「またも敗北か・・・」
マッドはモニターを見ずに冷たく言った。
「も、申し訳ございません!」
沢田は頭を下げる。
「バイオソルジャーを作っているのは君だ。我々はむしろ君に感謝しておきたいくらいなのだよ。しかし、ことごとくこれまでのバイオソルジャーは倒された。これは忌々しき事態だ・・・」
「おっしゃる通りです・・・。ならば次は新たなるメタルソルジャーを投入いたします」
「すぐにでもそうしてくれ。それと、」
マッドは言葉を切る。
「奴の封印を解け・・・」

仮面ライダーコブラ 第9話 機会戦士の黙示禄

「封印とは、奴の事ですか・・・」
マッドの部屋にいたゴーグが言う。
「その通りだ。今まではメタルソルジャーの指示だけをやらせていたが、ようやく実戦に投入する事態が訪れた様だ・・・」
「やはり、それ程の強敵という事ですか・・・」
「そんな筈は無い。奴の力を持ってすれば、どうという事は無い筈だ・・・」

大阪にある3階建てのビル。
建前は生命保険会社という事になっているビルだが、そんな事では機能していなかった。
ここが、日本のガルグド・メタルの研究所の一つであったのだ。
そこの、とある一室の前に、沢田は立っていた。
そこはしばらく使われていなかったのか、古ぼけていた。
ガチャ
沢田は扉を開けた。
「お前を呼び出す用が出来た・・・」
部屋の中央には、全身をコードで繋がれた、銀色のロボットが佇んでいた。
「私に、用が出来ただと・・・?」
銀色のロボットが喋る。
「そうだ。仕留めてもらいたい敵がいる」
沢田が言う。
「新鋭のメタルソルジャーと共に、敵の掃討に向かってくれ」
「・・・本来はメタルソルジャーのコントロールを専門に行う私がか・・・?」
「既に3体のバイオソルジャーが倒されて、研究員も一人死亡している」
「所詮人間を改造した物の力などそれ程度だ。戦闘で真価を発揮出来るのは機械だけだ・・・」
「つべこべ言わずに出ろ」
「フフフ、面白い。久しぶりに戦える・・・」
銀色のロボットはほくそえむ。
バシッ
ロボットに繋がれていたコードが外された。
「忘れるな。貴様をコントロールする力は我々が握っている。下手な考えはしない事だ・・・」
「フ、解っている・・・」

「何ですか、オレに渡す物って・・・」
健二は銀咲に呼び出され、バイクショップ銀咲に呼び出された。
「ああ、之村がある物を作ったらしくてな・・・。これだ」
銀咲は黒いアタッシュケースを取り出す。
「ある物・・・?」
「まあとりあえず、見てみろや」
銀咲はアタッシュケースを開けた。
「これは・・・」
アタッシュケースの中には、折り畳まれた大型ナイフの様な形状の物が入っていた。
「なんでも、新装備らしいぞ」
銀咲が言う。
「・・・」
健二はそれを手に持った。
刃の部分は根元から折り畳まれているが、ナイフにしてはかなりの大型だ。
「これは・・・ナイフとかそういう武器なんですかね・・・」
「見た感じそうだが・・・アイツの造る物はとんでもない物だったりするからな・・・」
健二はそれを見て首をかしげた。すると、
「それが私の新作だ」
突然声がした。
「博士!もう動けるんですか!?」
そこにいたのは之村博士だった。
「ああ。傷口はふさがったから、もう大丈夫だ。それより、」
博士は健二が持っている大型ナイフを見た。
「それは私が開発した大型コンバットソード、そうだな・・・アーミーソードとでも言うか」
「コンバットソード・・・兵隊用の武器ですか?」
「それの発展形と言えるかな。軍隊等で採用されている物を、ワンランクアップさせた物だ」
「へえ、凄いんですね」
「しかし、生身の人間が使うにしては使い勝手が悪い。だからそれはライダースーツを装着した時に真価を発揮する訳だ」
「ライダースーツを装着した時・・・ですか?」
「普通の人間でも使用は可能だが、先に言った通り、それでは使い勝手が悪い」
「確かに、いざという時軽く振り回せる様な重さではないですね・・・」
健二の手に握られているコンバットソードは、ナイフという割には少々不釣合いな重さだった。
「だから、ライダースーツを装着した時の方が使い勝手はいいのさ。それに、コイツには特殊な機能が備わっている」
「特殊な機能?何ですかそれって」
「まあ、それは戦いの中で解るかもしれんからな」
「実際それで使い方が解らず危ない状況になったらどうするんですか?」
「ん、まあ、そうならない様努力してくれ・・・」
博士は窓の外を見た。
「しかし、バイクやナイフまで造るとは・・・。見上げた物だな・・・」
銀咲は感心した。
「まあ、これが科学者魂という物だよ・・・」
「しかし、コレは持ち運ぶ時はどうするんですか?」
健二が言う。
「ん?ああ、それは折り畳んだ状態で君のバイクに取り付けられる様になっている」
そう言うと博士はコンバットソードを健二のバイクに取りつけた。
ガチッ
コンバットソードはバイクに接続された。
「これで簡単に外れる事は無いが、外す際には一端本体を180度回転させてくれ。ロックが外れる仕組みになっている」
「解りました。さて、そろそろ大学に行かないと・・・」
「バイクを使うのか?」
「家に戻るのも面倒だから、乗って行く事にします」
そう言うと健二はバイクに跨った。
「じゃ、失礼します」
健二はバイクのアクセルを入れた。
「しかし、大した奴だなあ・・・」
バイクで走って行く健二を見て、銀咲が言った。
「造られても乗り手がいなくてお蔵入りになっていたあのバイクを、ちゃんと使っていやがるぜ・・・」
「ああ、やっとバイクも日の目を見る事が出来た訳だな・・・」
「お前の発明もようやく日の目を見れたな」
「全くだ・・・って、余計なお世話だ・・・」

大阪、通天閣の頂上
そこに、銀色のロボットは立っていた。
「都市伝説の戦士、仮面ライダーか・・・」
ブルルルル・・・
その上に、何かが現れた。
「ギギギギギ・・・」
それは、下半身はメタルソルジャーと同じであった。しかし、上半身はヘリの様な形をしており、そこから腕が生え、ローターで飛行していた。
これが新たなるメタルソルジャー、ジャイロソルジャーであった。
「フッ」
銀色のロボットは跳躍した。
ガシッ
ジャイロソルジャーはロボットを掴んだ。
「フフフフフ、待っていろ、仮面ライダー・・・」
ロボットは不敵な笑みを浮かべた。
ジャイロソルジャーは健二達の街、鳥取へ向かっていた。

「あ、お兄ちゃん」
大学へバイクを走らせていた健二は、途中で真琴を見つけた。
「よお、学校終わったのか?」
「そうなんだけど、家まで乗せてってくれない?」
「ええー?自分で帰れよ・・・」
「いいじゃない、ちょっとくらい・・・」
真琴は健二に近づき、上目遣いで健二を見た。
「うっ・・・解ったよ、乗せていってやるよ・・・」
「わーい、ありがと、お兄ちゃん♪」
真琴はそう言うと早速バイクに飛び乗った。
「しっかりつかまってろよ」
健二はバイクを逆方向に向けた。

「ここか・・・」
銀色のロボットは鳥取市街上空に到着した。
「適当な場所へ降ろせ」
「ギギギギギ・・・」
ガシャッ
命令を受けたジャイロソルジャーが手を放す。
シュタッ
銀色のロボットは近郊のビルに着地した。
「まずは小手調べだ・・・行け」
「ギギギギギ・・・」
指令を受けたジャイロソルジャーは、再び飛来した。

一方健二は、真琴を家に送る為にバイクを走らせていた。
「お兄ちゃんって免許持ってたんだ」
「当たり前だ。無免だったら捕まるだろうが」
「でも、こんな派手なバイク、どこで手に入れたの?」
「之村博士から借りた」
「へえ、博士もバイクに乗るんだ・・・」
「いや、これは博士が独自にカスタムした物らしいがな」
会話をしながらバイクを走らせる健二。だが、
「・・・何かが来る・・・」
「えっ!?」
健二は唐突に何かの気配を感じた。そして上を向く。すると、
「ギギギギギ・・・」
「な、何だアイツは!?」
健二の目に映ったのは、ヘリから手足の生えたロボット、ジャイロソルジャーだった。
「お、お兄ちゃん!」
「ちっ、また怪物かよ!」
健二は嘆いた。が、
「ギギギ・・・」
ジャイロソルジャーは腕に装備されたマシンガンを健二達に向けた。そして、
ダダダッ!!
ジャイロソルジャーはマシンガンを撃ってきた。
「うわあっ!!」
「キャアッ!!」
それを何とかかわす健二。
「真琴、しっかりつかまってろ!」
「う、うん!」
健二はそう言うとバイクを加速させた。

「ギギギギギ・・・」
ジャイロソルジャーは尚も健二達を追いかける。
(とりあえず、真琴を降ろさないと・・・)
健二はそう思い、バイクを止めた。
「真琴、ここで降りろ」
「えっ?」
「アイツの狙いはオレの筈だ。とにかくここで降りろ」
「でも・・・!」
「とにかく降りろ!」
健二は怒鳴った。
「・・・解ったわ・・・」
真琴はしぶしぶ降りる。
「ちゃんと帰ってきてよ・・・」
真琴は目を潤ませながら言う。
「解っているって。心配するな」
そう言って健二は真琴の頭を撫でた。
そして再び、バイクを走らせた。

「ギギギギギ・・・」
ジャイロソルジャーは健二の追跡を続ける。
「ちっ、しつこい野郎だ・・・」
健二は苛立ちを覚えた。が、
「ギギギ・・・」
バァン!!
「何!?」
ジャイロソルジャーは肩に装備されたミサイルを撃って来た。そして、
ドガアッ!!
「うわあっ!!」
ミサイルが着弾した。
「この野郎・・・変身!」
間一髪でミサイルをかわした健二は、即座にコブラスーツを装着した。
「ギギギギギ・・・」
ダダダッ!!
ジャイロソルジャーは再び機銃掃射を仕掛けて来た。
「チッ!」
健二はブラストバイパーに乗りながら攻撃をかわした。
「空から迫る敵か・・・」
健二は焦りを感じていた。

「フフフフフ、苦戦している様だな」
健二とジャイロソルジャーの戦いを観ていたロボットが言う。
「さて、空中戦用のジャイロソルジャーをどう倒すか・・・」

「チッ、どうすれば・・・」
健二はバイクを走らせながら考えていた。
ジャイロソルジャーは空中を飛んでいるが、地上には降りてこない。そして上空から飛び道具を使って攻撃してくる。しかし、まともな飛び道具を持っていない健二は、上空のジャイロソルジャーに攻撃が届かず、今はかわす事が先決と考えた。
「ギギギ・・・」
ダダダッ!!
「クッ!」
健二は攻撃をかわす。
「ギギギギギ・・・」
するとジャイロソルジャーは高度を下げてきた。そして、
バアン!
再びミサイルを放ってきた。
「またかよっ!!」
ドガアン!!
健二は再びミサイル攻撃をかわした。しかし、健二はそこである事に気付いた。
「アイツ、攻撃の時にわずかに高度を下げているのか・・・?」
健二はジャイロソルジャーがミサイルを撃ってくる時に高度を下げた事を思い出した。
「高度を下げた所で地上に引き摺り降ろせば、勝てるか・・・?」
健二はジャイロソルジャーが高度を下げた所で地上に引き摺り降ろそうと考えた。
「しかし、高度を下げたと言ってもわずかだ。届くか・・・?」
「ギギギギギ・・・」
健二が考えている間に、ジャイロソルジャーは高度を下げた。
「いや、あのミサイルを利用すれば・・・!!」
健二は何かをひらめいた。
「ギギギギギ・・・」
バアンッ!!
そしてジャイロソルジャーは脚に装備された3発目のミサイルを放った。
「いちかばちかだ!!」
ミサイルが地上に着弾しようとした、その時、
「でえぇい!!」
シュタッ!
健二はバイクから大きく跳躍した。
その前には、ジャイロソルジャーのミサイルが迫っている。が、
「よし!!」
ダンッ!
健二はそのままミサイルを踏み台にし、更に跳躍した。
ドガァン!!
踏み台にされた事により照準の狂ったミサイルは、そのまま爆発を起こした。
ドゴオッ!!
「クッ!」
爆風が健二に襲いかかる。が、
「どうやら届いた様だな・・・」
ミサイルを踏み台に跳躍、更に爆風を利用した事により、健二はジャイロソルジャーの高度まで跳躍した。
「ギギギ!?」
健二の予想外の行動にジャイロソルジャーは驚いた。
「そのローターを、破壊すればいいんだろ!!」
ドガアッ!!
そう言うと健二は、全力でローターにパンチを叩きこみ、破壊した。
「ギギギギ!?」
ガシャン!!
ローターの破壊により揚力を失ったジャイロソルジャーは、地上に落下した。
シュタッ
健二は着地した。
「これで、リスクは無くなった・・・」
そう言うと健二は、バイクに近づいた。
「これを使わせてもらう」
健二はコンバットソードに手をかけ、180度回転させた。
ガチッ
コンバットソードがはずれた。
「ギギギギギ・・・」
ジャイロソルジャーは体勢を立て直す。しかし、
「でええい!!」
バアンッ!!
健二はコンバットソードでジャイロソルジャーに切りかかった。
「でやあっ!!」
ガアンッ!!
すかさず健二は攻撃を加える。
「ギギギギギ・・・!?」
ジャイロソルジャーは既に抵抗する事は不可能だった。そして、
「でええぇい!!」
ズバアァッ!!
健二の攻撃で、ジャイロソルジャーの上半身と下半身が分離した。そして、
「ギギギギギ・・・!!」
ドガァアン!!
ジャイロソルジャーは大爆発を起こした。
「ふう」
健二は変身を解除しようとした。が、
ダダダッ!!
「うわっ!!」
そこへ銃弾が再び飛んできた。
「まだ敵がいるのかっ!?」
健二は辺りを見回す。そこへ、
「フフフフフ、中々楽しませてもらったよ・・・」
何者かの声がした。
「誰だ!?」
健二は声の方向を向いた。
「まさかミサイルを利用してジャイロソルジャーを倒すとは、恐れ入ったよ」
そこに現れたのは、銀色のロボットだった。
「また敵か!?」
「フフフフフ、まあ、そういう事になるな・・・」
銀色のロボットは不敵な笑みを浮かべた。
「私の名前は、黙示禄<アポカリプス>。黙示禄の処刑人だ・・・」
「黙示禄・・・だと・・・?」
突如現れた新たなる敵、アポカリプス、奴は、一体何者なのか・・・・?


次回予告

 健二がアポカリプスと遭遇した頃、祐樹はバイオソルジャー、ハンマーヘッドに遭遇した。が、同じ鮫の力を持ったハンマーヘッドは、祐樹の想像を超えた力をみせつける。そして健二は、黙示禄の処刑人、アポカリプスに戦いを挑む・・・。

仮面ライダーコブラ 第10話 黙示禄の処刑人

魂の叫びが、聞こえるか?


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