「解らないだと?どういう事だ?」

 感情を噛み殺して問う博士。

 「言った通りさ・・・」

 顔を落として反応する沢田。

 「・・・馬鹿な・・・」

 ショックを隠せず、席に崩れ落ちる博士。

 「お前は、本当に忘れてしまったというのか?」


仮面ライダーコブラ

第18話
復讐の女神 前編


 「本当にガルグド・メタルに残るのか?」

 空港の入り口で、トランクを片手に持った博士が言う。

 「ああ、ガルグド・メタルを内部から調べる為にも、ここに留まった方が正解だろう・・・」

 無表情で答える沢田。

 アイアン・ラージの暴走事件は、亜紀の着眼通り、右肩を破壊する事によって鎮圧された。

 アイアン・ラージの脳は、敵の目を欺く為に、試験的に右肩に脳が組み込まれていた。つまり頭部はダミーである。また、攻撃手段の一つとして、両腕にバラの遺伝子が組み込まれており、これで攻撃する際、支持を出す右肩の脳の鼓動が通常よりも激しくなる。これが盲点であった。博士が右肩を破壊した為、アイアン・ラージは倒れ、鎮圧された。

 この事件により、亜紀を含め、研究員6人がアイアン・ラージに惨殺された。死体はいずれも、頭をもぎ取られた者、四肢を引き千切られた者、骨が粉々に砕けてグシャグシャになっていた者、いずれも人の死とは思えない酷い有様だった。

 「くっ・・・彼等は所詮死んだ人間など数の上の問題でしかないのか・・」

 舌打ちする博士。

 事件は研究中に機械が暴走した事による事故として処理された。研究員には状況や惨状は全く説明されておらず、その後、社内で取り上げられる事も無く、完全にこの事件は闇に抹消されたのである。

 「所詮企業なんてそんな物だ・・・利益が最優先、それによって生じる犠牲は全て抹消、呆れた話だ・・・」

 顔を落とす沢田。

 「まあ、それはともかく、私達の力で必ずガルグド・メタルの鼻を明かしてやろう。それが栗原さんに対するせめてもの供養だ・・・」

 そう言うと手を差し伸べる博士。

 「・・・そうだな・・・」

 その手を握り返す沢田。

 「いつか機会があればまた落ち合おう」

 「ああ」

 そう言うと博士は手を放し、空港内に入っていった。




 「あの日の誓いはなんだったんだ・・・」

 そう言った博士の腕は震えていた。

 「・・・さあな・・・」

 無気力に答える沢田。

 「が、いずれにせよ、私もお前と無意味に対立する事もなさそうだ・・・」

 「・・・何だと?」

 「・・・ガルグド・メタルから解雇されたのさ・・・」

 皮肉を含んだ笑みをうかべる沢田。

 「・・・どういう事だ?」

 「聞いた通りだ。奴が逃亡してからという物、不調が相次いだ。そして、完全にお払い箱だ・・・」

 沢田は悔しそうに言う。

 「・・・やはり、お前も彼等にとっては、捨て駒の一つに過ぎなかったらしいな・・・」

 やるせない表情で話す博士。

 「認めたくは無いが、全くその通りさ・・・。奴らとの縁は切れた・・・」

 再び笑う沢田。

 「・・・これ以上続けていても、空しくなるだけだ・・・」

 そう言うと沢田は席を立った。

 「悪いが、先に失礼させてもらう・・・」

 その場から去ろうとする沢田。が、

 「・・・待て」

 博士は沢田を呼び止めた。

 「・・・まだ納得行かないのか?」

 振り返る沢田。

 「それもある。が、」

 そう言うと博士は沢田に手を差し出した。

 「・・・何のつもりだ?」

 目を細める沢田。

 「見た通りさ・・・」

 表情を変えずに答える博士。

 「私は一度はお前と対立した身だぞ。その私と握手など、何を考えている?」

 沢田は博士を睨みつける。

 「・・・別に何も考えなど無い。が、久しぶりに落ち合ったんだ。それに、彼等との縁は切れたのだろ?」

 博士は口元に笑みを浮かべる。

 「・・・」

 沢田は無言で手を握り返した。

 「・・・まさか、お前にこんな形で励まされるとは思わなかったよ・・・」

 沢田も笑みを浮かべた。

 「・・・色々大変な様だが、今度こそゆっくり落ち合おう・・・」

 「・・・ああ・・・」

 そう言うと沢田は手を放した。




 「・・・」

 店内から出てきた沢田を、健二は睨み付けた。

 「・・・」

 健二に歩み寄る沢田。

 「・・・アンタ、逃げるつもりか?」

 幾分低い声で言う健二。

 「・・・さあな・・・」

 「オレはアンタの事を許しちゃいない。いや、出来れば今すぐにでもアンタを殺したい位だ」

 「・・・そう思うならそれで構わないさ・・・」

 沢田はその場から立ち去ろうとする。

 「待てよ、まだ話は終わっちゃいない」

 沢田を呼び止める健二。

 「確かにオレはアンタが憎い。が、今はそれ以上に一つ聞きたい事がある・・・」

 「・・・何?」

 足を止める沢田。

 「あの時・・・なんでオレが選ばれたんだ?」

 再び沢田を睨みつける健二。

 「・・・偶然だ」

 「何だと?」

 「素体の内の一体に貴様がいた、ただそれだけの話だ」

 「一体だと?他にもアンタ等に拉致された人はいたのか?」

 「ああ、そうだ。結局、貴様以外は素体としては不充分だった。全員記憶を消して開放した。が、貴様は違った。身体能力、遺伝子状態等を考えても、通常の人間よりも遥かに改造用の素体として優れていただろう。改造が成功していれば、大きく化ける筈だった」

 淡々と言う沢田。

 「が、改造は見ての通り失敗だ。そして私は現在に至ると言う訳だ・・・」

 沢田は下を向く。

 「・・・アンタは、何の後悔もしていないのか?」

 腕を震わせながら、健二が言う。

 「人間を実験の材料の様に利用する事に、何も感情を抱かないのか?」

 その声には怒りも含まれていた。

 「・・・さあな・・・」

 曖昧は返答を繰り返す沢田。

 「くっ・・・アンタは・・・」

 確実にこみ上げて来る怒りを押さえる健二。

 「・・・過ぎた事を悔やんでも、アンタを憎んでも、もうどうにもならない事は解っている。だが、」

 健二は再び沢田を睨んだ。

 「次にアンタと敵対する時が来たなら、その時は、オレはアンタに容赦はしない・・・」

 そう言うと健二は強く拳を握り締めた。

 「・・・お前がそう思うなら、それで構わんさ・・・」

 そう言うと沢田は踵を返し、歩き出した。




 「やあ、待たせたな・・・」

 やや重い足取りで店内から出て来る博士。

 「いえ、大丈夫です」

 素っ気無く答える健二。

 「・・・健二君、無理な事だとは解っているが、一つ言いたい事がある」

 「・・・なんでしょうか」

 「・・・沢田の事を、許してくれとは言わない。しかし、悪いのはあいつだけじゃないという事を解って欲しいんだ・・・」

 苦しそうに言う博士。

 「・・・解っています・・・しかし・・・」

 健二は顔を落として答えた。

 沢田と戦う前に、健二は博士から2年前の事故について聞かされていた。沢田の過去についてもある程度理解出来た。

 しかし、それでも健二の胸にはやるせない気持ちが残った。

 「博士、今度もし、沢田が敵としてオレの前に現れたら、オレは多分沢田を殺すかもしれません・・・」

 重い口調で言う健二。

 「・・・君がそう思うなら、それでも構わんさ・・・」

 首を縦に振る博士。

 「ところで健二君」

 「はい、なんですか?」

 「この間君が話していた事なんだが、詳しく聞かせてもらえるだろうか?」

 「あの話ですか・・・実はあんまり覚えていないんですよね・・・」

 顔をしかめる健二。

 「あの話」というのは、真琴が斬られた時、健二が豹変した時の事である。健二は電話で博士に伝えてはいたが、その時は詳しく話す余裕が無かったのである。

 「そうか・・・まあ、立ち話もアレだから、話はとりあえず私の家で聞こう」

 「ええ、解りました」

 健二はすぐそばに置いてあるブラストバイパーに乗った。しかし、

 「・・・そういや、博士はどうやってここに来たんですか?」

 ふと疑問に思う健二。

 よくよく考えれば、博士が何を使って移動しているのかは殆ど解らなかった。ライダーの初陣の際、バイクに乗って駆け付けた事があったが、それっきり何で移動したかは解らない。

 「ああ、これだよ」

 そう言うと博士はポケットから鍵を取り出した。

 そしてすぐそばに停車してあった4WDのドアを開いた。

 「・・・博士、車も持っていたんですか?」

 拍子抜けした顔で言う健二。

 「ああ、やはりバイクは使いなれていないと少し乗り辛くてな・・・やはり車の方が使いやすいな」

 「そうなんですか・・・」

 そんな健二を尻目に、博士は車のエンジンをかけた。




 「まあ、とりあえずその時の状況を聞かせてもらおうか」

 テーブルの上にお茶を置き、博士が言う。

 「はい。まず、化け物が4体現れたんですよ。とりあえず、リューク君の協力もあって、一体倒したんですが・・・」

 健二は顔を落とす。

 「その後、カマキリがオレの背後から斬りかかって来たんです」

 「・・・カマキリというのは・・・私を斬ったあれか?」

 「ええ、でも色は青かったです。そして、オレをかばって、真琴が・・・その後、突然目の前が真っ白になって、気が付いたら・・・」

 「他の奴も死んでいた・・・と」

 「そういう事になります」

 「・・・ううむ・・・」

 首をかしげる博士。

 「状況は解ったが、意識が無かったというのが厄介だな・・・」

 「・・・すいません・・・」

 頭を下げる健二。

 「いや、謝る必要は無い。しかし、答えを出すにはヒントが少な過ぎるな・・・」

 「ええ・・・」

 健二は顔をしかめた。

 そこへ、玄関のチャイムが鳴った。

 「誰だ・・・?」

 博士は玄関へ向った。




 「すいませーん」

 玄関にいたのは、リュークだった。

 「やあ、リューク君か」

 「こんにちわ、之村博士」

 挨拶を返すリューク。

 「よっ」

 健二も玄関に現れる。

 「どうも、健二さん」

 続けて頭を下げるリューク

 「ところでリューク君、急いでいる所申し訳ないんだけどさ・・・」

 頭を掻きながら言う健二。

 「はい、なんですか?」

 「・・・ちょっと、こないだの事、あれだ、真琴が斬られた時の話・・・」

 「・・・あの時は、すいませんでした・・・」

 暗く顔を落とすリューク。

 「あ、いや、別にその事は気にしなくていいんだ。そうじゃ無くて、戦闘の事なんだ」

 「・・・戦闘の事?あの時の状況ですか?」

 「ああ、ちょっとその時、記憶が飛んじゃっててさ・・・」

 再び頭を掻く健二。

 「・・・リューク君、君もその現場に居合わせたのか?」

 横で聞いていた博士が口をはさむ。

 「え、ええ・・・」

 「・・・すまないが、君の用事がてら、話を聞かせてもらいたいのだが・・・」




 「おっ、来たな、若僧共」

 店の前でバイクの整備をしていた銀咲が言う。

 「・・・同年代であるお前に言われたくは無い」

 座った声で言い返す博士。

 「まあそう怒るな、おっさん」

 「まだそこまで年を食った覚えも無い」

 「ははっ、そう怒るな」

 「それより、アレはどうした?」

 「ちゃんと置いてある。心配するな」

 整備の手を止め、立ち上がる銀咲

 「そうか。じゃあ二人とも、私について来てくれ」

 博士は背後に立っていた健二とリュークに指示を出した。




 「うお・・・」

 驚く健二とリューク

 博士に連れられて来た場所は、バイクショップ銀咲の地下だった。

 しかし、その面積は店内とほぼ同じ、いや、わずかな道具しか置かれていない点を見ると、店内よりも広い。

 「驚いたか? これがウチのもう一つの隠し玉、地下整備所だ」

 にやりと笑う銀咲

 「ええ・・・こんな場所まであるなんて・・・」

 唖然と辺りを見回すリューク

 「じゃ、ここから先は若僧同士で話してくれ」

 そう言うと銀咲は来る時に使った階段を上った。

 「店先にいるから、なんか有ったら呼んでくれ」

 「ああ、解った」




 「まあ、とりあえず、どこかに座ってくれ・・・」

 近くにあったイスに座る博士

 「あ、はい・・・」

 それを見て健二とリュークもイスに座る。

 「で、まずは先日の状況についてだが・・・」

 咳払いをする博士

 「その前に博士」

 リュークが口を挟む。

 「ん? なんだ?」

 「ちょっ・・・大きな布は無いでしょうか?」

 「布? ちょっと待ってくれ・・・」

 博士は階段を上がった。

 「おーい、大きな布は無いか?」

 数分後

 「とりあえず、これでいいのか?」

 博士はカーテンを持ってきた

 「ええ、十分です。それと、その布をどこかに貼ってもらえますか?」

 「解った。健二君、ちょっと手伝ってくれるか?」

 「勿論です」

 数分後、健二の手を借り、博士は壁にカーテンを貼り付けた。

 「よし、と、これでいいのか?」

 「ええ、では・・・」

 そう言うと、リュークは指を鳴らした。




 [えーでは、ラジオネーム、ゲテモノライダーさんからで、アルフィーの「タンポポのように」です。どうぞー]

 ラジオからナビゲーターの説明が流れる。

 銀咲はラジオから流れる音楽を聞きながら、作業を進めていた。

 「えーと、オイルはと・・・」

 道具を探して立ち上がる銀咲。が、

 「・・・ん?」

 そこで、彼は目を細めた。

 今閉めた地下行きの階段のドアが、目の前で勝手に開いた。

 そして、直後、ドアは閉じた。

 「・・・」

 その光景を唖然として見つめる銀咲。が、

 「・・・多分気分症だな・・・」

 とりあえず何も見ていないと思う事にした。




 「・・・これは・・・」

 博士は唖然としてその光景を見た。

 リュークが再び指を鳴らすと、何も無かった空間から、βファルコンが姿を現した。

 「・・・これは・・・」

 「そういえば、博士にはまだ見せていませんでしたね。これが僕の相棒、βファルコンです」

 リュークが説明する。

 「・・・これも、デカルト博士が造った物なのかね?」

 「ええ、物置の奥で偶然見つけて・・・」

 「・・・しかし、空間から突然現れる等、どうやって・・・」

 「ええ。じつはこのファルコンの表面には、特殊な迷彩が塗られているんです」

 「迷彩だと?」

 「予め入力しておいた背景の色を作りだし、それを瞬時に展開する事が可能になっているんです」

 「・・・ううむ・・・」

 博士は目を細める。

 「すまないがリューク君、後でその迷彩のデータを取らせて貰いたいのだが・・・」

 「博士」

 横から健二が口を挟む。

 「ん? ああ、そうだったな・・・」

 とりあえず我に帰る博士。

 「で、リューク君、何をしようと言うんだ?」

 「ええ、この位の暗さなら丁度いいですね・・・」

 辺りを見回しながら言うリューク。

 「じゃあ、あのカーテンを見てください」

 壁に貼られたカーテンを指差すリューク。

 言われた通りに壁を見る健二と博士。

 「よし、初めてくれ、ファルコン」

 そう言うとリュークは再び指を鳴らす。

 すると、ファルコンの目が光り、カーテンに映像が映し出された。

 「・・・小型のビデオカメラか・・・」

 「・・・」

 呆然と映像に見入る健二と博士。

 「ファルコンの頭部には資料などを保存する為の録画機能が付いているんです。たまたまあの時の映像が混じっていたんで・・・」

 再び説明するリューク。

 「・・・これは・・・」

 そこには、緑色の装甲を纏った、異形の戦士が映っていた。




 「・・・やはり難しいな・・・」

 映像を見終えた博士は、イスに腰掛ける。

 「・・・」

 顎に手を当てて考える健二。

 「健二君、何か思い出せたか?」

 「いえ・・・しかし、あの時何があったかは大体理解出来ました・・・」

 「・・・そうか・・・」

 「・・・とりあえず、撮った画像はこれで全部ですが、足りなかったでしょうか・・・」

 「いや、十分だ、ありがとう」

 礼を言う博士。

 「さて、とりあえず、今回の映像から考えた推論なのだが・・・その前に、健二君、君が使っているライダースーツに関しても改めて説明した方が良さそうだな・・・」

 「ライダースーツについて・・・ですか?」

 「ああ、まず、ライダースーツには君の右腕に組み込まれたコブラの遺伝子を読み取り形成されている事は以前にも話した」

 「ええ。それは解っています」

 「そして読み取られた遺伝子を元に形成されたライダースーツはあの様な形状になった。ここまでは解るな?」

 「はい」

 「しかし、ここから先がちょっと問題でな・・・。実はライダースーツは本来、決まった形というのを持っていないんだ」

 「決まった形が無い・・・?」

 「ああ。通常はライダースーツはゲル状で機械の中に収まっている。しかし、ライダースーツはスペックの変化により、形状を変える事が出来る」

 「・・・つまり、形を決めて、それを基に調整を行えば、ライダースーツは自由に形状を変えられるという事ですか?」

 「ちょっと違うな。ライダースーツの形状は、スーツの特性をどの様に変化させるかにも影響される。君のライダースーツは機動力重視のスペックになっている。そこに読みこまれた遺伝子が加わり、あの様な姿になった」

 「・・・という事は、変わった姿の更に変わった姿、とでも言えばいいんでしょうか?」

 「ああ、平たく言えば、イレギュラーとなるな。しかし、あの映像の姿は、イレギュラーの中のイレギュラーだな・・・」

 「つまりそれは・・・」

 「本来の姿とは大きく異なるというのは解ってもらえたと思うが、通常なら調整無しにあの様な姿になる事はありえないのだ・・・」

 「どういう事ですか?」

 「スペックの調整に伴い形状を変化させるとは先程も言ったが、あの戦闘以前にもスペックの変更は施されていない。要するに、姿が変貌する原因が見当たらないのだ・・・」

 「・・・つまり、なんの前触れも無く、あの様な姿になる事はありえない、と?」

 「いや・・・全く無い訳では無いが、可能性としてはかなり低いだろう・・・」

 「それでもいいです。その可能性というのは・・・?」

 「・・・健二君、あの戦闘で、君の中にはっきりと強い感情があったか?」

 「・・・強い感情・・・?」

 健二は顔をしかめた。

 「まあ・・・種類は何でもいい。何かこう、確かに感じていた感情という物は無いか?」

 「感情・・・真琴が斬られた時、怒りと悲しみは感じました。その後、記憶が飛んじゃっているんですが・・・」

 「・・・そうか・・・」

 「そういえば、あの時の健二さん、何かに取り付かれている様でした」

 横からリュークが口を挟む。

 「確かに、あの戦闘方法は普段の君よりもだいぶ凶悪だったな・・・」

 「・・・やっぱり、解らない事ばかりですね・・・」

 「ああ・・・だが、もしかすると君の感情も何か関わっていたのかもしれん。実際人の力は強い感情に左右される物だと言うしな」

 「そうですか・・・」

 「まあ、とりあえず、色々と研究の余地はありそうだな。が、名前くらいは決めておいた方がいいな」

 「・・・博士、何か楽しんでませんか?」

 「気にするな」




 「バジリスクなんてのはどうでしょうか?」

 またもや口を挟むリューク

 「バジリスク・・・ギリシャ神話に出て来る、蛇の怪物だったか?」

 健二が言う

 「ええ。バジリスクの目を見た物は即死すると言われてますから、丁度いいんじゃないかなって・・・」

 「ああ、確かにいいかもな」

 「・・・素直に喜べませんけどね・・・」

 健二は苦笑いを浮かべた。




 「で、次はリューク君の話だな・・・」

 イスから立ち上がる博士。

 「はい・・・」

 リュークも同じく立ち上がる。

 「君から頼まれた物はあっちにある」

 先に歩き出す博士。

 「健二さんも来ますか?」

 「え? いいのか?」

 予想外の言葉に驚く健二。

 「ええ、ただし、この事はお姉ちゃんには言わないでくれますか?」

 「デカルトさんに?構わないけど・・・」

 「ありがとうございます。じゃ、付いて来てください」

 「あ、ああ・・・」

 席を立つ健二。




 「とりあえず、これを見てくれ」

 健二達の目の前には、白い布で覆われた「何か」があった。

 「これは・・・」

 それを見て考えを巡らせる健二。

 そして、博士は布を取った。が、

 「・・・これは・・・?」

 健二は顔をしかめた。

 布の下から出てきた物は、奇妙な物としか言い様がなかった。

 なんとも形容し難いその物体を例えるなら、ガ○ダムの胸部から上をぶった切った様な物なのだ。

 「・・・これは、何かの部品なんでしょうか?」

 「いや、厳密に言うと少し違うな」

 「何か」を見て博士が言う。

 博士が開発しようとしている「何か」果たして、これは何なのか・・・?


次回予告

 之村博士がリュークに頼まれていた物、それこそ、アヴァン・デカルト博士が残した研究だった。一方、Dr.ヒメヤは、新たに開発したメタルソルジャーを送りこむ。突然の強敵に翻弄される健二。しかし・・・

 次回 仮面ライダーコブラ 復讐の女神 後編

 魂の叫びが、聞こえるか?


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