「ギギギギギ・・・!?」

 バグソルジャーは目を見張った。

 突如目の前に現れた機械。

 しかし、自らとは大きく異なる、得体の知れない威圧感。

 それが、感情を持たない戦闘マシンである筈のバグソルジャーの全身の回路を駆け巡っていた。


仮面ライダーコブラ


第21話
デカルト博士の遺産


 「これが、お父さんが遺した遺産・・・」

 レミィは呆然と「それ」を見上げた。

 「お姉ちゃん! 気を失わないで!」

 リュークの声で、彼女はハッと我に帰った。

 見ると、バグソルジャーの腹部の砲塔は、「それ」に向けられていた。

 そして次の瞬間、砲塔が火を吹いた。

 「くっ! ゴーレム! かわしなさい!」

 レミィが叫ぶ。

 指示を受けた「それ」は、そのサイズに見合わぬ瞬発力で弾丸をかわした。

 「仕方ない、操作は私がやるわ。命令するだけでいいのね?」

 「うん、ありがとう!」

 「よし、行け! ゴーレム!」

 方向を転換し、バグソルジャーに迫る「それ」

 「ウォォォッ!!」

 唸り声を上げ、「それ」は、大きく拳を振り上げた。

 「ギギャァ!!」

 それに応戦する為に、左手を変形させるバグソルジャー。

 その刹那、互いの拳がぶつかり合い、鈍い金属音が響いた。

 そのまま数秒間、戦闘は降着した。が、

 「ギギギギギ・・・」

 不気味な笑い声を上げるバグソルジャー。そして次の瞬間、

 「グォォォッ!?」

 「それ」が、後方に吹っ飛ばされた。

 拳の激突によって腕の自由を奪われ、防御能力を失った「それ」に、自由になっていたバグソルジャーの右腕の鎌が衝突したのだ。

 「ギギギギギ・・・」

 腹部のマシンガンを「それ」に向けるバグソルジャー。

 再び、マシンガンが火を吹く。

 「ゴーレム!!」

 再び叫ぶレミィ。

 「グォッ・・・」

 「それ」は地面に着地した。

 そして、再び弾丸をかわす。しかし、

 「グォッ!?」

 わずかにかわしきれなかった弾丸が、脚部に被弾した。

 「ギギャァ!!」

 体勢を崩した「それ」に、今度はバグソルジャーが接近して来た。

 「くっ、ゴーレム! 立ち上がって!」

 レミィの叫びも空しく、「それ」は立ち上がれない。そして、

 「ギギャァ!!」

 「グォォォッ!?」

 バグソルジャーの左アッパーが炸裂し、「それ」は再び後方へと吹っ飛ばされた。

 「ゴーレム!!」







 「成る程、データは知っていたが、こんな小細工を使えるとはな・・・」

 分離したグランドハンマーのパーツにより、アポカリプスは十字架状に拘束された。

 「それでお前の動きは封じられた・・・」

 シャークはディープキラーに歩み寄り、先端を外した。

 そしてそれが変形し、鮫の頭部の様な形の武器、シャークヘッドに変形した。

 「これで終わりにさせてもらう!」

 そのまま攻撃を仕掛けようと走り出すシャーク。が、

 「フッ・・・愚かだな・・・」

 アポカリプスは小ばかにした様に一笑した。

 「もう笑う余裕は無い! くたばれ!」

 鮫の頭部がアポカリプスに牙を剥く。が、

 「フッ、甘い!!」

 表情を戻すアポカリプス。そして、

 「なっ・・・!?」

 攻撃しようとした直後、シャークは立ち止まった。

 アポカリプスを拘束していたグランドハンマーのパーツが、弾けるかの様に分離したのだ。

 「ば、馬鹿な! 動きは封じた筈なのに・・・!?」

 驚愕するシャーク。

 「フッ、だから・・・」

 右腕のマシンガンをシャークに向けるアポカリプス。そして、

 「バカの一つ覚えは通じないと、言っているだろうが!!」

 火を吹くマシンガン。

 「うわああぁぁっ!!」

 そのままシャークは弾丸の雨を食らい、吹っ飛ばされた。







 「グォォォッ・・・」

 脚にダメージは残る物の、何とか立ち上がる「それ」

 「ギギギギギ・・・」

 その姿をバカにするかの様に笑うバグソルジャー。

 そして、再び背中のハッチが開いた。

 「ギギャァ!!」

 そして、小型ミサイルが「それ」を襲った。

 「グオォォォォッ!?」

 何とか防御する物の、反動で「それ」は数歩よろめいた。

 そして地面に着弾したミサイルによって土煙が巻き上げられ、周りが煙に包まれた。

 「くっ、アイツどんだけミサイル持っているんだよ!」

 舌打ちするコブラ。

 「ギギャァ!!」

 土煙に紛れて再び「それ」に迫るバグソルジャー。

 「ギギャアァ!!」

 そして土煙の中からバグソルジャーが現れ、鎌を振り下ろした。

 「グォッ!!」

 なんとか鎌が当たる前に押さえる「それ」そして、

 「ウォォォッ!!」

 唸り声を上げながら、「それ」は腕を掴んだまま、バグソルジャーを地面に叩き付けた。

 「グギャァァア!!」

 叫び声を上げるバグソルジャー。が、

 「ギギッギ!!」

 地面に倒れながらも、胸部の機銃を「それ」に向けた。そして、

 「グォォォッ!?」

 放たれた弾丸を胸部に受け、仰け反る「それ」

 「ギギギ!!」

 その隙に体勢を立て直し、再び浮上するバグソルジャー。

 そして、再び鎌を振り上げる。

 「ギギャァ!!」

 唸り声と共に、鎌は振り下ろされた。







 「ゴーレム!!」

 再び叫ぶレミィ。

 バグソルジャーの振り下ろした鎌を、何とか「それ」はかわそうとした。

 しかし、よけきる事は出来ず、その一撃は、「それ」の頭部の半分を吹き飛ばした。

 残った頭部はもはや原型を留めておらず、独自の機会音を上げることさえ不可能だろう。

 頭部だけではない、合体前と合体後を会わせても、全身のダメージは相当な物だ。ほぼスクラップ同然だろう。

 「・・・そんな・・・」

 言葉を失うレミィ。

 「やっぱり、駄目なのか・・・?」

 リュークも絶句した。

 やはり、性能に差が有り過ぎる。

 大量の武装と戦闘能力を与えられた新兵器と、まだ完成さえしていなおらず、まともな武装も与えられないまま戦いに臨んだ兵器、その差は歴然だった。

 さらに「それ」は満身創痍で、とても戦える状態では無い。正に八方ふさがりな状態である。

 「博士、何かあれに武器とか積んでないんですか!?」

 苦し紛れに尋ねるコブラ。が、

 「・・・いや、無い訳では無い・・・」

 予想外の返答を下す博士。

 「博士、本当ですか!?」

 驚きながら博士を見るレミィとリューク。

 「ああ・・・バイソンの腕に搭載されている武器を使えば・・・」

 博士は「それ」を見上げた。

 確かに「それ」の腕の下部には細長い槍の様な物が取り付けられている。

 「あれを使えば何とかなるんですか?」

 「可能性はあるが、デメリットもある。あれは槍を高速で打ち出す物だが、その反動で下手すればバイソンも大破する事になるかもしれない。しかも、外れてしまえばもう予備は残されていない・・・」

 「・・・チャンスは1回きり・・・ですか・・・」

 「そういう事になる・・・」

 表情を曇らせる博士。

 「それに、動く事すら困難な今のコイツで奴を仕留められるか・・・」

 現状で動く力すら少ない「それ」と、戦闘能力に殆ど支障を来さない程のダメージのバグソルジャー。ここにも戦力差が現れていた。

 「でも、これ以外に、アイツを倒せる武器は無いんですよね?」

 口を挟むリューク。

 「・・・残念だが、その通りだ・・・」

 「アンタ・・・本気なの?」

 驚いた顔でリュークを見るレミィ。

 「・・・本気だよ・・・」

 「・・・失敗すれば、もう可能性は残されていないのよ?」

 「・・・解ってる・・・でも、可能性があるなら、それに全てを賭けたいんだ」

 真剣な表情でレミィを見るリューク。

 「・・・オレも、リューク君の意見に賭けます・・・」

 横から口を挟むコブラ

 「私は君達の意見に従うつもりだが・・・どうする?」

 続く博士

 「・・・」

 黙り込むレミィ。しかし、

 「・・・解りました、私もその可能性に賭けます」

 その表情に迷いは含まれていなかった。

 「ゴーレム!」

 そして、ボロボロの「それ」に向かって叫んだ。

 「グ・・・グォ・・・」

 ボロボロでありながら、動く事も困難な状態でありながら、それでも残された右腕をバグソルジャーに向ける「それ」

 「解っていると思うが、チャンスは一回きりだ、頼んだ」

 「解ってます、博士」

 レミィは槍の先端と標的、バグソルジャーを凝視した。







 「バ、バカな・・・ディープ・ロザリオが破られるなんて・・・」

 立ち上がり、信じられないという顔をするシャーク。

 「ふっ、愚かだな・・・」

 嘲笑するアポカリプス。

 「確かに通常のメタルソルジャー相手なら十分に通用しただろう。しかし、仮にも私は性能を通常の物よりも底上げされている。この程度の小細工、システムをハッキングさせて解除するなど造作も無い事だ・・・」

 「そ、そんな・・・」

 格が違い過ぎる、その言葉が頭をよぎった。

 目の前の敵はこれまで自分が戦った敵とは段違いだ。能力も頭脳も、自分を越えている。

 「これで解っただろう。貴様は私に勝つ事は不可能だ」

 再びエクスカリバーを構えるアポカリプス。

 「その首、ここで貰い受ける!!」

 そしてブースターを展開し、シャークに斬りかかった。







 「ギギギ・・・?」

 バグソルジャーも不信に思ったのだろう。

 目の前、正確には数メートルしたにいる「それ」はどういう訳か自分に右腕を向けているのだ。

 「ギギギ・・・」

 しかし、今の自分には関係無い事だ。

 そして腹部の砲塔を「それ」に向ける。

 例えどんな物を持って来ようとも、自分の優位は動かず、ましてや負ける事も無いだろう。

 そして次の瞬間、砲塔が火を吹いた。









 「く・・・!」

 弾丸の土煙に顔を覆うレミィ。

 「グ・・・オ・・・」

 姿勢を崩しそうになるも、なんとか姿勢を保つ「それ」

 「くっ、敵はまだまだ健在か・・・」

 舌打ちするコブラ。

 「何とか動きを止められれば・・・」

 こちらに残されたチャンスは一度しかない。しかし、バグソルジャーはまだ健在であり、狙いを定めるまで待ってくれる訳が無い。が、

 「だったら・・・」

 コブラはコンバットソードを構える。

 「・・・健二君、何をする気だ?」

 怪訝そうな顔をする博士。

 「動きを止めればいいんでしょう!?」

 そう言うとコブラは「それ」に向けて走り出した。

 「ちょっ・・・アンタ何する気!?」

 その突飛な行動に驚くレミィ。

 しかしコブラは周りには目もくれないまま、大きく跳躍した。

 「うおおぉぉっ!!」

 叫び声を上げながら、「それ」を土台にし、コブラは更に跳躍した。








 「ギギギ!?」

 再び砲塔を使おうとしたバグソルジャーの前に、跳躍したコブラは現れた。

 しかし、突然の行動にバグソルジャーは対応できず、僅かな空白が生まれた。

 「食らえ!!」

 その僅かな空白が、全てを決めた。そして、

 「ギギャアアァ!?」

 次の瞬間、断末魔が響いた。

 コブラが手に構えたコンバットソードが、バグソルジャーの頭部に突き刺さったのだ。

 「グギャアアァッ!!」

 頭を振り回してコンバットソードを取り払おうとするバグソルジャー。

 「レミィさん、今の内に!!」

 振り落とされそうになりながらも、必死にコンバットソードを掴みながら、コブラは叫んだ。










 「くっ!!」

 振り下ろされたエクスカリバーを、シャークヘッドが押さえる。

 「ほう・・・まだそんな力が残っていたか・・・」

 表情一つ変えないアポカリプス。

 「く・・・いい気になるな・・・!」

 拳を握り締めるシャーク。

 「ふっ、威勢だけはいいな。だが、」

 アポカリプスはマシンガンをシャークに向けた。

 「しまっ・・・」

 「これまでだ!!」







 「アイツ・・・滅茶苦茶じゃない・・・!」

 コブラの行動に唖然とするレミィ。

 「確かにな・・・だが、」

 博士はバグソルジャーを見た。

 コブラを振り落とそうと必死に頭を振り回している。明かに隙だらけだ。

 「お姉ちゃん!」

 「解ってるわ!」

 「それ」の腕はバグソルジャーに向けられている。

 「頼むわよ・・・博士、この武器の名前は?」

 わずかに博士の方を振り向くレミィ。

 「パイルバンカーだ」

 待ってましたとばかりに答える博士。

 「よし・・・ゴーレム! パイルバンカー射出!!」

 レミィは叫んだ。

 「グォォォッ!!」

 それに共鳴するかの様に、「それ」が唸り声を上げ、槍、パイルバンカーが切り離された。








 「よし!」

 パイルバンカーがこちらに向かって飛んでくるのを、コブラは確かめた。

 「ギギギ!?」

 そしてすぐに、その様子はバグソルジャーの目にも映った。

 「じゃあな! デカブツ!」

 そう言うとコブラはコンバットソードから手を離した。







 「ゴーレム!」

 パイルバンカーが放たれた直後、「それ」の右腕は火花を上げ、地面に落ちた。

 放たれたパイルバンカーは一直線に進んで行く。

 そして直後、鉄同士がぶつかり合う、鈍い音が響いた。








 「!!!!???ギギャアアアアァアア!!!????」

 断末魔の叫び声を上げるバグソルジャー。

 パイルバンカーがバグソルジャーの胸部を貫いたのだ。

 「ギ、ギャギ・・・」

 しかし、その叫び声は途絶えた。

 直後に、全ての機能を停止し、抜け殻となったバグソルジャーは、そのまま地面に落ちて行く。








 「いてててて・・・」

 頭をさすりながら立ち上がるコブラ。

 直後、目の前に何かが落ち、地面にぶつかる轟音が響いたかと思うと、大量の土煙が舞った。

 「・・・やったな・・・」

 顔を覆いつつも、コブラはほくそえんだ。

 落ちて来た物体、それは紛れも無くバグソルジャーだった。







 「・・・やったの・・・?」

 地面に落ちたバグソルジャーを見て、しばし呆然とするレミィ。

 「お姉ちゃん・・・」

 同じ様な顔をするリューク。

 「その様だな・・・」

 続いて博士。

 「・・・」

 全員沈黙する。しかし、

 「・・・やったあっ!!」

 レミィが歓喜の声を上げた。

 「ほ、本当にやったんだ!!」

 「う、うむ・・・やったぞ!」

 リュークと博士が続く。

 バグソルジャーは完全に破壊された。「それ」の勝利だ。

 「ゴーレム!」

 歓喜が覚めぬまま、「それ」を振り返るレミィ。しかし、

 「・・・」

 彼女は言葉を失った。

 地面に立膝になっている「それ」は、頭部はほぼ完全に破壊され、右腕はパイルバンカーを撃った衝撃で千切れ、地面によこたわっている。

 もはや、「それ」は動く為の力すら失い、完全に巨大な鉄屑と化していた。

 「・・・っ・・・」

 レミィの頬を一筋の涙が伝う。

 「お姉ちゃ・・・」

 声をかけようとするリューク。

 しかし、博士が肩に手を置いた。

 「・・・今は、そっとしておいてやれ・・・」










 「ぐあああっ!!」

 マシンガンの雨に撃たれ、シャークは吹っ飛んだ。

 「悪足掻きだったな・・・」

 再びエクスカリバーを構えるアポカリプス。

 「ぐ・・・この・・・」

 立ち上がろうとするシャーク。

 しかし、打ち所が悪かったのか、思うように体が動かない。

 「ふっ、これでゲームセットだな・・・」

 シャークに斬りかかる体勢を取るアポカリプス。が、

 「・・・バグソルジャーの反応が途絶えた・・・フン、失敗か・・・」

 腹立たしそうな表情をするアポカリプス。

 「な・・・どういう事だ・・・?」

 状況を飲み込み切れないシャーク。

 「フッ、今すぐにでもトドメを刺してやりたい所だが、少々急用が出来た。今回はここまでだ」

 「な・・・何・・・?」

 予想外の言葉に呆然とするシャーク。

 「少々歯ごたえが薄いのが残念だったが、それなりに楽しませてもらった。次に会う時までにもう少し経験を積んでおくんだな」

 そういうとアポカリプスは踵を返した。

 「行くぞ、モトソルジャー」

 「ギギギ・・・」

 変形したモトソルジャーに跨るアポカリプス。

 「さらばだ、もう一人の仮面ライダーよ・・・」

 モトソルジャーのその場から、高速で走り去った。

 「・・・くっ・・・」

 変身を解除するシャーク。

 「っ・・・」

 しかし、彼に残されたのは、食らった弾丸の痛みと、どうしようもない敗北感だけだった。









 「じゃ、本題に入ろうか、リューク」

 数分間無言で涙を流した後、レミィは涙を拭い、リュークの方を振り向いた。

 「・・・はい・・・」

 覚悟を決めたという顔で答えるリューク。

 「・・・アンタ、また私との約束を破ったわね・・・」

 泣いた直後でも、レミィの目は鋭く光っている。

 「勝手な行動はしない。そう約束したばかりでしょ?それをこうしてまた破った・・・いい加減にしなさいよ」

 「・・・はい・・・」

 無言で首を縦に振るリューク。

 「・・・レミィさん、ちょっと待ってくれ・・・」

 横から口を挟む博士。

 「確かに今回も彼に過失があったのは確かだ。しかし、彼の頼みを聞き入れた私にも責任はある」

 「・・・オレも、彼の行動を知っておきながら黙っていました。オレにだって責任はあります」

 加えて言う健二。が、

 「2人とも、黙っていて」

 レミィは2人の意見を一蹴した。

 「リューク」

 「・・・はい・・・」

 重い空気が流れた。が、

 「・・・まあ、私の監督不届きもあったし、アンタのおかげで救われた部分もあるから、今回は無かった事にしておくわ」

 「・・・え・・・?」

 予想外の反応に呆然とするリューク。

 「ただし」

 何か付け足そうとするレミィ。

 「今度また馬鹿やらかしたら、その時は船に縛り付けてでもアメリカに送り返すからね! 覚えておきなさい!」

 目つきを変えて怒鳴るレミィ。

 「・・・ハイ・・・」

 その声に圧倒され、リュークは呆然と立ち尽くした。

 「・・・」

 博士と健二は胸を撫で下ろした。









 「作戦失敗だと・・・?」

 帰還したアポカリプスの報告を聞いたヒメヤは震えた。

 「そうだ、残念ながらな・・・」

 つまらなさそうな表情で答えるアポカリプス。

 「所詮、君の兵器もまだ詰めが甘かったという事だな」

 「・・・貴様、私の兵器が役に立たないとでも言うのか?」

 「残念だが今はそう言わざるをえないな・・・」

 皮肉を含んだ笑みを浮かべるアポカリプス。

 「馬鹿が! あそこで余計な邪魔さえ入らなければ間違い無く今回の作戦は成功していた! 貴様こそ、何故サンプルにトドメを刺さなかった!」

 「大破したバグソルジャーを放っておけとでも言うのか?」

 平然と言い返すアポカリプス。

 「く・・・貴様・・・」

 今にも殴りかかりそうな形相をするヒメヤ。

 「・・・フン、まあいい、今回の結果から更に強力なメタルソルジャーを造ればいいのだからな・・・」

 そう言うとヒメヤはモニターを振り返った。

 「そうすれば貴様の様な役立たずなどすぐにスクラップだ!! せいぜいそれまでほざいているがいい・・・」

 部屋中に狂気じみた笑い声が響く。

 「・・・バカはせいぜいほざいていろ・・・」

 内心でそう思いながら、アポカリプスはヒメヤを睨み付けた。









 「社長、新型バグソルジャーのテストが失敗したとの事です」

 先程入った情報を報告する秘書。

 「・・・そうか・・・」

 「やはり、あの男を日本に送ったのは間違いだったのでは・・・」

 秘書は納得行かないと言う表情をする。

 「ふ、心配しないでくれ、日本に向かったのはDrヒメヤだけではない」

 マッドは余裕を含んだ笑みを浮かべた。

 「はあ・・・しかし、もう一人も大丈夫なのか・・・」

 やはり不安が抜け切らないという顔をする秘書。

 「ふっ、君は心配性だな・・・」

 悪戯っぽく笑うマッド

 「いえ・・・」

 顔を赤らめる秘書。

 「心配しなくても大丈夫だ、君は私を信じて仕事に打ち込んでくれ・・・」

 そう言ったマッドの紳士的な姿勢とは裏腹に、その眼は怪しい光を放っていた。










 同時刻、日本に向かって、一台のヘリが飛行していた。

 「しかし、一体お偉いさん方も何を日本に持ってけというんでしょうかねえ・・・」

 副操縦席に腰掛けた20代程の男が文句を言う。

 「さあな、どちらにせよオレ達は与えられた指令を全うするだけだ・・・」

 ヘリを操縦する40代程の、いかにもベテランという面持ちの男が無表情で答えた。

 武装解除してはいる物の、本来このヘリは米軍が所有するの戦闘用の大型機だった。

 パイロットの2人は上層部からある人物の日本への護送をまかされており、その人物の荷物も運ぶ事になったのだ。

 「ていうか、後ろの人も何の目的で日本に行くんでしょうかねえ・・・」

 「そんな事知らん。無駄口を叩かないで、操縦に集中しろ」

 「解ってますよ、中佐・・・」

 前方を再び振り返る若兵。

 武装を解除したヘリの下部には「HBS−01」と書かれたカプセルが懸架されていた・・・。


次回予告

 デカルト博士の遺産の修理に明け暮れる健二達。そんな彼等とは反対に、アメリカから新たにガルグド・メタルの人間が来日した。そして、同時に日本に一つのカプセルが持ち込まれた。しかしそれは、悪魔の卵だった・・・。

 次回、仮面ライダーコブラ 悪夢

 迫り来る危機を、打ち砕け!!


「仮面ライダーコブラ」に戻る

inserted by FC2 system