「ったく・・・何てこった・・・」

 やれやれとばかりに舌打ちするコブラ。

 「健二さん、大丈夫ですか!?」

 コブラに駆け寄るリューク。

 「ああ、何とかな・・・」

 「今の奴は・・・」

 「全く、また余計な悩みが増えちまった様だ・・・」

 苦笑するコブラ。

 「大丈夫なんですか?」

 不安そうな顔をするリューク。

 「ふっ、今は少し後の危機を考えるより、目先の危機をどうするか考えた方が良さそうだ・・・」

 そう言うとコブラは、すぐ近くまで迫っているバグソルジャーを見た。

仮面ライダーコブラ


第20話
復讐の女神 後編



 コブラがバグソルジャーと戦っていた場所から数キロ離れた、とあるアパートの一室。

 「・・・」

 そこで、祐樹は黙々とパソコンのモニターを睨み付けていた。

 数日前に健二に敗れて以来、彼はずっと部屋にこもり、パソコンのモニターを睨んでいた。しかし、

 「くっ、何でだ!」

 祐樹は悔しげに椅子に身を投げ出す。

 あの敗北の原因はライダースーツにあると考えた彼は、その原因を探し出そうとしていた。

 しかし、ライダースーツ自体には何の問題も発見されなかった。

 「何故だ・・・何故負けた!」

 祐樹には到底理解できなかった。

 健二のライダースーツと自分のライダースーツを分析して見ても、構造自体に違いはあるものの、分析結果ではこちらの方が勝っていた。

 戦略にしても、本当に後一歩の所で健二を倒せた筈だ。

 しかし負けたのだ。彼にとっては大きな誤算だっただろう。

 「もう少しで奴を殺せる筈なのに・・・」

 そして祐樹はひたすらパソコンのキーボードを打ち続けていた。が、

 「・・・少し休もう・・・」

 流石に限界を感じたのか、彼は目を押さえると、パソコンの電源を切った

 そして外に出ようと、部屋のドアを開けた。

 「・・・っ・・・」

 祐樹は思わず目を細めた。

 普通の人間から見れば大した眩しさでもなく、普通の明るさだったが、しばらく部屋に閉じこもって光を浴びていない彼にとっては、だいぶ眩しく感じられた。

 「・・・いつから太陽はこんなに眩しくなったんだ・・・」

 ぶつくさと文句を言いつつも、階段を降りる祐樹。

 「さて、どうするか・・・」

 とりあえず彼は、アパートの敷地内に置いてあった、ディープキラーと名付けたバイクに手をかけた。







 その様子を、数メートル先のビルから眺める二つの影があった。

 「ふっ、あれがもう一体のサンプルか・・・」

 一体はアポカリプス、もう一体はメタルソルジャーの様な姿だが、各部が大きく異なっている。

 「とりあえず、まずは様子見と行こうか・・・行け、モトソルジャー」

 アポカリプスの指示を受けると、メタルソルジャーもどきはバイクに変形した。

 そして、ビルから周りの家の屋根を飛び越えて進んで行く。

 「さて、どう戦う、「もう一人の仮面ライダー」よ・・・」







 「そういや、コイツの整備もしておかないとな・・・」

 ディープキラーの所々には泥や砂が付着していた。

 メンテナンス自体は行っていたものの、洗車等の作業は強奪して以来、全くやっていなかった。

 「とりあえず、洗車から始めるか・・・」

 やる事を決めた祐樹は、一端道具を探しに、その場を離れようとした。が、

 「・・・何だ・・・?」

 ふとアパートの外に目をやると、さっきまでは無かった赤いバイクが置いてあった。

 「こんなバイク、さっきまで無かった筈だが・・・」

 不審に思い、彼はそのバイクに近づこうとした。しかし、

 「・・・な・・・」

 突然、誰も乗っていなかったバイクのエンジンが自動で始動した。

 そして、バイクはそのまま立ち上がり、人型へと変形した。

 「ギギギ・・・」

 機械音を上げるバイクだった「何か」

 これが、ヒメヤの第2の刺客、モトソルジャーであった。

 「・・・コイツは・・・」

 目を見開く祐樹。が、

 「ギギギ・・・」

 バグソルジャーは右腕を祐樹に向けた。

 次の瞬間、数発の鉛弾が祐樹を襲った。

 「ぐっ!?」

 祐樹はそれをかわすが、弾丸はわずかに彼の肩をかすった。

 「くっ・・・何だか知らないが・・・」

 そう言うと祐樹は、ポケットから二つの機械を取り出した。

 「お前なんかに、殺されてたまるか!」

 祐樹はそのまま腰に機械を装着した。

 「変身!」

 瞬時にゲル状の物体が彼を覆う。

 そして、祐樹はシャークライダーへと変化した。

 「ギギャァ!!」

 両手で攻撃を仕掛けるモトソルジャー。

 「くっ!」

 攻撃をかわし、シャークはディープキラーに跨った。

 周りはアパートと壁に挟まれている。まともに動き回れない上に、周りの住民にも危害が及ぶと厄介な事になる。

 シャークはこの場を離れた方が賢明だと考えた。

 「どけえ!!」

 エンジンが始動し、走り出すディープキラー

 「ギゲ!?」

 予想外の行動に驚くモトソルジャー。

 「邪魔だ!!」

 そんなバグソルジャーを尻目に、アパートの敷地内から脱出するシャーク。

 「・・・ギゲゲゲゲ・・・」

 その様子を見たモトソルジャーはバイクに変形し、敷地外に出た。








 「ギギギギギ・・・」

 バグソルジャーは健二に迫った。

 「へっ、心配しなくても相手になってやるよ、化け物」

 コンバットソードを握り締め、再び戦闘態勢に入るコブラ。

 「ギギャァ!!」

 バグソルジャーが唸り声を上げると、背中のハッチが再び開く。

 そして、10発ほどのミサイルが、コブラ目掛けて発射された。

 「何!?」

 驚くコブラを尻目に、ミサイルは彼の周りで次々と炸裂し、瓦礫と砂を巻き上げた。

 「くっ・・・」

 思わず顔を手で覆うコブラ。

 「ギギギギ!」

 そして今度は、バグソルジャーの腹部の筒が回転し始めた。

 そして、無数の弾丸が、コブラを襲った。

 「くっ・・・なんの!!」

 何とか全ての攻撃を回避するコブラ。

 「くっ・・・意地でもそばには近寄らせないつもりかよ・・・」

 健二はバグソルジャーを見上げた。

 両腕の鎌だけで無く、近寄る敵を牽制する為の飛び道具は、非常に厄介だった。

 「どうにかして、懐に飛びこめれば・・・」

 コブラは焦った。しかし、

 「健二さん! ファルコンを使ってください!」

 後方にいたリュークが叫ぶ。

 「・・・そうか! 解った!」

 声を張り上げて返事を返すコブラ。

 「よし、ファルコン、行け!」

 リュークの指示を受け、地面に倒れ伏していたファルコンが再び浮上する。

 「よっしゃあ!」

 ファルコンの上に乗るコブラ。が、

 「くっ・・・何かバランスがおかしいぞ?」

 コブラは浮上したファルコンの動きに違和感を覚えた。

 「まさか・・・」

 リュークは焦った。

 バグソルジャーのミサイルがかすった個所が異常をきたし、ファルコンからわずかなバランスを奪っていたのだ。

 「健二さん! 気をつけてください! 今のファルコンでは上手くバランスを取る事が出来ません!」

 「・・・そう言う事はもっと早く言ってもらわないとな・・・」

 笑いを浮かべるコブラ。

 「ギギギギ・・・」

 焦るコブラを尻目に、バグソルジャーの腹部の砲塔が火を吹く。

 「ファルコン、旋回!」

 リュークが叫ぶ。が、

 「くっ・・・!」

 その上に乗っているコブラは苦しそうだった。

 やはり、今のファルコンは大きくバランスを欠いている。はっきりと解った。

 「こりゃあ、ちょっとヤバイぞ・・・」

 冷や汗をかくコブラ。そして、

 「がっ!?」

 バグソルジャーの弾丸が、ファルコンの後部のブースターに当たる部分に直撃した。

 「! しまった!」

 その様子を見て焦るリューク

 「く・・・まずい・・・!」

 ファルコンは今の攻撃で完璧にバランスを崩した。

 「う、うあぁぁっ!?」

 そして、コブラは振り落とされた。

 「健二さん!」

 「くっ!!」

 しかし、コブラはファルコンの腕を掴み、落下を免れた。

 「よ、良かった・・・」

 胸を撫で下ろすリューク。

 しかし、状況が危険な事に変わりは無い。

 バランスを崩したばかりでは無く、ブースターにあたる部分を損傷したファルコンは浮いているだけで精一杯の状態であり、墜落するのは時間の問題だ。

 「くっ、頼む、何とか耐えてくれ!!」

 必死に腕を掴むコブラ。

 「ギギギギギ・・・」

 バグソルジャーはこのタイミングを逃さなかった。

 背中のハッチが、再び開いた。

 中には数十発のミサイルが搭載されている。

 その全てが、コブラとファルコンに向けられている。

 「・・・どうする・・・」

 コブラは息を飲んだ。

 このまま飛んでいれば、間違い無くバグソルジャーのミサイルの標的となり、黒焦げにされる。

 ファルコンから手を放して逃げるという方法もあった。

 しかし、どちらにせよ同じだ。

 空中で自由が利かない所を狙われれば一巻の終わりである。

 地上に降りても、ミサイルの攻撃から逃れる事は難しい。それ所か、地上にも更に被害が及ぶ。

 それに、ファルコンを捨てて逃げるのは忍びなかった。

 博士やリュークが必死になって開発していた「何か」そのピースの一つであるファルコンが壊されれば、彼等の、デカルト博士の思いも無駄になってしまう。

 しかし、この状況を打破する鍵は無い。

 「健二さん!!」

 叫ぶリューク

 「ここまでか・・・」

 万事休す、コブラはそう思った。

 「ギギャァ!!」

 そして、バグソルジャーの唸り声と共に、ミサイルが放たれた。







 その頃、数メートル離れた、細い道路。

 「くっ・・・どこまで来るつもりだ・・・」

 シャークは苦しそうな表情をする。

 「ギギギギギ・・・」

 後方からはモトソルジャーが追いかけて来ている。

 既に、アパートの敷地外に出てから数分が経過していた。

 その間、どこを走って逃げていたのかはっきり解らない。

 「ギギャァ!!」

 機銃掃射を仕掛けてくるモトソルジャー。

 「くそっ!!」

 弾丸をかわすシャーク。

 この攻撃が数分の間に何回も繰り返されていた。

 「調子に乗るなあ!!」

 シャークは業を煮やした顔をすると、ディープキラーに取り付けられていた棒を手に持った。

 「これでも食らえ!!」

 棒をモトソルジャーに向けると、ディープキラーに合体していたグランドハンマーのパーツが、自動的に分離した。

 そして、そのパーツはモトソルジャー目掛けて飛んで行く。

 「ギギギ!!」

 飛んでくるパーツを巧みにかわすモトソルジャー。が、

 「後ろを見て見ろ!」

 かわしたパーツは、後方で方向を変え、再び戻ってくる。

 「ギギギ!?」

 再びかわそうとするモトソルジャー。が、

 「ギゲァ!?」

 その内のパーツが一つぶつかり、バランスを崩し、転倒した。

 そのままパーツは再びディープキラーに合体する。

 「そこでくたばってろ、ポンコツが」

 そう吐き捨て、そのまま走り去ろうとするシャーク。

 「ギギギギ・・・」

 が、モトソルジャーはすぐに人型に変形して置き上がる。

 そして再びバイクに変形し、走り出した。

 「ギギャァ!!」

 転倒させられた恨みを晴らそうとするかの如く、ディープキラーに迫るモトソルジャー。

 「くっ、なんてヤローだ・・・」

 舌打ちするシャーク。

 モトソルジャーは既にディープキラーの横に追いつこうとしていた。

 が、そのままモトソルジャーはディープキラーを追いぬき、先に進んだ。

 「どういうつもりだ?」

 その行動に疑問を抱くシャーク。

 しかし、数メートル追いぬいた時点で、モトソルジャーは人型に変形した。

 そして、ディープキラーの真ん前に立ちはだかった。

 「何!?」

 シャークが驚いた次の瞬間、金属同士がぶつかり合う音が響いた。

 「ぬうう・・・」

 全速力で振りきろうとするシャーク。

 しかし、モトソルジャーがディープキラーを押さえており、先に進めない。

 「ギギギギギ・・・」

 力押しでも徐々にモトソルジャーが優勢になりつつあった。が、

 「くっ、なめるなあ!!」

 シャークは再びグランドハンマーを合体させた。

 そして、バイクから腰を浮かした。

 「ギゲェ!?」

 直後に、モトソルジャーは横に吹っ飛んだ。

 シャークはモトソルジャーの横っ腹にだるま落としの如くグランドハンマーで攻撃を加えたのだ。

 「ギギギギギ・・・」

 再び立ち上がるモトソルジャー。が、今の一撃は聞いたのか、動きが鈍くなっている。

 「ふっ、これで形勢逆転か?」

 グランドハンマーを構えるシャーク。

 「もう一度ふっ飛ばしてやるぜ!」

 シャークは走り出すが、

 「なにっ!?」

 突然、足元に鉛玉が降り注いだ。

 「くっ、誰だ!?」

 辺りを見回す。すると、

 「ふふふふふ・・・ここだ・・・」

 笑い声が響き、弾の主、アポカリプスが姿を現した。

 「・・・誰だお前は・・・」

 「ふっ、私はアポカリプス、そっちはモトソルジャーだ・・・」

 「という事は、あれをオレに仕向けたのもお前か?」

 「そういう事だ」

 口元に笑みを浮かべるアポカリプス。

 「アンタの目的はなんだ・・・」

 グランドハンマーを構えるシャーク。

 「ふっ、貴様が知る必要は無い。何故なら、」

 アポカリプスはエクスカリバーを手に持った。

 「貴様の首は私がここで貰い受けるのだからな!!」

 ブースターを展開し、アポカリプスがシャークに斬りかかった。








 コブラは目を瞑った。

 もう駄目だと、確信した。しかし、

 「・・・な・・・?」

 爆発音が響いた、しかし、それは自分に対して加えられた物では無かった。

 もう死んだのだろうか、そう思って、彼は目を開いた。すると、

 「ギギギギギ・・・」

 バグソルジャーが苦しそうにうめき声を上げていた。

 見ると、後部は爆発でもしたかの様に木っ端微塵になっており、、煙と火花が上がっている。

 「ど、どういう事だ・・・?」

 コブラも、その光景を見ていたリュークも、目を丸くした。

 そして、彼等の前に、何かが着地した。

 それは、γゴーレムだった。

 「ゴーレムだと? どういう事だ?」

 コブラは首をかしげた。が、

 「って、こっちも・・・」

 下を見ると、もう地上はすぐそばまで迫っていた。

 そして、コブラは地面に墜落した。

 「いてててて・・・・一体これは・・・」

 立ち上がり、ゴーレムに目を移すコブラ。

 「健二さん!」

 コブラに駆け寄るリューク。

 「何が起こったんだ・・・?」

 彼等は未だに状況が飲み込めない。が、

 「全く、男はだらしないんだから・・・」

 誰かの声が耳に入り、後ろを振り向くコブラとリューク。

 「レミィさん?」

 「お姉ちゃん?」

 そこにはレミイが立っていた。

 「ど、どうしてレミィさんが・・・?」

 目をきょとんとさせてコブラが言う。

 「どうしたもこうしたも無いわよ、病院からアンタが出て行くのを見かけて、ちょっと後をつけてみたら、このザマよ」

 レミィは呆れた表情で墜落したファルコンを眺める。

 ファルコンの戦闘ダメージは大きく、修理無しでは浮上する事すら困難だろう。

 「あ、あの・・・一体アイツに何をしたんですか?」

 煙を上げながら立ち上がろうとするバグソルジャーの姿を見るコブラ。

 「簡単な事よ、ミサイルが発射される寸前にゴーレムに蓋を閉めさせたわ。結果的に行き場を無くしたミサイルが暴発して自爆、とんだお笑いぐさよ」

 レミィはバグソルジャーに見下す様な視線を送った。

 「ま、私が間に合わなかったら、アンタ達は今頃オシャカになっていたのかもしれないんだから、感謝してよね」

 得意そうにコブラとリュークの額を指で押すレミィ。

 そして二人は、そんな無謀な事を平然とやってのけ、自分達を簡単に牛耳る目の前の女に対して、ある種の恐怖を覚えた。

 「さて、それはさておき、たった今から形勢逆転ね」

 振り向き、得意そうに言うレミィ。

 「で、その子はどうしたのかしら?」

 レミィはリュークのすぐ側に座り込んでいる少年を見た。

 「・・・彼は、アイツに家を追われたんだ・・・」

 事情を説明するリューク。

 「・・・わかったわ、事情は後でゆっくり聞かせてもらうわ。とりあえず、アンタはその子を守ってなさい、でも」

 レミィはバグソルジャーを見た。

 「相当なダメージみたいだから、もうこれまでね、デ・カ・ブ・ツ」

 更に、完全にバカにしきった表情で、バグソルジャーを指差す。

 「・・・」

 そんなレミィの姿を、後ろで二人は呆然としながら眺めていた。

 「ギギギギギ・・・」

 ここまでバカにされまくって、流石にキレたのか、バグソルジャーはレミィを睨み付けた。

 しかし、その姿は今にも死にそうな老人の様にボロボロだった。

 「さて、殺っちゃいなさい、健二君!」

 コブラに命令するレミィ。

 「台詞が悪人みたいですよ」

 「なんか言った?」

 笑いながら、振り返るレミィ。

 「何でも無いです」

 その笑顔に威圧され、コンバットソードを構えるコブラ。

 「あいつを倒すなんて、死にそうな老人から杖を奪うくらい簡単なことよ。どうってことないわ」

 「嫌な例えだね」

 姉の乱暴な言動に突っ込むリューク。

 しかし、レミィの言う通りでもあった。

 今のバグソルジャーは半身が吹き飛び、とてもマトモに動ける様な状態では無かった。明かに形勢は逆転している。

 「ま、確かにそういうことさ、行くぞ!」

 バグソルジャーに向かっていくコブラ、が、

 「ギギギギギ・・・」

 再び起き上がるバグソルジャー。

 「ちっ・・・動ける様な状態じゃ無い筈なのに、なんて野朗だ・・・」

 コブラは舌打ちした。

 しかしそれでも、マトモにコブラの相手を出来る様な状態では無いのは確かだ。が、

 「ギギャアァ!!」

 突然唸り声を上げるバグソルジャー。

 「な、何だ?」

 その唸り声に、わずかに怯むコブラ。

 そして、信じられない光景を目にした。

 バグソルジャーの背中から、4枚の羽が出現した。

 わずかに残っていた足は切り離され、代わりに胴体下部が変形し、ブースターの様な形になった。

 そして、全身を覆っていたボロボロの装甲がカサブタの様に剥がれ、無傷の装甲が姿を現した。

 「な・・・」

 コブラばかりで無く、レミィもリュークも言葉を失った。

 たった数秒前までボロボロだったバグソルジャーは、まるで昆虫が羽化したかの様に、その姿を変えた。

 「コイツは、化け物か・・・?」

 コブラは、新たなるバグソルジャーの姿を前に、全身が震えていた。

 「ギギャアァァ!!」

 そして、バグソルジャーは、戦いの再開を告げるかの如く、唸り声を上げた。







 「くっ!」

 グランドハンマーでアポカリプスの斬撃を押さえるシャーク。鉄同士がぶつかり合い、鈍い音が響く。が、

 「無駄だ!!」

 アポカリプスはいとも簡単に、グランドハンマーごとシャークをふっ飛ばした。

 「くそっ!!」

 体勢を立て直そうとするシャーク。が、

 「遅い!!」

 アポカリプスのバズーカが瞬時に火を吹いた。

 「がっ!?」

 その攻撃によって再び吹っ飛ばされるシャーク。

 「もらった!!」

 再び高速で迫るアポカリプス。

 「くっ、これでも食らえ!!」

 シャークはアポカリプスにグランドハンマーを向けた。

 そして、グランドハンマーのパーツが、アポカリプスに向けて発射される。

 「無駄だと言っているだろうが!」

 アポカリプスは全てのパーツをかわした。が、

 「まだ攻撃は終わっていない!!」

 方向転換したパーツが尚もアポカリプスを追う。しかし、

 「・・・ふっ、バカの一つ覚えとはこの事だな」

 アポカリプスは一笑すると、再び攻撃をかわした。

 「なっ・・・」

 再びパーツは合体した。

 「そんな小細工で私を倒せるとでも思ったか・・・」

 アポカリプスはシャークのすぐ側まで接近し、エクスカリバーを振り下ろした。

 「くっ!」

 再び防御体勢を取るシャーク。が、

 「うわああっ!!」

 衝撃を受け流す事は出来ず、再び吹っ飛ぶ。

 「ふっ、あきらめろ・・・」

 エクスカリパーをシャークに向けるアポカリプス。

 「くっ、まだだ!!」

 シャークは再びグランドハンマーを分離させ、アポカリプスに向けて発射した。

 「何度言えば解る・・・」

 今度はその場から動かず、攻撃をかわすアポカリプス。

 「そんな小細工では、私は倒せないと・・・」

 再びブースターを展開しようとするアポカリプス。が、

 「何?」

 分離したグランドハンマーのパーツは、彼を取り囲む様に浮いていたのだ。

 「どういうつもりだ?」

 アポカリプスがシャークを見た瞬間、

 「・・・何・・・?」

 突如グランドハンマーは彼の手足を前後で挟み、十字架の様な形に合体した。

 「・・・これが貴様の切り札か・・・」

 「そうさ、ディープ・ロザリオ。これでお前の動きは封じた。形勢逆転だな・・・」

 そう言うシャークは転倒しているディープキラーの先端を取り外した。

 そして、鮫の頭部の様な武器、シャークヘッドに姿を変えた。

 「これでじっくりと痛めつけてやるぜ・・・」







 「まさか、あんな能力があったなんて・・・」

 動揺するレミィ。が、

 「・・・くっ、見掛け倒しに騙されないわよ! ゴーレム!」

 レミィは啖呵を切ってゴーレムに攻撃命令を出した。

 「待って、レミィさん!!」

 レミィの行動に危機感を覚えたコブラは、彼女の行動を制止しようとした。が、

 「ギギャァ!!」

 バグソルジャーの右の鎌が上下に割れ、ミサイルの様な物が姿を現した。

 そして左は鎌が変形し、拳が現れた。

 「くっ、ゴーレム! 止まって!」

 それを見たレミィはゴーレムに止まるよう指示した。

 しかし、数秒早く、バグソルジャーのミサイルが発射された。

 「伏せて!」

 コブラが叫ぶと同時に、ミサイルが着弾した。

 「くっ!」

 そして着弾と同時に、黒い霧が辺りに広がった。

 ミサイルは煙幕だったのだ。

 「ぐ・・・ごほっ・・・」

 口を押さえるレミィとリューク。が、

 「ギギャァ!!」

 そこへバグソルジャーの拳が伸びた。

 「! ゴーレム!!」

 レミィは叫んだ。

 バグソルジャーが掴んだのはゴーレムだったのだ。

 「ギギギギギ・・・」

 掴んだゴーレムを目の前に持ってくるバグソルジャー。

 ゴーレムは腕から逃れようと必死にもがくが、バグソルジャーは全く放そうとしない。

 「ギギギギギ・・・」

 そしてバグソルジャーは腕を上げた。そして、

 「ギギャァ!!」

 ゴーレムを地面に思いきり投げ付けた。

 そのままゴーレムは地面に激突し、土煙が上がった。

 「ゴ、ゴーレム!!」

 ゴーレムに駆け寄るレミィ。

 ダメージはかなり大きかったらしく、全身からは火花が散っていた。

 「お姉ちゃん!」

 レミィに駆け寄るリューク。

 「ゴーレムは!?」

 「・・・この様子じゃ、動く事さえ困難だわ・・・」

 絶望に打ちひしがれた顔で言うレミィ

 「そんな・・・」

 その様子を見たリュークは絶句した。

 物の数分の間で、バグソルジャーを相手に、ゴーレムとファルコンはオモチャのように破壊されたのだ。

 「あ、あきらめちゃ駄目だよ! 何とかしないと・・・」

 必死にレミィを励まそうとするリューク。

 「・・・そうね、ここで倒れてても、何も始まらないわ・・・」

 立ち上がるレミィ。

 「リューク、何か修理道具を持ってない?」

 リュークに尋ねるレミィ。

 「修理道具・・・ちょっと待って・・・」

 そう言うとリュークはファルコンの背中のハッチの一部を開けた

 「あった!」

 そして彼が取り出したのは、小型の工具箱だった。

 「よし、それを貸して」

 リュークは工具箱をレミィに手渡した。

 「今は何とか、これで対応するしか無いわ・・・」

 レミィは工具箱の中を覗きこんだ。







 「くっ、ヤバイぜ、これは・・・」

 再び舌打ちするコブラ。

 レミィが駆け付けた時には何とかバグソルジャーを倒せる見込みがあった。

 しかし、すぐに戦況は逆転され、ゴーレムも全く歯が立たずに戦闘不能にまで陥った。

 「ギギギギギ・・・」

 その様子を見たバグソルジャーは、彼等を小ばかにするような笑い声を上げた。が、

 「健二君! 私達はゴーレムを修理するわ! 何とか時間を稼いで!」

 レミィが叫ぶ声が聞こえた。

 「くっ、マジっすか・・・」

 苦笑するコブラ。

 そして、腹部のマシンガンが、再び火を吹いた。

 「くそっ!!」

 攻撃をかわすコブラ。

 「「ギギャァ!!」

 直後にバグソルジャーは鎌を振り上げ、高速で降下して来た。標的はコブラだ。

 次の瞬間、バグソルジャーの鎌が地面をえぐる轟音が響いた。

 「くっ、この野朗!!」

 その隙を見て、コブラは高速で移動する。

 そして、バグソルジャーのすぐ側まで接近した。

 「人間様を、ナメるんじゃねええぇ!!」

 そのまま跳躍し、更に地面に突き刺さったバグソルジャーの鎌を踏み台にして、更に跳躍するコブラ。

 「ギギギギ!?」

 そのままコブラはバグソルジャーの目と鼻の先まで接近したのだ。

 「これでも食らえ!!」

 そう叫ぶとコブラはコンバットソードをバグソルジャーの目に当たる部分に突き刺した。

 「ギギャアァ!?」

 絶叫し、もがくバグソルジャー。

 「レミィさん! 今のうちに!」

 バグソルジャーに振り回されながら、叫ぶコブラ。

 「わかったわ! ありがとう!」

 礼を言い、すぐに作業を再開するレミィ。

 「ギギギギギ!!」

 バグソルジャーは高度を上げ、目に剣を付き立てぶら下がるコブラを振り払おうと手をのばした。

 「くっ、落ちてたまるか!」








 「外装はちょっとヤバイけど、内部機関の傷は浅いわね」

 ゴーレムを修理しながら言うレミィ。

 「リューク、ガムテープを取って」

 「ガムテープ? まさかそれで内部機関を補強するつもり?」

 「外装の傷をガムテープで隠す訳は無いでしょ」

 ガムテープを手渡したリュークは、改めて姉の行動力の凄さに驚いた。

 「そうだ、お姉ちゃん、携帯持ってない?」

 「携帯? 何に使うのよ」

 「之村博士に連絡を取るんだよ!」

 「! アンタ、頭いい!」

 リュークの頭を叩くレミィ。

 そして、ポケットから携帯を取り出した。







 「早く準備しろよ!」

 車の運転席で、銀咲はクラクションを鳴らしながら怒鳴っていた。

 数分前にレミィから「至急来てくれ」という連絡を受け、バイクショップ銀咲はてんやわんやになった。

 「ちょっと待て、これを積みこまなければ・・・」

 博士は店内からシーツで包んだ「何か」を持ち出して来た。

 「こんな荷物持って、よっぽどの大事だな」

 銀咲は車から降りて、「何か」を車に乗せるのを手伝った。

 「さあな、だが、只事じゃ無い事は確かだ」

 助手席に乗り込む博士。

 「よし、それじゃ行くぞ!」

 銀咲は車のアクセルを踏んだ。







 「くっ、おとなしくしろ・・・」

 数分経ち、コブラは尚も剣にぶら下がっていた。

 「ギギャギャギャギャ!!」

 未だに自分の目からコブラが離れず、バグソルジャーは両腕を振り回してもがいた。

 「くっ、いい加減に・・・」

 コブラがそう言いかけた、その時、

 「なっ!?」

 拳に変形したバグソルジャーの左腕が、コブラを掴んだのだ。

 「くっ・・・しまった・・・」

 舌打ちするコブラ。が、

 「ぐあああぁぁっ!!」

 バグソルジャーはコブラを握り締めた。

 全身を締め付けられる激痛が走る。

 「ギギギギギ・・・」

 まるでオモチャで遊ぶ子供の様な声を上げるバグソルジャー。が、

 「ぐっ・・・!」

 コブラは気が遠くなりそうになりながらも、握り締めていたコンバットソードを、バグソルジャーの手首に突き刺した。

 「ギギャァァ!!」

 再び絶叫するバグソルジャー。

 そして一瞬拳が緩んだ。

 「ふっ・・・あばよ」

 その隙を突いて脱出するコブラ。

 そして地上に着地する。

 「ててて・・・流石にこれはキツかったかな・・・」

 苦しそうな顔をしながらも、何とか立ち上がるコブラ。

 「ギギギギギ・・・」

 コブラを睨みつけるバグソルジャー。






 「よし、これで何とか・・・」

 再びゴーレムに装甲を取りつけるレミィ。

 ゴーレムは若干ぎこちない物の、立ち上がって動ける程度までは修復された。

 「さて、次はアンタのファルコンね・・・」

 レミィは立ち上がると地面に倒れ伏すファルコンに目を移した。

 「直せるの?」

 「外装のダメージはかなり酷いけど、解らないわ」

 器用な手付きでファルコンの外装を外すレミィ。

 「・・・難しいわね。浮力を生み出すフライトユニットの破損が大きいわ。それに加速用のブースターユニットも破損している。これじゃロクに動く事さえ出来ないわね・・・」

 「そんな・・・どうにかならないの?」

 「何とかやってみるわ。とりあえず、道具箱貸して」

 道具箱を手に取るレミィ。そこへ、

 「おーい!!」

 誰かが叫ぶ声が聞こえた。

 「この声は・・・」

 レミィとリュークは声が聞こえた方向を振り向いた。

 「おーい! 大丈夫かー!?」

 博士が4WDの助手席から顔を出して手を振っていた。

 「博士! 来てくれたんですか!?」

 車は二人の前に停車した。

 「ああ、連絡を受けたものでな」

 「オレもいるぜ」

 窓を開ける銀咲。

 「で、敵はあれか?」

 博士はコブラと戦っているバグソルジャーに目を移した。

 「ええ、それに、ゴーレムとファルコンも破壊されて・・・」

 状況を説明するリューク。

 「成る程・・・解った・・・」

 車から降りる博士。

 「ゴーレムは何とかなりましたけど、ファルコンが・・・」

 レミィが言う。

 「どれどれ、見せてくれ」

 ファルコンの様子を見る博士。

 「確かに厳しいな・・・内部機関の破損が多い」

 博士は腕を組んで考えた。








 「ギギャァ!!」

 右の鎌を振り下ろすバグソルジャー。

 「くそっ!!」

 攻撃をかわすコブラ。

 「バカの一つ覚えも、大概にしとけよ!」

 コブラは大きく跳躍し、バグソルジャーに斬りかかる。が、

 「!? うわあぁぁっ!!」

 コブラはバグソルジャーの左腕によって弾き飛ばされた。

 「くっ、機械といえどバカじゃないってことか・・・」

 地面に着地し、態勢を立て直すコブラ。そこへ、

 「おーい! 健二君!」

 博士の叫び声が聞こえた。

 「博士! いつの間に来てたんですか!?」

 驚くコブラ。

 「ちょっと考えがある! もう少し時間を稼いでくれ!」

 「・・・またっすか・・・」

 落胆するコブラ。

 「ギギャアア!!」

 その間もバグソルジャーの攻撃は続く。

 「くっ、どいつもこいつも・・・!!」








 「さて、二人とも、私が見た限り、現状で奴を倒す事は不可能だろう・・・」

 「・・・そんな・・・」

 愕然とするレミィ。

 「ゴーレムとファルコンが奴に戦いを挑んで、ボロボロにされているんだ。このまま向かっていけば、今度はこの位のダメージじゃ済まされないかもしれない・・・」

 「で、でも・・・」

 反論しようとするレミィ。しかし、

 「レミィさん、気持ちは解る。が、このまま戦っても傷を負うばかりだ」

 苦しそうな表情をする博士。

 「・・・でも、これ以上アイツを放っておいたら・・・」

 「解っている。最後まで話を聞いてくれ。確かに現状では不可能と言った。だが、不可能を可能に出来るかもしれない鍵があるんだ」

 「・・・鍵?」

 レミィは目を丸くした。

 「博士、鍵って・・・」

 リュークが驚いた表情で尋ねる。

 「・・・ああ、あれの事だ・・・」

 「・・・2人とも、一体何を話して・・・」

 2人の会話の内容に、レミィは疑問を抱いた。が、

 「・・・レミィさん、実は、数日前から、私はリューク君に頼まれて、ある物を研究していた・・・」

 「ある物・・・?」

 「ああ、銀咲、ちょっと手伝ってくれ」

 「おう」

 車から「何か」を降ろそうとする博士を、銀咲が手伝った。

 「・・・これは・・・」

 シーツに包まれた「何か」を見たレミィは首をかしげた。

 「あの、銀咲さん」

 車に戻ろうとする銀咲を呼び止めるリューク。

 「おう、どうした」

 「ちょっと、頼みがあるんですが・・・」

 「頼み? 何だ?」

 「実は・・・」

 リュークは近くにいた少年を連れて来た。

 泣き疲れたのか、少年は寝息を立てて眠っていた。

 「どうしたんだ、その坊主は・・・」

 銀咲だけでなく、博士も少年に目を移した。

 「実は・・・」

 再三事情を説明するリューク。

 「成る程、その坊主も被害者という訳か・・・」

 「それで、この子を安全な場所へ連れて行って欲しいんですが・・・」

 「そういう事ならまかせとけ」

 そう言うと銀咲は子供を抱き抱え、車に乗せた。

 「ありがとうございます、銀咲さん」

 「なあに、いいって事よ」

 再び車のエンジンを始動する銀咲。

 「じゃ、お前等、頑張れよ!」

 銀咲の車はすぐにその場から遠ざかった。

 「さて、本題だが・・・」

 「何か」に再び目を移す博士。

 「鍵とは、これだ」

 博士はシーツと取り去る。

 「! これは・・・」

 下にあった「何か」に、レミィは見覚えがあった。

 昔、父親のデカルト博士に一枚の設計図を見せてもらった事がある。

 目の前にあるそれは、装甲は殆ど付いておらず、左腕が備わっていないため、完成には遠く及んでいないが、設計図で見た「何か」と酷似していたのだ。

 「αバイソン・・・」

 彼女はぼそりと呟いた。

 αバイソン、それが、設計図に示されていた、「何か」の名前だった。

 「リューク、あんた、こんな物を・・・」

 リュークに目を移すレミィ。

 「・・・ごめん、お姉ちゃん・・・でも・・・」

 俯きながら喋るリューク。

 「レミィさん、彼を叱るのは後でも出来る。しかし、今はこの現状を打破するべきだ。解ってくれるか・・・」

 「博士・・・」

 レミィは少し黙った。が、

 「・・・解りました。でも、リューク、後できっちり事情を説明してもらうからね・・・」

 「うん・・・」

 「で、博士、これをどうすればいいんですか?」

 「ああ、ちょっと待ってくれ・・・」

 そう言うと博士はポケットから小さな箱を取り出した。

 「これは・・・」

 「彼等を合体させる為には、これを取り付けねばならない・・・」

 「合体? そんな事が出来るんですか?」

 「ああ、元々彼等は合体する事を前提に設計されていたらしいからな・・・」

 そう言うと博士は箱を開けた。

 「これは・・・?」

 箱の中に入っていたのは、α、β、γと書かれた、三枚のチップだった。

 「数年前に、デカルト博士から渡されたチップだ。これを使えば、彼等の中に眠る力が目を覚ますだろう。しかし、」

 博士は言葉を切った。

 「・・・何か問題があるんですね?」

 その意味を悟るレミィ。

 「ああ、これを取り付ければ、彼等は真の力を発揮出来る。しかし、下手をすれば、チップの力に彼等が付いて行けず、取り返しの付かない事になるかもしれない。ダメージが比較的軽いゴーレムはともかく、損傷率の大きいファルコンと、未完成のバイソンは危険だろう・・・」

 「そんな・・・」

 それを聞いたリュークは愕然とした。

 「聞いた通りよ、リューク。奴を倒す為には、ゴーレムだけじゃなく、ファルコンにも危険が及ぶわ。それでもやるの?」

 「・・・」

 レミィの問いに、黙りこむリューク。が、

 「・・・確かに、ファルコンが壊れるのは嫌だよ。でも、かと言ってここで逃げ出したら、あいつ等がまた人を殺すかもしれない。だから・・・」

 そう言ったリュークの声からは、どことなくたくましさが感じられた。

 「・・・レミィさん、君はいいのか?」

 「・・・私は、元からお父さんの仇を討つ為に戦っています。ゴーレムも解ってくれると思います・・・」

 「・・・そうか・・・解った・・・」

 博士は箱を前に差し出した。

 「君達の手でセットしなさい・・・」

 「・・・はい」

 レミィはαとγ、リュークはβのチップを取った。

 「動いてくれ、ファルコン・・・」

 ファルコンの背中にチップを取りつけるリューク。

 「お父さん・・・力を貸して・・・」

 そしてレミィも、バイソンとゴーレムにチップを取り付けた。

 瞬間、3体の目が光った。

 「ファルコン・・・」

 地面に這いつくばっていたファルコンが浮上する。

 「ゴーレム、バイソン・・・」

 ゴーレムは立ち上がり、動けないバイソンを肩に担いだ。

 そして、3体はバグソルジャーに向かって行く。







 「ギギギギギ!?」

 バグソルジャーも、接近してくる3体のロボットを確認した。

 「・・・あの3体・・・遂に完成するんだな・・・」

 コブラは口元に笑みをうかべた。

 「ギギャァ!!」

 バグソルジャーはマシンガンを撃った。

 しかし、彼等は、攻撃をかわした。






 ゴーレムはその場に立ち止まり、大きく跳躍し、肩に担いでいたバイソンを真上に放り投げた。

 そのままゴーレムは両腕を垂直に伸ばし、脚を伸縮、更に真っ二つに分離し、頭部が胴体に折り畳まれた。

 ゴーレムとバイソンの間に入ってきたファルコンは、ブースターが切り離され、腕を折り畳み、中央から谷折りになる。

 そして、ゴーレムは逆さになって地面に着地し、脚部になった。

 その上からファルコンが飛来し、脚部に接続され、腰と胴体下部を形成した。

 更に、その上にバイソンが被さり、胸部と腕部を構成した。

 そして、合体と同時に、バイソンに収納されていた頭部が出現した。






 「これが・・・」

 その場にいたコブラ、レミィ、リューク、博士が息を飲んだ。

 「これが・・・あの3体の、本当の姿・・・」

 「それ」は、装甲が殆ど付いていない上半身は内部機関が剥き出しで、左腕も付いていない。ちゃんと装甲が付いている下半身とのギャップは激しかった。

 しかし、同時にその姿は、言い様の無い、機械としての美しさを持っている様に見えた。そして、同時に理由の知れない禍禍しさも持ち合わせていた。

 「ファツハッハッハッハ・・・・」

 右腕をかかげ、笑い声にも似た不気味な機械音をあげる「それ」

 デカルト博士の遺産が今、蘇った・・・。


次回予告

 遂に姿を現したデカルト博士の遺産。そして、空から迫るバグソルジャーに戦いを挑む。一方、アポカリプスの前に格の違いを思い知らされた祐樹は苦戦を強いられる。そして、健二達に、ガルグド・メタルの黒い影が迫る・・・。

 次回 仮面ライダーコブラ デカルト博士の遺産。

 失われし力を、解き放て!


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