「ククク・・・。噂に聞いた通り、中々のスピードだな・・・」

 メガゴルポスが不敵に言う。

 「でえぇぇい!!」

 健二は尚も突っ込もうとする。

 「が、それだけではオレには勝てん。そしてその浅はかさ、その身を持って知れ!!」


仮面ライダーコブラ

第7話
海王、目覚めし


 「死ね!!」

 メガゴルポスは健二に拳を振り下ろした。が、

 「正面が駄目なら、後ろはどうだ!」

 そう言うと健二は、高速で身をかわした。

 「何!?」

 メガゴルポスに隙が出来た。

 「よし!」

 健二は後方に回り込んだ。

 「食らえ!!」

 バアァン!

 「グッ!」

 健二はメガゴルポスの背後にパンチを叩きこむ。

 「どうだ!」

 しかし、

 「甘いぞ若僧!」

 「何!」

 メガゴルポスの拳が、健二がその場を離れる前に襲いかかってきた。

 ドガァッ!!

 「うわああっ!!」

 健二は拳を食らって吹っ飛んだ。

 「ククク・・・。攻撃直後に発生する隙を突き、背後に回り込んで攻撃とは・・・。中々センスが良いな。だが、」

 「チッ!」

 健二は体制を立て直す。しかし、

 「それだけでは勝てぬと、言っているだろうがあ!!」

 メガゴルポスは健二に接近する。そして、

 「吹っ飛べぇ!!」

 ドガアッ!!

 「ぐわああっ!!」

 メガゴルポスは健二を蹴った。健二は再び吹っ飛んだ。

 「甘いぞ若僧!!」

 メガゴルポスは健二の首筋を掴んだ。

 「でええい!!」

 ドガッ!!

 「グッ!!」

 そして健二を地面に叩きつけた。

 「まだまだだ・・・」

 そう言うとメガゴルポスは、鎖の付いた鉄球を取り出した。

 「何!?」

 健二は予想外の武器に驚いた。

 「食らえ!!」

 そしてメガゴルポスは鉄球を健二に向かって振りまわして来た。

 「マズい!!」

 健二は鉄球をかわす。

 「まだまだぁ!!」

 健二は再び高速で走り出す。

 「でえぇい!!」

 そして再び上からメガゴルポスの懐に飛びこむ。が、

 「甘いと言ってるだろうがぁ!!」

 ガシッ!!

 「ぐわああっ!!」

 メガゴルポスは健二の頭部を掴んだ。

 「フッ、残念だったな・・・」

 そしてメガゴルポスは、健二を空中へ放り投げる。

 「食らえ!!」

 そして鉄球を取りだし、健二に投げた。

 「ま、まずい!!」

 しかし健二はダメージで体が動かない。そして、

 ドガアッ!!

 「ぐわああぁっ!!」

 鉄球は健二を直撃した。

 ドサッ

 健二は地面に落ちた。

 「う・・・」

 既にメガゴルポスの猛攻により、健二の意識は消えかけていた。

 (だ、駄目だ・・・。この人は、今までの奴とは段違いだ・・・。勝てねえ・・・)

 朦朧とする意識の中で、健二は諦めていた。もう終わりだと。自分はここで死ぬのだと。

 「フッ、中々良くやった方だったな、若僧・・・」

 メガゴルポスが健二に近づく。

 「が、ここまでだ」

 そう言うとメガゴルポスの腕が、巨大な剣へと変形した。

 「残念だったな・・・。死ねぃ!!」

 そしてメガゴルポスは腕を大きく振り上げた。

 (ああ、もう終わりだ・・・)

 健二は既にかわす気力も無かった。全身に力が入らない。

 (オレも、弱過ぎた・・・)

 彼は死を覚悟した。しかし、

 「やめろおぉっ!!」

 ドガアッ!!

 「グワアァッ!!」

 突如何かがメガゴルポスに体当たりした。

 「き、貴様は・・・」

 メガゴルポスは体勢を立て直す。そこにいたのは、レミィとγゴーレムだった。

 「ほう、この若僧の仲間か・・・」

 「そんな所かしらね・・・。でも、彼を殺させはしないわよ・・・」

 「フン、そのロボットで私と戦う気か?」

 「そうしたい所だけど、違うわね。今は彼を助けるのが先決ね」

 そう言うとレミィはボロボロになった健二を見た。

 「フッ、わざわざ邪魔が入ってまで獲物を倒しても面白くない。ここは一度引いてやる」

 そう言うとメガゴルポスは元の姿に戻った。

 (あれは・・・デカルトさん・・・? オレはどうなったんだ・・・?)

 健二の意識はもう無くなりつつあった。その中で、ゴーグの姿が遠のいて行くのが見える。

 「中々楽しかったぞ若僧。が、次に合う時まではもっと実力を磨いておけ!」

 そしてゴーグは去って行った。




 「健二君!大丈夫!?」

 レミィが健二に駆け寄る。

 「で、デカルトさん・・・。あの人は・・・」

 「安心しなさい。あの人ならもう行ったわ」

 「・・・オレの、完敗でした・・・」

 「今はそんな事はいいわ。とりあえず体を休めないと」

 「・・・はい・・・」



 「所々を強打していますが、幸いにも命に別状は無いでしょう。少し休めば回復します」

 医師が言う。あの後健二は病院に担ぎ込まれたのだ。

 「そうですか・・・。良かった・・・」

 レミィは胸を撫で下ろす。

 「・・・貴方、彼の姉ですか?」

 「え!? いえ! 顔見知り程度ですが、怪我して倒れていた物で・・・」

 レミィは慌てて弁解した。




 「ホントにもう、何があったの?」

 見舞いに来た真琴は、呆れた様な口調で言った。

 「誰かとケンカでもしたの?」

 「まあ、そんな所かな・・・」

 健二は上半身を起こして言った。

 「クスッ、ふうん、でもお兄ちゃんがケンカなんてね・・・」

 真琴は小さく笑った。

 「な、何がおかしいんだよ!?」

 健二は焦った様な顔で言う。

 「だって、昔はお兄ちゃん、ケンカとは殆ど縁が無かったじゃん」

 「う・・・それはそうだけどさ・・・」

 「人間も時が経つと進歩する物よねー」

 「・・・余計なお世話だ・・・」

 「でも、私は昔より可愛くなったでしょ?」

 真琴がイタズラっぽく言う。

 「さあ、どうでしょうかね?」

 健二は皮肉っぽく言い返した。

 「むうっ! 何それ!」

 真琴は頬を膨らませて怒った。

 「おー、恐い恐い」

 「ぷきーっ!!」

 「・・・お前何歳だ?」

 そんなこんなで談笑が続く。

 「どうやら元気みたいね」

 そこへレミィが現れた。

 「あ、どうも、兄がお世話になっています」

 真琴はレミィに頭を下げた。

 「いえ、いいのよ。こっちも彼に借りがあるから・・・」

 レミィが言う。

 「体は大丈夫なの?」

 「ええ、今は痛みも引いてきています」

 「そう、良かったわ・・・。とりあえず安静にしていろと先生は言っていたわ」

 「解っています。重ね重ねすいません・・・」

 「そうそう気にしないで。困った時はお互い様なんだから・・・」




 「アイツはやはり強化スーツの様な物を持っている筈だ・・・」

 祐樹はパソコンのキーボードを叩きながら考えていた。

 「これが奴の物と同じなら、オレにも使えるかもしれない・・・」

 モニターには、スーツの様な物体が、形を完成させつつあった。

 「よし、これで終わりだ」

 祐樹はパソコンを閉じた。

 「後は、コイツのテストだけだ・・・」

 祐樹はまた不敵な笑みを浮かべた。




 「アレの力はどの様な物だった・・・」

 マッドがゴーグに言う。

 「実力はまだまだですが、それでも断片的な力を持っている様に見えます。放っておけば、やがて驚異となるかもしれません・・・」

 「・・・そうか・・・。君がそこまで評価しているのなら、我々も本腰を入れなければならない様だな・・・」





 「・・・ここはどこだ・・・」

 武山は手術室の様な場所で目覚めた。

 祐樹に刺され、彼は死んでいる筈であった。では何故生きているのか。すると、

 「目が覚めたか・・・」

 そこに現れたのは沢田だった。

 「その声は・・・沢田博士か・・・。私はどうなったのだ?」

 武山は尋ねた。が、

 「残念だが、君は既に死んでいる」

 「な、何だと!?」

 武山は驚いた。

 「彼は逃亡したサンプルにメスで刺されて死亡した」

 沢田が続けて言う。

 「ば、馬鹿な! では何故私は生きているのだ!」

 「今の君は死体をバイオソルジャーとして改造し、それにより蘇ったのだ・・・」

 「な、何だと!? ふざけるな!!」

 武山は激怒した。が、

 「だが、あのままだと君は死んでいた。しかし、バイオソルジャーになる事で、君は蘇ったのだ。そしてその力を使えば、君を殺したサンプルを抹殺し、再び幹部として返り咲く事が可能だ。それでも割が合わないか?」

 「な、何・・・?」

 「あのまま死ぬか、それとも再び生きるか。どちらが良いのだ?」

 「・・・ふ、ふはははは!! 面白い!! いいだろう、私はバイオソルジャーとなって奴を抹殺してやる!!」

 武山は大声で笑った。

 「よし、早速メタルソルジャーを引き連れて向かってくれ」

 沢田がいう。が、

 「私だけで十分だ。あの憎き虫ケラは私自ら引導を渡してくれる!!」

 武山は憤っていた。

 「フ、では君の実力を拝見させてもらおうか・・・」




 「しかし、凄いバイクだな、これは・・・」

 祐樹は奪取したバイクに乗りながら言った。

 最初はこのバイクのフロントは鮫の様な形をしていた。が、今のフロントの形は普通のバイクと何ら変わらない形へ擬態していたのだ。

 「これを造った奴等は、かなり高度な技術を持っているらしいな・・・」

 そんな事を言いながら、祐樹はバイクを走らせた。

 「ちょっと休憩しておくか」

 そう言うと祐樹は、目にとまった近くの公園にバイクを近づけた。




 「いい天気だな・・・」

 祐樹は空を見上げてぼんやりしていた。

 こうしてぼんやりと空を静かに眺めているのが彼は好きなのだ。

 「全く、平和だな・・・」

 そこへ、

 「ククク、探したぞ・・・」

 誰かの声がした。

 「誰だ?」

 祐樹は声の方向を向く。しかしそこにいた人間を見て、祐樹は驚いた。

 「アンタは・・・あの時、オレが殺した・・・!!」

 そこにいたのは、祐樹が殺した人間、武山だった。

 「おや、覚えていたのか・・・」

 武山は不気味に言う。

 「アンタ、死んだんじゃ無かったのか?」

 「確かに一度死んだ。が、貴様を抹殺する為に、再び再生したのだ・・・」

 「な、何!?」

 「ククク、忘れはしない。貴様に殺された怒りはな・・・」

 武山は続ける。

 「そして私は貴様を倒す力を得た。見ろ! これが私の力だ!!」

 そう言うと武山の体が変形し、全身が赤い皮膚に覆われた怪物になった。

 「な、何なんだ、コイツは!?」

 祐樹は驚愕した。

 「ククク、これが私の得た力、レッドアントだ!!」

 「な、何!?」

 「これより貴様の処刑を開始する!!」

 武山が宣言した。

 「死ねい!!」

 ビシャッ!

 レッドアントは口から液体の様な物を吐き出した。

 「うわっ!!」

 祐樹はそれをかわす。

 ブシャッ!!

 液体はベンチに当たった。が、

 シャアアァ・・・

 ベンチは音を立てて溶けた。

 「な、何だと!?」

 祐樹は驚いた。

 「ククク、これは高い酸性を持った溶解液だ。食らえば貴様など一瞬でドロドロに溶けるぞ・・・。ククク」

 レッドアントは不気味に笑った。

 「ここで貴様は終わりだ!!」

 再びレッドアントは溶解液を吐いてきた。

 「チッ!!」

 祐樹はまた攻撃をかわす。

 「フン、頑張っている様だが、これならどうだ!」

 そう言うとレッドアントの腹部から二本の腕が現れ、レッドアントも姿勢を倒した。

 「何をする気だ?」

 虫の様な姿勢を取ったレッドアントを見た祐樹が言う。

 「ククク、私の真の力を見せてやる!!」

 ダアッ!

 「何!?」

 レッドアントは高速で走り出した。

 「死ねい!!」

 そしてレッドアントは空中に飛び上がり、祐樹に飛びかかった。

 「クッ!!」

 祐樹はギリギリの所でかわした。

 「シャアッ!!」

 再びレッドアントは体当たりを仕掛けてくる。

 「うわっ!!」

 祐樹は姿勢を崩しながらもかわした。

 「ククク、そろそろお開きにしようか・・・」

 レッドアントは不気味に笑った。が、

 「お開きだと? へっ、パーティーはこれから始まるのさ」

 祐樹が強い口調で言った。

 「ほう、この状況でまだ減らず口を叩ける気力が残っていたか・・・」

 「残念だったな。これから始まるのは、お前の流血ショーだ・・・」

 祐樹は不敵な笑みを浮かべる。そしてポケットから、二つの機械を取り出した。

 「! それは、我々が開発していた試作型強化スーツ!!」

 「フン、やっぱりそうだったか。オレ用に少々カスタマイズさせてもらった・・・」

 「な、何だと!?」

 レッドアントは驚いた。

 「既に起動実験は終わった・・・。後は戦闘だけだ・・・」

 「くっ、ならば、やってみるがいい!!」

 レッドアントが怒鳴る。

 「フン、だったらお望み通りにしてやる」

 そう言うと祐樹は腰と左腕に機械を装着した。

 「変身」

 祐樹は左腕の機械のスイッチを押した。

 「インプット」

 機械音が鳴り響き、腰と左腕の機械がチューブで接続され、祐樹の全身をゲル状の物体が覆った。

 「な、何!?」

 レッドアントはその姿を見て驚いた。

 そこにいたのは祐樹の筈だった。しかし、全身は装甲と青主体の色で覆われ、頭部は鮫を象った形になっており、人間とは全く別の姿だった。

 「ベルトに異常は無い様だな・・・」

 祐樹は自分の姿を見て言った。

 「戦闘開始だ・・・」

 「くっ、黙れえぇ!!」

 レッドアントは再び高速で襲いかかった。

 「死ねえぇい!」

 そしてパンチを繰り出そうとした。が、

 ガシイッ!!

 「何!?」

 祐樹はレッドアントの右腕を押さえた。

 「フン、大した事無いな・・・」

 ブチイッ!!

 「グギャアア!!」

 祐樹は押さえた右腕を難なくもぎ取った。

 「き、貴様・・・」

 レッドアントは痛みでもがき苦しんだ。

 「許さん・・・ブッ殺してやる!!」

 レッドアントは激怒し、更に高速で祐樹に突っ込んだ。が、

 「哀れだな・・・」

 ガシッ!!

 「グガァ!!」

 祐樹は突っ込んで来たレッドアントの頭部を掴んだ。

 「ギ・・・ガアァ!!」

 レッドアントは残された左腕で攻撃しようとした。が、

 「甘い」

 ブチイッ!!

 「グガァ!!」

 祐樹は左腕ももぎ取った。

 「この勝負、オレの勝ちだ・・・」

 祐樹は更に腕に力を込めて行く。

 「ガ、何だと・・・!?」

 レッドアントは状況が飲めていなかった。そして、

 「終わりだ」

 ブシャアッ!!

 「グギャアァ!!」

 祐樹はレッドアントの頭部を握り潰した。

 バタッ

 レッドアントの胴体が地面に落ちた。そして、

 ドガァン!!

 胴体は大爆発を起こした。

 「・・・落とし前は付けた・・・」

 炎を見ながら祐樹が言う。

 「だが、これはオレの復讐の下地に過ぎない・・・」

 そう言って祐樹は変身を解除した。




 「武山博士が倒されただと?」

 マッドは驚いた顔で言った。

 「は、はい。しかし、また新たな敵が出現した様です・・・」

 「新たなる敵だと?」

 マッドは顔をしかめた。

 「どうやら、先日逃亡したサンプルと交戦した様ですが・・・」

 「まさか生身の人間に殺されたのでは無いだろうな・・・?」

 「いや、敵は我々から奪った試作型のライダースーツを使った様です」

 「ライダースーツだと?」

 「はい、しかも、我々が造った物を更にカスタマイズした物の様です・・・」

 「・・・また新たな驚異が現れた様だな・・・」

 「追ってこの敵も仕留めます」

 「これ以上驚異を増やす訳にはいかん。全力でやれ」

 「了解しました」

 回線が切られた。

 新たに出現した戦士。その力は、正義か、悪か・・・。


次回予告

 メガゴルポスとの戦いで、自分の弱さを知った健二。そして彼は、偶然誘われたボクシング同好会を訪れる。一方ガルグド・メタルは、祐樹も危険分子とみなした。そして戦いは、彼等に事を考えさせる猶予すらも与えないのであった・・・。

 仮面ライダーコブラ 第8話 ボクシング同好会

 魂の叫びが、聞こえるか?


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