向かい来る敵

 訪れる危機

 駆けろ、音速の力


仮面ライダーコブラ

第5話
鋼鉄の牙


 「ここに行けばいいんですか?」

 健二は之村博士から手渡されたメモを見ながら言った。

 「ああ、そこの店主にこのメモを見せて事情を話してくれ」

 「解りました」

 健二は病室を出ようとした。そこへ

 「そうだ、健二君、君は免許とか持ってるのか?」

 「免許? ええ、18になってから自動車学校に通っていて、大型2輪の免許は持ってます」

 「そうか、無免許運転で捕まったら話にならないからな」

 「いやだなあ。無免許運転なんてしませんよ」

 そんな事を言いながら、健二は病室を出た。




 「一体、これは何なんだ・・・?」

 祐樹は自宅のアパートでガルグド・メタル社の研究所から脱出した際に持ち帰ったケースの様な物を眺めていた。

 「箱みたいな形だが・・・」

 それを見ては使い道は何なのかという事に頭を悩ませていた。

 「そうだ。これで解析出来るかもしれない」

 そう言うと祐樹は、バッグの中からノートパソコンと液晶の付いた機械を取り出した。

 この液晶が付いた機械はデジタルスキャナーという機械で、パソコンの周辺機具の一つである。これはまずパソコンの端末に接続し、本体で物体をスキャンすると、内部の画像が映し出され、パソコンを使って解析などを行う物である。本来は機械研究用の道具であるが、祐樹は大学で機械工学について学んでいる手前、これを所持していた。

 「これでよし、と」

 祐樹はパソコンの端末にデジタルスキャナーの端子を接続した。そしてケースをスキャンした。

 「これは・・・」

 スキャナーによりスキャンされた映像には、ケースの中央にゲル状の物質が集まっていた。

 祐樹はそれをクリックし、解析を始めた。

 「何かのスーツの様だが、ゲル状にまで形を変えられるとは・・・」

 祐樹は驚いていた。どうやらゲル状の物質は何かのスーツの様な物体ではあるが、原型を留めないまでに縮小されているのだ。

 「しかし、何でこんな物があそこに有ったんだ・・・?」

 祐樹は頭を悩ませる。だが、

 「そうだ。行く所があったんだ」

 思い出した様に祐樹はパソコンをバッグに入れ、家を出た。




 「バイクショップ銀咲・・・。あった、ここだな」

 健二はメモに書いてあったバイクショップを見つけた。そこには「バイクショップ銀咲」と看板に書かれていた。

 「すいませーん・・・」

 健二は店の中を見渡す。すると、

 「やあやあ、誰かね?」

 中から作業服を着た男が現れた。

 「アンタ、バイクを買いにきたのかね?」

 「ええ、ちょっと之村博士に頼まれたもので・・・」

 「之村? アンタ、之村の知り合いかね?」

 「ええ、近所に住んでいる者ですが・・・」

 そう言って健二は男に博士から手渡されたメモを見せた。

 「ふうむ、アイツからの依頼か・・・。よし、ちょっと店の中に入ってくれ、それと、オレがこの店の店主の銀咲だ。よろしく」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」

 そう言って健二は店内に入った。




 「左腕に、鮫の遺伝子が組み込まれている様です」

 近所の病院に向かった祐樹に、医師はそう告げた。

 「・・・そうですか・・・」

 再び祐樹の脳裏に武山を殺したときの記憶が蘇る。今はその事実の方が苦しかった。

 「しかし、この様な事例は知っての通り、過去にも極少数しか報告されていません。しかし、」

 「どうかしたんですか?」

 「丁度先日にも、同じ様な症状を持った人がいました。右腕にコブラの遺伝子が組み込まれているという物でしたが、まさか、数日後に同じ様な事が起こるとは・・・。予想だにしませんでした・・・」

 「コブラの遺伝子・・・。そんな事が有るんですかね」

 「ええ、間違いありません」

 医師は続ける。

 「学会には報告していませんが、これが7年前、あの事件が発生する前ならば、大騒ぎになっていたでしょう・・・」

 「7年前の事件・・・?」

 「2008年に、日本で原因不明のバイオハザード、いわゆる生物災害が発生し、人間の人体に他の動物の遺伝子が入りこむという事件が発生しました」

 「その事件なら、昔聞いた事があります」

 「当時は大騒ぎでしてね。その後も何件か同じ様な事例が発生したのですが、その数は極稀です」

 「その事例は公開されたんですか?」

 「いえ、本人の生活保護の為にも、最初の事件以降はどれも報告はされても公開までには至っていないので安心してください」

 「そうですか・・・」




 「お目当ての物はこっちにある」

 銀咲は健二を店の奥へと案内した。

 「これは・・・」

 健二はそこに置いてあったバイクを見た。

 そのバイクは非常に鋭角的なデザインを持ち、ボディは黒く光っていた。

 「カッコイイだろ? 之村がここで造っていたバイクだ」

 「之村博士が・・・ですか?」

 「ああ、アイツは大学を出た後バイクについて研究していてな。F1等のレーシングカーに搭載されるエンジンをオレの監修の元更に強化したエンジンを使用している」

 「F1って事は、スピードはどれくらいですか?」

 「最高速度、時速1500キロだ」

 「1500・・・凄いですね・・・でも、乗る人に掛かる負担も大きいのでは?」

 「ああ、それがコイツの難点だ・・・。最高速度に達すれば、普通の人間なら内臓破裂みたいな事になっちまうだろう・・・」

 銀咲は落胆した表情で言った。

 「だが、之村はそれにも処置作を設けた。普段のコイツはセーフティロックが掛かっていて、普通の人間でも乗れる様になっている。ま、それで最高速度は600キロまで落ちてしまうわけだがな・・・」

 「結局、最高速度に達する事が出来る人はいないという事ですか・・・」

 「いや、アイツは偉い事に、それに対しても処置を取っていた」




 「キルマンティス改を送りこむのですか?」

 沢田が言う。

 「ああ、試作型キルマンティスでは、あのライダースーツに勝つ事は不可能だろう。正式仕様を使って仕留めろ」

 「了解致しました」

 「それと、逃亡した実験体の件はどうなった?」

 「全力で捜査中ですが、試作型のライダーベルトを奪われたのが厄介でした・・・」

 「何としても、危険分子となる前に排除せよ」

 「了解」




 「傷は大丈夫なんですか、博士?」

 レミィは病院を訪ねていた。

 「ああ、おかげさまでな。この通り元気だ」

 「今回の怪物は、やはり、ガルグド・メタルの仕業としか思えません」

 「恐らくな。しかし、民間人を虐殺するとは・・・。非道な行動に出たものだ・・・」

 「何はともあれ、元気で良かったです」

 レミィは安心した顔をした。

 「すまないな。協力すると言っておきながら、心配をかけさせてしまって・・・」

 「今はいいんです。体調を直す事を最優先にしてください」

 「全く、すまんな・・・」




 「つまり、ライダースーツを装着すれば体にかかる負担を大幅に削る事が出来るんですか?」

 「そうだ。しかし、それでもコイツが暴れ馬である事には変わりは無い。完璧に操るにはそれなりの技量が必要だろう・・・」

 「普通のバイクとしてでは、コイツの性能は発揮出来ない。しかし、その力を100%引き出すのは困難・・・。本末転倒ですね・・・」

 「ああ、だが、普通のバイクとしてでも問題無い。誰かに使ってもらえるなら、コイツも幸せだろう・・・。アンタ、大事に使ってくれよ」

 「・・・はい。あ、金は・・・」

 「元々アイツが研究用で造った物、いわゆる実験道具みたいな物だ。タダでも構わんよ」

 「ありがとうございます。コイツの力を引き出せる様に頑張ってみます」

 「任せた。だが、オーバーホールに1時間くらいかかる。適当な時間に来てくれ」




 その頃、街はパニックに陥っていた。

 「グゲゲゲゲ・・・・」

 そこにいたのは、またしてもカマキリの様な怪物だった。しかし、装甲は赤くなっており、緑だった以前の物とは異なっていた。

 「ひっ、また怪物だあぁぁぁ!!」

 人々は恐怖で逃げ回った。だが、

 「グギャアァァ!!」

 怪物は背中の羽を広げて高速で迫ってきた。

 「う、うわあぁぁぁ!!」

 怪物は駐車していた車に襲いかかる。乗っていた人は悲鳴を上げた。そして

 ズバアッ!!

 怪物の鎌は、一撃で車を切り裂いた。

 ドガァァン!!

 車は爆発、炎上した。

 「ひっ、ひゃあぁぁぁ!!」

 再び現れた怪物は、街を恐怖の渦に叩き落そうとしていた。




 「あれは・・・!!」

 祐樹は偶然怪物が街を破壊しているのを発見した。そこへ、

 「やめろ!!」

 健二がその場へ駆け付けた。

 「青山だと? 何故アイツが・・・」

 祐樹は突然の伏兵の登場に首を傾げた。

 「またお前か・・・。これ以上の破壊はさせない!!」

 そんな祐樹を尻目に、健二は腰と右腕に機械を装着した。

 「変身!!」

 健二が右腕の機械のスイッチを押す。

 「インプット」

 機械音が鳴り、健二がコブラスーツを装着した。

 「行くぞ、化け物!!」




 「な、何故アイツにあんな芸当が出来るんだ・・・?」

 祐樹は健二が目の前で変身したのを見て驚いた。

 「まあいい。ちょっとサンプルを取らせてもらうぜ・・・」

 そう言うと祐樹はバッグからノートパソコンを取り出した。そして林の中に隠れ、様子を伺った。




 「オラァ!!」

 健二は怪物にパンチを繰り出す。だが、

 「グギャァ!!」

 怪物は背中の羽を動かし、大きく跳躍した。

 「何!?」

 健二は驚いた。だが、

 「グギャァ!!」

 怪物は健二の背後に回り込み、切りかかってきた。

 ズバアッ!!

 「うわあっ!!」

 健二は背中に攻撃を受けた。

 「この野郎・・・!!」

 健二は背後を向いた。だが、

 「グゲァ!!」

 今度は怪物が高速で突進して来た。

 バアンッ!!

 「グッ!!」

 再び健二は攻撃を食らう。

 「コイツ、攻撃力もスピードも前の奴より上がっている・・・」

 健二は怪物の強さに驚いていた。

 「だったら、鎌を潰す!!」

 そう言うと健二は高速で怪物の右に回り込む。

 「食らえ!!」

 そして健二は鎌にパンチを繰り出す。だが、

 「な、何!?」

 怪物の鎌はパンチを食らってもビクともしなかった。鎌の強度も上がっている。

 「グゲェ!!」

 バアンッ!!

 「うわあっ!!」

 健二はカウンターを食らった。

 「クッ、スピードや耐久力も、前の奴よりも高い・・・。どうすれば・・・」

 健二は考えていた。そこへ、

 「健二君!!」

 誰かの声が聞こえた。

 見ると、バイクに乗ったレミィがこちらへ向かってきていた。

 「デカルトさん! どうしてここへ!?」

 健二は驚いた。

 「詳しい事情は後。荷物を預かってきたわ」

 レミィの乗っていたバイクは、銀咲が整備していたバイクだった。

 「装備を追加した物だとか言ってたわ。とにかく使いなさい!」

 「レミィさん・・・。ありがとうございます!」

 そう言うと健二はバイクに跨った。

 「ロック解除」

 機械音が鳴る。どうやらコブラスーツに反応した様だ。

 「グギャァ!!」

 怪物は再び高速で突進してくる。

 「行くぞ!!」

 健二はバイクのアクセルを回す。途端に、

 バァン!!

 バイクは爆発的なスピードで走り出した。

 「グッ!!」

 健二にG(重力)が襲いかかる。

 ドガァン!!

 「グゲエェ!!」

 そのままバイクと怪物は空中で激突したが、怪物は後方へ吹っ飛ばされた。

 「す、凄いスピードだ・・・」

 健二はバイクの爆発的なスピードに感動した。

 「グギギ・・・」

 だが、怪物はまだ生きていた。

 「これでトドメを刺す!!」

 そう言うと健二は、再びアクセルを入れる。

 バァン!!

 再びバイクは猛スピードで走り出す。

 「でぇえい!!」

 健二はそのままバイクの前面を持ち上げる。そしてバイクは大きく跳躍した。

 「食らええぇぇ!!」

 健二は敵目掛けて突進した。

 「グ、グゲ・・・」

 怪物は鎌で押さえようとする。だが、

 バキイッ!!

 バイクと接触した鎌は、粉々に砕け散った。

 「グゲゲ!?」

 怪物は驚いた。だが、

 「グ、グギャアァァ!!!」

 バイクでの体当たりを食らった怪物は絶叫した。そして次の瞬間、

 ドガァアン!!

 バイクのスピードとG(重力)に押し潰され、全身の骨格が砕けた怪物は、大爆発を起こした。

 「ふう・・・」

 着地した健二は、バイクから降り、変身を解除した。

 「凄いな・・・。このバイクは・・・」

 健二はバイクの性能に改めて感動した。




 「一体、これは・・・」
 
 祐樹は目の前の光景に心底圧倒された。健二が変身した事以上に、目の前で繰り広げられた戦闘は常識を覆す物だった。

 「しかし、アイツの機械は・・・」

 祐樹は自分が持ち出した機械を見た。健二が装着した機械と祐樹の機械は、かなり似通った外見だった。

 「もしかして、アレとコレは同じ機能を持つのか・・・?」

 祐樹は機械をまじまじと見た。

 「だとしたら、この戦闘データを使って、強化してやる・・・」

 祐樹は不敵な笑みを浮かべた。




 「またキルマンティスが倒されるとは・・・」

 沢田は、現場のレーダーソルジャーが持ちかえった映像を見た。

 「しかし、この様なモンスターマシンを造るとは・・・」

 映像を見ながら沢田はまじまじと言った。

 「やはり、あいつの発明か・・・?」




 「お呼びですか、社長」

 ロシア系の大柄の男が、マッドの部屋にいた。

 「先日研究所から逃亡した実験体が、数日間の内に奇妙な事を起こしてな・・・」

 「奇妙な事・・・?」

 「とりあえず、これを見てくれ」

 天井から大画面のテレビが降りてきて、戦闘の様子が映し出された。

 「成る程。逃亡した敵が、メタルソルジャー、バイオソルジャーを破壊したのですな?」

 「その通りだ。我々も予想だにしなかった。そこで、君に頼みたい事がある」

 「どの様な用件でありますか?」

 「現場に出向き、直接指示を出してやってくれ。ゴーグ隊長」

 「・・・了解しました」

 ゴーグという名の男は、不敵な笑みを浮かべる。

 新たなる力を得た健二。しかし、そこに、新たなる敵が現れようとしていた・・・。


次回予告

 新型バイク、ブラストバイパーの力により、バイオソルジャーを撃退した健二。しかし、またしてもバイオソルジャーが出現する。だが、そこへ現れた男、アヴァン・ゴーグこそ、強敵となる男だった・・・。

 仮面ライダーコブラ 第6話 敵将、来たる!!

 魂の叫びが、聞こえるか?


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