らせて言う。

 「まあ、お前の場合は防御体勢とフットワークを重視し一瞬の隙を付いて攻撃を叩きこむ先方の方がいいかもしれんがな」

 「そうですか・・・」

 「そして石倉、お前は上出来だ。もう少し攻撃に詰めを加えれば最高だ」

 「おす!」

 「よし、次は只野と石倉だ」

 「一瞬の隙を突いての攻撃・・・か・・・」

 健二はグローブを眺めた。

 「まあ、そう難しく考えるなよ。色々試してみて、それから自分にあった戦法を使えばいい。少なくともオレはそうして来たぜ」

 「ふうむ・・・。よし」

 「模擬戦か?手加減しないぜ?」

 「お願いします!」

 「よし来たその考えだ!」

 健二は再びリングに上がった。
 






 「よし、今日の練習はここまでだな」

 コーチが言う。

 「ありがとうございました!」

 挨拶をした会員は、ボクシングジムから出て行く。

 「さて、帰ろう・・・」

 健二もジムから出ようとした。そこへ、

 「青山、客がいるようだぜ」

 石倉が話しかけてきた。

 「客?」

 「外で待ってるぜ」

 「来たな・・・」

 そこにいたのは祐樹だった。

 「用って君か?」

 「ああ、そうさ」

 祐樹は口元に不敵な笑みを浮かべた。

 「で、どういう了見だろうか・・・」

 「フッ、これさ・・・」

 そう言うと祐樹は、ポケットから機械を取り出した。

 「・・・それは・・・」

 「これが何か、お前には解るか?」

 祐樹の口元がさらににやける。

 「だったら、これはどうだ?」

 そしてもう一方のポケットから、もう一つの機械を取り出した。

 「・・・・まさか・・・!」

 「オレの知る限り、お前もこれと同じ物を持っている筈だぜ・・・」

 「・・・何故それを知っているんだ・・・?」

 「さあな。前置きが長くなったが、単刀直入に言わせてもらう。青山健二、オレと戦え」

 「何・・・?」

 健二の顔がひきつる。

 「時間は・・・そうだな、明日の8時に、自然公園でどうだ?」

 「・・・断ると言ったら・・・?」

 「それはお前の意思に任せるさ。オレがお前と同じ意見かは知らないがな・・・」

 「・・・解った」

 「フッ、楽しみにしているぞ・・・」

 そう言うと祐樹は歩き去った。






 「何であの機械が・・・どういう事だ・・・?」

 健二は頭が錯乱していた。

 祐樹が持っていた二つの機械は、形は微妙に違ったが、健二が持っている機械に近い事は予測出来た。しかし、

 「という事は・・・彼も仮面ライダーという事なのか・・・?ああもう、さっぱり解らねえ・・・」

 健二は苛立ちから頭を押さえた。

 「だが、真実は自分で確かめないとな・・・」

 健二は考えるのをやめた様に歩き出した。






 「フッ、これで確実にデータは手に入る・・・」

 デスクを見ながら、祐樹が笑う。

 「これはパワータイプに設定されている様だが、奴はどうか・・・」

 尚も不敵な笑いは続く。

 「さて、バイクの整備もしておかなきゃな・・・」






 「・・・」

 家に戻っても、健二の目は焦点が定まっていない様だった。

 「どうかしたの? お兄ちゃん・・・」

 真琴が話しかける。

 「あ? いや、別に何も無いが・・・」

 「でも、何か今目が逝っちゃってたよ」

 「オレは死人か・・・。ちょっと考え事をしてただけだ・・・」

 「ふーん、・・・また強敵でも現れたの?」

 「・・・どうかな・・・。今はまだ何も言えないが」

 そう言うと健二は天井を見上げた。

 「何か問題があるなら、考えを実行に移したりもするべきなんじゃないのかな・・・?」

 「・・・そうだな・・・いつまでも考えてばかりじゃ何も始まりはしない・・・」

 そう言うと健二は席を立った。

 「今オレにやれる事をやろう・・・」






 翌日

 「ここが戦いの場所か・・・」

 自然公園に足を踏み入れた健二が言う。

 ここは最初にメタルソルジャーと戦った場所であり、言うなれば初陣の場所であり、ここから戦いが始まったのだ。

 「で、当の本人はどこにいるのやら・・・」

 健二は辺りを見回す。そこへ、

 「やっぱり来たか・・・」

 祐樹がバイクに乗って現れた。

 「怖気づいて逃げる様な事はしなかったか・・・」

 「ああ・・・。それより、君に聞きたい事がある」

 「何だ?」

 「何故君がその機械を持っているのか、そして君が何を考えているのか、それだ」

 「・・・フ。オレに勝ったら教えてやってもいいぜ。勝ったらの話だがな・・・!」

 そして祐樹はポケットから2つの機械を取り出した。

 「知りたきゃ力ずくで・・・って事か・・・」

 健二もポケットから機械を取り出す。

 「だったら、やってやる! 変身!」

 「そうこなくちゃな・・・変身」

 互いにライダースーツを装着する。

 「戦闘、開始だ・・・」






 「手始めに、オレの武器を見せてやる・・・」

 ガキィッ

 そう言うと祐樹は、バイクのフロントを取り外した。

 「何?」

 健二は顔をしかめた。が、

 シュゥゥッ

 突如外装が変化し、鮫の様な武器に変化した。

 「・・・攻撃用の武器って事か・・・」

 それを見た健二が言う。

 「フッ、行くぞ・・・」

 ダッ!

 そして祐樹は走り出した。

 「食らえ!」

 祐樹は健二に攻撃を加えようとした。

 「チッ!」

 シュタッ

 健二は攻撃をかわす。

 「逃がすか!」

 祐樹は更に攻撃を加えようとする。

 「そっちが武器有りなら、こっちもそうさせてもらう」

 ガキィッ

 そう言うと健二は、ブラストバイパーからシールドを外した。

 「無駄無駄無駄!」

 祐樹の攻撃が来る。が、

 「だあっ!」

 バキィッ!

 健二はシールドで攻撃を押さえた。

 「チッ、やはりナマクラじゃ無いか・・・」

 祐樹は舌打ちする。

 「でえぇい!」

 ダァンッ!!

 「グッ!?」

 健二は祐樹の懐に蹴りを加えた。

 「チッ・・・」

 シュタッ

 祐樹は宙を飛び、地面に着地した。

 「うおぉっ!!」

 そして再び攻撃を仕掛けて来る。

 「なんの!」

 ガキィッ!!

 再び攻撃を防ぐ健二。

 「まだまだぁっ!!」

 再び祐樹は攻撃を仕掛けようとする。が、

 「そうはいくかぁっ!!」

 ガキィッ!!

 健二はシールドで応戦する。

 「チッ」

 再び祐樹は地面に着地した。

 「思ったよりやるな・・・。が、これならどうかな・・・?」

 祐樹はほくそえむ。

 「何?」

 「見せてやる。オレのもう一つの武器をな・・・」

 そう言うと祐樹は、バイクから棒の様な物を取り外した。

 「それが武器か?」

 「フッ、見ろ・・・」

 健二は棒を見た。が、

 「な、何・・・?」

 健二は驚いた。

 なんと、バイクから部品の様な物が自動的に外れ、棒の回りを浮遊していたのだ。そして、

 ガキィッ!!

 部品は棒に合体し、大型のハンマーの様な武器になった。

 「それが君の武器か・・・」

 「ふ、そうさ・・・。グランドハンマーだ」

 祐樹は不敵な笑みを浮かべた。






 健二と祐樹が対峙していた、その頃、

 「ギギギギギ・・・」

 近郊の建物から、レーダーソルジャーがその様子を監視していた。

 「ギギギギギ・・・」






 「これは・・・」

 沢田はレーダーソルジャーから転送された映像を見て目を細めた。

 「ほう、サンプル同士の戦いか・・・」

 そしてほくそえむ。

 「面白い・・・。どちらかが倒れればそれはそれで我々にとっても利益になる・・・。せいぜい頑張ってくれ・・・」






 「また不気味な武器を持ってきたな・・・」

 健二は突然自動的に合体したグランドハンマーに寒気を覚えた。

 「フッ、ビビってられるのも今の内だ・・・」

 祐樹はグランドハンマーを両手で構えた。

 「降参するなら今の内だぜ・・・。今からは手加減無しだ・・・」

 「・・・残念だが、それは聞き入れられないな・・・」

 ガキィッ

 健二はブラストバイパーからコンバットソードを取り外した。

 「あくまで戦闘姿勢を貫くつもりか・・・」

 「見たまんまさ・・・」

 健二はコンバットソードを構えた。

 「フッ、その自信も、すぐに打ち砕いてやる・・・」

 再び不敵な笑みを浮かべる祐樹。

 仮面ライダーVS仮面ライダー、その戦いの行方は・・・?


次回予告

 仮面ライダー同士の戦いに決着は着かず、事実はハッキリ解き明かされなかった。遂に業を煮やした沢田は、4体のバイオソルジャーを送りこみ、仮面ライダー殲滅を狙う。傷ついた真琴、それを見た時、健二の意識は途絶えた。その時、何が起こったのか・・・?

 仮面ライダーコブラ 第14話 魔獣覚醒

 魂の叫びが、聞こえるか?


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